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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2011年11月10日

総合資源エネルギー調査会基本問題委員会の第3回会合での発表録 (2011.11.10)

エネルギー危機
 
昨日、総合資源エネルギー調査会基本問題委員会の第3回会合が開催されました。私も含め、6人の委員が30分ずつ、プレゼン+質疑応答をしました。 自分の発表内容をお届けします。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ありがとうございます。ここからは、この前半と少し話が変わっていきます。国民視点からのエネルギー政策という観点で、資料3になりますが、お話をさせていただこうと思います。 まず最初に、これまでのエネルギー基本計画は、「産業界向けのエネルギー供給計画」だったと思っています。それを真に、日本全体のエネルギー基本計画にしていくためにお話しできればと思っています。 第1回に寺島委員から、「全体図を見て話すように」というお話があり、その通りだと思います。できるだけ、単なる「べき論」「理想論」ではなくて、すでに出されているデータを元に、これまでのエネルギー政策や議論に欠けている点をお話しできればと思っています。 最初の1ページ目は目次であり、今日お伝えしたいことをまとめたものになっていますが、前半にエネルギー政策、エネルギーの内容についてお話をしようと思います。2つ目は、そのエネルギー政策をどのように作っていくかというプロセスに関してです。今も国民的議論についての質問がありましたが、そのようなことについてもお話をしていこうと思っています。 2ページ目、最初に前半のコンテンツ、内容のほうですが、3ページ目を見ていただければと思います。これまでのエネルギー基本計画は、基本的にどのように供給するか、そしてどのように省エネ製品を作るかというところで、企業を対象にしていましたが、実際には家庭は、直接的なエネルギー消費のかなりの部分を占めていますし、商品選択を通じて、企業のエネルギー消費も左右します。 そして4ページ目。左側にあるのがこれまでのエネルギー基本計画で、基本的に供給サイドをどうするかという話をしていたと思います。需給側については、企業は自主行動計画など、生活者には省エネ製品を提供し、それを買うことによって省エネに務めるというような形でしか、議論されていませんでした。それが右側のような形に、これから変わっていくだろうと思っています。 1つには、エネルギーをつくることが、消費者にも、生活者にもできるような時代になってきました。ですから、単に供給を受ける側ではなくて、自らつくっていくという側面をどのように取り入れていくのか。 そして消費者、生活者自身の少エネ。この「少エネ」は誤字ではなくて、わざと「省く」ではなくて「少ない」という字を使っています。エネルギー効率を高めるという意味で、省くという「省エネ」をよく使いますが、結果的に絶対量が増えてしまうこともよくあります。燃費の効率が上がったけれど走行距離が増えてしまっては、結局、元の木阿弥とか。 そういった意味で、絶対量を減らすという意味で「少エネ」を使っております。そして商品選択を通じて、企業の少エネも促していく。生活者の役割というのが非常に大きくなってくるだろうと思っています。 5ページ目。エネルギーを議論するときにどのような軸で考えるかということが非常に大事ですが、これまでの日本のエネルギー政策は主に、企業・産業界の軸で話をしてきていると思います。企業にとっては、高品質で安定供給される大量のエネルギーを低コストで得ることが、経済活動を営んでいく上で大切だと。それはその通りだと思います。 しかし、6ページに書いておきましたように、生活者はやや異なる基準を持っています。まず、常に高品質、常に安定供給でなくてもいい場合が、家庭の場合は多いです。もちろん、絶対に落ちてもらっては困るパソコンの電源とかはあると思うのですが、たとえば冷蔵庫とか、家庭によっては、「うちの子はテレビを見すぎるから、時々テレビは消えたほうがいい」とか、いろいろ、企業の求めている基準とは違うものがありますし、大量に必要というよりはかなり小規模です。 このように違う基準を持っている、もしくはエネルギーに求めるものが違うと、それぞれに必要なバッファーであるとか、そのためのコストも変わってくると思っています。 7ページに書きましたように、もちろん生活者にとっても、経済性は非常に大切です。エネルギー、高いのではなくて安いエネルギーを使いたいと思っている生活者はたくさんいます。しかし、高い・安いというのは、何と何を比べるかだと思っています。 これまで通りが続くとうい前提で、たとえば「自然エネルギーを入れれば高くなります」という話をよくされます。しかし、これは東京電力の数字を持ってきていますが、この9カ月、化石燃料の値段が上がったことで、1世帯当たり平均して600円以上、家庭の電気代が上がっています。この化石燃料に依存し続けるというオプションと、150円というのは、自然エネルギーを入れるための固定価格買取制度の結果の1つの数字ですが、これを比べていくべきではないか。 数字自体が今、明らかでないので入れていませんが、原子力を続けるというオプションもこの図に同じように入れ、その比較で選んでいくことが大切ではないかと思っています。 8ページに書きましたように、経済性は生活者にとっても大事ですが、私たちにとっては、それよりも大切な基準もあります。たとえば今回の3.11で明らかになったように、災害時にも使えるエネルギーかどうか。1つのエネルギー源に頼っているのではなくて、分散化した、多様化したエネルギー源を持っておくこと。そのような形で安心・安全をつくり出すこと。私たちにとっては、多少コストが上がったとしても大事なことだと思っています。 そして私たちは、単にエネルギーの消費者ではありませんので、自分たちの地域が、自分たちのエネルギーを選ぶことで元気になっていく。そして、日本の社会を良い社会にしていく。そして住みやすい住まいに住むことができる。単なるコストだけではなくて、いろいろと、私たちにとっては大事なものがあるのではないかと思っています。 9ページに書きましたのは、うれしいことに、主に若い人たちの間ですが、今、日本の社会には新しい価値観が広がりつつあるということです。たとえば、所有することにこだわらない暮らしのあり方であるとか、モノを買ったり持つことだけではない幸せのあり方。もしくは、お金に頼らない人生のつくり方。このようなライフスタイル、価値観の変化があります。 これらはすべて、単なる経済成長であるとか、エネルギー消費量を増やすことが幸せだという価値観ではありません。国も、GDPだけではなくて幸福度指標を作ろうという動きが出ていますが、このような価値観やライフスタイルの変化は、エネルギーの政策にとってもプラスになりますし、またこれを後押ししていくようなこともできるのではないかと思います。 10ページ目。これは、生活者のエネルギーついて、データを元に作ってみたものです。これは、中央環境審議会の中長期ロードマップの小委員会などで出されたデータを使っています。 ここでは家庭の、生活者のエネルギーだけを取り出してみています。左の「現在」という所、それぞれのエネルギーを何のために使っているか。たとえば、暖まるため、お湯のため、食べるため、涼しむため等書いてあります。 これを中長期ロードマップのロードマップ上で伸ばしていくと、2030年には少エネ、減らすことによってこれぐらい減らせる。そして、だんだんと、家庭内でエネルギーをつくることができるようになってきます。2050年には半分くらい、エネルギーの消費量自体を減らすことができ、その残った半分も自分の家で、家庭でつくることができるようになる。これで2050年に向けて、CO2も減らしていくというようなロードマップになっています。 これは、ほっておいてそうなるわけではもちろんなくて、今の技術、今後の技術、そしてさまざまな政策を取り入れつつ、可能なロードマップとなっているはずですが、そのために手を打っていく必要があります。 11ページ。家庭のエネルギーというと、どうしても節電、電力に目が行きがちですが、実際には家庭のエネルギー需要の半分は熱です。暖房、給湯などですね。ですから、そちらに対する手当ても十分にしていく必要があります。 12ページから14ページまでは、それぞれの、何のためにエネルギーを使っているかということに対して、いろいろな対策を出しています。こういったものを、どうやって推し進めていくか。それによって生活者のエネルギーを減らしていくということが前提になってきます。 15ページ。これがその施策が必要だというところで、実際に生活者がエネルギーを減らすなりつくるなりする上で、「知識や情報の壁」、「お金の壁」、「制度の壁」など、さまざまな壁があります。それを乗り越えていく手立てを、政府が提供していく必要があると思います。 そして17ページから後半になりますが、これまでのエネルギー基本計画にも、「国民との対話」とか、「国民の声に耳を傾ける」とか、「国民と議論する」ということはたくさんうたわれていますが、実際には、18ページに書いているように、何をしてきたかと言うと、「終わった後に全国で説明会を何カ所でやる」ということがほとんどだったと思います。 今回、この委員会を中継して、誰でも見られるようにするというのは画期的な進歩ですが、それをさらに進めて、もっとtwo-wayにしていきたい。生活者が今日、まさにこの議論を聞いて何を感じたか、何を考えたか、どんな意見を持ったか。それをこの議論の場にフィードバックする仕組みをつくっていきたいと思っています。 20ページは、実際、環境省でそういった若者のワークショップをやった時の声をいくつか挙げています。 21ページは、前回の基本問題委員会を、ソーシャル・ビューイングといって、ネット中継を、これは広島のグループですが、13人で見た人たちが、ここでの議論を元に議論した結果をフィードバックしてもらっています。このようなソーシャル・ビューイングが今、できるようになっていますので、こういったことをもっと取り入れていっていただきたいと思っています。 最後に22ページ、23ページが、このプロセスに関する具体的な提案です。 1つは、このようにネット中継をしていただくのは続けていただくとして、アーカイブにももっと簡単にアクセスできるようにしていただきたい。常にこの時間に見られる人ばかりではありませんので。そして、ソーシャル・ビューイングを促して、そのフィードバックを取りまとめて委員会にフィードバックする。 前回お話があったように、エネ庁のサイトに意見箱ができていますので、そこに意見を入れてもらったものは、必ず取りまとめて資料として、こちらでみんな見るということを約束していただきたいと思います。「国民の意見を聞く」と言うからには、「ここでちゃんと聞かれている」ということ実感がないと、国民のほ うも信頼関係をつくりにくいと思っています。 また、エネルギーについてこれまで国民は、「任せて文句を言う」とスタンスが非常に多かったと思いますので、実際にここでの議論をきっかけに、自分たちで考えたり、調べたり、議論することで、エネルギーの「ワガコト化」を図っていく。それを同時にやっていく必要があると思っています。 実際にそのようなプロセスをやると、国民から見てまだわからないこと、データがないこと、いっぱい出てくると思います。それをきちんと受け付けて、わかりやく情報提供する。そのようなポータルをぜひ、この委員会もしくはエネ庁の中に作っていただきたいと思っています。 この委員会には今回25人の委員がいますが、やはり若者、女性、そして自治体・地域など、代表制が欠けていると思われるところがあります。ですから、そういった方々を、産業界の方にはよくヒアリングという形にすると思いますが、それよりももっとたくさんの声を聞けるワークショップという形で、あちこちで、いろ いろな対象で開催して、その意見をここにフィードバックできるプロセスをやっていただきたいと思います。 私自身も、できる範囲でそれをやっていきますし、委員の皆さんもぜひ、ご自分の大学の学生さんとか、地域でとか、ここでの議論を元に議論してもらって、その内容、議論の結果をフィードバックしていただく。そんなプロセスをつくっていきたいと思っています。 以上です。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 このあと、たくさんの委員からたくさんの質問をいただきました。特に自分と立場や考えが異なる委員からの質問には、いろいろなヒントや気づきがあり、とてもよい機会だったと思います。質疑応答あわせて20分弱だったと思いますので、ご興味のある方は、ぜひ上記のアーカイブからご覧下さい。 そして、私の発表についてでも、他の委員の発表についてでも、ここでの議論の内容やプロセスそのものについてでも、ぜひご意見をお寄せ下さい。 私に届けていただいたものはとりまとめて、委員会にフィードバックします。 (このメールニュースに返信いただくと私に届きます) 資源エネルギー庁の「新しいエネルギー基本計画の策定に向けた意見募集」はこちらにあります。メール、郵送、ファックスで送ることができます。 http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/ikenbosyu.htm 政府の窓口に送られたコメントもとりまとめて委員会にフィードバックしてほしいとお願いしましたので、ちゃんと読ませていただけるはずです。安心してお送り下さい〜!
 

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