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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2018年04月01日

第8回情勢懇レポ!~自分の発言と、原発の位置づけをめぐるやりとり (2018.04.01)

エネルギー危機
新しいあり方へ
 

おとといの朝、日本経済新聞の第一面に、「再生エネ 主力に」という記事が出ていました。私も参加しているエネルギー情勢懇談会の第8回の開催を受けて書かれた記事です。

(しかし、会合は9時半からだったのに、その日の朝刊に出ていました。どーして、実際の会合前に、メディアに詳しい内容が伝わっているのでしょうか???)

3月30日に開催された第8回エネルギー情勢懇談会の資料等はこちらにあります。
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/studygroup/ene_situation/008/

前回まで内外のゲストスピーカーを招いて学んできたことをベースに、いよいよ2050年のエネルギーの方向性を考え、最終的な提言にまとめていくフェーズに入りました。

今回提示された事務局資料の「50 年エネルギーシナリオ 論点」が、最終的なとりまとめの骨組みとなりますので、ぜひご覧ください。
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/studygroup/ene_situation/008/pdf/008_005.pdf

今回の会合は、ここに示された4つの論点について、事務局からの説明、エネルギー庁長官からの補足、そして、委員の議論というかたちで進められました。

私も資料を作成して提出しており、議論の中で資料を用いて発言しました。私の資料はこちらにあります。(論点3の議論で発表しました)
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/studygroup/ene_situation/008/pdf/008_007.pdf

全体の議論については、議事録が出たらまたご紹介したいと思いますが、とりあえず、自分の発言をお伝えしたいと思います。

なお、今回、原発の位置づけについての議論がありました。私の意見表明で、「原発依存度を可能な限り低減する」ことを明記するのは、福島原発事故を受けての必然の帰結である、としたことに対して、他の委員から「そういう文言は入れるべきではない」という意見が出されました。それに対して、もう一度、自分の意見を伝えました。

この会合の最初から最後までの動画はこちらにあります。
http://www.ustream.tv/channel/7nA3QtVrn3d

全部で2時間半以上と長いのですが、上記の部分は以下をご覧ください。

01:31:45~ 私からの意見表明(論点3を受けて)01:45:00~ それに対する中西委員のご意見02:00:50~ それに対する私の意見表明

それらも含め、自分の発言をお伝えします。

~~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~

<論点1について>

ありがとうございます。短く二言だけ申し上げたいと思います。最近、「PDCAが効かない」と言われます。従来はPDCAで回していたのが、計画自体が立てられないという時代になってきていますので、今回の大きな方向性として、これまでの「決め打ち」のやり方ではなくて、複線型でやっていく、複線型プラス、アダプティブ(適用型)でやっていくという、大きな方向転換が良い、素晴らしいし正しいことだと思っています。

今のご説明の中でも、ペーパーの中でも、「野心的」「大胆」という言葉が繰り返し出てきております。今回のエネルギーシナリオの発表をもって、「日本の2050年に向けての野心」を内外に宣言することになります。その中身が何かということがおそらく問われています。野心的で大胆というのは誰も反対しないと思うのですが、その中身をしっかり考えていきたと思います。

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<論点2について>

(事務局からの提案である)「科学的レビューメカニズム」について一言述べます。これはとても大事なことだと思っています。「決め打ち」でやっていくというよりも、きちんと科学的にレビューして、そしてまた配分しながらやっていくということですね。

おそらく、問われるのはそのときの「ガバナンス」だと思います。「それは政権側もしくは事務局側のやりたいことをやるための組織ではないか」と、たぶん多くの人はまず思ってしまうでしょう。残念ながらそういう状況にありますので。きちんと「これは中立・客観的なものである」という形で位置づけてやっていただきたいと思っています。

あと、日本の場合、「データが弱い」と繰り返し出ているとおりですので、データの収集・分析、それから広くそれを公開して共有していくということを、特に力を入れてやっていく必要があると思っています。そこを含めて進めていただければと思います。

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<論点3について>

「大きな方向性および報告書取りまとめについて(2)」という資料を出させていただいていますので、それに基づいて意見を述べさせていただきたいと思います。

(資料はこちらです)
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/studygroup/ene_situation/008/pdf/008_007.pdf

ほとんどが、今の長官のお話を含め、すでに共有されている部分かと思いますが、もう少し強く出したほうがいいと思うこともあり、資料をつくらせていただいております。

言うまでもなく、この情勢懇、もしくは2050年のエネルギーシナリオの大前提は、福島で原発事故が起こったことと、パリ協定です。ですから、そこからの当然の帰結としては、「原発依存度は可能な限り低減」。これは先ほどのペーパーにも書いてあったことです。おそらくかなりゼロに近い形になっていくでしょう。決め打ちで数値を出す必要はないかと思いますが、「可能な限り低減」という先にはそういった世界もあり得る。シナリオのひとつということになるかと思います。

あと、再エネを主力電源として高らかに位置づけるだけではなくて、きちんと推進するメカニズムを入れていくこと。長期目標、ロードマップや、技術開発等。脱石炭火力は言うまでもありません。

原発に関する議論が、やもすると福島原発事故がなかったかのように語られているところもあるので、そこをもう一回お話ししたいと思っています。

原発は、安定した安価な電力源だと、これまで位置づけられてきましたが、4ページの資料を見ていただくとお分かりのように、日本では時々止まっていて、それほど稼働率が高くありません。前に米国から来ていただいたゲストの会社のように90%以上というわけではない。みんなには「安定している」というイメージがありますが、実際はそうではないという側面もあります。

また、昨今いろいろなコストが上がっておりますので、発電コスト自体も安価と言えない状況になりつつあると思います。

加えて、「他国にない日本の国内の情勢を踏まえてエネルギー政策をつくるべきだ」というご意見が繰り返し出ておりますが、ほかの原発を抱えている国と違って地震国であるということは、やはりしっかり考えていく必要があると思っています。5ページ、6ページはそのような資料です。

7、8ページは、かつて基本問題委員会に出ていた時に提出した資料で、ちょっと古いものになってしまいますが、もし原発比率15%を、2050年に保とうとすると、20基の新増設が必要になることがわかります。このあたりをどういうふうに考えていくのか。もしくは、核廃棄物ももちろん、使えば使うほど増えてしまう。このあたりを考えると、2050年になって、原発以外でかなり、量的にもコスト的にも電力をまかなえるようになった後も、原発は必要であるかどうか。

私がよく聞くのは、「科学技術力の維持」であるとか「外交上の理由」で、原発をある程度持っていたほうがいいという声ですが、そうであるとしたら、どれぐらい、どういった原発を持つ必要があるのか。そういった議論を2050年に向けて早めにスタートする必要があるかと思っています。

10ページは、これも繰り返し出ていますので、そういった方向性を強く打ち出していただけることをうれしく思いますが、分散型への移行。これは世界的にそうであるし、こここそが次のイノベーションと国際競争力の土俵になってくると思います。

11ページは、あまり上手な図じゃなくて恥ずかしいですが、これも言われている通りのことです。これまでの少数の集中型の発電所がみんなに配っているという仕組みから、先ほど「エネルギーのエコシステム」という話がありましたが、そういうふうになってきます。

先ほどは「システム間のコスト・リスク検証」という話でしたが、システムすら固定ではきっと考えられない、非常に流動的なものになってくる。そのときにどのようにコストとリスクを見ていくのか。これは非常に高い、難しい問題になってくると思いますし、その点、日立東大ラボのやってくださることなど、ぜひ期待したいと思っています。

日立東大ラボの資料にずっといい絵があったんですが、地域社会でやっていくということをここで書きたかったのです。自家発電で、自分でオフグリッドで回す人も当然増えているし、地域内でいろいろ融通していく、そういった時代になっていと思います。大型発電所はおそらく、一部の、高品質の大量に安価に必要な需要家に向けての発電になると思いますし、産業需要の中でもかなり自家発電が進んでいくだろうと思っています。

ひとつ、ぜひお願いなのですが、論点整理のうちの15ページ、今、論点3-3のご説明いただいたところで、「地域分散エネルギーネットワーク」というのを出していただいています。これが(2)の中の片括弧という位置づけになっていて、「熱・輸送」のところに置かれてしまっています。これはぜひ独立させていただいて、地域での分散型のエネルギーネットワークがこれから重要である、それを推進していくということを出していただければと思います。

12ページですが、これはこれまでも出してお話していることですが、大型発電所がもし産業のところをまかなうとすると、かなり需要が減っていきます。「共存」という話がありましたが、これは見越した上で進めていく必要があると思っています。

13ページはこれまでもお話にいろいろ出ていることです。ひとつ、原発を国内で持っておく理由として、「そうでないと技術開発が進まない」とよく言われます。それに対して、再エネは今、大きな企業はみんな海外で展開している。国内ではなかなか、風力にしても地熱にしても展開できない。国内に持てていないのに技術開発ができるのでしょうか。その論理を使うと、特区でも何でもいいですが、しっかりとした再エネが入っていくような仕組みをつくっていただきたいと思っています。

14ページからは、これも前回お話ししたことと重なりますが、エネルギー需要が、普通に考えると人口が減る分減っていくと考えられます。でも、いろいろなことで減らないかもしれない。しかし減る可能性もある。としたら、大きく減少しても対応できるようなシステムにしておかないと、後で不良資産化してしまう可能性がある。このあたりをどのように、最初のどうやって投資を呼び込むか、もしくはどうやって誰が払うかという話にもつながりますが、「アセットライト」(資産を軽くしておく)にしていく可能性を、ぜひ入れておく必要があるかと思います。

最後に、今回の論点にひとつも入ってないのですが、こういったエネルギーシフトをどのように進めていくかという政策ツールとしての「カーボン・プライシング」です。今までのところになかったので。省エネの必要性という私的もありましたが、省エネ、エネルギーシフトのためのカーボン・プライシングを含めての政策ツールについても、しっかり打ち出していただきたいと思っています。ありがとうございました。以上です。

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このあと、何人かの委員が発言されました。中西委員が、「そろそろ原発の話を、好き嫌いではなく議論したい。核科学の開発をやめると人類の発展にマイナスになる。『原発依存度を可能な限り低減する』という文言は入れるべきではない」といった発言をされましたので、もう一度、発言の機会を求めました。

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ありがとうございます。こういう議論がやっとできるようになって、ほんとにうれしく思っています。

中西委員から、「原発を好き嫌いで議論する」というお話がありました。昔は、私、好き嫌いで原発のことを語っておりました。でも、こういういろいろな教育の場をいただいて、今は、好き嫌いとか、感情的に全否定とか即ゼロとか、そういう考えではなく、ただ、おそらく、違う種類の合理的な思考で、自分としては言っているつもりです。

「可能な限り原発依存度を低減する」という文言については、すでに方針として出されていると、私は理解しています(注:現行のエネルギー基本計画にその文言が入っていることを指しています)。ですので、もし今回、50年のエネルギーについて情勢懇から出すときに、それを出さないということになると、「後退」ということになってしまいますので、そこのところは考える必要があると思います。

私の資料で( )内に「2050年にゼロと、もしくはゼロに近くなる」と書いたのは、「今のままいくと」ということです。確かに、科学的なレビューを含め、新しいいろいろな技術開発が行われれば、そうでない可能性はあると思いますが、今のままでいくとしたら、少なくても今のエネルギー基本計画での原発依存度よりは減らしていく方向だし、「可能な限り低減する」というのが既存の方針になっているので、絶対に後退させてはいけないと思っています。

その上で、例えば、半減期を10分の1にするといった技術開発、技術革新は絶対に必要だと思っています。なぜなら、もうすでに日本には核廃棄物があるからです。それの落とし前をちゃんとつけないといけない。また、例えば本当に安全な新型の炉の可能性があるとしたら、その開発も、私はやるべきだと思っています。

ただ、そういう意味で言うと、「可能な限り低減する」というところの枕詞として、「社会的に受容される安全な新しい炉ができ、核廃棄物を社会的に受容される形で処理ができるようになるまでは、原発依存度は可能な限り低減する」というような前書きを付けてもいいと思いますが、そこのところは絶対に譲ってはいけないところではないかと思っています。以上です。

<論点4について>

前回の資料でも申し上げたことで、今のお二人がおっしゃったこととも重なりますが、エネルギー政策をつくっていくにあたって、どうやって「国民」と言われる一般の方々の理解や取り組みを促していくかというのは、常に出てくる大事なポイントになってきます。

残念なことに、今、そういったことをやる社会的なインフラを、日本は持っておりません。情報も探しに行けば、きっとあるのですが、しかし、「情報をどこかに置いておく」ということと、「それを国民の人たちに届けて、それを元に考えてもらったり、対話をしてもらったりする」というのは別のことです。

前に比べると、情報はよく出されるようになっていると思いますが、そのインフラをつくっていかないといけない。また、今、残念なことに、それがないせいもありますが、社会的な関心が高いわけではないですので、それを高めつつ、どうやって「ワガコト」化していくかということは、今回、非常に大きなポイントとしてぜひ前出ししていだだければと思います。

あと一点、論点4の2の投資の問題のところで、議論のバランスを取るという意味で、あえて一言申し上げます。

ここの論点に書いてあるのは、投資環境の悪化というマイナス面を中心で書かれておりますが、一方で、先ほど言及もありましたが、ESG投資が大きな流れになっています。

直近、2016年の数字で言いますと、世界規模では23兆ドル、日本で言うと4,700億ドルが、ESG投資として動いています。それがひとつの流れとしてあるとしたら、いかにそれを日本に呼び込んで。私たちがやっていこうとしているエネルギーシステム改革に投資をしてもらうか。そこはもっともっと積極的にやらないといけない。一方で国内の投資関係は悪化しているのはその通りだと思いますので、ぜひ戦略的にお考えいただければと思います。以上です。

~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~

エネルギー情勢懇談会のこれまでのようすについては、今書店に並んでいる別冊「世界」の「再エネ革命」にも書かさせてもらいました。どのようにこの情勢懇が設置されたのか、これまでのゲストスピーカーの共有してくれた知見や経験から学ぶべきことは何か、など、ぜひお目通しいただければうれしいです。なぜ私がメンバーに選ばれたのか? なぜこの情勢懇ではお互いの顔が見えるようなテーブル配置になっているのか、などについても書いています。

情勢懇では、2017年度内に提言をまとめる予定でしたが、もう少し議論が必要なため、今月中にとりまとめとなりそうです。今回の事務局の資料は骨組みでしたが、次回は文章としての「提言」のたたき台が出てくるものと思われます。しっかり読み込んで、確認すべきところはしっかり確認し、おかしいと思うところはしっかり「違うと思う」と述べたいと思っています。

また、提言ができて「終わり」ではなく、そのあとはその内容と意味合いを関心のある方々に伝え、さらに議論を深め、広げていくプロセスを進めたいと考えています。それが、(エネルギーの専門家でもない)私が委員になっている意味だと思いますので!

 

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