ホーム > 環境メールニュース > エネルギーに関する国民的議論や情報提供を継続していくために (2012.09.0...

エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2012年09月09日

エネルギーに関する国民的議論や情報提供を継続していくために (2012.09.09)

エネルギー危機
新しいあり方へ
 

先週JFS10周年記念シンポジウムが開催されました。「『つながる力』が日本と世界を変える―持続可能な未来をつくる、メディア・情報・コミュニケーションとは?」

多くの方に参加いただき、ゲストの実体験をベースにしたトークや会場の対話など、とても実り多い会となりました。

上田壮一さん(Think the Earth)
鈴木菜央さん(greenz.jp)
白石草さん(OurPlanet-TV)
市川裕康さん(ソーシャルカンパニー)

ゲストの方々のお話、事例、苦労話、乗りこえ方など、ご興味のある方、ぜひ見ていただけたらと思います。動画アーカイブはこちらにあります。
http://www.ustream.tv/recorded/25215204

さて、第31回基本問題委員会での後半の発言録をご紹介したいと思います。エネルギーに関する国民的議論をこの夏だけのイベントで終わらせずに、継続的に対話や情報発信、参画を進めるための常設の組織・機能をエネルギー基本計画に盛り込んでほしいと発言したのですが、聞いてもらえるのでしょうか……?

資料はこちらです。
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/31th/31-6-1.pdf

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ありがとうございます。資料を用意させていただいたので、資料の6-1を見ていただければと思います。今回2点、お伝えしたいことがあります。

1つ目は、原発についてエネルギー基本計画にどう盛り込むかはこれからということは承知の上ですが、この間、佐賀とか若狭とか柏崎とか、原発立地地域で地元の方といろいろお話をする機会があって、伝えておきたいと思って話をします。

原発依存度が最終的に何%になるかこれからということですが、いずれにしても依存度は低減していくということなので、これまでの原発立地地域がこれまでと同じようにやり続けるということは、オプションとしてはなくなります。

そうなっていったときに、やはり国策としてのエネルギーということで立地地域が原発を引き受けてきたという面がありますので、3.11を受けて、国としてエネルギー転換を行うときには、当然ながら考えておられると思いますが、立地地域への支援をしっかりやっていく必要があります。

これは石炭産業に関しては、1960年代に「産炭地域振興臨時措置法」というのが作られて、そういった地域の産業誘致や振興を促進するということをやって、実際に効果があったという研究なども出ています。

もちろん、原発がエネルギー基本計画に書き込まれるときには、こういったこともきちんと配慮されると思いますが、国としてのエネルギー転換であったとしたら、こういったことも基本計画の一端として位置づけて書いていただきたいというのが1点です。

もう1つは、今回、最後のところに、コミュニケーションのことなど随分書き込んでいただいて、とてもうれしく思っていますが、ここでの、48ページにある基本的な考え方というのは、国民の信頼を取り戻すためによりわかっていただきたいと、理解してもらいましょうということだと思います。

これは、あるべき姿から考えるとまだ道半ばかなという気がしています。企業であれ政府であれ、市民・国民に対するコミュニケーションには4段階あるといわれていまして、1つ目が“Trust me.”。信じてください、任せてくださいというやり方で、これがこれまでの政府のエネルギーに関する国民に対する1つのスタンスだったかなと思います。

2段階目になると、“I tell you.”という。どういうことを考えてどういうことをやっているかをお話ししましょう、文書で示しましょうと。これが今の段階かなと思います。

3番目になると、なかなか言われただけでは信じられないという市民が増えてくるので、“I show you.”と。実際の内容をやっているところを見せましょうとなってきます。

最終的な段階として、今、特に先進企業が進みつつあるのは、“I involve you.”です。巻き込んでいく、関与させていくということです。単にわかってもらうために情報をどう伝えるかという広報的なコミュニケーションではなくて、より積極的な、戦略的な、巻き込んで、国民と一緒にやっていくという意味で、「パブリック・エンゲージメント」という言葉を今回使いました。

それは前回、「コミュニケーション室をつくってほしい」と発言したあと、いろいろお話を聞いていると、どうも「コミュニケーション」というのは広報とか最後の出口、決まったものをどう伝えるかというようなイメージを持っていらっしゃる方が多いように思ったんですね。

戦略的なコミュニケーション、もしくはパブリック・エンゲージメントというのは、政策の一部であって、たとえば今回も、国民的議論は、これで終わりではなくて、多くの国民がこれは第一歩だと思っています。

これをどのように改善しながら続けていくのか。3.11以降高まった意識や関心をどうやってより深い理解、それから自分たちで負担をするということも含めて、「わがこと化」につなげていくのか。原発を含め、エネルギーとうのは非常に多面的で複雑なテーマですが、それをどうやって伝えて熟議を促していくのか。

こういったことは、出口として決まったことをウェブに載せておいて、というレベルの広報戦略ではなくて、政策形成と一体化したアクティブな、プロアクティブなパブリック・エンゲージメントだと思っています。

そういった意味で、前回のコミュニケーション室というのではなくて、エネルギーに関するパブリック・エンゲージメント室というような体制を整えていただいたいと思います。

事務局案には具体的な行動、活動ということでいくつか挙がっていますが、そういうのをバラバラやるだけではなくて、それを全体としてどういう戦略に基づいて、何を目指して、どういうロードマップでやっていくかというブレインのところがないと、一過性のコミュニケーション、もしくは何かあったときの後手対応的なコミュニケーションに終始してしまうような気がしています。

なので、長官直属でもよいぐらい、私はこの役割は重要だと思っていて、全体的にいろいろなコミュニケーションにかかわるところの連携ブレイン、それから外部とももちろん協働してやっていくというイメージです。

たとえば、「エネルギー白書」というのを毎年出されていますが、出しておしまいではなくて、たとえばそれを題材に、各地で読む会を開いて、国民の理解しにくいところとか不安を感じているところを事前にキャッチするような、そういったコミュニケーションであるとか、また、立地地域との対話も非常に重要な部分として含まれると思っています。

私もこの委員会で何度か、ドイツの倫理委員会が3.11の後、脱原発を提言して、メルケル首相がそのような方向転換をしたという話をしましたが、あれは、2カ月の倫理委員会の議論だけで決まったわけではありません。ドイツではその前、20年間にわたって、こういった形でパブリック・エンゲージメントをエネルギーに関してやってきています。その成果だという話を聞いています。

またスウェーデンでも、最終処分場がやっと決まりましたが、それも30年にわたって、地域の人中心にパブリック・エンゲージメントをずっとやってきたからはじめて、地域の人たちが自分たちで受け入れるという意思決定をしたわけです。

「何かあったときにどう伝えるか」という、出口のコミュニケーションではなくて、より戦略的な位置づけで、これから使っていただきたいと思っています。

最後に2つ、追加の調査の結果を資料として出していますが、1つは、今回の選択肢の時に、どういう情報を出すかによって、人は選ぶものが変わるのではないかと思って調査をしました。

もう少し具体的に言うと、私がここでも何回も言っているように、政府が出している経済的な影響の情報を伝えたグループと、それに加えて未来世代への影響に関する情報を加えて伝えたグループでは、実際には選択肢に有意差がありました。

これは研究者に研究してもらった結果です。どういう情報を出すか、もしくは討論型世論調査もそうですが、熟議をした結果、人々の意見が変わる。こういったことも含めて、パブリック・エンゲージメントをしっかり考えていく必要があると思っています。

最後の追加資料は、エネルギー選択肢に関する国際世論調査というのを行いました。これは私が代表を務めている、日本から世界に情報発信をしているNGO、JFSが実施して、53カ国300人以上から回答を得ました。7割がゼロシナリオ支持です。それぞれのシナリオを支持している理由も書き込んでもらっており、6-3の資料に付けてありますので、後で見ていただければと思います。

以上です。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

資料6-2 「情報の差による選択の差の優位性」(枝廣委員提出資料)
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/31th/31-6-2.pdf

資料6-3 「JFS:日本のエネルギー政策についての国際世論調査」(枝廣委員提出資料)
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/31th/31-6-3.pdf

委員会では時間がなく十分説明できませんでしたが、資料6-2はとても興味深い、大事な研究結果だと思います。

日本の人口分布に合わせて500人ずつのグループ2つに、提供する情報を変えて、どの選択肢を選ぶか?を尋ねたものです。選択肢は、情報を提供する前と、提供したあとの2回尋ねており、その変化も見ています。

グループA:政府が資料として出している情報を出す

グループB:政府が資料として出している情報に加え、未来世代への影響に関する情報も出す

「情報の有無・情報の差は回答パターンに影響を与える」、つまり、提供する情報によって、統計的に有意と判定される違いが出たとの研究結果です。

どういう情報を出して国民に考えてもらうべきか、そういったことも研究・解析しながら、できるだけ偏りのない多面的な国民的議論が5年、10年と続いていくように、その陣頭指揮をとれるような組織・機能が強く望まれます。

 

このページの先頭へ

このページの先頭へ