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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2014年01月09日

ソウル市長「経済成長の終わりに向けて何を準備したらいいのか」 (2014.01.09)

新しいあり方へ
 

[No. 2287] で案内・呼びかけをさせていただいた、新しいエネルギー基本計画についてのパブリックコメント、1月6日に締め切りとなりました。

資源エネ庁によれば、約1万9000件の意見が寄せられたそうです。内容については「現在集約中」とのことです。

国際環境NGO FoE Japanなどは、(1)エネルギー基本計画に、昨年夏の国民的議論の結果を反映し、「原発ゼロ」を明記してください、(2)各地で公聴会を開催してください、(3)パブリック・コメントをきちんと審議してください、という要望を6,900を超える署名と共に大臣に提出したそうです。

「国民にも聞きました」というアリバイではなく、本当に「聞く」ことを求め、そのプロセスと結果をきちんと示してほしいと思います。

さて、
11月に収録されたNHK Eテレの「東北発☆未来塾」~エネルギーのチカラ、今日の夜から放映となります。私が講師役を務め、学生さんたちと福島や長野などの現場を見学しながら、議論を深めていくようすを4回シリーズの番組になりました。福島の現場や、しくみづくりに取り組む方々、学生たちの疑問や考えなど、よろしければぜひ見ていただき、フィードバックをいただけたらうれしいです。

【NHK Eテレ】「東北発☆未来塾」~エネルギーのチカラ
講師役:枝廣淳子
1月9日(木)午後11時~11時20分 第1週「コンセントの先にあるものって何?」
1月16日(木)午後11時~11時20分 第2週「みんなで学ぼう!エネルギーのメリット・デメリット」
1月23日(木)午後11時~11時20分 第3週「日本列島は宝の山」
1月30日(木)午後11時~11時20分 第4週「2030年 エネルギー未来予想図」

放送:毎週土曜 午前11時20分~11時40分

☆番組のウェブサイトをはこちらです 
http://www.nhk.or.jp/ashita/miraijuku/yotei

ここからが、今日のメインの内容です。
ポストカーボン研究所という団体のサイトには、興味深い記事がいっぱいあるのですが、その中から1つ、快諾を得て、ご紹介します。

ソウル市長は「ソウル市や市長は経済成長の終わりに向けて何を準備したらいいのか」を考えていらっしゃる!とのこと。一歩先を進んでいますね。

~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~

ソウルがシェアリング・エコノミー(共有型経済)のリーダーだって知ってた?
http://www.postcarbon.org/blog-post/1949822-who-knew-that-seoul-was-a#

韓国のソウルが、ポスト成長経済を発達させる、世界でも重要な場所のひとつだということをご存知だろうか? 私自身も実際この目で見るまでは知らなかったことだ。

嬉しいことに、私は2013年11月7~8日にかけてソウルユースハブ(SeoulYouth Hub)が主催した「暮らし方を新たにする」という会議で基調演説を頼まれた。

ソウルユースハブはソウル市政のプロジェクトでその使命は2つある。1つ目は問題の共有・解決の場、シェアリング・エコノミーの試行の場を提供することによって、若者が「未来の社会をデザイン」できるようにすること。

2つ目は、若者が「労働、住宅、生活のセーフティーネット、事業の創造、若者政策などの多様なテーマに関して具体的な政策を話し合える」ようにすることだ。私はソウルでのその会議がどのようなものになるかまるで見当がつかなかったが、驚いたことに、最近の記憶の中でも最も楽しく、目を見張るような出来事となったのだ。

韓国は輸出を中心とした工業経済で、ここ数十年急速に発展してきた。しかし成長率は低下しはじめ、現在若者の失業率は22%を越えている。さらにパク・クネ大統領をめぐって不正選挙の議論が巻き起こるなど政治も懸念すべき方向に転じている。一方、エネルギー情勢も最悪だ。石油、天然ガス、石炭は基本的にすべて輸入している。水力もあるが、拡大の余地はほとんどなく、国内に23カ所ある原発は2011年の福島第一原発事故以来、議論が激化している。

ソウルユースハブの会議主催者たちはインターネットで『仮邦題:成長の終焉』(The end of growth)の著者である私を知り、会議での講演を依頼してきた。彼らは危機をチャンスだと捉えているのだ。

私はそれまで韓国には行ったことがなかったが、韓国人について友好的で寛大だという評判は聞いていた。行ってみるとそれは本当だった。泊めてもらったハノク(韓国の伝統家屋)の宿泊施設はイスやテレビがなく、美しい敷物が暖められた床に敷いてあるだけの、隅々まで手入れの行き届いた小さな館だった。滞在中の食事はほとんどが伝統的なもので、美しく作り上げられたつつましいベジタリアン料理といった仏教寺院の食事なども提供された。丁重にもてなされ、素晴らしいときを過ごしたのだ。

会議は最初の基調講演と締めくくり以外、8つの共同グループによるワークショップだった。どれも社会革新に取り組む若者主導のグループで、香港や日本からも参加していた。テーマはチーズ作りから民主的な意思決定の革新までさまざまで、若者たちにとっては経済減少に適応可能な対応を探すための多元的な研究の場になった。

驚くことに、会議への参加は無料である。パク・ウォンスン市長のおかげで市が費用を受け持ってくれるからだ。

一日目の夜、私は市役所でパク市長と会った。会議室のテーブルには『成長の終焉』が置かれていた。市長は明らかにその本を読んだ様子で、ソウル市や市長が経済成長の終わりに向けて何を準備したらいいのかと私に意見を求めてきた。

それには驚いたが、私は次々に意見を述べていった。農家の直売所や地域の菜園、地元食料システムの主要品を支援すること、自転車や公共交通機関を奨励して自動車利用を抑制すること、エネルギー建築基準法をパッシブハウス並みに引き上げること、文化イベントを増やして市民の幸福度を高めることなどだ。

私が話し終わると市長は、そのほとんどはすでに始めていると言い、他に何かないかとせき立てた。私が、ソウルにトランジションの活動を取り入れる道を探るのはどうかと提案すると、市長はそうすることを約束した。

その夜、私はウィキペディアでパク市長について調べた。2011年に市長になる前は人権・社会正義活動家として30年間活動し、そのせいで4ヶ月間の刑務所生活も送っていた。最近は「Beautiful Stores」という非営利のお店をチェーン展開している。そこでは中古品を寄付してもらい必要があれば修理して、社会事業運動の募金集めのためにそれらを売っている。こうしたお店は現在、韓国中に100軒以上ある。

パク氏が人口1,000万人を上回るこの世界最大の特別市のリーダーに選ばれたとは信じがたい。私はさまざまな場所で有望なポスト成長の取り組み――大抵は市民主導で適度な規模――を数多く見てきたが、これほど巨大な市の市政レベルでこれほど明確なビジョンをもった理知的なリーダーシップは見たことがない。

韓国はエネルギー、経済、環境などの数々の難問を抱え、その未来は厳しいものであるが、パク市長やソウルユースハブによる取り組みがうまくいけば、状況ははるかに良くなるのではないか。

~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~

まえに、「減少する人口と向き合う、富山市の挑戦」として、富山市長の森氏へのインタビューをご紹介しました。
http://ishes.org/interview/itv07_01.html

この記事へのアクセスがとても多いことからも、多くの人々が「縮小経済・社会」「経済成長の向こうにある世界」への関心や興味を持っていることを感じます。

講演でこういう話をすると、数年前までは、特に企業向けの講演では「ぴんとこない」「ありえない」という反応が寄せられましたが、近年は「そう思う。しかし、一方で、現在の体制の中で戦わなくてはならない。どうやって移行ができるのだろうか」という相談をいただくことも増えてきました。

時代は確実に変わりつつあるなあ、と思っています。

 

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