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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2013年06月01日

アースポリシー研究所「魚の乱獲、食物連鎖中の重要なつながりの脅威に」 (2013.06.01)

食と生活
 
日本人は世界の中でも一人あたりの海産物の消費量がとても多いことはよく知られていますが、こういった魚類が海の中ではどういう状況になっているのかはあまり知られていないように思います。 レスター・ブラウン氏のアースポリシー研究所からのリリースをぜひご覧下さい。実践和訳チームが訳してくれました。 (※ところで、自分の翻訳をやりたい!というお問い合わせをいただくことがあります。翻訳力をつけ、仕事につなげるための講座をいろいろ展開していますので、ぜひどうぞ。また8月4日には少人数でじっくり翻訳と勉強法を身につける「翻訳道場」も開催します。ご興味のありそうな方にぜひご紹介下さい~ http://www.es-inc.jp/toratama/pdf/tratama%20comunity%20orientation%20final.pdf http://www.es-inc.jp/toratama/news/2013/20130517_09.html ) ~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 魚の乱獲、食物連鎖中の重要なつながりの脅威にJ・マシュー・ローニー http://www.earth-policy.org/plan_b_updates/2013/update111 水中食物連鎖の底辺近くに属する魚類は見落とされることが多いが、そうした魚は海や河口域を健全に保つのに欠かせない存在である。イワシ、カタクチイワシ、ニシン、それにクリルと呼ばれる小エビの形をした甲殻類など、餌用魚と総称されるこれらの魚は、プランクトンを食べ、自らはより大型の魚類、海鳥、海洋哺乳類の餌となる。 歴史的に、人もこのような魚類の多くを食用として摂取してきたことは言うまでもない。しかし、動物性タンパク質の需要がここ半世紀の間に急増するにつれ、ますます多くの餌用魚が、人間の口に直接入るかわりに、家畜や養殖魚の餌用として捕獲されてきた。 現在の漁獲レベルが、餌用魚だけでなく、それに支えられている捕食動物や企業にとっても危険なものであることが、科学的な証拠によって次々と示唆されている。 熱帯地方から極地方までどこにでも分布する餌用魚はふつう、通常、数千、ときには数百万という大群を組んで遊泳する。これは水中の捕食者から身を守るには有効なのだが、一方で、群れ全体を囲い込んで一気に捕獲できる巾着網を装備した近代漁船団の餌食になりやすい。さらに、餌用魚資源は環境の変化に極めて敏感で、個体数が激減しやすいため、豊年時には安全だとされる漁獲水準でも、凶年時には悲惨な結果になりかねない。 世界屈指の水産業界の多くがペルー・カタクチイワシ、大西洋ニシン、真サバなどの餌用魚が中心である。世界中の海や河口域で毎年8,000万トンの魚類が捕獲されるが、通常はその30%以上がこれら餌用魚類である。 捕獲された餌用魚10トンのうち、だいたい9トンは「還元」工場へ送られる。そこで加熱、圧搾して油を抽出し、残留物は乾燥させた後に粉末化して魚粉、つまり高タンパクな茶色の粉となる。毎年およそ600万トンの魚粉と100万トンの魚油が生産されている。 魚粉はほぼすべて養殖魚、ブタ、家禽の餌として用いられる。健康効果ゆえに珍重されているオメガ3脂肪酸の含有度が高い魚油は、飼料添加物として多用されているだけでなく、人間用の栄養サプリメントとしても用いられている。 世界の漁獲量に大きく貢献している餌用魚だが、それでもその額は海洋で捕食されるものの方が、船に水揚げされるものより少なくとも2倍は多いことが最近の調査で明らかになっている。著名な海洋学者や水産学者13名から成る国際的グループであるレンフェスト餌用魚タスクフォース(Lenfest Forage Fish Task Force)は2012年、3年に及んだ研究の結果を『仮邦題:小さな魚、大きな衝撃』(Little Fish, Big Impact)と題する報告書の形で発表した。 同報告書の著者たちは、餌用魚が、報告されている漁獲量から毎年およそ170億ドルの価値――餌用魚そのものの価値として56億ドル、餌用魚の捕食魚が水揚げされて評価される価値として113億ドル――を生み出している、と試算した。これには、餌用魚を食べるクジラを見学するエコツーリズムや、餌用魚を釣り餌として使用する娯楽目的のスポーツ・フィッシング、プランクトンを適正量に保つ餌用魚の役割が生み出す価値は含まれていない。 餌用魚は長い間、魚粉や魚油の原料とするために捕獲されてきた。例えば、1800年代半ばには、大西洋メンハーデン――米国の大西洋岸を回遊するニシンやイワシ、それに類する魚類――は、まずニューイングランドや中部大西洋岸地域の加工工場に送られ、そこで肥料や鯨油代わりの安価な油に加工され、その油が皮なめしから化粧品の原料にいたるまで、ありとあらゆるものに利用されていたのだ。 メンハーデン魚粉はその後、1900年代初めには、動物用飼料として使用されるようになった(その頃、北欧人が同じ目的で大西洋ニシンの捕獲を始めた)。主に飼料として使用され、また健康サプリメントとしても用いられる大西洋メンハーデンは、現在でも漁獲量では米国最大の水産資源の一つである。 安価な魚粉を飼料に配合する米国や欧州の養豚業者や養鶏業者が増えるにつれ、餌用魚の水揚げ量も増加した。大規模なペルー・カタクチイワシ漁が1950年代に開始され、ペルーとチリが南米の西海岸沿いの豊かな水産資源を積極的に開発するようになると、魚粉を飼料として使用することが世界中に普及し始めた。 それから現在まで数十年間、ペルー・カタクチイワシは世界最大の魚粉原料となってきただけでなく、漁獲量そのものが年によっては1,000万トンを超える世界最大の漁業資源ともなってきた。ペルーだけで、およそ1,200隻の漁船が140の処理工場にカタクチイワシを供給しており、それらの工場では輸出額にして約1,916億円(※訳注)に相当する魚粉や魚油が毎年生産されている。 ペルー・カタクチイワシ漁は収益率の高い漁業であるが、他の多くの餌用魚漁業と同様、良好な漁場環境に大きく依存している。特に、エルニーニョ現象が発生している間は、暖かい太平洋の海水が―― 時には乱獲も加わって――数十年間にわたってカタクチイワシを激減させ、漁獲量に壊滅的打撃を与えてきた。 2012年10月に、海水温の上昇によりまたしても漁獲高が落ち込んだ後、ペルー政府は25年間で最低レベルまで、カタクチイワシの漁獲許可量を削減した。このようにカタクチイワシの供給が制限されることにより、世界の魚粉価格は12月には記録的高値に跳ね上がった。 (データ参照)http://www.earth-policy.org/datacenter/xls/Update_111_5.xlsx 半世紀前、まだ歴史は浅いがすでに大規模になっていたペルー・カタクチイワシ漁は、過度の餌用魚漁業が生態系へ及ぼす影響を示していた。適温をこす高い水温や、年平均800万トンに上るカタクチイワシ漁が原因で、1960年代半ばには、鵜、カツオドリやペリカンの主要な食餌資源が枯渇してしまった。続いてこれらの鳥類が激減した。餌のほぼすべてをカタクチイワシに依存している鵜については、経時平均生存数の89%が減少した。この生態系では海鳥の生息数はいまだ回復していない。 世界的に見ると、レンフェスト・タスク・フォース(Lenfest Forage Fish TaskForce)が研究した72種の海洋生態系のうち3/4には、餌の少なくとも半分を餌用魚の捕食に依存している捕食種が含まれている。中には、シロナガスクジラ、フンボルトペンギンやキハダマグロなど、少なくとも摂餌量の75%を餌用魚に頼っている種もある。これらの生物にとっては、餌用魚数の減少は、繁殖の危機と飢餓の両方を意味することになる。 世界の餌用魚資源の大半はすでに開発され尽くし、もはや安全に漁獲高を増やす余地が無くなったか、または、すでに乱獲されているため、漁場の回復が必要となっていると考えられる。餌用魚が天候の変化に敏感であり、生態系の中で重要な役割を果たしていることを考慮すると、レンフェストの著者たちが勧めるように、全般的に漁獲量を現在のレベルの半分に削減すべきである。 魚粉と魚油に対する需要の削減は、養殖部門に大きくかかっている。25年前は、豚と家禽類で世界の魚粉の80%を消費していた。2000年には、この割合は60%まで減少していた。しかしその後の10年間にわたり、養殖の生産が倍増し、魚粉の価格が4倍近くに高騰したため、豚と家禽の生産者はすばやく飼料の魚粉を大豆粉に切り替えた。今日では、魚粉の68%、魚油の74%が消費されているのは養殖場である。 しかしながら、この分野で勇気付けられる兆しもいくつかは見られる。例えば、ほとんど全ての主要な養殖魚――サケからコイまで――で、1990年代半ば以来、餌に占める魚粉の割合が大幅に削減されている。植物(特に大豆)や畜産や養鶏から生じる副産物から生成されるタンパク質が、適切な代替品として使用されることが多くなってきたからである。 1995年から2007年の間に、エビの餌に含まれる魚粉の割合は、28%から18%に下がった。さらに劇的な減少がサケの養殖において見られ、45%から24%まで激減した。最近の魚粉価格の高騰は、さらに餌の切り替えを推し進めている。 また、養殖魚の餌としては、海産業から出る副産物の利用も増加している。2010年には、魚粉生産原料の1/3は、魚の切り落とし工程やその他の魚製品製造から出る廃棄物を利用したものである。一方、オメガ3を豊富に含む魚油の代替物質の発見はより困難になっており、そのことが科学的な助言に沿って餌用魚の漁獲を削減する上で大きな障害となるかもしれない。 餌用魚を食物としてもっと直接摂取するように勧めている科学者や料理人もいる。その方が、養殖のサケやエビを食べることで間接的に餌用魚を摂取するより、より効率的だ ――貧しい消費者にはより手に入りやすい―― とのことだ。 餌用魚はすでに世界中の多くの低所得国、特にアフリカの海岸諸国において重要なタンパク源となっている。事実、モルディブ、フィリピン、ガーナなど36カ国において、餌用魚は供給される食用魚の半数を超えている。食用として直接消費する量が増加している国もある。例えば、ペルーでは2010年には19万トンのカタクチイワシが食べられたが、この量は2006年と比べて19倍であった。 世界の漁獲量がもはや拡大していく見込みはなく、世界中の魚タンパク質の需要の伸びは、引き続き養殖が満たすことになるだろう。実際、養殖魚の売り上げは2021年までに33%増加することが見込まれている。 まだ分かっていないのは、より慎重な管理体制のもと、魚粉や魚油を飼料として使わなくなる動きが、餌用魚―そして人類や彼らが支えている生態系―を適切に保護できるほどの充分な規模で起こるかどうかということである。 データやその他の情報についてはwww.earthpolicy.org を 参照のこと。 この情報はご自由に友人、家族、同僚の方々に転送してください メディア関連の問い合わせ: リア・ジャニス・カウフマン 電話:(202) 496-9290 内線12 電子メール:rjk@earthpolicy.org 研究関連の問い合わせ: J.マシュー・ローニー 電話:(202) 496-9290 内線17 電子メール:jmroney@earthpolicy.org アースポリシー研究所 1350 Connecticut Avenue NW, Suite 403 Washington, DC 20036 (翻訳:正嵜、FF)
 

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