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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2013年06月03日

アースポリシー研究所「記録的だった2012年の風力発電、2013年世界はいよいよ30万メガワットの時代に」 (2013.06.03)

エネルギー危機
新しいあり方へ
 
昨日風力発電の話をお伝えしましたが、ちょうどレスター・ブラウン氏のアースポリシー研究所からも風力発電についてのリリースの和訳が届いているので、お届けします。実践和訳チームのメンバーが訳してくれました! 中国といえば石炭火力のイメージが強いですが、風力大国でもあること、ご存じでしたか?  「中国は全世界の1/4以上にあたる7万5,000メガワットの発電容量を持ち、世界の風力発電をリードしている」「風力発電の増加量が初めて石炭火力発電のそれを上回った」「この1年間の発電量は風力発電の方が原子力発電より多かった」そうです。 さらに、中国の洋上風力発電は、日本の25メガワットに対して390メガワットと「世界第3位の洋上風力発電大国」です。中国の洋上風力発電容量の短期目標は「2015年までに5,000メガワット、2020年までに3万メガワット」とすばらしく大きな目標を設定しています。 文中のグラフ等はこちらをご覧下さい。 http://www.earth-policy.org/indicators/C49/wind_power_2013 では世界の風力発電状況をどうぞ! ~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 記録的だった2012年の風力発電、2013年世界はいよいよ30万メガワットの時代に J・マシュー・ローニー エコ・エコノミー指標とは、アースポリシー研究所が持続可能な経済の構築状況を測定するために追跡している12の指標のことである。風力が新エネルギー経済の基盤になろうとしていることから、指標の一つに風力発電容量を取り上げている。 主要な風力発電市場には政策的な不確実性がある中、それでも風力発電開発業者の努力により、2012年の新規設置容量は4万4,000メガワットという新記録となった。 総風力発電容量は28万メガワットを超え、80カ国以上のウインドファームが二酸化炭素の出ない電力を作っている。そのうち24カ国には少なくとも1,000メガワットの発電容量がある。人々が欧州並みに電力を消費すると仮定すると、現在世界各地で稼動中の風力タービンによって、4億5,000万人分の家庭用電気を賄うことが可能である。 【グラフ】世界の累積風力発電設置容量 1980年~2012年 世界風力エネルギー協会(GWEC)の報告によると、中国は2012年に約1万3,000メガワットの風力発電を設置した。年間の新規設置容量が平均1万8,000メガワットであった過去2年間と比べると、明らかに勢いは落ちている。 減少したのは、計画がお粗末なことや、送電線や送電網のインフラが十分でないことなどの懸念から、政府が認可件数を絞り、融資も厳しくしたためだ。それでも、全体では、中国は全世界の1/4以上にあたる7万5,000メガワットの発電容量を持ち、世界の風力発電をリードしている。 発電というと石炭火力発電や野心的な原子力発電のことがすぐ頭に浮ぶ中国で、風力が2012年にエネルギー構成上きわめて注目すべき局面を迎えた。風力発電が増加量で初めて石炭火力発電を上回ったのだ。さらに、それ以上に目を引くのが、この1年間の発電量は風力発電の方が原子力発電より多かった点だ。 しかも、これはまだ始まりに過ぎない。中国にはこの先、中国の北部及び東部の省一帯で開発の進む大型の風力発電計画や、風力に恵まれた農村地域と人口の多い都市を結ぶ19件の超超高圧送電計画(2014年までにすべてが完成予定)など、画期的な事業が目白押しである。コンサルティング会社のGTMリサーチとAzureインターナショナルは、中国の風力発電容量は2015年には14万メガワット、2020年には25万メガワット近くに達する、と予測している。 米国の風力発電業界にも大きなニュースがあった。風力発電の新規設置容量が、2012年には天然ガスなどほかの資源を利用したものを上回り、1万3,100メガワットという記録的なものとなった。 また12月には、連邦政府の生産税控除の年内期限切れを前に開発業者が控除を受けようと駆け込んだため、この月だけで5,200メガワットという信じ難いほどの電力が59のウインドファームから送電された。米国全体では、1,400万戸以上の需要を優に賄える6万メガワットの風力発電容量があり、これは中国に次いで2番目に多い。 米国には風力発電の設置容量がほかの大部分の国よりも多い州がいくつか存在する。例えば発電量が1万2,200メガワットのテキサス州と5,500メガワットのカリフォルニア州は、共に世界の6位と11位に入る。 テキサス州ではさらに全体では2万1,000メガワットに達する複数の風力発電計画が検討されており、その多くに、「競争的再生可能エネルギー地域」で進められている高圧送電プロジェクト(2013年完成予定)の資金が充てられる可能性がある。これらの新しい送電線によって、風量の豊かなテキサス西部とテキサスのパンハンドルと呼ばれる最北部が、電力需要の多い東部の市場とつながることになるだろう。(データ参照) 生産される電力の10%以上をウインドファームから得ている州は、2012年にはその数が前年の5州から9州に増えた。アイオワ州やサウスダコタ州は全電力のほぼ1/4を風力に依存している。2012年に稼動を開始したオレゴン州のシェパード・フラット・ウインドファームは845メガワットの発電容量を持ち、北米最大の風力発電所だ。しかしワイオミング州のカーボン郡では、最大発電容量3,000メガワットの発電所建設計画が進行中である。 北に目を転じよう。カナダにはほぼ200万世帯の電力需要を優に賄える6,500メガワットの風力発電容量がある。この国では人口の最も多いオンタリオ州が、2014年を目途に石炭火力発電の廃止を段階的に進めており、それを受けて風力発電の成長が止まらない。実際、オンタリオ州の電線には2012年に初めて石炭によるよりも風力によって生まれた電気が多く流れている。 欧州連合(EU)では、財政引き締め政策によって再生可能エネルギーに対する奨励措置が削減されたにもかかわらず、2012年の新規追加電力は、天然ガスや石炭、原子力よりも風力によるものが多かった。 EU加盟諸国の中には、風力発電の割合の高さで、世界のトップを走る国がいくつかある。スペインやポルトガルでは風力の割合は通常16%。3万メガワットの風力発電容量を持つ世界3位のドイツは11%だ。同国北部の4つの州は今では電力のほぼ半分を風力から得ている。 しかし、発電における風力の役割に高い目標を設定しているのはデンマークだ。デンマーク風力産業協会の報告によると、デンマークでは風力発電が全電力に占める割合は2011年が28%で、2012年はそれより多い30%だった。2011年末に同国政府は風力発電の割合を2020年までに50%まで引き上げると約束している。 東に目を向けると、ルーマニアとポーランドがそれぞれ、2012年におよそ900メガワットの風力発電を新規導入し、総容量はそれぞれ2,500メガワット、1,900メガワットとなった。トルコは、向こう10年間で風力発電量2万メガワット達成を目指しているが、これは今の発電容量の約10倍である。 アジアで中国以外の巨大風力市場といえば、インドである。同国は1万8,000メガワットを超える発電容量を設置しており、風力発電容量は世界第5位である。同国政府は、「グリーンエネルギー回廊」計画を通じ、2017年までに配電網や送電線の高性能化におよそ80億ドル(約7,520億円)投じる予定だ。これは、3億人近くの人々がまだ電気を使えない状況にある国にとっては切実に必要なことである。 中南米、アフリカ、中東および大洋州には風力の潜在力がとてつもなくあるのだが、実質的な開発は今のところあまり行われていない。しかし、これら各地域での動きを見ると、風力利用に対する真剣な姿勢が感じられる。 中南米では、メキシコが2012年に風力発電容量をそれまでの2倍以上となるおよそ1,400メガワットへと増やした。2012年に風力発電容量が75%拡大したブラジルでは、2013年にさらに1,500メガワット追加され、合計4,000メガワットに到達する可能性がある。 2012年にアフリカ全土で設置された風力発電量はたったの100メガワットで、それはエチオピアとチュニジアの2国で分けられるものだ。ケニアでは、発電容量310メガワットとされるトゥルカナ湖発電所の完成が長く待ち望まれている。完成すれば国内電力量10%以上の発電が可能とされる同発電所の建設は何度も挫折してきたが、2013年には開始されるかもしれない。 中東では新たに稼働している風力発電事業は一つもない。とは言うものの、ヨルダンは、現在取るに足らない程度しかない風力発電量を2020年までに1,200メガワットにまで拡大しようと目論んでおり、イスラエルやサウジアラビアでも計画が複数進行中だ。 オーストラリアでは、2020年までに電力の20%を再生可能エネルギー源で賄うという目標を掲げている。同国は現在、2,600メガワットの風力発電量を持つが、その半分が2012年に州の総発電量の24%を風力で賄った南オーストラリア州のものである。 ビクトリア州にある420メガワット規模のマッカーサー風力発電所が2013年1月から稼働し始めたのを受け、同国は同年に予測されている風力発電成長率30%の半分を達成した。 世界で設置された風力発電容量のほとんどが陸上の発電所からのものであり、洋上発電所からのものはたったの2%──およそ5,400メガワット──である。しかし近年では、洋上風力の開発が加速しており、この5年間で3倍以上となっている。 洋上風力発電所を持つ12カ国のうち10カ国が欧州にある。英国は世界の洋上風力発電容量の半分以上を持ち、2020年までに洋上風力発電容量1万8,000メガワット達成を目指す。同国の洋上風力発電資源は、国内電力消費量の実に16倍になると推算されている。デンマークでは、電力のおよそ15%が2014年までに洋上風力発電所からのものになると見込まれている。 欧州以外で洋上風力発電所を持つのは中国と日本のみで、それぞれ390メガワット、25メガワットの容量を持つ。2012年だけで130メガワットを設置した中国は、すぐに世界第3位の洋上風力発電容量を保有するようになった。同国の洋上風力発電容量の短期目標は2015年までに5,000メガワット、2020年までに3万メガワットとなっている。 日本は、2011年の福島原子力発電所の大災害を受け、国内の電力ニーズのおよそ3倍を満たすのに十分な資源とされる洋上風力のさらなる利用を目指している。そして韓国では、国内の風力発電業界が2030年までに風力発電量2万3,000メガワット達成を目指しており、多数の洋上風力発電事業が進行している。 クリーンエネルギーの市場調査会社、ナビガントリサーチによると、2013年の世界の風力発電新規設置容量は約4万メガワットに落ち込むという。そうなれば、年間新規追加量が前年比で増えないのは少なくとも17年ぶりのことになる。この減速傾向の大半は、米国での開発が減速することによってもたらされる可能性が高い。 とは言うものの、年間市場は2014年に回復すると期待されている。コストが引き続き下がり、主要な風力発電国が持ち直し、アフリカや中東、バルト地域の新興国が風力発電の夢を実現し始めるからだ。 GWECとグリーンピース・インターナショナルは、2015年までに世界の風力発電容量は少なくとも42万5,000メガワットに達すると予想している。これだけあれば、中南米全土の電力を賄うのに十分だ。世界は、風力の潜在力がほぼ無限であることに気付き始めたのである。 地球の気候安定化計画に関心のある方は、『仮邦題:今こそプランBを』(TimeFor Plan B)をお読みください。データやさらに詳しい情報はwww.earth-policy.org.をご参照ください。 この情報の友人、家族、同僚への転送はご自由にどうぞ。 メディア関連の問い合わせ: リア・ジャニス・カウフマン 電話:(202) 496-9290 内線12 電子メール:rjk@earthpolicy.org 研究関連の問い合わせ: マシュー・ローニー 電話:(202) 496-9290 内線17 電子メール:jmroney@earthpolicy.org. アースポリシー研究所 1350 Connecticut Avenue NW, Suite 403 Washington, DC 20036 【訳注】1ドル=94円 で換算 (翻訳:酒井 靖一、丹下陽子)
 

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