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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2018年08月22日

科学技術イノベーションと人間性、西洋の合理性と東洋の精神土壌の融合をめざす大学院大学・至善館 (2018.08.21)

新しいあり方へ
 

今月上旬、安倍首相も参加されて「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略策定に向けた懇談会」の初回が開かれました。そのときのようすや自分の発言についてはこちらでご紹介しています。

そのとき、「議事要旨や資料などは追ってウェブにアップされるそうですので、またお知らせしますね」と書いたのですが、なかなかアップされず......。

気がつかなかった(お知らせがなかった)のですが、いつのまにかアップされていましたす。こちらになります。

パリ協定長期成長戦略懇談会(パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略策定に向けた懇談会)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/parikyoutei/

第1回は私のほか、名古屋大学の高村先生と経団連会長の中西さんが資料を提出しています。上記からお読みいただけます。

なお、この懇談会はなぜか、非公開で行われることになっているそうです(そんな極秘情報や、外には聞かせられない議論が出てくるのでしょうか......???)

議事要旨は委員確認の上、ウェブにアップされるそうなので、またお知らせします。もう3週間近くになるのに、まだアップされていません。情報公開と透明性の点で問題ではないかなあと思います。

さて、今日は自分に関するお知らせを1つお届けさせてください。

今年の3月末に、3年半お世話になった東京都市大学を退職し、今月から新しくできた大学院大学(社会人向けMBAコース)「至善館」の教員になりました。「システム思考と持続可能性への挑戦」という科目と、ゼミ「社会起業・地域づくり」を担当します。

昨日が開校式でした。一期生は、英語クラス・日本語クラスあわせて84人、20カ国以上からの学生が集まっています。国籍も、カナダ、アイルランド、フランス、イタリア、ニュージーランド、ブラジル、中国、台湾、韓国、タイ、インド、スリランカ、インドネシア、バングラデシュ、カンボジア、フィリピン、パレスチナ、エチオピアなど多岐にわたっていて、外国籍学生は32名です。

ノンビジネスセクター出身の学生は約2割、女性比率は約3割。外国籍学生でも日本語クラスを取る人、日本人でも英語クラスを取る人がかなりの数いるので、クラスルームも多様性に富み、刺激に満ちていそうで、とても楽しみです。

キャンパスは、地下鉄日本橋駅の真上、JR東京駅から徒歩5分の立地にする〓島屋日本橋店北側の再開発ビルの17階です。

大学院や大学の名前として「至善館」って、ユニークですよね。何をめざしてMBA教育をしていくのか、同校のウェブサイト
http://shizenkan.ac.jp/

および、第一期(平成 30 年度)募集要項 の説明からご紹介します。
file:///C:/Users/Junko%20SV7/Downloads/shizenkan_applicationguide_j.pdf

私がぜひ合流したい!と思った理由がわかっていただけるのではないかと思います。

~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~

●大学院大学至善館の志と描く未来

22 世紀を展望し、真のリーダーシップ教育のあり方を、ここ日本、そしてアジアから提示する

大学院大学至善館は、世界にも他に類をみない、独自の全人格経営リーダーシップ教育機関です。

その目指すところは、20 世紀を象徴する経営リーダーシップ教育のパラダイムであった米国発のビジネススクール(B-School)教育を出発点としながらも、21 世紀を生きる私たちを取り巻く環境からの要請に真摯に向き合い、22 世紀に向けて、日本そしてアジアから、世界にむけて新たな経営リーダーシップ教育のあるべき姿を提示せんとするものです。

変革と創造を牽引できる経営プロフェッショナルとしてのスキルを持ちながら、人間性と社会性を兼ね備えた全人格リーダーを輩出し、豊穣で安寧な経済社会の実現に貢献することが、至善館の建学にあたっての志です。

●大学院大学至善館の問題意識

至善館のプログラムは、私たちの経済システム更には人間社会が、大きな歴史の転換点に立っているとの認識に基づき、構想されています。

右肩上がりの経済を前提とした大量生産・大量消費モデル。その生産・消費モデルを支えるピラミッド型の組織構造。そしてそのピラミッド型組織を担う、専門知識とアメとムチの管理手法を身につけた機能別スペシャリストや中間管理職たち。こうした 20 世紀型ビジネススクールが前提とする、ビジネス、経済、社会のあり方が、21 世紀に入り、根底から揺らいでいます。

国連 SDGs や一般化する ESG 投資に代表されるように、右肩上がりの経済成長に対する持続可能性への懸念は広く社会で共有されるようになりました。経済社会の成熟に伴う生活者ニーズ・ウォンツの多様化・個別化と、分散型生産技術の進展は、大量生産・大量消費モデルに代わり、ファブ(FAB)社会に象徴されるカスタム少量生産・少量消費モデルの到来をもたらしています。

ソーシャルネットワークやシェアリングエコノミーの急速な進展は、企業組織においても、たての関係と組織の枠組みに沿って仕事を管理するピラミッド組織から、部門や組織の壁を超えた個人同士のヨコの繋がりに力点を置くネットワーク型の組織への変容が起きています。

こうした変容の中、組織の中核人材に求められるのも、アメとムチで組織を動かす管理能力ではなく、ポジションや肩書に頼ることなく、共感と信頼をベースに人やチームを動かすリーダーシップ能力へとシフトしています。

さらには、AI、ロボティクス、IoT、ブロックチェーン、ライフサイエンスといった科学技術と、こうした技術革新がもたらすイノベーションが私たちの生活世界を急激に塗り替える中、価値創造の源泉が、知識や資源、市場を独占することや、規模の拡大による経済性を追求することから、新たな知識を生み出す「創造性」と、自らリスクを取り新しい現実を創りだしていく「起業家精神」へとシフトしています。

いまやシリコンバレーだけではなく、世界各地でスタートアップを支援するエコシステムが誕生し、起業家が次々にゼロ・トゥー・ワンに挑戦し、守勢にまわった大企業は、これらの起業家精神を取り込むべく、オープンイノベーションの舵を切っています。

よりマクロで大きな歴史の潮流に目を向けると、私たちの目の前に立ちはだかる大きな転換点が見えてきます。西洋近代に端を発した、主権国家、民主主義、資本主義という私たちの経済社会システムが、グローバリゼーションの中での格差の拡大や共同体の崩壊で、軋みをたてています。

同時に、この 200 年続いた西洋優位の世界は、21 世紀に入っての急速なアジアの台頭、とりわけ世界の二大人口大国である中国とインドの経済発展によって揺らぎ、かつてのアジア中心の世界へと振り子が戻っていく様相を示しています。

更に、科学技術イノベーションの進展が、今まで体験したことのない果実をもたらすと同時に、私たちの生活社会のシステム化を推し進め、かつてチャーリーチャップリンが、映画「モダン・タイムス(Modern Times)」で警鐘を鳴らしたように、人間をシステムの一部へと変容させてしまう不安と懸念をもたらしています。

至善館が求める人材は、こうした歴史の転換点にたち、自らの意志で未来を切り拓き、自身のみならず、自分が所属する組織、さらには社会、そして未来の世代に対して貢献をしようという気概を持つ人材です。

こうした人材に対して、独自の全人格経営リーダーシップ教育プログラムと切磋琢磨と相互触発の場を提供することで、変革と創造を牽引する経営プロフェッショナルとしてのスキルの修得と、人間性と社会性を持った全人格リーダーとしての人間成長を支援してゆきます。

●大学院大学至善館の特徴

こうした全人格経営リーダーへの成長を支援するべく、至善館が提供するプログラムは、ヒューマニティの尊重を基軸に、独自の教育哲学とアプローチによって設計されています。

① 変革と創造を牽引できる経営プロフェッショナルとしてのスキルの習得

至善館プログラムは、これからの経営プロフェッショナルに必要な三つの思考力の開発を狙って設計されています。土台になるのは、伝統的に B-School が得意としてきた「定量的分析手法、論理的・戦略的思考」です。これらは物事を分析し検証するうえで不可欠な力であり、時代や文化を超えて経営プロフェッショナルに求められるものだからです。

次に、事業や地域社会のあるべき姿を、人や社会の潜在ニーズ・ウォンツを起点に構想していく「デザイン思考」。更には、指数関数的で破壊的な科学技術イノベーションと向き合い、過去からの延長線上ではなく、目の前の現実を飛び越えて創造的に未来を構想する「非連続な思考」を取り入れます。

B-School の教育手法に、近年勃興しているデザインスクール(D-School)、さらにはイノベーションスクール(I-School)の手法を独自に結合することで、変革と創造を牽引できる経営プロフェショナルとしてのスキルの修得を促します。

② 機能別スペシャリストや中間管理者ではない、経営者・起業家人材としての視点の開発

B-School が抱える課題の一つに、教育そして組織の細分化、サイロ化があげられます。経営を構成する諸要素であるアカウンティング、ファイナンス、マーケティング、戦略といった科目が、それぞれに要素分解されたパッチワークの知識とフレームワークとして提供され、それらを包括する経営とのリンクが欠けている傾向があるのです。

至善館は、企業活動の諸機能を絶えず経営者あるいは起業家の視点で洞察すると同時に、経営の全体像を俯瞰的に捉える経営政策(Business Policy)を教育の中核に捉え直し、起業家精神(Entrepreneurship)をもう一つの柱において、包括的で統合されたカリキュラムを提供します。従い、マーケティングやファイナンスといった機能領域の専門家育成を目指す大学院とは明確に一線を画し、至善館は、経営者・起業家人材の育成に特化しています。

③ リベラルアーツ教育による、リーダーとしての基軸の確立と未来を洞察する視座の獲得

ビジネスに関する知識やスキルは、経営プロフェッショナルとして物事を成し遂げる上で不可欠な力です。しかしそれらは、「どうやって」何かを成し遂げるかのための「手段」であり、「何のために、誰のために、何故」それを成し遂げるのかという「目的」を問うものではありません。

目的を問わず手段のみの修得を促す教育には、大きな欠点があります。この目的を問うため、至善館では独自のリベラルアーツ教育を提供します。歴史、宗教、哲学、社会学、科学、芸術などのリベラルアーツを大胆にカリキュラムに組み込み、歴史観・世界観・人間観・社会観を問い直し、リーダーに求められる判断・行動・選択の基軸となる価値観の確立を手助けします。

また同時に、社会や経済のあり方が大きな転換を迎えている今日においては、リベラルアーツは、経営プロフェッショナルとして世界の現状を理解し、未来を洞察するための基盤ともなるものです。至善館では、過去から現在、そして未来へと続く時代の潮流と、グローバリゼーションとイノベーションのなかでの世界や社会、そして人間存在の変容を読み解く深い洞察力を、リベラルアーツを通じて養います。

④ 社会、他者と向き合い、自身を振り返るなかでの全人格リーダーシップの涵養

至善館は、リーダーシップの原点を、内省を通じた自身の「生きる」目的・意義の確認に置いています。

内省は、自分自身との対峙を通じて、自分自身が大切にしているもの、自分自身の「心の声」を確認する作業ですが、社会の中で活動するとともに社会に影響を与える存在である経営プロフェッショナルにとって、内省は単なる自分自身との対峙ではなく、他者との関係性、さらには社会との関係性の振り返りによって初めて意味を見出すものです。

従い、内省は、社会の一員としての自分としての「生きる」目的・意義を問うことで、単に経営知識、スキルを持つということにとどまらない「全人格」なリーダーとしての成長の基礎となるものです。至善館では、コーチング、アセスメント、心理学を基礎とするワークショップ、経験学習などを通じて、内省を促し、全人格リーダーシップを涵養します。

⑤ 世界の教育機関やリーダーと連携しての、グローバル教育の実践

至善館は、日本に誕生するグローバルな経営大学院です。新興国インド・デリーに本拠を置く SOIL(School of Inspired Leadership)、スペイン・バルセロナの IESE ビジネススクールを中核パートナーに持ち、教員の交換・派遣、教育ワークショップの協働実施、グローバル経営とリーダーシップ教育の未来の共同研究において、組織連携を行っています。

また、至善館では、日本中華總商会をはじめアジアに広がる華僑ネットワークとの連携も行います。その他、至善館の教育理念に賛同する、韓国、シンガポール、バングラデシュ、ベルギー、スイス、イスラエル、アメリカ、カナダ、ブラジル等の識者やリーダーが、ゲスト・ファカルティやアドバイザーとして参画しており、特別講義を担当します。

急速に進行するグローバリゼーションの中での世界の経営・リーダーシップの課題と挑戦を、掘り下げて議論します。

⑥ 日本、アジアの精神土壌を土台とする、経営とリーダーシップのあり方の追求

米国発の B-School 教育が世界に広がるなか、ヨーロッパ、アジアの多くのグローバル経営大学院は、アングロアメリカン的な価値観を暗黙の前提として受け入れている現状があります。

これが、MBA が Master of Being American と時に揶揄される所以です。至善館は、日本発・アジア発のグローバル経営大学院として、他と大きく一線を画します。21 世紀はアジアの世紀と言われますが、アジアには、主客非分離の一元論、徳治による王道主義、自然との共生観など、独自の文化、精神土壌が根付いています。

至善館では、米国型 B-School 教育の持つ西洋の合理的思考を基軸としながらも、東洋思想や、禅・瞑想をカリキュラムに取り入れることで、西洋とアジアの思想の橋渡しを行い、未来に求められる経営やリーダーシップのあり方を追求します。

~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~

学長は、立命館副総長・立命館アジア太平洋大学学長を勤められたモンテ・カセムさんです。先生方には、私も学生と一緒に勉強させていただきたい!というそうそうたる方々が並んでいらっしゃいます。

 ※五十音順、( )内は2017年7月現在の役職です。

<専任教員>

枝廣淳子(東京都市大学 教授)
榎本英剛(CTIジャパン 創設者)
大滝精一(東北大学大学院経済学研究科教授、元経済学部長)
佐宗邦威(biotope 代表)
塩川哲也(ゼロックス在日代表)
竹田青嗣(哲学者、早稲田大学 教授)
野田智義(ISL 創設者、元INSEAD経営大学院助教授)
橋爪大三郎(社会学者、東京工業大学 名誉教授)
Patrick Newell(TEDxTokyo共同創設者、シンギュラリティ大学ジャパン創立者)
八橋雄一(ACAシニアアドバイザー、東京工業大学グローバルリーダー教育院 特任教授)山本美樹夫(A.T.カーニープリンシパル)、他

<客員教員>

岩嵜博論(博報堂ブランド・イノベーションデザイン局 ディレクター)
鵜尾雅隆(日本ファンドレイジング協会 代表理事)
田口佳史(東洋思想家、イメージプラン 社長)
田村次朗(慶應義塾大学 教授)
冨山和彦(経営共創基盤CEO)
平田オリザ(劇作家・演出家、東京藝術大学 特任教授)
平井正修(臨済宗国泰寺派全生庵 住職)
福原正大(Institution for a Global Society 社長)
藤原和博(奈良市立一条高校 校長、元リクルートフェロー)
松田恵美子(身体感覚教育研究者)
三谷宏幸(元ノバルティスファーマ 代表取締役)
山梨広一(イオン執行役、元マッキンゼー パートナー)、他

「至善館」という名称は、客員教員のおひとり、東洋思想家の田口先生がつけられたものです。四書五経の「大学」の冒頭にある、「大学の道は明徳を明らかにするに在り。民に親しむに在り。至善にとどまるに在り」の「至善」です。

短期的な経済効率・利益の最大化だけをめざす従来型ではなく、西洋と東洋の知の融合をはかりながら、本当の意味での持続可能性と人間性、社会性を大事にするMBAを育成するリーダーシップ教育です。2期生以降に、我こそは!という方、自社の経営者候補を送り込みたいという方、ご興味のある方、ぜひウェブサイトから詳細をご覧いただければと思います。
http://shizenkan.ac.jp/en/ 

私自身、次世代経営者候補のみなさんや社会起業家などの方々と一緒に勉強・議論できることを楽しみにしています。そして、単なるお金儲けではなく、グローバルな視野とローカルな起点を持ち、持続可能性と社会性と人間性を大事にできる経営者・起業家の育成に少しでもお役に立てたらと思っています。

今後、この至善館をベースとした活動もいろいろ展開していくことになると思います。このメールニュースにもたびたび登場すると思いますので、どうぞお見知りおきのほどを~!

 

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