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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2015年03月08日

「食、農、福祉の小さな経済循環~島根県益田市真砂地区の取り組み」(2015.03.08)

食と生活
 

今日の夕方、NHK BS1の国際情報トークバラエティ番組「地球アゴラ」の福島からの放送に、先週にひきつづき、ゲストコメンテーターとして出演します。クライストチャーチや水俣の学びを共有しながら、福島でがんばっている若い世代と話し合います。よろしければぜひご覧下さい~。

3月8日(日)17時~17時50分 「震災4年 福島と世界をつなぐ(2)」
MC:LiLiCo(映画コメンテーター)
進行:柴崎行雄(NHKアナウンサー)
ゲストコメンテーター:枝廣淳子(東京都市大学教授)
番組ウェブサイト:http://www.nhk.or.jp/agora/

この1週間、島根県隠岐の島の海士町にお邪魔していました。人口2400人ほどの海士町は、この10年ほど、身を削りつつ、各分野でイノベーションをカタチにし、400人を超えるIターンや200人を超えるUターンを惹きつけ、廃校寸前だった高校も、全国から島留学生が来るようになり、いまでは各学年2クラスに増えるなど、素晴らしい取り組みを切迫感をもって展開してきた町です。最近では「地方創生」のお手本のように、政治家や政府も繰り返し取り上げ、注目を集めています。

海士町での「先を見る力を鍛える」研修やまちづくりのプロセスのお手伝いをさせていただいて、町役場の職員や町の事業者など、いろいろな方々とお話しさせてもらい、すごく勉強になりました。

ひとつ痛感したのは、町役場の職員の方が「住民」というとき、人口数十万という都市の自治体が「住民」というのと違って、「あの集落のAさん、Bさん、、、」「こういう状況にあるCさん」「こういう事情のあるDさん」など、住民ひとり一人の顔が浮かんでいる、ということです。

大都市では「住民」といっても、それは抽象的な概念であることが多く、「住民目線」「住民のため」といっても、具体的な"お客さん"が実感できていない場合のほうが多いかもしれない。

それに対して、人口2400人の海士町では、「町の住民全員を知っている」ことから、「こうすれば、だれかわからないが、"住民"は喜ぶだろう」ということではなく、「こうすれば、Aさんにとって役に立つだろう。Bさんはどうだろうか」というアプローチになります。「現場主義」と言わなくても、もともとすべてが現場主義(以外ありえない)ということが、本当の強みだなあと思いました。

海士町が展開してきた素晴らしい取り組みや、その背後にある町長をはじめとする町役場の考え方など、いろいろ教えていただき、今後も定期的に関わらせていただくことになっているので、少しずつご紹介していけたらと思っています。

海士町は島根県にありますが、「地方創生」とひとくくりにされるさまざまな取り組みのトップランナーは、この島根県ではないかと思っています。島根県は、全国の中でも人口減少・高齢化の先進県であることから、早くからさまざまな研究を進めると共に、その問題意識をさまざまな取り組みに展開しています。

ロハス・ビジネス・アライアンス共同代表の大和田順子さんが、「食、農、福祉の小さな経済循環」として、島根県の小さな地区の取り組みをデジタル農業情報誌「Agrio」に書いていらっしゃいます。とっても素敵!と思って、転載をお願いしたところ、ご本人にも編集長にもご快諾をいただけたので、ご紹介します。

~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~

農と食のコラム「食、農、福祉の小さな経済循環」

ロハス・ビジネス・アライアンス共同代表 大和田順子 「食育をテーマに、地域経済の小さなエンジンが回っています」 昨年10月、三重県で開催された「第26回 全国過疎問題シンポジウム」で総務大臣表彰を受けた地域の一つ、島根県益田市真砂地区の報告者によって語られたものだ。同地区は2011年から、食育"をテーマに、「公民館と学校と地域商社との協働のトライアングルによる地域運営の仕組みづくり」に取り組んできた。

 同地区は益田市内から車で約30分の中山間地域で、面積29.72平方キロメートル、人口は180世帯397人(2014年9月末現在。)、高齢化率50.5%。子供の数は保育園(15人)、小学校(16人)、中学校(11人)である。

 食育活動は公民館長の大庭完さんが、岩井賢朗さん(地域商社である有限会社「真砂」の代表取締役)や小学校の先生と一緒に始めたものだ。「島根県醸成プログラム」を活用し、11~13年度の3年間、公民館活動として取り組んだ。安心安全な野菜作りや土作りでは専門家を招へいし、指導を受けた。地元の小中学校ではおコメや野菜作りや販売活動の体験も行った。

 そして、地元の真砂保育園をはじめ、市街地の吉田保育所(園児100人)と益田ひかり保育所(150人)におコメ、野菜などの食材を週に2回提供することになった。大きさや形は問わず、一定価格で購入してくれる。小さいエンジンではあるが、日々地域の経済が動く仕組みが確立された。

 さらに昨年からは「キヌヤ」という地元のスーパーにも真砂コーナーができた。このスーパーは農産物や加工品の2割を地元産にするという方針を打ち出し、地産地消を推進している。真砂の野菜はすぐに売り切れてしまう人気だ。その理由は真砂のブランド力にある。

 地域商社の真砂は、2003年に地域住民24人が出資して設立された会社である。主力商品は豆腐と味噌。また豆腐の加工品も多種類手がけ、年商は2000万円超、6人を雇用している。主力の豆腐は1丁170円(400グラム)と高めであるが、支持を得ている。これまで10年間の成果として「真砂+(まさごプラス)」の品質の良さが市内で認知と評価を獲得しているのだ。

 保育所やスーパーに野菜を提供しているのは50軒(主に15軒)の農家。シニアの女性が多く、無理せず、のんびりとやっているという。また、バスを利用して野菜を届けているが、農家のシニア女性も週1回、月4回このバスを利用して買い物に行くことができる。そして、市内の保育圏の子供たちは年に数回、真砂にやってくる。農業体験を通じた多世代交流。シニアは園児の笑顔を見るのが生きがい、やりがいになっているという。

 そして、真砂の食材を活用した和食の給食を採用した2011年以降、市内の保育園児の年間の病気欠席率は低下し、コメの消費量は増え、しかも食材のコストは1食当たり188円と抑えられた。

 小さな集落の小さなエンジンがゆっくりと回りながら、都市部と農村部の交流が生まれ、心も身体も健康になっていくという好循環がここにはある。

~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~

「Agrio」とはイタリア語の農業「Agricoltura」と活発、元気を意味する「brio」を組み合わせた造語です。

日本でも農業をめぐってはその立場により思いや意見は大きく異なり、長年さまざまな議論が戦わされてきました。バブル崩壊を経て、日本の経済・社会が成熟期に入り、都市住民の価値観、農業・農村に対する見方も徐々に変わりつつあります。 政府は2013年にコメ制度改革・農地集積対策を打ち出し、さらに農協改革に取り組んでいます。

Agrioは農林水産業の構造変革を見据えながら、地域や人々、企業をつなぎ、ささやかながら農村、そして社会全体を元気にするお手伝いができないかと考えています。(Agrioトライアル1号編集後記より)

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海士町の町政の経営指針は、『自立・挑戦・交流』です。

島根の各地をはじめ、全国のあちこちで「自立・挑戦」の動きが盛んになっています。そこにしか未来はないのではないか、と思っています(国の役割はできるだけその邪魔をしないこと)

そういった動きをあちこちから発信し、交流し、学び合い、刺激しあって、さらに進んでいくお手伝いを少しでもできたら、と思っています。

 

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