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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2012年08月02日

アースポリシー研究所より「豊作だった2011年の穀物収穫高も世界備蓄の積み増しには至らず」 (2012.08.01)

食と生活
 

世界のあちこちから天候不順などによる農作物の不作の報道が届いています。

かつては、農作物の収穫は年によるでこぼこはあってもほぼ安定していて、数十年に1度ぐらい、本当に大きな凶作に見舞われる、というパターンだったように思いますが、近年は毎年のように「異常気象による不作」が起こっているような感じです。レスターのいう「これまでになかった時代」に入っている、、、という気がしてなりません。

レスターから最近の農作物の収穫や食糧事情をめぐるプレスリリースが出されており、いま実践和訳チームのメンバーに訳してもらっていますので、別途お届けしますね。以下は、少し前のものですが、レスターの研究所からのプレスリリースです。こちらも実践和訳チームが訳してくれました。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

豊作だった2011年の穀物収穫高も世界備蓄の積み増しには至らず

ジャネット・ラーセン(アースポリシー研究所)

www.earth-policy.org/indicators/C54/grain_2012

2011年、世界の農家はそれまでになく大量の穀物を生産した。米国農務省によると同年の世界の穀物収穫高は、それまでの最高を記録した2009年を5,300万トン上回る22億9,500万トンに達する見通しである。消費量の方は同期間に9,000万トン伸びて22億8,000万トンとなった。しかし、ここ12年のうちの7年は世界の穀物生産量が消費量を下回ったため、備蓄量は引き続き憂慮される水準に落ちたままであり、世界は食糧価格高騰の危機に瀕している。

世界中で消費されるカロリーの約半量は穀物を食糧として直接摂取することによるもので、残り半量のうち一部は穀物で肥育された畜産物から摂取されている。世界で収穫される穀物のほとんどは、主に食糧として直接摂取される小麦および米と、大部分が家畜用飼料として使用されるトウモロコシの3種類で占められている。

1990年代半ばまでは世界の穀物収穫高のトップは小麦であった。その後、穀物飼育畜産物の需要増加や、最近になって増えた燃料エタノール需要により、トウモロコシ生産量が急伸し小麦を超えた。

主に猛暑のせいで主要産出国である米国の産出量が減少したにもかかわらず、2011年の世界のトウモロコシ生産量は8億6,800万トンという史上最高量を記録した。小麦(6億8,900万トン)および米(4億6,100万トン)の収穫高も最高記録に達した(www.earth-policy.org 掲載データを参照)。

【グラフ】トウモロコシ・小麦・米の世界生産量(1960年?2011年)
【グラフ縦軸】単位:百万トン
【凡例】
Corn:トウモロコシ
Wheat:小麦
Rice:米
出典:米国農務省(USDA)


現在の穀物繰越備蓄量――新たな収穫期の開始時点で世界の穀物倉庫に残っている備蓄量――は4億6,900万トンで、これは現在の消費水準で75日分の消費量をまかなうことができる量である。1984年から2001年までは穀物備蓄量は100日分前後と、もっと余裕のある水準で安定していた。

しかし、2002年に穀物生産量が需要量を8,800万トン下回って以来、年間繰越備蓄量は平均72日分、つまり食糧安全保障に必要とされる最低限の水準で推移している。2006年には備蓄量が底を打って62日分にまで下がり、これを発端として2007年から2008年にかけて短期間のうちに穀物の国際価格が2倍もしくは3倍に跳ね上がるという食糧価格の高騰が発生した。

所得の半分もしくはそれ以上を食糧、大抵は主食穀物に費やしている発展途上国の貧困家庭は、この価格高騰により食糧が確保できなくなり、不満を募らせることになった。世界の飢餓人口は10億人を超え、35カ国あまりの国々で抗議デモが勃発した。

【グラフ】消費日数換算でみる世界の穀物備蓄量(1960年?2011年)
【グラフ縦軸】単位:日
出典:米国農務省(USDA)

豊作が数年続いた後、2010年に世界備蓄は再び下降に転じた。干ばつ、森林火災、焼けつくような熱波によりロシアおよび近隣諸国の小麦収穫高が大打撃を受けたからだ。輸出は禁止された。食糧価格は再び上昇し始め、前回から3年と経たずに再び価格ショックが起こるのでないかと警戒された。

世界銀行によると、最終的には、2010年6月から同年12月にかけての食糧価格高騰により新たに4,400万人が経済階層の極貧層まで押し下げられる結果となった。2011年の記録的豊作でさえも備蓄量を十分に積み増しするほどには消費量を上回ることができなかったため、世界の極貧層の見通しは暗いままだ。

【グラフ】世界の月別穀物価格指数(1990年1月?2011年11月)
【グラフ縦軸】2002年ー2004年を100とする
出典:国際連合食糧農業機関(FAO)

備蓄量の低迷と食糧価格の乱高下の背景には、一人の人間を養うのに使用できる面積が縮小していることと、作物収量の伸びが鈍化していることがある。世界全体の穀物の総作付面積はおよそ7億ヘクタール(17億エーカー)。世界人口が70億人の大台に突入した2011年には、一人当たりの穀物作付面積は0.1ヘクタール(0.25エーカー)だったということになる。これは1960年代初頭と比較するとおよそ半分の面積だ。

【グラフ】世界における一人当たりの穀物作付面積(1950年?2011年)
【グラフ縦軸】ヘクタール
出典:米国農務省(USDA)、国際連合人口部(UNPop)

ピーク時の1981年には7億3,200万ヘクタールあった穀物の総作付面積が主に耕作限界地や浸食地からの耕作撤退により減少した一方で、生産量は作物収量の向上により50パーセント以上伸びている。1950年当時、農家が期待していた収穫量は1ヘクタールあたり平均1トンだった。今では、収量が約3倍になっている。

世界の食糧供給見通しの問題点は、いわゆる「低い枝に実をつけている果実」はすでに収穫されているということである。すなわち、世界の大部分(もちろんサハラ以南のアフリカは除き)では高収量品種、収量強化のための肥料、灌漑農業が導入済みだということだ。

加えて、いくつかの国では収量が頭打ちになるか、もしくは減少する可能性がある。1990年から2010年にかけて世界の穀物収量は毎年平均2.2パーセント増加したが、1990年から2010年の年間伸び率はその半分しかなかった。

2011年に世界で収穫された穀物のおよそ半分を生産したのは3つの国である。中国が4億5,600万トン、米国が3億8,400万トン、インドが2億2,600万トンである。EU27カ国全体では2億8,600万トンであった。

穀物の国内需要を満たすために輸入に頼る国が増えており、国際貿易に占める穀物の割合は12%にまで上がっている。米国は、世界で飛び抜けた穀物輸出国であり、2011年には7,300万トンを輸出した。これは穀物の全取引量の1/4に当たる。

米国に続き、アルゼンチンが3,200万トン、オーストラリアとウクライナがそれぞれ2,400万トン、ロシアとカナダはそれぞれ2,000万トンを超える量の穀物を輸出している。

特にトウモロコシは、米国が世界市場シェアの大部分を占めており、国際取引されるトウモロコシの40%以上が米国産である。それだけに、輸入国は、2011年では40%であった米国産トウモロコシの燃料エタノールへの転用割合が、今後増えることに懸念を抱いている。

日本は、依然として世界最大の穀物輸入国であり、2011年には2,500万トン以上の穀物を海外から購入し、その大部分を家畜飼料に使っている。日本以外で1,000万トン以上の穀物を輸入している国は、エジプト、メキシコ、韓国、サウ ジアラビアである。国際的な穀物市場への依存は、乾燥した中東地域全体で高い。

例えば、現在、サウジアラビアは穀物消費量の90%を輸入に頼っている。サウジアラビアでは、地下水をほぼ汲み尽くしてしまったため、砂漠の小麦農園 を放棄する動きがでている。

中国は、2011年に正味500万トンの穀物を輸入した。1990年代半ばに国策として穀物自給体制をとると宣言していただけに、この輸入には重要な意味がある。 国全体で消費される4億5,100万トンという数字からすれば、輸入量はごく一部にすぎないが、穀物市場と穀物価格を注視する人たちは、中国の穀物輸入が今後増えることに不安を感じている。

もうひとつの主要な農作物である大豆の輸入量の増加がゆっくりとしたものではなかったら、中国の穀物輸入は、はるかに多くなっていただろう。中国の大豆輸入量は、ほとんど輸入のなかった時代から1990年代半ばに増加して、2011年には5,600万トンに達し、国内の大豆の総消費量の80%近くをまかない、国際的に取引されている大豆全体のほぼ60%を占めるまでになった。高タンパク質の大豆のほとんどは、家畜と家禽の飼料に使われている。

中国では、食物連鎖の階段を上り、これまで以上に多くの肉、牛乳、卵を食べる人が増えるにつれ、国内の飼料穀物の利用量は劇的に増加し、減少傾向にある米国を2010年には上回るまでになった。2011年には、穀物の飼料として使われる穀物の量は1億4,900万トンに達し、中国は今や世界をリードしている。それでも、中国の平均的な肉の摂取量は米国の半分に満たず、1人当たりの総穀物消費量はずっと少ない。

世界中で残る未耕作地はほとんどなく、それでいて養うべき人口はますます増えてゆく状況の中で、世界中の人々に食糧供給しようと努力する農家たちは、今困難な戦いに直面している。動物性タンパク質と、食糧ベースのバイオ燃料生産システムという2つの領域のために使っている畑を、家畜や自動車ではなく直接的に人間が食べる食糧を育てるように割り当て直すことは可能だろう。

しかし、水不足の拡大と地球の気温上昇により、猛暑、干ばつ、洪水、作物に被害を及ぼす異常気象など、予想もつかないような異変が起きている。そのため、凶作への備えとして、より高レベルの穀物備蓄が必要なのだ。さもないと、穀物価格の激しい騰貴を防ぐには、毎年豊作を続けなければならなくなる。しかしそれは、決して保証できないことだ。

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データと追加情報源はwww.earthpolicy.orgを参照。
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リア・ジャニス・カウフマン
(202) 496-9290 内線17
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アースポリシー研究所
1350 Connecticut Avenue, NW
Washington, DC 20036

(翻訳:正嵜、小坂)

 

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