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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2012年04月21日

アースポリシー研究所より「増大するヤギの群れ、世界の草原の減少を示唆」(2012.04.20)

食と生活
 

「寝つけないときにはヒツジの数を数えたらいい」と言いますが、「世界の草原の健全性を知るにはヤギの数を数えたらいい」って、知っていましたか?

アースポリシー研究所リリースを実践和訳チームが訳してくれました。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


増大するヤギの群れ、世界の草原の減少を示唆

http://www.earth-policy.org/data_highlights/2011/highlights14

地球が誕生すると、地質時代に、岩の風化で土壌がゆっくりと形成された。その土壌が古代の植物の生命を支え始める。その植物が土壌を守り、豊かにし、土壌は今日知られている多様な植物や動物を維持する表土になった。ところが今、世界中のウシやヒツジ、ヤギがかつてない勢いで増加し続け、草原を広範囲にわたり砂漠に変えている。

草原の健全性を知るために役立つ指標のひとつが、ヒツジやウシと比較した場合の、ヤギの頭数の変化である。草原は劣化すると、草に取って代わり砂漠の潅木が生えるのが一般的だ。このように劣化した環境では、ウシやヒツジは十分な餌を得られない。

しかし、ヤギは――厳しい環境にも特に強い反芻動物であるため――潅木でも食糧にできる。その上、土壌を傷めてしまう。というのも、その鋭利な蹄で、土壌を保護する表面、つまり、雨で形成され、さらに風食を自然に防いできた土膜でさえ細かく砕いてしまうからだ。

1970年から2009年まで、世界のウシの頭数は28%増加し、ヒツジの頭数は横ばいだった。ところが、ヤギは倍以上になっている。

【グラフ】世界の種類別放牧家畜 (1961年-2009年)
【縦軸】100万頭
【凡例】
ウシ
ヒツジ
ヤギ
スイギュウ
【グラフ下】出典:国連食糧農業機関(FAO)

ヤギの急増は一部の発展途上国で顕著である。パキスタンでは1961年から2009年の間でウシの頭数は2倍、ヒツジは3倍近く増加しているが、ヤギにいたっては6倍以上も増え、今やヤギだけでウシとヒツジを合わせた数に匹敵するほどだ。

こうした家畜は、雨を蓄えられる植生がほとんどない地方の草を食べつくしてしまい、2010年の夏にパキスタンに大きな被害をもたらした大規模洪水の一因となった。

【グラフ】パキスタンにおける放牧家畜(1961年-2009年)
【縦軸】100万頭
【凡例】
ヤギ
ヒツジ
ウシ
スイギュウ
【グラフ下】出典:FAO

アフリカのサヘル地域にあるサハラ砂漠南部には現在、過放牧が進んだこともあり、巨大な黄塵地帯が形成されている。アフリカで最も人口の多い国家、ナイジェリアの報告によれば、毎年約3,500平方キロメートルの放牧地や耕作地が砂漠化で失われているという。

人と家畜の数が増えるにしたがい、畜産農家や畑作農家は、一人当たり、あるいは、一頭当たりでは、これまでになく狭い土地を巡って争うことになる。ここでは土壌の侵食が進んだ結果、特にヤギが急増している。ナイジェリアの人口と家畜の数が現在のペースで増加し続ければ、土地が侵食されて、畜産業と農業が弱体化するだろう。


【グラフ】ナイジェリアにおける放牧家畜(1961年-2008年)
【縦軸】100万頭
【凡例】
ヤギ
ヒツジ
ウシ
【グラフ下】出典:FAO

2番目に大きな黄塵地帯(http://www.earth-policy.org/plan_b_updates/2003/update26参照)は、中国北部および西部、モンゴル西部、中央アジアに広がっている。1978年の経済改革で、農業の責任が国家主導の大規模な生産体制から個々の農家に委ねられるようになってからというもの、中国の家畜の頭数は急上昇している。土地から植生が奪われ、風も土壌を運び去り放牧地の砂漠化が進むにつれて、ヤギの数が増え続けているのだ。


【グラフ】中国における放牧家畜(1961年-2009年)
【縦軸】100万頭
【凡例】
ヤギ
ヒツジ
ウシ
スイギュウ
【グラフ下】出典:FAO

中国の状況と対照的なのが、同じ広さの放牧地を持つ米国の状況である。この2カ国はウシの頭数がほぼ同じであるものの、ヒツジとヤギを合わせた数が米国では900万頭と、中国の2億8,100万頭に比べて極めて少ない。

【グラフ】米国における放牧家畜(1961年-2009年)
【縦軸】100万頭
【凡例】
ウシ
ヒツジ
ヤギ
【グラフ下】出典:FAO


残念ながら、家畜はいずれの種類であれ、植生を奪い、地面を踏み荒らして土壌を劣化させる。輪番放牧や作物と家畜を合わせた複合農業などの持続可能な農業を行えば、土壌の浸食を減らし、耕作地の生産性を上げ、土壌炭素含有量や土壌水分の上昇をもたらすことができる。

状況によっては、インドの酪農共同体の例にあるように
http://www.earth-policy.org/books/pb4/PB4ch9_ss4参照)、少数の家畜を決められた場所で飼育して、飼料を与えるという方法も可能だ。とはいえ、結局のところ、地球上の過放牧をなくすための実用的な方法といえば、家畜の群れの大きさと自然の再生能力とのバランスを保つことだけである。


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リア・ジャニス・カウフマン
電話:(202) 496-9290 内線12
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1350 Connecticut Avenue NW, Suite 403
Washington, DC 20036
ウェブサイト:http://www.earth-policy.org


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


上記のリリースは数字で世界を見る「データハイライト」でした。背景や現状、見通しや意味合いなどをより広く深く知るには、レスターの本を読んで下さい。

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