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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2015年06月23日

日本気候リーダーズ・パートナーシップ「日本の温室効果ガス削減目標に対する意見書」(2015.06.23)

温暖化
 

昨年9月から東京都市大学環境学部で教え始め、この4月からエダヒロ研究室のゼミも始まったため、いろいろお伝えしたいことがあるのですが、メールニュースがなかなか出せない状況です。ぼちぼち続けますので、よろしくお願いします~

さて、温暖化目標として、日本政府は「2030 年に 2013 年比 26%」(2005 年比 25.4%)削減という中期目標案を公表しました。

他国と比べても、温暖化の進行をくい止めるためにも、十分ではない目標案に、「低すぎる!」という批判の声が上がっています。環境NGOだけでなく、企業の中にも「もっと積極的に行動すべきだ」という意見を公表しているところがあります。

日本気候リーダーズ・パートナーシップ(Japan Climate Leaders' Partnership: Japan-CLP)という企業のグループをご存じでしょうか?

持続可能な低炭素社会への移行に先陣を切る事を、自社にとってのビジネスチャンス・次なる発展の機会と捉える企業ネットワークです。
http://japan-clp.jp/index.html

メンバー企業はこちらにあります。
http://japan-clp.jp/member.html

「日本気候リーダーズ・パートナーシップ」は2009年7月30日、持続可能な低炭素社会の実現には「産業界が健全な危機感を持ち、積極的な行動を開始すべきである」という認識の下に日本独自の企業グループとして設立されました。「持続可能な低炭素社会を実現するため、メンバー企業と政策立案者、産業界、市民などとの対話の場を設け、アジアを中心とした活動の展開を目指します」とのこと。

企業がすべきこととして、以下の7つを挙げています。

1.低炭素化を重要な経営課題として位置づける

2.気候変動対策を戦略的に推進する

3.企業活動全般の積極的な情報開示を行なう

4.社員参加により展開する具体策を講じる

5.魅力的な商品・サービスにより、お客さまに働きかける

6.連携によってバリューチェーン全体の低炭素化を図る

7.アジアをはじめとした国際的な議論に参加する

この日本気候リーダーズ・パートナーシップが5月末に、「日本の温室効果ガス削減目標に対する意見書」を発表しています。
http://japan-clp.jp/news/pdf/20150529_Japan-CLP_document.pdf

> Japan-CLPは、気候変動問題に取り組むには、2030年に少なくとも1990年比30%
> (05年比約36%)以上の目標が望ましく、意欲的な目標にチャレンジすることは、
> 日本の課題解決にも繋がると考えます。


政府の「(2005年比 25.4%削減」に対して、「少なくとも約36%削減」を求めるとのこと、企業グループがこうした主張を発表することは、とても心強い動きであり、ぜひ応援したいと思います。

意見書をご紹介します。

~~~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~

日本の温室効果ガス削減目標に対する意見書

 気候変動は、人々の生活や企業活動に不可欠な社会基盤を脅かす重大な危機である。国際社会は、気候変動の深刻な被害を避け、持続可能な成長と発展を実現すべく、気温上昇を 2℃以内に抑えること(いわゆる 2℃目標)に合意した。IPCC 第 5 次評価報告書は科学的知見を基に、気温上昇を 2℃以内に抑えるためには、21 世紀末には世界全体で温室効果ガスをゼロ、又はマイナスにすることが必要だとしている。

去る 3 月には、EU と米国が温室効果ガス削減の中期目標を他の主要国に先駆けて提出した。特筆すべきは、両者が 2℃目標の実現に向け、科学的知見等から最低限求められる「2050年に 80%以上の削減」の実現を明確に意図し、公表した中期目標をそのための通過点と位置付けていることである。EU と米国は、主要排出国として率先して 2℃目標達成に向けた明確な意思を示すことで、世界に向けて一定のリーダーシップを発揮したと言えよう。

そのような中、日本政府もエネルギー供給の安全性、安定性、経済性、低炭素化の観点、ならびに省エネ等の観点から、約 4 ヶ月にわたる真摯な議論の結果、2030 年に 2013 年比 26%(2005 年比 25.4%)削減という中期目標案を公表した。

東日本大震災以後の我が国の置かれた厳しい状況を踏まえ、様々な状況に配慮しながら目標の取り纏めに関わられた方々のご尽力に対し、心から敬意を表したい。

その上で、Japan-CLP は、以下の観点から、我が国の中期削減目標を更に意欲的なものへと深堀することが望ましいと考える。

・ 将来世代に過大な負担を強いることを避けつつ、深刻な被害を回避するため に最低限必要とされ、既に閣議決定されている長期目標「2050 年に 80%削 減」に整合させる必要がある(2℃目標の実現には、累積排出量の抑制が本質 的な問題であり、早期の意欲的削減が必要である。また、今後 15 年間を社 会の転換期とし、低炭素な社会インフラへ転換することが重要である)。 ・気候変動問題の解決に向けた、小資源国家日本の将来のあり方(低炭素国家戦 略)を明確にすれば、我が国が 2℃目標実現に必要な更なる技術革新やイノベー ションを起こし、国際社会の低炭素化に貢献していくことができる。

・多数の研究や観測を積み重ね、その信頼性を増している科学的な知見や、多く の困難な利害調整を経た国際的なコンセンサス等に照らし、国際社会から評価 される目標とする必要がある。

・人類最大の脅威である気候変動問題において消極的と見なされることは、当分 野における今日までの日本の実績や国際社会からの信頼を危ういものとし、低 炭素技術や人材等の海外展開にも悪影響を及ぼす懸念がある。

Japan-CLP は、上記の事柄及び科学的知見と国際的な合意事項を踏まえた日本の目標に関する諸機関の知見も参考に、我が国が責任をもって積極的に気候変動問題に取組むには、2030 年の削減目標として、少なくとも 1990 年比 30%(2005 年比で約 36%)以上が望ましいと考える。

一部には実現可能性や投資回収の不確実性などにより、意欲的な中期目標を避ける議論もある。しかし、化石資源に依存した経済成長から脱皮し、気候変動問題を解決することは、国際社会に課せられた大命題である。それは、「出来ることを積み上げる」というものではなく、深刻な被害を避けるために「今、何をすべきか」という、現世代が将来世代に先送りが出来ない課題である。

Japan-CLP は、地方創生にも繋がる再生エネルギーの潜在力を活かすこと、断熱改修による高齢者の健康維持など多面的なメリットがある家庭の省エネ、オフィスの効率化に資する業務部門の省エネ等、有効な対策を十分に強化することができれば、化石燃料輸入による国富流出を防ぎ、経済活性化や日本が直面する課題の解決に貢献しつつ、より意欲的な削減を目指すことが可能だと考える。

また、政府が意欲的な目標というシグナルを発信し、その実現に向けて炭素価格付け等のインセンティブを付与すれば、企業は積極的に投資を行い、技術革新とイノベーションに挑戦する。消費者は環境意識を高めると同時に、より手ごろな価格で魅力的な低炭素製品を購入できる。企業によるイノベーションと、消費者の行動変化による低炭素市場の拡大は、経済の好循環を生む。このことは、政府、企業、市民が一体となり、将来の日本の繁栄の礎を築くことに繋がる。挑戦する意義は十分にある。

Japan-CLP は、気候変動への対応は、単なるコストではなく、人々の生活基盤を維持し、資源に乏しい日本が競争力を強化するための有望な投資であると考える。このことを、政策決定者や、多くの企業、市民の皆様と共有したい。

以上

~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「日本気候リーダーズ・パートナーシップ」に参加したいと思う企業が増えていくように、この取り組みや参加企業をみんなで応援しましょう!

企業・企業経営者のみなさま、ぜひ参加をご検討ください~!

入会の詳細はこちらにあります。
http://japan-clp.jp/admission.html

ご一報いただければ、担当者におつなぎすることができますので、ぜひ詳細など聞いてください。「現世代が将来世代に先送りが出来ない課題」に真正面から取り組む企業が増えることを願っています。

 

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