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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2014年12月29日

カーボンフリーコンサルティングが展開する海外での環境技術支援+人道支援の活動(2014.12.29)

大切なこと
 

イーズ未来共創フォーラムのパートナー企業として、また関連シンポジウムでの登壇機会を作って下さるなど、私たちの活動に力を貸して下さっているカーボンフリーコンサルティング株式会社。その活動について、代表取締役の中西武志さんがスタッフの取材に応じていろいろな話を聴かせてくれました。

「日本には優れた環境改善のための技術がある」とよく言いますが、「ある」だけでは実際の変化にはつながりません。優れた技術を「現場で活かす」とはどういうことかなど、いろいろ学ぶことが多いインタビューです。ぜひご一読を。

横浜の馬車道に本拠地を構えるカーボンフリーコンサルティングは、環境専門のコンサルティング企業です。カーボンオフセットの取り扱い(年間平均約200件という取扱件数は日本一だそうです)をはじめ、行政機関の政策制度設計、環境プロジェクト企画運営・海外環境事業開発などのコンサルティングをおこなっています。
http://carbonfree.co.jp/

今回は、海外での環境技術支援+人道支援の活動について、お話を伺いました。

~~~~~~~~~~~~ここから中西さんのお話~~~~~~~~~~~~~~~

途上国において、温暖化対策関連事業以外には主に4つの分野(廃棄物、上下水道、食糧、防災)で、環境技術の普及支援を実施しています。この中で今日は「廃棄物」と「食糧」についてお話しましょう。

「廃棄物」には、社会の末端というイメージがあるかと思いますが、むしろ環境の最前線の現場であると言えます。廃棄物の種類は、場所や地域によっても大きく異なりますが、大まかにはハード・ソフトプラスチック(10~20%)、生分解可能なゴミ(60%)、金属・その他(10~15%)、有害廃棄物(オイルスラッジ・薬・注射針など)(2%)といった比率になっています。

私たちは、こういったゴミを分別したあと、中間処理や最終処理をおこない、マテリアルの製造やエネルギーに換える技術を提供しています。

フィリピンでおこなっているのは、まさに「waste to energy」の実践です。廃棄物中間処理施設で、廃棄物燃料を製造しています。廃棄物燃料はセメント工場などのボイラー燃料として使用されます。

「廃棄物」としてそのまま活用されずに捨てられていたものから、マテリアルやエネルギーとして蘇らせる。3R(リデュース・リユース・リサイクル)のなかでも、リサイクルは設備がなければ実施できません。途上国の現場で、リサイクルが進まないのは、個人の意識の問題ではなく、単に廃棄物中間処理施設のハードとその運営技術が不足しているという理由が大きいのです。

ですから、この問題をクリアすれば、リサイクルしたエネルギーを用いて、地域でのエネルギー自給を実現し、同時に、安全で衛生的な職場の創出もできるという好循環が生まれます。

更に、現地との共存をはかるために、積極的に現地での採用を進めるとともに、今まで処理できなかったソフトプラスチック類などの買取を行うなどして、地域への裨益を生み出すことに重点を置いています。

また、ペルーとケニアで医療系廃棄物の適正処理の事業を推進しています。「医療系廃棄物の処理」に関して言うと、有害物による、土壌、大気、水資汚染が開発課題になっています。

廃棄物の中で、2~3%という有害物質の比率は小さいですが、量は少なくても適切な処理を行わなければ、二次感染や深刻な汚染を引き起こしてしまいます。そのため、無害化することによって、環境負荷を低減させるような日本の技術がとても重要で、大きな役割を担っていると感じています。

"環境屋"ですので、すべての物質をエネルギーと栄養素で考えてしまいます。旧称スモーキーマウンテンのようなゴミが野積みされている場所をみると、私には、エネルギーを生み出す宝の山に見えます。実施する準備で3年近くかかりましたが、こうして工場が稼働することにより環境貢献を行っていることを実感しています。

つづいて、「食料」についてですが、たとえば、ミャンマーやスマトラのアチェでは、現地で生産及び販売できるような体制を構築し、栄養価の高い食料を人びとに行き渡らせる事業を推進しています。

その中の一つが、「たまご」です。たまごの生産技術は日本は大変優れており、増産ができれば、比較的安価に提供できること、単体で栄養価が高いこと、鶏を育てられれば経済的自立もできること、などが理由です。スマトラ島の大震災の被災地において食と職を提供することは環境と人道支援の両立を図ることにつながると考えています。

日本の技術は、たまごに栄養価を追加したり、増産したりする上で特に役に立っています。5~6万羽入る鶏舎を5つ作れば、30万羽飼育できます。販売価格を廉価に抑えることができれば、30万人が毎日一個ずつ栄養価の高い卵を食べることができるのです。

そして、鶏舎を作ることによって生まれる雇用は、たまごの生産・流通・販売関連にとどまりません。鶏のえさには米や麦、魚粉などが多く使われているため、これらをつくる地元の農業・漁業の生産増加につながり、安定した収入につながります。

もうひとつ、2008年に国連世界食糧計画(WFP)と実施した共同プロジェクト(Food For CarbonFree Plan)の事例をご紹介しましょう。

場所はインドネシアの西ティモールです。ここは乾燥して雨も少ないため、土地がやせています。東ティモールの独立により、土地を追われた人々は政府機関からの援助でなんとか暮らしている状況でした。貧困からの脱却を図ること、土地の環境改善をすることを目的として、プロジェクトを考えました。

まず、現地政府に働きかけて、土地を無償で借りられるようにしました。提供される1世帯あたりの農地の広さは0.16ヘクタールで、働きに応じて更に土地を提供することを可能としました。0.16ヘクタールの土地はカシューの木は30本とその周りにジャトロファという樹木を200本を植林できる大きさです。

植林して2年半ほどすると、カシューの木はカシューナッツの実をつけます。カシューナッツは高値で売れますから、収穫して販売することで、経済的自立が可能になり、こどもを学校に通わせることもできるようになります。

カシューは水をあまり必要としないので、降水量の少ないこの地域でも栽培できること、CO2の吸収量が多いこともメリットです。育つまでは、米の提供を行うとともに、単年で育つ農作物を木の間に植えて、その収入を村人は得ています。

カシュー農地周辺には、ジャトロファという樹木を植林しました。ジャトロファの実の種を乾燥させると、バイオ燃料になります。これまでは重労働である薪を拾ってきて使っていましたが、ジャトロファの種を家庭用の調理用コンロの燃料にすることで、CO2の削減にも貢献できます。

カーボンフリーコンサルティングは、このCO2削減量を「環境貢献の権利」として販売し、多くの企業に活用いただくという実績につながっています。このようなしくみによって、340家族の1700人を対象に、20年以上生活をサポートする人道支援+環境改善という新しい貢献の方法をつくることができました。

この成功事例をもとに、同様のシナリオで、モザンビークでも実施することになりました。二つの「しょく」=「食」と「職」を解決するための活動に、日本の技術が大きな貢献をしているのです。

~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~

中西さんは、かつて外資系の金融機関で働いていたそうです。そのころ、欧米で排出量取引が始まっているという情報や、「環境悪化によって、難民が2500万人(2006年当時)から翌年には5000万人になる」といった情報が耳に入っていました。

その頃、国境なき医師団で、人道支援の手伝いをされているうちに、「根本原因である環境問題を解決しなければ、人道支援に終わりは来ない」と考え、現在の会社を立ち上げられたそうです。

「環境問題も、日本だけを変えたとしても限界がある。急激な環境悪化を食い止めるためには、ダイナミックに構造を変えるしくみが必要。それには技術大国である日本の環境技術を途上国や新興国で使うこと、それによって、その土地の人々の自立にも大きく貢献できるのではないか」と考え、これまで活動されてきました。

カーボンフリーコンサルティングは、5~6年前から専門の技術企業とパートナー提携したことで、試行錯誤する範囲も拡がり、現場で環境問題への取り組みを効果的かつ加速度的に進められるようになってきたとのこと。

「現在の課題は?」とお聞きしたところ、こうしたたくさんのプロジェクトを進めるうえでの「つなぎ役」が不足していることだという答えでした。

プロジェクトの資金繰りについては各国の援助もあり、高い関心をもつ投資家も増えているので、あまり心配はしていないが、現地パートナーや政府間のタフな交渉に耐えられる人材が不足しており、今後人を育てることが急務だといいます。

最後に、「私たち市民にできることは何でしょうか?」と聞いてみました。

「個別活動では残念ながら、限界があります。それならば、企業を動かすための活動をひとり一人がおこなうこと。環境技術が進んだ製品を選び、その意見を収斂して伝えることで、企業や業界団体は市民の声を聞くようになり変わります。環境問題については、"Think Globally, Act Globally"でダイナミックに考え、行動することが重要だと考えています」と語ってくれました。

優れた環境技術を創り出す人々がいてくれるのと同じく、優れた環境技術が実際に変化を創り出すために活用されるよう、新しい枠組みやしくみを考え、試行錯誤も含めて、実行に移していく人々がいてくれることのありがたさを強く感じます。"Think Globally, Act Locally"ももちろん大事なことですが、"ThinkGlobally, Act Globally"も大事にしたい言葉だと、改めて考えさせられました。

 

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