ホーム > 環境メールニュース > アースポリシー研究所より「異常気象の年となった2011年、待ち受けるさらなる異常...

エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2012年10月16日

アースポリシー研究所より「異常気象の年となった2011年、待ち受けるさらなる異常」 (2012.10.16)

温暖化
 

ピースボートに水先案内人(講師役)として乗船するため、ジャマイカに向かっています。いま、ロサンゼルス空港で乗り換え待ちです。ジャマイカ〜コロンビア〜グアテマラは初めて訪れる国なので、楽しみにしているところです。

さて、温暖化についての情報や論考などをお届けしてきた「日刊 温暖化新聞」のウェブサイトは現在、イーズの総合的なサイトに統合するため、更新をお休みさせていただいています。

日本ではエネルギー問題が前面に出ていることもあり、「温暖化どころではない」という風潮にも思われますが、温暖化新聞サイトが更新を続けていた7月末までを見ても、「どころではない」ではすまされない深刻化や影響の見通しが、世界中から報告されています。1年分のニュースから抜き出してみますね。

2012/7/26 気候変動で葉が縮小化
2012/7/20 摂氏2度の気温上昇、海水面の上昇に大きく影響
2012/7/18 世界の海洋学者ら、サンゴ礁の危機に警鐘
2012/6/29 研究報告:気候変動の影響を受けやすい蝶
2012/6/20 新研究:気候変動、古代インダス文明を崩壊に導く
2012/6/19 米国の暑さにまつわる死者の数、気候変動により今世紀末までに15万人に達する見込み
2012/6/12 研究報告:1,000年分の気候データで豪州の温暖化を確認
2012/5/21 国連報告書:太平洋諸島の水問題、気候変動で深刻化
2012/5/17 ドイツの研究チーム、南極氷床の新たな弱点を発見
2012/4/23 研究報告:異常気象が温暖化で記録的なレベルに
2012/4/17 南極・ラーセンB棚氷の崩壊、急速に進む
2012/4/16 世界の海水面、後世には約20メートルも上昇する恐れ
2012/4/10 報告書:温暖化する世界では洪水が健康への脅威となる
2012/4/9 気候変動は水資源にも影響を与える
2012/4/2 研究報告:気候関連の移住により、人道危機が深刻化
2012/3/27 海洋の酸性化はかつてない速度で進んでいるかもしれない――様々な種が失われる可能性
2012/3/19 研究報告:タカネシマリスの遺伝的多様性、気候変動により大幅に低下
2012/3/12 研究報告:南極の魚、気候変動で絶滅の危機に
2012/3/3 研究報告:今世紀半ばまでに、猛暑は普通のことに
2012/3/2 研究報告:北極海の海氷の減少が、近年の大雪をもたらす原因に
2012/2/4 研究報告:平年より暖かい夏が厳冬をもたらす
2012/1/16 研究報告:気候変動、ヘラジカ、植物、鳥類の劇的な関連性
2012/1/14 NASA研究報告:気候変動、生態系に大きな変化をもたらす
2012/1/10 研究報告:カナダの大部分の地域で山火事が急増?
2011/12/8 NOAA報告:北極地域で温暖化、緑化、海氷の減少が続く
2011/12/4 研究報告:大気汚染が干ばつと洪水を悪化させる原因
2011/11/27 国連報告:2010年の温室効果ガス濃度、過去最高を記録
2011/11/23 米国海洋大気庁の温室効果ガス指標、上昇続く
2011/11/19 研究報告:人間がもたらす気候変動により、地中海沿岸で干ばつが頻発
2011/11/14 研究報告:気候変動関連の災害に起因する医療費は莫大な額になる
2011/11/8 研究報告:ハワイのオアフ島で豪雨頻発の恐れ
2011/10/5 パキスタンでも気候変動による大きな被害
2011/10/3 2011年8月の世界の気温、過去8番目の高さ
2011/9/23 報告書:気候変動対策を講じないと精神衛生上の問題も
2011/9/21 研究報告:気候サイクルが戦争を駆り立てる
2011/9/19 北極海の海氷、観測史上最小に迫る
2011/9/17 研究報告:気候変動により、南米南部で山火事が増える見込み
2011/9/9 今後の気候変動、子どもの喘息発作を増加させる可能性あり
2011/9/3 研究報告:極地域の気候変動が生態系変化を引き起こす恐れ
2011/8/27 研究報告:南極氷床、海水温度の摂氏1度上昇で融解速度が年間9メートル超に
2011/8/23 極端な気象で森林への脅威高まる

ニュースのアーカイブはサイトでご覧になれますので、詳しくはそちらをどうぞ。
http://daily-ondanka.com/

いったいどうなってしまったのだろう? どうなっていくのだろう?と思いませんか? 目下のエネルギー問題も大事だけど、だからといって「温暖化については当面目をつぶろう」という態度では、将来に大きな禍根を残してしまいます。

レスター・ブラウン氏のアースポリシー研究所が、昨年1年間の気象についてのプレスリリースを出していました。実践和訳チームが訳してくれていたので、お届けします。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

アースポリシー研究所リリース

www.earth-policy.org/indicators/C51/temperature_2012

異常気象の年となった2011年、待ち受けるさらなる異常ジャネット・ラーセン&サラ・ラスムッセン

2011年の地球の平均気温は、摂氏14.52度だった。米国航空宇宙局(NASA)の科学者によると、同年は、ラニーニャ現象特有の大気・海洋循環パターンや低めの太陽放射照度など、寒冷化の要因があったにもかかわらず、132年に及ぶ観測史上9番目に暖かい年であったという。1970年代から現在までを10年毎に区切ると、どの10年も前の10年より暑くなっている。観測史上最も暑かった年上位10年のうち9年は、21世紀に入ってからの年である。

【グラフ】地球の平均気温(1880年〜2011年)【グラフ縦軸】単位:度(摂氏)出典:米国航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙科学研究所(GISS)

毎年の平均気温は、太陽活動やエルニーニョ/ラニーニャ現象の状態をはじめ多くの要因で決まる。しかしここへ来て、主に化石燃料の燃焼によって大気中に蓄積されてきた温室効果ガスが、事態を左右する大きな要因となってきており、地球の気候を正常な範囲から逸脱させつつある。

現在、地球は1世紀前よりも 0.8度近く温暖化している。さらに、年間平均や予測されるデータのばらつきの陰で見えづらくなっているが、世界の多くの地域で、気温や降雨量の記録が驚くべき勢いで塗り替えられている。地球温暖化が進むなか、かつては異例なこととされていた異常気象が、今や新たな標準となりかねないところまで来ているのだ。

世界全体では、2011年は地上に降り注ぐ雨の量が観測史上2番目に多い年となった(最高記録は2010年。この年は気温も2005年と並んで過去最高だった)。地球が温暖化すると大雨が降りやすくなる。気温が1度上昇するたび、大気中に含まれ得る蒸気の量もおよそ7%増えるためだ。気温の上昇は、より勢力の強い暴風雨を引き起こす原因にもなり得る。

ブラジルの2011年は、同国史上最悪の自然災害とともに幕を開けた。1月、リオデジャネイロ州では1カ月分の雨が1日で降り、洪水や地すべりで少なくとも900人が命を落とした。同じ月、オーストラリア東部で起きた洪水は、フランスとドイツを合わせたほどの広い地域を水浸しにした。オーストラリアの2011年は、終わってみると、1900年に観測が始まって以来3番目に降水量の多い年となった。

2011年、最も高くついた気象災害は、同年後半にタイで発生し、国内の1/3の県を浸水させるに至った洪水だ。タイの国内総生産の14%にあたる450億ドル(約3兆4,286億円)の損害を出したこの洪水は、同国がこれまでに経験したなかで最も経済的被害の大きな自然災害でもあった。

10月には、太平洋上とカリブ海上で発生した2つの暴風雨が中米を直撃し、100人以上が命を落とした。エルサルバドルの西部では、10日間で1,500ミリ近い雨が降った。12月には、熱帯性暴風雨「ワシ」がフィリピンを襲い、鉄砲水を発生させて1,200人を超える人々の命を奪い去った。

大西洋側では、2011年のハリケーンシーズン中、名前のついた暴風雨が19個発生した。8月には、ハリケーン「アイリーン」が米国北東部に深刻な洪水をもたらし、総額73億ドル(約5,562億円)にのぼる被害が出た。2011年は、米国の7つの州で、観測史上最も降水量の多い年となった。一方、他のいくつかの州では、最低記録に並ぶほど雨が少なかった。両極端な気象が相殺されて一見平年並みの雨量となっているが、実は2011年には、米国本土の58%というかつてない広大な地域で、極端な大雨または日照りが起きていたのだ。

実際、2011年の地球上では、地球温暖化により起きると予想されていたことが起きていた。大雨にたたられる地域がある一方で、他の地域では乾燥が顕著になっていたのだ。2010年に「アフリカの角」(アフリカ大陸東端の角状に突き出した半島)で始まった深刻な干ばつは、2011年には、凶作と食料価格の異常なまでの高騰、栄養不良のまん延といった危機的状況を招くまでになった。慢性的な政情不安と人道支援の遅れによって事態が悪化するなか、5万を超える人命が失われた可能性がある。

話を北米に戻そう。メキシコでは、2010年後半に始まった干ばつが、2011年にはさらに悪化。2012年1月には、メキシコ北部の数百の農家が、政府の目を自分たちの窮状に向けさせようと、首都でデモ行進するに至った。90万ヘクタール近くの農地と170万頭の家畜を奪ったこの干ばつは、メキシコの70数年間の記録における最悪のものとなった。

2011年、米国南部の平原地帯と南西部を襲った猛暑、干ばつ、そして森林火災は、農家や牧場、森林に100億ドル(約7,619億円)を超える損害をもたらした。テキサス州ウィチタフォールズでは、華氏100度(摂氏約38度)を超える日を100日間記録、それまでの最高であった1980年の79日間の記録を大きく塗り替えた。

オクラホマ州とテキサス州の夏は、全米史上最も暑いものとなり、こちらも、それまでの最高であった「ダストボウル」(1930年代に米国中西部を襲った砂塵嵐)の際の1934年の記録を大幅に更新している。

NASAゴダード宇宙科学研究所所長のジェームズ・ハンセンは、こうした極端な熱波が起こる確率は「近年になって地球温暖化が急速に進むようになる前は、ごくわずかなものだった」と書いている。テキサス州では降水量も同州の観測史上最低となり、熱波と干ばつにより勢いづいた森林火災が、推定150万ヘクタールの土地を焼き尽くした。

米国本土全体としては、2011年の夏は史上2番目に暑いものだった。この年、極端な熱波の増加傾向を反映して、過去最高気温を記録した観測所の数は、最低気温を記録した観測所の3倍近くにのぼった。温暖化傾向がさほど顕著でなかったと思われる20世紀半ばには、最高気温と最低気温の記録数は同程度であったが、1990年代に入ると最高気温が最低気温を追い越し始めた。今世紀初めの10年間には、最高気温の記録数は最低気温の2倍となった。

世界全体では、アルメニア、中国、イラン、イラク、クウェート、コンゴ共和国、ザンビアの7カ国が、2011年に自国の最高気温の記録を塗り替えた。興味深いことに、ザンビアは同年に自国の史上最低気温(6月のマイナス9度)を記録した唯一の国でもある。

クウェートでは、温度計の目盛りが53.3度を指す灼熱の年間最高気温が出た。これは、地球上でこれまで8月に記録された気温としては最も高い。日中の最高気温にもまして健康を脅かすのは、ひときわ高い夜間最低気温である。ひと時も暑さから逃れられなくなるためだ。継続する24時間の最低気温が世界史上最も高くなったのは、2011年6月、オマーンで記録された41.7度だった。

2011年は、北極圏でさえひどく暖かい一年だった。同地域の気温は、1951年?1980年の平均より2.2度も高く、過去最高となった。米国最北端の町アラスカ州バローでは、零度以上の日が86日間続くという新記録が出た。これは、それまでの最高記録であった2009年の68日間をはるかにしのいでいる。

実際に、北極圏の気温は、過去50年間にわたって世界平均の2倍以上の速さで上昇し続け、氷や永久凍土を溶かしている。北極海氷はますます急速に縮小し、2011年夏の融解期には、体積は観測史上最小に、面積も最小から2番目の数値にまで落ち込んだ。夏季の氷の消失スピードが冬季の復元スピードを上回ることで、北極海氷は薄くなり、それによって融解が進む恐れがますます高まっている。科学者たちの予測では、2030年までに、あるいはもっと早い時期にさえ、北極圏にまったく氷のない夏が訪れるという。

反射鏡の役割を果たす氷がなくなると、暗い色の海が顔を出す。暗い色は太陽エネルギーを吸収しやすいため、周辺の温暖化をさらに進めてしまう。このしくみは、北極海と近隣のグリーンランド、両方の氷の消失を加速して、気候変動の影響が連鎖的に拡大する事態を招く。グリーンランドにある氷がすべて融解すれば、世界の海面は7メートル上昇してしまうのだ。温暖化は、北極圏の永久凍土も溶かしている。永久凍土が溶けると二酸化炭素やメタンが放出され、地球温暖化にますます拍車がかかることになる。

こうした気候の相互反応による影響まですべて考慮に入れずとも、複数のモデルが示しているのは、「このまま化石燃料に依存し続ければ、今世紀末までに地球の気温は最大7度上昇する恐れがある」ということだ。

そのような温暖化のもとでは、近年起きている気象現象がおとなしく見えるほどに、気温や降水量の異常性が拡大していくだろう。未来の気温を、これまで文明が経験してきたような範囲に多少なりとも留めたいのなら、温室効果ガスの排出を急速かつ劇的に削減する以外、道はないのである。

# # #

データおよびさらに詳しい情報についてはwww.earthpolicy.orgをご参照ください。

友人、家族、同僚への情報転送はご自由にどうぞ!

メディア関連の問い合わせ:
リア・ジャニス・カウフマン
電話:(202) 496-9290 内線12
電子メール:rjk@earthpolicy.org

研究関連の問い合わせ:
ジャネット・ラーセン
電話:(202) 496-9290 内線14
電子メール:jlarsen@earthpolicy.org

アースポリシー研究所
1350 Connecticut Avenue NW, Suite 403
Washington, DC 20036

●換算レート:1ドル=76.19円(2012年1月31日)

(翻訳:佐野 真紀、チェッカー:野村 真依子)

 

このページの先頭へ

このページの先頭へ