ホーム > 環境メールニュース > レスター・ブラウン氏「文明を救う活動はスポーツ観戦ではない」 (2011.02....

エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2011年02月03日

レスター・ブラウン氏「文明を救う活動はスポーツ観戦ではない」 (2011.02.02)

大切なこと
 

少し前のものになりますが、レスター・ブラウン氏の書いた文章を実践和訳チームのメンバーが訳してくれたのでお届けします。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

文明を救う活動はスポーツ観戦ではない

www.earthpolicy.org/index.php?/book_bytes/2010/pb4ch10_ss8

レスター・R・ブラウン

21世紀初頭に私たちが住む地球の文明は大規模な環境・社会問題に直面している。これについて、私が一番よく耳にする質問のひとつは「自分に何ができるのか?」だ。よく私に期待されるのはライフスタイルの変化だとか、新聞のリサイクルだとか、電球の取替についての話である。

それも重要には違いないが、それだけでは全く不十分だ。私たちは今、世界経済を立て直さねばならない--それも早急に。つまり、政治に積極的に関わって、必要な変化を起こすべく努力せねばならない。文明を救う活動はスポーツ観戦とは違う。

情報を収集しよう。環境関連の本を読もう。環境危機に陥っていた古代文明がどうなったかを知りたい人は、ジャレド・ダイアモンドの『文明崩壊』、ロナルド・ライトの『暴走する文明』、ジョセフ・テインターの『(仮邦題)複雑な社会の崩壊』を読むとよい。『プランB4.0:人類文明を救うために』はアースポリシー研究所のサイトearthpolicy.orgから無料でダウンロードできるし、一連の補足データやスライド・ショーの要約も合わせて手に入る。もしこの資料がやるべきことを考えるのに役立つと思うなら、他の人にも教えてあげよう。

税制改革、効率の悪い電球の禁止、石炭火力発電所の段階的閉鎖など、あなたが「これだ」と思うテーマを選ぼう。住んでいる地域の道を歩行者・自転車優先にしたり、世界人口を安定させる取り組みをしているグループに加わってもよい。自ら文明救済の活動に加わることほど、エキサイティングでやりがいのある仕事があるだろうか。

自分一人でやりたいと思うかもしれないが、同じような考えの人たちで集まり、グループを作るのも悪くない。手始めに、みんなで話し合って、取り組むべき問題を一つか二つに絞るのを手伝ってもいいだろう。

そして、あなたの投票で選ばれた国や地方レベルの議員たちと意見交換をしよう。自分で取り組もうと決めた具体的な課題に加えて、重要な政策課題が二つある。税制の再構築と財政支出の優先順位の見直しである。「所得税を引き下げ、環境税を引き上げることにより、税制の再構築をする必要がありませんか」とあなたが選んだ議員に手紙やメールを送ろう。コストをコストとして計上しなければ、短期的には「もうかった」と錯覚するかもしれないが、長期的には破滅につながることを議員たちに気づかせよう。

世界では年間1兆ドル(約86兆円)以上のお金が軍事目的で使われているが、それは全く現実を無視したものであり、私たちの未来が直面する最も深刻な脅威に応えていない。その事実をあなたが選んだ議員たちに知ってもらおう。

そして「プランB予算--貧困撲滅、人口安定化、地球の回復のために年間1,870億ドル(約16兆円)を追加予算として組み込むこと--は文明を救うのに理不尽な支出ですか」と尋ねてみよう。また、「世界の軍事予算の1/8を文明救済費用に振り向けるのはそれほど法外な支出ですか」とも訊いてみよう。第二次世界大戦の時、アメリカがどのように総動員体制を取ったかも思い出してもらおう。

それに何よりも、「自分にできること」を軽んじてはいけない。人類学者のマーガレット・ミードはこう話している。「意識の高い市民が少しでもいれば世の中を変えられるということを、決して疑ってはならない。実際のところ、今までもそうした人たちがいたからこそ、世の中は変わってきた」

ライフスタイルを変えて政治の取り組みを支えるのは構わない。ただ、忘れてはならないことがある。ライフスタイルの変化で政治行動を補えても、政治行動を取ったことにはならないのだ。都市計画の専門家であるリチャード・レジスターは、自転車活動家の友人に会ったときの話をよくする。

その友人が着ていたTシャツに書かれていたのは、「僕はちょうど、約1,600キロ分減量したところ。どうやって減量したのか知りたいでしょう?」その方法を尋ねられると、本人は「車を売ったのだ」と答えた。重量1,600キロの自動車を10キロの自転車に変えれば、エネルギーの消費量が劇的に減るのは明らかだ。それでだけでなく、材料の使用も99%減少することになり、間接的にはさらに多くのエネルギーを節約できる。

食べ物を変えるのも効果がある。牛肉などを豊富に摂取する食生活と、野菜中心の食生活とでは、クライメット・フットプリント【訳注:人類が気候変動に及ぼす影響を二酸化炭素排出量で換算した数値。カーボンフットプリントともいう】に大きな違いがある。

その違いは、ガソリンを大量に消費する大型のSUV車と、ガソリンと電気を併用した非常に燃費のよいハイブリッド車とほぼ同じだ。私たちのうち、脂肪の豊富な畜産品を多く食べる人たちが食物連鎖のレベルを下げることで、人間と文明、双方のためになる。

こうしたライフスタイルの変化は思いのほか痛みが伴わず、たいてい健康にもよい。それでは、犠牲を伴う行為はどうだろう。第二次世界大戦の最中、何百万人もの若者が徴兵され、尊い犠牲を払うように求められた。しかし、文明を救う戦いでは、命を犠牲にする必要はない。

私たちに求められているのは、積極的に政治に関わることと、ライフスタイルを変えることだけだ。第二次世界大戦が始まった頃、ルーズベルト大統領は米国国民に対して、状況に合わせてライフスタイルを変えるよう、たびたび呼びかけていた。私たちは今、文明の救済のために、時間、資金、消費の減少の面でどのような貢献ができるだろうか。

その選択を下すのは私たちだ--選ぶのはあなたであり、私である。従来のやり方にしがみついて、経済を思いのままに操ることもできる。だがその場合、経済はもともと備わっていた支援システムを破壊し続けて、最終的には経済そのものが自滅することになる。

あるいは、プランBを選択して、方向性を変える世代となり、世界を持続可能な進歩の道へと導くことも可能だ。いずれにせよ、選択を下すのは私たちの世代だ。しかし、その影響を受けるのは、これから地球に生まれてくる全ての世代なのである。

# # #

「自分にできること」のアイデアに関しては、アースポリシー研究所のアクションセンターを参照のこと。

出典:レスター・R・ブラウン著『プランB4.0:人類文明を救うために』(W.W.ノートン社、ニューヨーク、2009年)、第10章「私たちは十分なスピードで総力を結集できるのだろうか?」。以下のサイトより入手可。
www.earthpolicy.org/index.php?/books/pb4

メディア関連の問い合わせ:
リア・ジャニス・カウフマン
電話:(202) 496-9290 内線12
電子メール:rjk@earthpolicy.org

研究関連の問い合わせ:
ジャネット・ラーセン
電話:(202) 496-9290 内線14
電子メール:jlarsen@earthpolicy.org

アースポリシー研究所
1350 Connecticut Ave. NW, Suite 403
Washington, DC 20036
ウェブサイト:www.earthpolicy.org

(翻訳:小沢裕子、保科京子)

 

このページの先頭へ

このページの先頭へ