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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2011年01月15日

レスター・ブラウン氏「プランB―文明を救う計画」 (2011.01.14)

新しいあり方へ
 

レスター・ブラウン氏から新著が届きました。

「World on the Edge: How to Prevent Environmental and Economic Collapse」
http://www.earth-policy.org/books/wote

上記のサイトから、無料でpdfをダウンロードすることができます。ご興味のある方、ぜひどうぞ〜!

そのレスターのアースポリシー研究所からのプレスリリース、実践和訳チームのメンバーが訳してくれましたので、お届けします。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

プランB―文明を救う計画

www.earthpolicy.org/index.php?/book_bytes/2010/pb4ch01_ss6
レスター・R・ブラウン

未来について分からないことは多くある。しかし、確実に分かっていることが一つある。それは、世界の食糧経済を弱体化させている環境分野での流れを逆行させることができないことも含めて、これまでのやり方が長くは続かないだろう、ということだ。極めて大きな変化は避けられない。

「私たちの文明の終焉は、もはや理屈でも学問上起こり得ることでもない。私たちはまさにその道を歩んでいるのだ」と環境保護基金の気候プログラム・ディレクターであるピーター・ゴールドマークは述べている。時間切れになる前に、果たして別の道を見つけ出すことができるだろうか? 私はできると思う。その道を私はプランBと呼んでいる。

プランBは、今までのやり方に代わる選択肢である。その目的は、世界を現在の衰退・崩壊への道から、食糧安全保障の回復と文明維持が可能な新たな道へと転換させることである。

開発や土壌侵食による耕作地の喪失、地下水位の低下、食糧から燃料への転換、炭素排出量の増加など、まさに現在の食糧事情の悪化の背後にある動向が農業自体の域をはるかに超えているように、その動向への対応も同様に農業の域を超えるものでなくてはならない。

かつて、農業研究の拡大、農業従事者への融資の拡大、農業分野における他のあらゆる明白な事柄を左右する鍵を握っていたのは米国農務省だった。しかし、今や将来の食糧供給の安定化は、私たちの社会全体の力を結集できるかどうかにかかっている。

このような理由から、プランBは、これまで行われてきた世界的などの取り組みよりもはるかに壮大であり、規模あるいは緊急性の点で前例がない。プランBは、相互に依存している次の4つの要素で構成されている。すなわち、2020年までに正味の二酸化炭素排出量を80%削減、80億人以下での世界人口の安定化、貧困の撲滅、地球の自然システム(土壌、帯水層、森、草原、漁業など)の修復である。このプランの壮大さを後押ししているのは、政治的に実現可能であると認識されていることではなく、科学的な現実なのである。

炭素排出量を削減するプランには、世界的なエネルギー効率の劇的な向上、再生エネルギー源の大規模な開発への投資、森林伐採の禁止、10億本単位での植樹も含まれている。プランBの概要は、基本的には、石油、石炭、天然ガスを主動力とした経済から、風力、太陽、地熱エネルギーを主動力とした経済への転換である。

プランBにおける人口安定化の目標は80億人以下に設定されている。それはただ単に私が、2050年の世界人口として国連の人口統計学者たちが予想した92億人には到達しないだろうと考えているからだ。

2050年までに増加すると予測される24億人の圧倒的多数は、土地資源や水資源の基盤が悪化し、飢餓が拡大している開発途上国で生まれる子どもたちだ。こうした国々の支援体制の多くはすでに弱体化し、中には崩壊しているものもある。

問題は、92億人に到達する前に人口増加が止まるかどうかではなく、人口増加を抑制する要因が、世界が小家族化にいち早く移行するからなのか、あるいはそれに失敗し、死亡率が上昇することによって人口増加が抑制されるからなのか、ということである。プランBでは出生率の低下という選択肢を採用している。

貧困の撲滅は、以下の3つの理由から真っ先に達成すべき目標である。一つには、世界中の女性に生殖に関する医療と家族計画に関するサービスを提供するとともに、貧困を撲滅することが、世界規模での小家族化への移行を加速させる鍵となるからである。

また、貧困の撲滅は、貧困国を国際社会へ参加させる一助ともなり、そうした国々が気候の安定化などの問題に関心を持つことにつながるからである。食うや食わずの状態であれば、地球の気候安定化に向けての取り組みに意欲的になることは困難である。3つ目として、貧困の撲滅は、人道的な課題だからである。文明社会の特徴の一つは、他人を思いやる懐の深さである。

プランBの4つ目の要素は、人類を支える自然のシステムを修復し保護することである。これには、土壌保全、森林伐採の禁止、森林再生の促進、漁場の回復、水の生産性を高める帯水層を保護する世界規模の取り組みなどが含まれる。これらのシステムの悪化の流れを逆転させることができなければ、現在10億人を超える飢餓人口の増加傾向を減少に転じさせることはできないだろう。

この「私たちの文明を救う計画」は、スケールが壮大なだけでなく、実行の緊急性が極めて高い。計画の成功は、戦時下のようなスピードで実行できるか、つまり真珠湾攻撃後の1942年に米国の産業経済が成し遂げた改革を彷彿とさせる速さで、世界のエネルギー産業を再編できるかどうかにかかっている。

当時米国は、わずか数カ月のうちに、自動車製造を軍用機や戦車、船舶の製造へと切り替えた。現在の構造改革は、抜本的な優先順位の並べ替えを行わずに実現することは不可能だ。しかも、犠牲なしには成し得ないだろう。1942年の産業改革の事例では、約3年に及んだ新車の販売禁止措置が鍵となった。

今、私たちは途方もない課題に直面しているが、楽観視できることも多い。私たちが抱えている問題はすべて、既存の技術で対応できる。また、世界経済を崩壊への道から環境的に持続可能な道へと軌道修正するために私たちがすべきことの大半が、既に複数の国々で実施されている。例をあげると、30カ国以上が基本的に人口規模を安定させている。

プランBの要素は、既に実用化された技術の中に見いだせる。エネルギー分野を例にとると、最新型の風力タービン1基で、老朽化した油井1本よりも多くのエネルギーを得ることが可能だ。シボレー・ボルトのような、今後市場投入されるガソリン・電気併用の新しいプラグインハイブリッド車の燃費は、1リットル当たり100キロ近くになり得る。

プランBが描く2020年のエネルギー経済では、米国内の自動車のほとんどが、プラグインハイブリッド車と完全電気自動車になり、風力発電による電気を主な燃料として、ガソリン換算で1リットル当たり約44円未満のコストで走る。

世界は、照明技術改革では初期段階にある。小型蛍光灯(CFL)は、100年の歴史を持つ白熱灯と同じ明るさだが、1/4の電力しか消費しない。それ以上に胸を躍らせてくれるのは、消費電力が白熱灯の15%という、さらに進んだ照明技術──発光ダイオード(LED)──だ。白熱灯をLEDに替え、動作センサーや調光器を設置すれば、照明に使う電力を90%以上削減できる。

国レベルのプランBのモデルとしては、デンマークが現在電力の20%以上を風力でまかなっており、これを50%にまで増やす計画である。中国では、約2,700万世帯が屋上に設置した太陽熱温水器から温水を得ている。アイスランドでは、現在90%の家庭で暖房に地熱エネルギーを利用しており、家庭用暖房には事実上石炭を使っていない。

森林が再生された韓国の山々にも、プランBの世界の姿を見て取れる。韓国の国土は、一度はほとんど木がなくなり荒れ果てた。しかし現在では65%が森林に覆われ、洪水や土壌浸食が抑えられて、同国の地方にも健康で安定した環境が戻っている。米国では、この四半世紀で耕作地の1/10(そのほとんどは非常に浸食されやすい土地)が休耕地となり、残りの耕作地では保全耕起法への移行が進んで、土壌浸食が40%減少した。その一方で、穀物収穫高は1/5増加している。

都市の中にも、非常に革新的なリーダーシップをとっているところがある。ブラジルのクリチバでは、1974年に交通システムの再構築が始まった。その後の20年で市の人口は2倍になったが、自動車の交通量は30%減少した。アムステルダムには様々な都市交通システムがあるが、市内の移動の約40%には自転車が利用されている。ロンドンは、市の中心部に入る自動車に課税し、その税収を公共交通機関の整備に投資している。

難題は、「自然界が定めた数多くの最終期限に間に合わなかったため、経済システムが崩壊しはじめた」という事態になる前に、新しい経済を戦時下のように大急ぎで築かなければならないことだ。

この新しい、永続的な経済の建設に参加することは、心躍る経験だ。そして新しい経済がもたらす生活の質も、心楽しいものとなるだろう。人口が安定し、森林が拡大し、炭素排出が減少する世界は、私たちの手の届くところにあるのだ。

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出典:レスター・R・ブラウン著、『プランB4.0:人類文明を救うために』(Plan B 4.0: Mobilizing to Save Civilization)第1章「未来を売ってしまう現世代」(“Selling Our Future”)2009年、W.W.ノートン社(ニューヨーク)より刊行。www.earthpolicy.org/index.php?/books/pb4にて入手可。

さらに詳しいデータ・情報はwww.earthpolicy.orgを参照のこと。

メディア関連の問い合わせ:
リア・ジャニス・カウフマン
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アースポリシー研究所
1350 Connecticut Ave. NW, Suite 403
Washington, DC 20036
ウェブサイト:www.earthpolicy.org

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

余談ですが、レスターはほぼ毎年、春のチェリー・ブロッサムマラソン(10マイル)に出場しています。そのために、週3回ほどのジョギングを(来日中も!)欠かしません。

まえは、「何が面白くて走っているんだろ?」と思ってましたが、自分も走るようになるなんてね!(^^;

> 初めての「フルマラソン」チャレンジでNGOへの寄付を募ります。
> どうぞご支援・ご協力を!
> http://justgiving.jp/c/1050
(↑いまの私のメールのフッタです)

初のフルマラソンまで、あとちょうど10日!ですー。レスターにも「今度走るんだよ」ってメールしたところです。サバイバルへのレース、人類も私もがんばらなくちゃ!(^^;

 

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