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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2012年12月30日

アースポリシー研究所「世界の森林面積は依然として減り続けている」 (2012.12.30)

森林のこと
 

今年ももう少しで終わりですね-。どんな1年だったでしょうか?来年はどんな年になるでしょうね(どんな年にしたいですか?)

レスター・ブラウン氏のアースポリシー研究所のリリースを、実践和訳チームのメンバーが訳してくれましたので、お届けします。

~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~

世界の森林面積は依然として減り続けているエミリー・E・アダムズ

www.earth-policy.org/indicators/C56/forests_2012

森は、材木や紙など多くの重要な物資を供給してくれる。また、われわれにとって必要不可欠な役割も果たしている。たとえば、水を濾過し、流出量を調節し、土壌を守り、気候を調整し、養分の循環や貯蔵を担い、無数の動物種の生息地となり、憩いの場を与えてくれている。

森林は世界の陸地の31%を占め、面積としては40億ヘクタール強である。産業革命時代以前には59億ヘクタールだったが、ここまで減少しているのだ。国連食糧農業機関(FAO)のデータによると森林消失のスピードは1990年代が最も速く、年平均で、ミシガン州とほぼ同じ面積の1,600万ヘクタールの森が失われた。同時に植林や自然回復のいずれかによって森林面積が広がった場所もあり、実質的な消失面積は年間830万ヘクタールである。

2000年から2010年の間は、消失の速度はややゆるやかになったものの依然として憂慮すべき速さで、年間1,300万ヘクタールもの森林が破壊された。森林拡大は一定のペースだったため、同期間の1年当たりの消失面積は、実質520万ヘクタールとなった。(図表参照)

図表の訳(タイトル)世界の森林面積(1990~2010年)(縦軸)地域 アフリカ アジア ヨーロッパ 北米・中米 オセアニア 南米 世界全体(横軸)総森林面積  (単位:100万ヘクタール)出典:国連食糧農業機関「森林資源評価2010:世界各国の数値」(ローマ、2010年刊)を元にアースポリシー研究所がまとめたもの
www.fao.org/forestry/fra/fra2010/e

N世界の森林にダメージを与えているのは森林消失の速さだけではない。択伐、道路建設、気候変動、あるいはその他の要因による森林劣化が、まだ残されている健全な森林を脅かしているのだ。毎年、世界の森林面積は減少しており、残された森林は劣化している。たとえば天然の老齢林が外来の単一樹種から成る林に変わると、生物多様性はひどく損なわれてしまう。

植林地は拡大の一途をたどっており、1990年代では1年当たり370万ヘクタール増だったが2000年代には490万ヘクタール増となった。いまや植林地は約2億6,400万ヘクタールに上り、総森林面積の7%近くを占めている。

植林地は現在、産業用木材を年間12億立方メートル生産する潜在力があると推計されているが、それは現在の世界の木材生産の2/3程度にあたる。すでに皆伐されてしまったところでは、植林をすることで、残された森林にかかる圧力を緩和することができる。

森林を脅かしているのは、主に農業用地・牧草地を作るための開墾と、燃料用・産業用木材を得るための伐採である。ブラジルでは1990年以降、テキサス州の3/4にあたる5,500万ヘクタールの森林が失われているが、その大きな要因となっているのは農地と放牧地のための開墾だ。アマゾン熱帯雨林を擁するブラジルは世界の森林面積の13%を占め、20%のロシアに続いて世界第2位である。

しかし、ブラジルでは2000年から2010年の間に年260万ヘクタールの森林が失われており、消失面積では世界第1位となる。ブラジルは森林消失のスピードを2020年までに1996~2005年の平均値から80%低減させようとしており、実際、ここ数年、伐採面積は大きな減少を見せた。しかし、牛肉・トウモロコシ・大豆の価格上昇が、政府に森林保護規制の緩和を求める圧力となる可能性は高い。これは世界最大の熱帯雨林にとってさらなる脅威となる。

南米ではこのほかボリビアとベネズエラの2カ国でも広範囲にわたって伐採が進んだため、南米は2000年から2010年にかけて世界のどの地域よりも多くの森林が失われた。この期間に南米大陸全体で4,000万ヘクタールが消失している。

アフリカでも森林伐採は広範囲に及び、2000年から2010年の間に3,400万ヘクタールの森林が失われた。主な要因は薪の伐採と炭の生産である。サハラ以南の4カ国、ナイジェリア、タンザニア、ジンバブエ、コンゴ民主共和国はそれぞれ、年30万ヘクタール以上を伐採した。

南米と対照的にアジアは、1990年代には純損失となっていた森林面積を次の10年で純増へと軌道転換した。中国が植林地の拡大を主導したためである。1998年の壊滅的な洪水を経て、中国は手つかずの森林が持つ洪水抑制と土壌保護という大きな利点に気づき、主要な河川流域での伐採を禁止し、急速なスピードで植林を始めたのだ。

だが、中国での大量の植林は、ほかのアジア地域のすう勢を覆い隠すことになりかねない。世界最大の木材製品の加工国である中国は、合法・非合法問わずに伐採された樹木を輸入しており、他国の森林消失を助長しているからだ。

1960年代には陸地の82%が豊かな森林で覆われていたインドネシアが、最初のターゲットとなった。インドネシアでは、1990年から2010年の間に約2,400万ヘクタールの森林が失われ、現在の森林面積は国土の50%未満となっている。良いニュースは、同国の森林消失のスピードが、1990年代には年間190万ヘクタールだったのが、この10年間では年間50万ヘクタールに減速したことだ。

ほかにもインドネシアの森林消失を助長している大きな要因がある。パーム油の生産だ。同国のパーム油の生産量は世界のほぼ半分を占める。アブラヤシは、主に伐採したり焼き払ったりした土地に植林して規模を拡大するため、残っている森林が危機にさらされている。

こうしたリスクを評価し、土地利用の変化による地球温暖化への加担を抑えるために、インドネシアは2011年5月、パーム油生産やほかの用途で原生林を転用する新規の認可を2年間停止する措置を取った。この一時的な禁止令で、政府は時間稼ぎをし、森林を保護しつつ、パーム油の生産量を2020年までに2009年比で2倍に増やす手段を考案するという意図だ。だが、生産目標が野心的であること、違法伐採の抑制に政府がなおも苦戦していることを考慮すると、この禁止令に効果があるかは今のところまだ分かっていない。

メキシコでも政府が森林消失への対策に乗り出しつつある。1990年代、メキシコの森林消失のスピードは世界第7位だった。近年の森林消失抑制と植林促進の取り組みが奏功し、そのスピードは1990年代には年間40万ヘクタールだったが、2000年代には年間20万ヘクタールに半減した。メキシコと中米を合わせると、森林消失面積は年間で70万ヘクタールから40万ヘクタールへと減少している。

世界全体を見渡すと、オーストラリアは逆方向に進んだ。1990年代には森林面積は純増だったが、次の10年で純減に転じたのだ。2002年から2010年にかけてオーストラリアで頻発した干ばつは、森林にとって二重の痛手となった。干ばつで、森林の再生が妨げられ、同時に火災の危険が高まったのである。

森林火災は、長引く干ばつと高い気温によって勢いを増し、数百万ヘクタールにわたるオーストラリアの森を焼失させた。今では「ブラック・サタデー」と呼ばれる、2009年2月7日に発生した大規模森林火災は、ロードアイランド州の面積に相当する40万ヘクタール以上を一度に焼き尽くした。

森林火災は、昆虫の大発生とともに、カナダの森林をも変えてきた。21世紀の変わり目の頃、こうした攪乱によって大気中に大量の炭素が放出され、大気から二酸化炭素を吸収して貯留する「炭素の吸収源」の役割を担っていたカナダの北方林が、「炭素の排出源」へと変化した可能性があるからだ。

二酸化炭素は地球の大気圏の中に熱を閉じ込める。そのため、森林面積で世界第3位を誇るカナダの森(3億1,000万ヘクタール)が、炭素の排出源となるか吸収源となるかによって、将来の気候変動に大きな影響が出ることも考えられる。

米国では、1990年から2010年の間に実質770万ヘクタール分の樹木が新たに植えられた。年間で約38万ヘクタールの増加となる。米国は国内の森林を見事に再生させた。

しかし、2011年には約200億ドル(約1兆5,600億円)に相当する林産物を海外から輸入しており、依然として森林消失に加担していることに変わりはない。欧州の場合も同様だ。スペイン、イタリア、フランス、ノルウェー、スウェーデンの主導により、1990年から2010年の間にヨーロッパの森林面積は実質1,600万ヘクタール増加したが、2011年の林産物の輸入総額は1,100億ドル(約8兆5,800億円)に達した。

木にしろ、森にしろ、すべて同列に語ることはできない。生態学的な特質の違いから、温帯の先進国で増えた樹木は、発展途上国の熱帯林で失われた豊かな生物多様性の代わりになるわけではないからだ。地球規模で森林を保護するには、取り組みも地球規模となるのである。

森林保護には、森林地を伐採禁止地域に指定する以上の取り組みが必要だ。紙や木材製品の消費の削減、紙のリサイクル、木材の再生利用、持続可能な植林地からの合法的な木材調達、薪の代替品の発見、小家族への移行の加速による人口の安定化に努めることで、われわれの世代は、将来世代を見据えた森林保護の手助けができるのである。

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データと追加情報はwww.earth-policy.org.を参照のこと。

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メディア関連の問い合わせ:
リア・ジャニス・カウフマン
電話:(202)496-9290 内線12
rjk@earthpolicy.org
研究関連の問い合わせ:

エミリー・E・アダムズ
電話:(202)496-9290 内線16
eadams@earthpolicy.org

アースポリシー研究所
1350 Connecticut Avenue NW,
Suite 403 Washington, DC 20036

(翻訳:江口絵理、佐々木知子)

 

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