ホーム > 環境メールニュース > 「日刊 温暖化新聞・号外2009」サティシュ・クマールさんへのインタビューより(...

エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2010年11月14日

「日刊 温暖化新聞・号外2009」サティシュ・クマールさんへのインタビューより(2010.11.14)

温暖化
 

日刊 温暖化新聞のトップページに、
http://daily-ondanka.com/

YouTubeコーナーへのリンクが付きました。
http://www.youtube.com/dailyondanka

今のところ、昨年のエコプロ展で出した号外のためにさせていただいたサティシュ・クマールさんへのインタビューのほか、コクヨ ecology heart 2010 での坂本龍一さんとの鼎談・座談会などへのリンクがあります。

サティシュ・クマール インタビュー 2009(聞き手:枝廣淳子)
http://www.youtube.com/watch?v=sJM3hBPCVYs

サティシュさんへのインタビューは本当に素敵な時間でした。いろいろと大切なことを考えさせてもらえました。

このインタビューから抜粋して、昨年の「日刊 温暖化新聞・号外」に掲載しました。その内容をお届けします。インタビューのエッセンスをどうぞ!

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

枝廣淳子(以下、E) 若者や市民のひとりひとりの間で意識の高まりが見られます。こうした意識の高い人たちは毎日の生活で、レジ袋を使うのではなく、マイバッグを持参し、割り箸を使うのではなく、マイ箸を持ち歩くなど、小さな行動をしています。小さな行動は彼らの日常では重要な意味を持っています。

サティシュ・クマール(以下、S) そうですね。

E では、そうした行動は社会と経済にどうやって結び付けることができるでしょうか? こうした意識の高い人たちが、日常的に小さな行動をするだけでなく、経済や社会の再設計にされるように寄与するにはどうしたらいいのでしょうか? 解決に参加するにはどうしたよいのでしょうか?

S 二つのことが必要です。一つはすでにやっていることについて感謝することです。なぜなら行動している人たちは大勢いますが、感謝されていません。人々は、「おかしいんじゃない?」「変わってるね」「やけにこだわってるね」「社会のためっていうけど、一体どうやって生き残るつもり?」と言います。

けれど、勇敢な人たちを褒め称えなくてはなりません。新しい試みやアイデアを実践するために、大胆な行動をして、孤立している人たちを称賛しなければなりません。なぜなら私たちはどのような結果になるかわからないのですから。でも、少なくとも彼らはよくしようと何かを実践しているのです。そうした人たちを称賛し、高く評価し、支持するべきなのです。

 もう一つは、教育センターを作る必要があります。英国のシューマッハー・カレッジのように、さまざまなことについて実験し学ぶことができる新しい教育センターです。インドでも、バンダナ・シバ博士によって、ナブダニャ・センターが作られました。

生活のなかでいろいろなことを試している若い人たちが集まって、アイデアを共有し、お互いに学び、刺激を与え合うセンターが必要なのです。彼らはその後で自分たちのところへ戻り、取り組みを続けます。

 そうすれば、こうした人たちが増えて、新しい、若い人たちも同じように取り組むようになります。また、教育センターでは、有機農法や自然農法、太陽や風力などの再生可能エネルギー、必要とされる新しいスキルなどについて学ぶこともできます。

新しいアイデアも浮かぶでしょう。よい生活とはどんなものだろうか? 私たちはよい生活をしたいと思っています。環境を意識し、エコに暮らすことは、よい生活をするという意味なのです。よい生活とは、楽しくて、快適で、ストレスがなく、取り組みやすく、家族も自由で、環境に影響を及ぼさない、それでもなお、楽しい生活です。

 私たちは困難で厳しいライフスタイルはいやなのです。エコなライフスタイルとは、何かを持たずに生活するというだけのことではありません。エコなライフスタイルとは、自然が豊かなことです。自然は破壊されず、豊かなのです。豊かさに反対するのではなく、地球を破壊することに反対しているのです。世界に向けてこうしたメッセージを発信しなければなりません。

 行動している若い人々は、さらに一歩踏み込んで何かに取り組んでいます。再び貧しい状態へ戻ろうとしているのではありません。後戻りではないのです。新しいビジョンに向けて、よい日本の暮らしに向けて前進しているのです。自然を守りながら、日本の地域社会の団結力も高めます。日本人は誇りを持ち、自信に満ち、世界に貢献できます。日本人はもっと自信を持たなければなりません。私たちのビジョンはとても前向きなビジョンです。

E サティシュさんは楽観的ですか?

S ええ、楽観的ですよ。多くの人々がこの難題に立ち向かうと思います。アル・ゴアもそうですよね。政治家があのような変容を遂げるなんて、変化の兆しです。意識は非常に高まっています。意識は行動の第一歩です。いまは行動の時です。

そして、私はコペンハーゲン会議(エダヒロ注:温暖化懐疑論者のロンボルグが中心となって、経済学者たちにグローバルな課題の費用対効果を計算させ、優先順位をつけさせた会議。温暖化の優先順位はかなり低かった)でさえもいいことだと思っています。というのも、コペンハーゲンでは、少なくとも課題が明確化され、ポイントが挙げられます。そして行動しない政府は批判されるでしょう。いいことですね。世界は行動を求めています。メディアも行動を求めています。

世界の各国政府、指導者、政治的指導者が行動しなければ、批判されるでしょう。ですから、コペンハーゲン会議で集まることはいいことだと思うのです。

E 変化を起こす最も重要なレバレッジ・ポイントは、教育と意識向上だとお考えですか?

S ええ、その通りです。こうしたアイデアについて総体的かつ的確に検討し理解するためには、日本でも少なくとも一つ以上のセンターが必要だと思います。

また、社会的公正、環境の持続可能性、精神性、環境といったそれぞれの分野での運動をあわせる必要があります。これらの問題はすべて互いに関連しています。

「世界平和のために活動している」「憲法第9条について取り組んでいる」という人がいます。「暴力を阻止するためには命をささげるけど、別のことのために死ぬことはできない」という声も聞きますが、これは間違っています。環境活動家は、「木を守り、有機農業を推進するために命をかけているけど、憲法第9条は関係ないね」だとか、「スピリチュアルなことに取り組んでいるけど、開発とは無関係さ」という人もいます。このように分裂していてはうまくいかないと思うのです。私たちの運動は総体的なもので、私たちすべてが一つの運動の一部なのです。

 それぞれに別の組織を持ってもかまいません。ビジョンと世界観が広くて大きく、大局的な見方を常に忘れないでいれば、個別の組織があっても大丈夫です。持続可能な未来のためには、私たちはみんなで協力しなければならないのです。

 私は、これを「土壌(soil)」、「魂(soul)」、「社会(society)」の協調と呼んでいます。「土壌」は環境、つまり生態学にあります。環境運動は土壌に関するものです。なぜならすべてのものが土壌から作られるからです。生命は土壌から作られます。私たちの食べ物、衣服、家、すべてが土壌なのです。

「魂」は精神世界に関する運動です。私たちには情熱、詩、芸術、音楽、関わり合い、友情、そして家族が必要です。これらはすべて精神の本質です。精神性がなければ、関係も存在しません。私にとって精神性は、私たちみんなにつながりがあるということです。

そうした理解と意識と信念から、私はあなたに害を及ぼすべきではありません。なぜならあなたは私とつながっているからです。私は木に害を及ぼすべきではありません。なぜなら木は私とつながっているからです。私は誰にも害を及ぼすべきではありません。なぜなら、みんなは私の兄弟や姉妹だからです。それが精神性です。私たちは個人の成長と精神性を環境運動の一部として取り入れる必要があります。

「社会」の公正運動も同じです。第三世界では、10億人が飢えたまま夜に眠りにつきます。それなのに私たちは「進歩」しているというのです。21世紀に、私たちの兄弟であり、姉妹であり、子供である、1人や2人ではない、10億人もの人々が食べるものがないまま眠りにつきます。

 21世紀だというのに、私たちは一体どのようなシステムを持っているのでしょうか。それは道理に合いません。市場の破綻です。資本主義の、社会主義の、共産主義の破綻です。政治の破綻です。グローバリゼーションの破綻です。私たちの兄弟姉妹である10億人が飢えたまま眠りについているのであれば、私たちのシステムは完全に破綻したことになります。

 私たちの運動には、「土壌」、「魂」、「社会」という側面があります。さらに想像は膨らみます。日本ではもっと大規模な運動を起こさなければなりません。それぞれが関心のある特定の問題について、小さな組織を持っていいのです。ただし、全体像を覚えていてください。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


サティシュさんは、40年以上にわたり世界中に熱心な愛読者をもつ雑誌『リサージェンス』の編集長を務めるととともに、シューマッハー・カレッジを創設し、「土壌(soil)」「魂(soul)」「社会(society)」の教育と啓発を続けています。

この『リサージェンス』から選集を編んで、翻訳出版したものがこちらです。

『つながりを取りもどす時代へ
  ―リサージェンス誌選集 持続可能な社会をめざす環境思想』
 
枝廣淳子(監訳) 大月書店

サティシュ・クマール、アル・ゴア、ワンガリ・マータイ、スティング、ハーマン・デイリー、ヴァンダナ・シヴァ、ヘレナ・ノーバーグ=ホッジ、トマス・ムーアなど、世界をリードする人物たちが、20の視点を投げかけます。現在のさまざまな問題の構造に、自分がどう関わっているのか、そしてその構造を変えていくために自分には何ができるのかを考えていくうえで、本書は最高のガイド役となってくれると思います。ご興味のある方、ぜひどうぞー。

日本には多くの「環境雑誌」がありますが、ロハス系かビジネス系かショッピング系?が多く、「リサージェンス」のように、エコロジーとスピリチュアルを深く追求するものは、まだないように思います。

「いつかリサージェンスに自分の文章が載ったらステキだなぁ!」と、何年も前からあこがれていたのですが、夢が叶いました! 2010年9月/10月号に、私なりに面白く心強い日本の状況を伝える小文が掲載されました。うれしいですー。
http://www.resurgence.org/magazine/article3174.html

内容は、以下などで書いている「3脱」の動きなどです。
http://daily-ondanka.com/edahiro/2010/20100316_1.html

3脱……「暮らしの脱所有化」「幸せの脱物質化」「人生の脱貨幣化」が、編集長であるサティシュさんにとっても、まだ世界中に広がる読者にとっても、興味深い動きだとと思われたたようです。

「リサージェンスを読んだよ」と海外から声がかかることが増えてきました。
またここから次の何かにつながっていきそう……です。(^^;

さて、今年のエコプロ展でも、日刊 温暖化新聞は号外を出します。今回のインタビューは? そして特集は? どうぞお楽しみに!

 

このページの先頭へ

このページの先頭へ