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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2014年03月17日

アルミ缶とインドネシア~知ること。思いを馳せること。考えること。行動すること (2014.03.17)

大切なこと
 

幸せ経済社会研究会の次回の定例勉強会の課題図書として、鶴見済さんのお書きになった『脱資本主義宣言―グローバル経済が蝕む暮らし』を読んでいます。

『脱資本主義宣言」グローバル経済が蝕む暮らし』著者:鶴見 済(新潮社)

ぜひ知っていただきたい事実や数字がいっぱい出てくる本で、とても勉強になります。「第2章 経済に仕える国・日本」から、少しだけ引用したいと思います。

~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~

「アルミ缶とインドネシア」

日本に住む我々は、一年間に約186億本のアルミ缶を消費している。一人あたり5日に約2本を使い捨てている勘定になる。これは世界でもアメリカに次いで多い数字で、しかもこのなかにはさらに消費量の多い、コーヒーなどに使われるスチール缶は含まれていない。

それなのに日本では、アルミニウムの元となる鉱石であるボーキサイトはまったく産出しない。......日本は世界最大級のアルミ輸入国だ。......

インドネシアに作らせて輸入

アルミニウムという、あの白みがかった銀色の軽い金属は、鉄や銅のように何千年も前から人類が使ってきたものではない。19世紀になって初めて"発見"された新しい金属だが、今では鉄とともに二大金属と見なされるようになった。

その精製過程で莫大な電気を消費するため、「電気の缶詰」と呼ばれ、代表的なエネルギー浪費型の資源とされている。人類が使っている電力の3パーセントはアルミの精製に使われている、とさえ言われるほどだ。

日本でまずアルミの需要に火をつけたのが、木の窓枠に代わる60年代後半の「アルミサッシ」の大ブームだった。これによってまずは建築材料としての用途が広まり、続いて電車、自動車などの車体にも使われるようになった。

そしてアルミを我々にとって最も身近なものにしたのが、71年に登場した「アルミ缶」だった。この年にアサヒビールはオールァルミ製の缶入りビールを発売し、以後アルミ缶は主に炭酸飲料の容器として、アルミの需要と同じく、うなぎのぼりに増え続けた。今ではこうした容器包装へのアルミの利用は、輸送用、建築用に次いで第3位であり、国内総需要の約1割を占めている。

しかし73年のオイルショックによって電気代が値上がりした結果、国内でアルミを精製していては採算が合わなくなった。そこでこの国の産業界が考えたのが、工場を海外に移し、現地の水力発電による安い電気を使ってアルミを精製し、それを輸入するというやり方だった。原発事故を契機に電気料金の値上げが取りざたされ、鉄鋼業のコストが上がるため、海外に出て行かざるを得ないと騒がれているが、それとまったく同じことがすでにこの頃から起きていたのだ。

こうした、輸入国が資源開発に投資してその資源を輸入するやり方を、単純な輸入と区別して「開発輸入」と呼ぶ。今でも日本はアジア諸国に対して、地下資源だけでなく農作物や服なども含め、さかんに「開発輸入」を行っている。ただし「開発」と言うと聞こえはいいが、実態は経済的な侵略に近い。

さて、日本はインドネシアとの共同事業としてスマトラ島のアサハン川に巨大なダムと水力発電所、アルミ精製工場を、75年から84年にかけて、4千億円以上をかけて建設した。その費用のほとんどは日本側が貸し付け、工事も日本の建設会社が請け負った。発電した電気もほとんどがアルミの精製に使われた。

さらにここへは、地元で採れるものより質のいいオーストラリア産のアルミナが運び込まれ、精製されたアルミはすべて日本に輸出されることになった。インドネシアが請け負うのは電力と工場労働と、日本への借金である。アルミの輸出で稼いだカネも、その借金の返済に使われるのだ。日本国内で公害問題を巻き起こしていた精製過程で出るフシ化水素という有毒ガスも、当然インドネシアに押しつけられた。それなのに、現地の生活にはアルミ缶やアルミサッシはもちろん、自分たちで発電した電気すら行き渡っていないのだ。

これが日本による世界最大級の政府開発援助(ODA)と言われる「アサハン・プロジェクト」であり、今ではインドネシアの副大統領から「まったくの損害だった」と非難されながらも、日本では成功例として賞賛されている。やっかいなものを海外に押しつけたうえ、利息まで取れるのだから、確かに大成功なのかもしれないが、どう見てもこれは"援助"ではない。

さらに日本はブラジルのアマゾン川流域にもまったく同じ"援助"として、発電用のダムと、日本などへ輸出するアルミの精製工場を作った。こうして9千億円をかけてできたのが、東京23区がスッポリと入ってしまう世界最大級のトゥクルイ・ダムだ。このダム建設では、立ち退きを強いられた6千世帯の先住民が難民化を余儀なくされ、抗議行動を行い話題になった。

「資源がない」からこそ「もったいない」 我々が5日に2本使い捨てているアルミ缶には、こんなコストがかかっていた。こうしたコストを海外に押しつけて、我々は高々ほんの数分でアルミ缶を使い捨てる。コストは価格にも反映されず、「アルミはリサイクルの優等生」などという業界団体の宣伝文句が、さらにそれを覆い隠してしまう。 (後略)

~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~

知ること。思いを馳せること。

世界の複雑に絡み合った大きな問題を感じるとき、無力感を感じることもあるかもしれませんが、無力感を感じて行動も思考もストップしてしまったら、何の助けにもならないどころか、考えずに問題に荷担することを続けてしまうかもしれません。

知ること。思いを馳せること。考えること。

さまざまな問題の構造と自分とのつながりを考えること。すべてを解き明かす必要はなく、それは不可能ですが、わかったところから、「じゃ、何をしたら良いか?」と考えること。

知ること。思いを馳せること。考えること。行動すること。

そして、できることをできる範囲でよいので、行動すること。

私には私にできることをできる範囲ですることしかできないれど、できるだけのことをやっていきたい。世界や問題状況を、一瞬のうちに、ひとつの出来事で変えることは不可能だけど、長期的に創り出したい世界や社会から目を離さずに、あきらめずにこつこつと足元でできることを続けていくこと、そして、少しでも広がりを創っていくこと。

そんな問題意識で、幸せ研の勉強会をやっています。次回も楽しみです。よかったら一緒にどうぞ!
http://ishes.org/member/index.html

 

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