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2011年09月23日

アースポリシー研究所「2010年、史上最高気温を記録」 (2011.09.23)

温暖化
 

レスター・ブラウン氏のアースポリシー研究所からのリリースを実践和訳チームが訳してくれましたので、お届けします。3.11後「温暖化は後回し」という雰囲気をあちこちで感じることがありますが、温暖化は後回しにはなってくれません。。。

「地球の気温は単に上昇しているだけではなく、その上昇速度も速まっている」とのこと。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

2010年、史上最高気温を記録

www.earth-policy.org/indicators/C51/temperature_2011

                         アレキサンドラ・ギース

歴史上最も暖かい10年間を締めくくり、2010年の地球の平均気温は摂氏14.63度(以下「摂氏」は省く)、2005年と並び131年間の記録史上最高となった。

このニュースは、2010年に記録的な暑さを経験した19カ国の人々にとっては驚くことではないだろう。ベラルーシでは、8月6日に38.7度という史上最高気温を記録したが、これはすぐ翌日に0.2度差で破られた。

ミャンマーでは気温が47.2度まで上昇し、東南アジア全体での最高記録となった。さらに2010年5月26日には、パキスタンの古代都市モヘンジョ・ダロで53.5度を記録した。これは、パキスタン国内のみならずアジア全体での最高記録であり、実際世界中でこれまでに記録された気温のうち4番目の高さであった。(データ参照。)

【グラフのタイトル】地球の平均気温(1880年〜2010年)
【グラフ縦軸のタイトル】度(摂氏)
【グラフの下の注記】出典:米国航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙科学研究所
【グラフの右の注記】アースポリシー研究所www.earth-policy.org

地球の気温は単に上昇しているだけではなく、その上昇速度も速まっている。1880年〜1970年の間、地球の平均気温は10年につきおよそ0.03度ずつ上昇していた。1970年以降、この上昇速度は劇的に速まり、10年につき0.13度となった。1880年代以降、地球の気温はほぼ0.8度上昇したが、このうち2/3が過去40年の間に起こっている。そして、気温の高い上位10カ年のうち9カ年は、過去10年間に含まれる。

地球の気温は、自然の要因や人間活動に起因するものなど、多数の要因の影響を受けている。エルニーニョ・南方振動として知られる現象の特徴は、太平洋の海水温の異常と大気のパターンの移動である。この現象には相反する二つの相があり、いずれも地球規模の影響をもたらす。地球の平均気温は、一方のエルニーニョになると高くなり、反対のラニーニャになると低くなる傾向がある。

気温の変化は太陽の活動周期の影響も受けている。現在は、太陽放射照度(太陽から地球が受け取るエネルギーの量)が最小近くになり、2010年の後半にはラニーニャが発生したため、今年は例年よりも涼しい年になるだろう。それによって、2010年の記録的な気温はますます目立つことになるだろう。

産業革命以来、人間活動による二酸化炭素のような温室効果ガスの排出により、地球の気候システムの変動幅は、通常の範囲を超えて危険な域に入ってしまった。大気中の二酸化炭素濃度は、280ppmからほぼ390ppmへと、40%近く増加した(1ppmは100万分の1)。大気中の温室効果ガスがますます増えているので、地球の気温は上昇し続けている。

地球の気温の変化は、一見小さくても、その影響は地球全体の海面の高さから大気の循環、そして気象のパターンまで、広い範囲に及ぶ。気象学者は、より暑い気候の特徴は、異常気象の頻度と深刻度が増すことだとしている。2010年の異常気象現象としては、ロシアの熱波、イスラエルの火災、パキスタンとオーストラリアの洪水、中国の地すべり、米国中部大西洋地域の記録的な降雪、大西洋上での12個のハリケーンの発生などがある。これらにより失われた人命も少なくなく、ロシアの熱波と森林火災では5万6,000人が、またパキスタンの洪水では1,760人が死亡した。

2010年の気象はそれまでの年に比べて異常に見えるが、科学者は、このような状況は近い将来もっと一般的になり得ると警告している。また、気象異変はたった一つだけの事象によって引き起こされるわけではないが、NASAの気象学者ジェームズ・ハンセンは、2010年の異常気象は温室効果ガスの過度な排出がなければ起こらなかったことは「ほぼ間違いない」だろう、と述べている。

大気は温度が高くなるほど多くの水蒸気を含み、その増加分の水分によって嵐がひどくなる。ある地域で降水事象の規模が大きくなるのと同時に、別の地域では気候変動のためにより強く長い干ばつが起こる。今世紀の終わりには、干ばつは今の10倍も深刻になり得るという予測もある。

異常気象の回数が増えるのと同様に、最高気温の記録回数の増加、そしてそれに伴う最低気温の記録回数の減少も、温暖化しつつある世界の特徴である。例えば、2010年には19カ国が最高気温の記録を更新した。一方、最低気温の記録を更新したのは1カ国もなかった。

全米では、気象観測所のデータから、2010年のうち9カ月において日最高気温の記録の更新回数が日最低気温の記録の更新回数を上回ったことがわかっている。最高気温と最低気温の記録更新の確率は、半世紀前には大体同じだった。しかし、過去10年間では、最高気温の記録更新が最低気温の2倍以上生じていた。

気温がほかの場所よりも速く上昇している所もある。北極地方の気温は、1950年代以降、3度〜4度高くなった。北極地方は、地球全体の平均の2倍の速さで温暖化が進んでいるため、地球上で最も急速に温暖化している地域となった。北極地方において温暖化が極端に進んでいるのは、一つにはアルベド効果が原因である。海氷が溶けると、氷よりも色の濃い海水が表面に出てくる。表面の色が濃い方が多くのエネルギーが吸収され、より多くの氷が溶け、「自己強化型フィードバック・ループ」が回り始める。

2010年、北極地方の氷の分布は、2007年と2008年に次ぐ史上3番目の規模まで縮小し、体積も何千年もの間の最小と思われる量になった。南北両極地方において、巨大な氷床には心配な兆候が見られる。最近の計算によると、グリーンランドから失われている水は毎年2,500億トン以上に上り、南極半島の氷河の87%が1940年以降に後退している。グリーンランドと南極大陸にある氷の量は、すべて溶ければ世界の海面が70メートル以上上昇するのに十分な量なのだ。

地球の気温が安定しない限り、氷床や山岳氷河の融解による海面上昇と熱による海水そのものの膨張が組み合わさって、海岸沿いの低い土地や島国が水につかり、いずれ何百万人もが立ち退きを余儀なくされるだろう。これまでのところ、海面の上昇は最小限にとどまっており、20世紀の100年間に世界平均で17センチメートルだった。しかし、海面上昇は速度を増しており、21世紀の終わりまでに2メートルの上昇もあり得るとする科学者もいる。

地球の気温の上昇の脅威にさらされているのは海岸近くに住む人々だけではない。気温が高くなると穀物の収穫量と水の供給量が減り、世界中で食糧安全保障が脅かされる。農学者は、生育時期の気温が最適条件よりも1度高くなると、穀粒収量が10%低下するという相関関係を見出している。熱波や干ばつによっても、収穫は大幅に減少し得る。アジアの何億もの人々をはじめとして、山岳氷河から飲料水や灌漑用水を得ている人は世界で数多いが、その山岳氷河も気温上昇のために世界中で縮小している。

人間活動による炭素排出は、どのような自然の変化にも増して、地球の気温の行く末に、ひいては異常気象の頻度や海面の上昇、それに食糧安全保障の状況に影響を与える。2007年の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書では、今世紀の終わりまでに地球の気温は1.1度〜6.4度上昇すると予測されている。

2度〜3度の上昇でさえ、地球は海面が現在よりも約25メートル高かった300万年前と同じくらい温暖になる。その後の研究によると、もし世界が化石燃料を基礎とするエネルギーシステムに依存し続けると、気温上昇はもっと大きく、最大で7.4度と予測されている。

しかし、私たちは、進路を変えることによって違う未来をつくることができる。つまり、炭素を排出しないエネルギー源、交通システムの再構築、そして効率性の向上を備えた道へ進むということである。炭素排出を劇的に減らすことにより、地球の気温の急激な上昇を抑えることができるだろう。

データ、注記、および詳しい資料はこちら www.earth-policy.org
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メディア関連の問い合わせ:
リア・ジャニス・カウフマン
電話:(202)496-9290 内線 12
電子メール:rjk @earthpolicy.org

研究関連の問い合わせ:
アレキサンドラ・ギース
電話:(202)496-9290 内線 16
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アースポリシー研究所
1350 Connecticut Ave. NW, Suite 403
Washington, DC 20036
ウェブサイト:http://www.earthpolicy.org


(翻訳:A.I.、チェッカー:長谷川浩代)

 

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