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2013年06月27日

アースポリシー研究所「氷はどこへ行った?」 (2013.06.27)

温暖化
 
レスター・ブラウン氏のアースポリシー研究所からのリリースを、実践和訳チームが訳してくれましたので、お届けします。 北極海の氷の状況について、日々の情報をJAXAのウェブサイトで見ることができます。 最新海氷面積 http://www.ijis.iarc.uaf.edu/jp/seaice/extent.htm JAXA北極圏海氷モニター http://www.ijis.iarc.uaf.edu/cgi-bin/seaice-monitor.cgi?lang=j 昨年、北極の海氷面積は史上最小を記録しました。今年は......どのように変化していくのでしょうか。 ~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 氷はどこへ行った? エミリー・E・アダムズ http://www.earth-policy.org/indicators/C50 アースポリシー研究所が追跡しているエコ・エコノミー指標は、持続可能な経済構築の進捗状況を評価する12の指標である。このうち氷融解は気候変動が目に見えて最も分かりやすい指標である。 地球の気温が上がるにつれて、氷河や氷床が融け海面が上昇している。前世紀を通して海面は全世界平均で17センチメートル上昇した。海水温度が高く氷の融解が続いており、今世紀中に、海面は2メートル近く上昇し、ニューヨーク、ロンドン、カイロなどの世界中の沿岸都市が水没すると予測されている。海氷や氷床、山岳氷河の融解は、気候が変動していることの明らかな兆候である。 (地図タイトル)氷はどこへ行った 北極--2012年、過去1,400年以上で例を見ないほど北極海の海氷面積が急激に減少した。2030年には、夏の北極には氷がなくなっているかもしれない。 欧州--アルプス山脈の氷河の90%は2100年には消失し、水供給、水力発電、観光業に損害を与える可能性がある。 アジア--何億もの人々の貴重な水源であるヒマラヤ山脈の氷河が縮小している。 アフリカ--氷河が急速に縮小している。例えばケニア山の氷は10パーセントも残っていない。 南極--棚氷の崩壊により氷河が海に押し出される動きが加速している。南極大陸全体で年間810億トンの氷を消失している。 南米--アンデス山脈の熱帯氷河では、氷の消失速度が30年間で3倍以上となり、これは過去300年間で例を見ない速さである。 米国モンタナ州--グレイシャー国立公園の氷河は20年以内に消滅する恐れがある。 米国アラスカ州--州内にある氷河の98パーセントは薄化または後退している。 グリーンランド--氷床の氷消失は、1990年代には年間510億トンであったが、今では年間2,630億トンに増えている。 (地図左下)(写真提供 米航空宇宙局(NASA)地球観測衛星) 2012年9月、北極海の海氷は縮小が進み、面積および体積が過去最低となった。この地域の気温は1960年代から摂氏2度(華氏3.6度)--低緯度地域の2倍--上昇している。太陽光線を反射する積雪と氷が減り、海洋がより一層太陽にさらされて熱を吸収し、気温がさらに上昇するという悪循環に陥っている。 海氷の薄化に気温上昇が重なると、氷の回復はますます困難になる。有史以前から地球がずっと頭にかぶっていた白い帽子は、20年もしないうちに夏の間はすっかり消えてしまうのかもしれない。 北極は広域気象パターン形成の軸となる役割を担っている。北極の冷気と温帯地域の暖気との間には著しい温度差があり、これがジェット気流を北米や欧州、ロシアに運ぶ。 北極の温暖化が地球上の他の地域より速く進むという状態が続いているため、この温度差が縮まっている。このためジェット気流の進路が変わり速度が低下するので、気象状況が同一場所により長く停滞する可能性がある。同一場所での連日の雨が洪水を引き起こしたり、連日の晴天が干ばつに変わったりすることもあり得る。 北極の気温上昇は、グリーンランドの巨大な氷床に与える影響を考えると特に重要である。グリーンランドの氷消失のスピードは、1990年代の年間510億トンから現在の年間2,630億トンへと加速している。2012年7月、グリーンランド北西部にあるピーターマン氷河からマンハッタン島の2倍の大きさの氷山が分離した。2010年8月には、この2倍規模の氷山が分離しており、それからわずか2年の間に2番目に大きい氷山が分離したことになる。 グリーンランドの氷消失も衝撃的だが、地球の反対側で南極の巨大氷床の一部がこれよりさらに不安定な状態にあると考えられる。南極大陸は54の大氷棚が側面に位置していて、大陸上の氷河が海にせり出す動きを減速するブレーキの役目を果たしている。 ところが、そのうち20カ所の氷棚が薄くなり脆弱化する兆候を見せている。つまり、氷消失が加速しているのだ。例えば2002年に3,250平方キロメートルのラーセンB棚氷が崩壊したあと、しっかりと支えられていた氷河がそれ以前より8倍の速さで流れるようになった。最も大規模な薄化は西南極大陸で起きている。 アムンゼン海に流れ込んでいるパイン島氷河は、西南極大陸氷床の主な流出口の一つである。現在、この氷河の氷棚に29キロメートルの亀裂が走り、マンハッタン島の14倍の大きさの氷山が分離する恐れがある。暖かい深層海水がその下に入り込み、氷河の後退が驚くような速さで進んでいるためだ。氷河の底部で海と接する接触面は1万年前からわずか90キロメートル後退したに過ぎないのに、この20年間ではすでに25キロメートルも接触面が後退している。 陸地の氷が海に押し出されると海面が上昇する。西南極氷床とグリーンランドの氷床を合わせると、完全に崩壊してしまえば、海面を12メートル上昇させるに足るだけの氷がある。たった1メートル海面が上昇するだけで--今世紀中に上昇すると予測されている数字よりかなり抑えたものであるが--米の2大生産国であるバングラデシュの水田の半分とベトナムのメコンデルタの大半が水没するだろう。 山岳氷河も海面上昇の原因となるが、数百万の人々の日常生活に関わるだけにさらに差し迫った懸念となっている。山岳氷河は都市や村落に飲料水を、農場に灌漑用水を、水力発電に動力を提供する。世界各地で山岳氷河の縮小するスピードが増しているため、これらの重要な機能が危機に瀕している。 例えば、世界氷河監視サービスが調査した37の基準氷河は1980年から1989年までよりも2000年から2009年までのほうが3倍も早く縮小した。(データ参照) http://www.earth-policy.org/datacenter/xls/indicator9_2013_all.xlsx ヒマラヤ山脈の氷河は、北極と南極を除く最大の氷の塊であり、その大量の貯水能力からアジアの「給水塔」と呼ばれている。そこからの流水がインダス川、ガンジス川、ブラマプトラ川など、何億人もの生活を支えるアジアの大河に流れ込んでいる。 比類なき高さの山頂に魅せられた登山家たちは氷が融けている様子を自分の体験談として語っている。最初の探検家が登った頃、まばゆいばかりの白い氷と雪原だった多くの場所に、今はむき出しの岩が見える。雪崩の回数と氷河のクレバスの数が増え、危険な登山がさらに危険になった、というのだ。 ヒマラヤ山系の東側と中央部で氷河の溶解が早まっていることは、中国科学院が収集したデータも示しており、こうした話の正しさを裏付けている。気温が上昇するのでこの現象は続くだろう。 アルプス山脈の氷河は同様の給水塔の機能をヨーロッパで果たしているが、それもまた、縮小しつつある。スイスのアレッチ氷河は、アルプス山脈で最大の氷河であるが、1990年以来、2キロメートル以上も後退している。 ドイツでは、ツークシュピッツェ氷河の急速な縮小を心配した地元のスキー会社が、9,000平方キロメートルの熱反射シートで氷を覆うという対策を講じた。しかし、これは応急措置に過ぎない。気温上昇という真の問題に取り組まなくては、2100年までにはアルプス山脈の全氷河のうち90%が消滅することもあり得るだろう。アルプスの近隣にあるピレネー山脈のスペイン側では既にこの劇的な消滅が見られ、山脈を覆う氷河の90%近くが前世紀の間に消滅してしまった。 米国では、アラスカ氷河のほぼ全部が後退しているか薄くなっている。例えば、1966年から毎年アラスカのガルカナ氷河で収集されたデータでは、1990年代初頭から氷河縮小の速度が増していることが分かる。モンタナ州のグレーシャー(氷河)国立公園は20年以内に「氷河」とは名ばかりのものになるだろう。公園内にもともとあった150を数える氷河のうち、残存するのはたった25である。 世界の熱帯氷河は南米のアンデス山脈に残されているものがほぼすべてである。気温上昇により、これらの氷河からの氷消失の速さは1970年代半ばと比べると3倍以上になっている。 ペルーでは、200万人以上の人々がブランカ山群(白い山群)を水源とする河川に頼って生活している。山脈の氷河が縮小し始めたので、水の流出は一時的に増えた。しかし、カナダのマギル大学の氷河学者、ミシェル・バラー氏は、水の流出は既にピークに達しており、今は減少傾向にあるとみている。 ボリビアの有名なチャカルタヤ氷河は、かつて人気のあるスキー場だったが今は古い地図にしか載っていない。ゾンゴ氷河からの流水は現在ボリビアの電力の約25%を生産している水力発電所10基を通って流れている。しかし、ゾンゴの氷も年間9メートルずつ後退している。水の供給が減ると、水力発電所、農業従事者、都市の間で水の争奪戦が激化するだろう。 熱帯太平洋に残存する最後の氷河は、インドネシアのプンチャック・ジャヤ山にあるが、これもまた急速に融けつつある。1936年から2006年までの間に、この山は氷冠の80%近くを失った。世界的に著名な氷河学者、ロニー・トンプソン氏の最近の調査旅行は、氷が消滅する前に、氷と氷の中に残る歴史的な気候データを採取するためのものだったが、調査中、たった13日間の大雨で、キャンプ場所周辺の氷は30センチメートル薄くなった。 アフリカの熱帯氷河も薄くなっている。ケニア山山頂に残っている氷冠はもともとあった量の10%以下である。2009年、ケニア山から水力発電所に流れる水量が減ったために、ナイロビでは計画停電が実施された。問題は実用面だけにとどまらない。というのも、氷河は長年に渡り文化面や精神面において重要な意味を担ってきたからだ。隣国ウガンダのルウェンゾリ山脈は20年以内に氷がなくなってしまう可能性もある。 予想より融けるのが速い氷の消滅が先か、思うほど進まない炭素の排出削減が先か、両者の間でスピード競争が始まっている。暴走する地球温暖化と氷の溶解に歯止めをかけようと思うなら、気候変動を起こす化石燃料から再生可能なエネルギー源に移行するための第二次世界大戦規模の動員を世界中で行う必要がある。 # # # 地球の気候を安定させる計画は『今こそプランBを』を参照して下さい。 データや更に詳しい情報はwww.earth-policy.org. を参照。 この情報の友人、家族、同僚への転送はご自由にどうぞ。 メディア関連の問い合わせ:リア・ジャニス・カウフマン (202) 496-9290 内線12 rjk@earthpolicy.org  研究関連の問い合わせ:エミリー・E・アダムズ (202) 496-9290 内線 16 eadams@earthpolicy.org  アースポリシー研究所 1350 Connecticut Avenue NW, Suite 403, Washington, DC 20036 (翻訳:山口、小沢) ~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~~ レスター・ブラウン氏やアースポリシー研究所のこれまでのリリースなどの翻訳アーカイブはこちらにあります。 http://www.es-inc.jp/library/lester/index.html ここには、いつもボランティアで翻訳を担当してくれているチームメンバーの紹介もあります。本当にいつもありがとうございます!
 

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