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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2011年08月30日

数字で見る「土壌浸食の進行につれて低下する穀物生産量」「アイオワ州、穀物生産でカナダを上回り、大豆で中国に迫る」

食と生活
 

[No. 2013] で、食糧の状況をめぐるアースポリシー研究所からの少し前の情報をお伝えしましたが、今月初めに「データハイライト」のリリースがありました。実践和訳チームのメンバーが訳してくれましたので、お届けします。

そのあと、同じく最近アースポリシー研究所から届いた「アイオワ州、穀物生産でカナダを上回り、大豆で中国に迫る」という記事を実践和訳チームメンバーが訳してくれたものをお届けします。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

数字で見る「崖っぷちに立つ世界」〜土壌浸食の進行につれて低下する穀物生産量〜
http://www.earth-policy.org/data_highlights/2011/highlights17

地表の大半を薄く覆う表土層は、文明の基盤である。耕作地の土壌が浸食されても、それを上回る新たな土壌形成がある限り、何ら問題はない。しかし、いったん浸食が新たな土壌形成を超えると、土壌の肥沃度が低下し、やがて耕作地が放棄されることになる。

過放牧(http://www.earth-policy.org/data_highlights/2011/highlights14を参照)や過耕作、森林破壊によって表土を失っていけば、やがてその国は食糧自給力を失ってしまう。この問題に直面している国には、レソト、ハイチ、モンゴル、北朝鮮が挙げられる。

レソトは、国民わずか200万人というアフリカで最も小さな国の一つだが、現在、土壌の損失に大きな代償を払っている。2002年に同国を訪問した国連チームが確認したところによると、「レソトの穀物生産量は減少しており、土壌の浸食と劣化、肥沃度の低下を逆転させる対策をとらなければ、国土の大半で穀物をまったく生産できなくなる恐れがある」という。レソトでは、この10年間で土壌の肥沃度が低下し、それに伴って穀物収穫高が半減した。崩壊していく農業により、同国は食糧を輸入に大きく依存するようになった。

【グラフのタイトル】グラフ:レソトの穀物生産量(1961〜2010年)
【縦軸】単位:千トン
【グラフ下】出典:米国農務省(USDA)
【グラフ右】アースポリシー研究所:www.earth-policy.org

西半球にあるハイチは、40年前、穀物をほとんど自給自足していた。だが、それ以降は人口が倍増したため、ほぼすべての森林と表土の大半が失われ、国内で消費する穀物の半分以上は輸入せざるを得ない状況だ。レソトもハイチも、国連の世界食糧計画が命綱である。

【グラフのタイトル】グラフ:ハイチの穀物生産量(1961〜2010年)
【縦軸】単位:千トン
【グラフ下】出典:米国農務省(USDA)
【グラフ右】アースポリシー研究所:www.earth-policy.org

同じような状況はモンゴルにもみられる。同国では、この20年で小麦生産地の3/4近くが放棄された。小麦生産量は低下し始め、収穫量は4/5減少した。モンゴルの小麦は今、7割近くが輸入物である。

【グラフのタイトル】グラフ:モンゴルの穀物生産量(1961〜2010年)
【縦軸】単位:千トン
【グラフ下】出典:米国農務省(USDA)
【グラフ右】アースポリシー研究所:www.earth-policy.org

北朝鮮では、かなり森林破壊が進み、洪水による土壌浸食と土地の劣化に悩まされている。同国の年間穀
物収穫量は、ピークだった1980年代の500万トン以上から、今世紀最初の10年で350万トンあるかないかというところまで落ち込んだ。

【グラフのタイトル】グラフ:北朝鮮の穀物生産量(1961〜2010年)
【縦軸】単位:千トン
【グラフ下】出典:米国農務省(USDA)
【グラフ右】アースポリシー研究所:www.earth-policy.org

土壌浸食は、人間に大きな打撃を与えている。ハイチ、レソト、モンゴル、北朝鮮、そのほか土壌を失っている多くの国々。そのどこで土地が劣化していようと、人間の健康と土地そのものの健康は切り離せない。

# # #

レスター・R・ブラウン著『仮邦題:崖っぷちに立つ世界』の詳細データは、以下のサイトで入手可能。
www.earth-policy.org

(翻訳:荒木由起子、チェッカー:丹下陽子)

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アイオワ州、穀物生産でカナダを上回り、大豆で中国に迫る

www.earth-policy.org/data_highlights/2011/highlights16

レスター・ブラウン

米国のアイオワ州は、もはや「農業大国」だ。穀物生産量でカナダを上回り、同時に大豆生産量で中国に迫る。いや、これは数字の間違いではない。

昨年、アイオワの穀物収穫高は5,500万トンだったが、カナダは4,500万トンにとどまった。過去5年間の年間平均収穫高は、アイオワが5,700万トンで、カナダは4,900万トンである。

【グラフのタイトル】アイオワとカナダの穀物生産量(1960年-2010年)
【縦軸】百万トン
【凡例】アイオワ、カナダ
【グラフ下】出典:米国農務省の資料を基にアースポリシー研究所で編集
【グラフ右】アースポリシー研究所-www.earth-policy.org

カナダの穀物農地は3,000万エーカーで、そのほとんどが小麦である。一方、アイオワの穀物農地は1,300万エーカーに過ぎず、そのほとんどがトウモロコシ生産に使われる。1エーカー当たりの収穫高の差は極めて大きく、カナダではわずか1.4トンなのに対して、アイオワでは4トンを超える。

大豆について言うと、2010年の大豆生産量はアイオワが1,300万トンであるのに対し、中国は1,500万トンで、過去5年間の平均生産量もほぼこの数字に添っている。アイオワの大豆農地は1,000万エーカーに満たないが、中国は2,200万エーカーである。アイオワの1エーカー当たりの収穫高は1.4トンで、中国の0.7トンのちょうど倍になる。

【グラフのタイトル】アイオワと中国の大豆生産量(1964年-2010年)
【縦軸】百万トン
【凡例】アイオワ、中国
【グラフ下】出典:米国農務省の資料を基にアースポリシー研究所で編集
【グラフ右】アースポリシー研究所-www.earth-policy.org

結論:アイオワ州は、米国のコーンベルト(トウモロコシ生産地帯)という驚異的に生産性の高い農地の中心にある。この高い生産性のおかげで、世界人口のわずか4%を占めるにすぎない米国が、主要穀物であるトウモロコシの世界生産量の40%、大豆でも35%を生産することができている。

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(翻訳:小沢裕子 チェッカー:森由美子)

マスコミ関連の問い合わせ:
リア・ジャニス・カフマン
電話:(202)496-9290 内線12
電子メール:rjk[at]earthpolicy.org

研究についての問い合わせ:
マット・ローニー
電話:(202)496-9290 内線17
電子メール:jmroney[at]earthpolicy.org 
アースポリシー研究所
1350 Connecticut Avenue NW,
Suite 403
Washington, DC 20036

 

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