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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2010年10月08日

アースポリシー研究所より「不調和をきたす地球――温暖化が乱す季節のタイミング」 (2010.10.08)

温暖化
 

昨日ご案内した「"成長"を考え直す世界の動きについての勉強会」、さっそくお申し込みをいただいていて、うれしく思っています。

春のエコ・マーケティング勉強会はお部屋がきゅうくつになってしまったので、今回は広めのお部屋をとってあります。どうぞおいでください〜。

ところで、前号のメールニュースに誤植がありました。

"Growth is unsustainable"
"De-growth is unstable"
"Decoupling won't work"

でしたのに、2行目が1行目と同じになっていました(日本語は合っています)失礼しましたー。m(_ _)m

さて、レスター・ブラウン氏の研究所からのプレスリリースを実践和訳チームが訳してくれたものをお届けしようと思いますが、その前に少しCMです〜。

「その実践和訳チームに入りたいのだがどうしたらよいのか?」というお問い合わせを時々いただきます。この実践和訳チームは、2001年に立ち上げてから、少しずつメンバーを増やして活動中の少数精鋭チームです。メールニュースのためにさまざまな翻訳をボランティアでやってくれているほか、このチームのメンバーが参加して何冊もの書籍も翻訳出版しています。
http://es-inc.jp/toratama/activity/index.html

現在、このメンバーになるには2つの道があります。1つは、翻訳者を育てるトレーニング・コミュニティ「トラたま」に参加して、そこで開催されるトライアル(選抜試験)を受けて合格する道です。

トラたまコミュニティ

ちなみに、トラたまの秋の講座では、ちょうど「環境経済学で学ぶ経済用語:2010年10月」が始まったところです。今からの申し込み・ご参加も問題ないですので、よろしければぜひどうぞ! 詳細はこちらにあります。
http://www.es-inc.jp/toratama/news/2010/20100924_07.html

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここからご案内〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

環境経済学の入門書を題材に、環境経済学の考え方や経済用語の訳し方を学ぶコースです。経済用語はもちろん、ビジネス系の翻訳で一般的に使われている文体や表現も合わせて学ぶことができます。

対象は中級以上ですが、勉強を始めたばかりの方でも、環境経済学にご興味があれば大歓迎です。

「経済はちょっと苦手」という方も、講師のサポートを受けながら、この機会に基礎固めをしていきませんか?

この講座で継続的に学習を進め、しっかりした土台作りをしていきましょう。

夏期講座に参加した方の感想が届いています。こちらからご覧下さい。
http://www.es-inc.jp/toratama/activity/voices.html

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ご案内ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

実践和訳チームのメンバーになるもう1つの道は、年に2回ほど開催している「実践型トライアルを兼ねての翻訳道場」に参加し、そこでのトライアルに合格する道です。

トラたまコミュニティのトレーニングが、メール配信とウェブ掲示板を活用したオンライン型トレーニング(ですのでお手頃な価格で受講できます)であるのに対して、道場は1日朝から夕方まで(そして夜の懇親会まで)じっくりみっちりと、少人数での対面型トレーニングを行います。

一人ひとりの訳文を見ながら、レベルや課題にあわせた指導をします。ふだんの自学自勉では味わえない刺激と気づき、仲間とやる気が得られる機会です。冬の道場は12月26日に開催します。自分にカツを入れたい方、新年を前に自分の課題を明確にし、来年の飛躍につなげたい方、お待ちしていますー。

12月26日「実践型トライアルを兼ねての翻訳道場」開催のご案内

CMは以上です。質の良い翻訳ができるようになるには、地道な勉強が必要です。でもいくらコツコツやっても方向ややり方が合っていないともったいない。効果的・効率的にぜひ翻訳力を伸ばして、「力のある翻訳者を250人育てたい。そうしたら、1人1ページで、原書を1日で訳せる!」という私の夢の実現にも力を貸して下さい〜(^^;

というわけで、その250人の最初のグループである実践和訳チームの翻訳をお届けします。温暖化が生物多様性に及ぼす影響について、じっくりお読み下さい。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

不調和をきたす地球――温暖化が乱す季節のタイミング

www.earthpolicy.org/index.php?/plan_b_updates/2010/update88
ジャネット・ラーセン

おなかをすかせた生まれたてのひなが、口を大きく開け、初めての食事を運んでくれる親鳥を待っている。クロッカスが雪の中から顔をのぞかせる。氷が割れ雪解けが始まり、川が勢いよく流れ出す。冬眠から目覚めた哺乳動物が眠そうな姿を見せ、早い時期に現れたカエルの鳴き声が闇夜に響く。

春の目覚めは、長きにわたって詩人や芸術家、暦作家に素材を提供してきた。日照時間や雨量、気温が変わりやすいことで知られている時期でさえ、昔ながらの季節の知恵には、世代を超えて伝えられるほど一貫性のあるものもあった。

例えばある種の花が咲き始めると、ある魚が川で泳ぎ出す時期やキノコ採りの時期、作物を植える時期が、従来は分かったものだった。こうした季節的事象のタイミングは、複雑なダンスの中で調和がとれている。これはおそらく、何らかの衝撃によってステップが狂うまでは過小評価されているダンスだ。

世界の平均気温が1970年代から0.5度上昇し、春季の気温上昇は地球の温帯地域全体で早まってきている。多くの生物が、重要なライフサイクルの事象の時期をずらすことで温暖化に対応してきた。ただ問題となるのは、あらゆる種が同じ速さで、あるいは同方向に調整しているわけではないため、捕食者と被食者、チョウと花、魚と植物プランクトン、そして生命体系全体を結びつけるダンスのリズムが狂ってしまうことだ。

別名「生物季節学」として知られる季節ごとの生物学的事象のタイミングは、地域によっては何世紀にもわたって把握されている。日本で非常に重んじられている桜の開花は、1400年以前から綿密に記録されてきた。桜は開花時期にはっきりとした傾向を示していなかったが、20世紀初期になると開花が早まり出し、1950年頃から著しく開花が早まっている。

作家ヘンリー・デイビッド・ソローによる詳細な記録は、1800年代半ば以降、マサチューセッツ州コンコード市で春がどのように変わってきたかを判断する手だてとなっている。500以上の植物種やその亜種に関するソローの記述を、現代の調査やこれまでの記録と比較した研究者たちによれば、コンコードでは春の気温が上がるにつれ、過去150年間で平均1週間春の開花が早まっていた。

開花の時期を早めた植物種が長年にわたって繁栄してきたように見える一方で、そうでない植物種の個体数は減少した。開花に後れを取る花々には、アスター、ミント、ラン、ユリ、スミレも含まれる。在来種の中には、劇的に開花を早めたものもある。ハイブッシュ・ブルーベリーが3週間、カタバミは1カ月だ。

しかし、こうした在来種はどちらかといえば例外かもしれない。というのも、平均して、侵略的外来種は在来種よりも11日間開花が早まったからだ。侵略的外来種はより迅速に温暖化に対応するらしく、何種類かの在来種を駆逐して絶滅へと導く可能性が懸念されている。

春の訪れが早まり、秋の訪れが遅れるということは、時期外れの突然の寒波や、夏の盛りの暑さで植物が枯れない限りは、成長時期が長くなるということだ。ドイツでは現在、アンズとモモの木が1961年に比べて半月以上早く花を付けている。

米国北東部のリンゴの開花は、1965年から2001年の間に8日間早まった。リンゴの木は花を付ける前に冷寒期が必要であり、暖冬は収穫減に結びついてきた。春の開花が早まると、何週間も花粉の季節が長引く地域もある。アレルギーにお悩みの方、ご用心を。この傾向は地球温暖化が進むにつれて悪化しそうだ。

成長期間が長びくことで恩恵を受ける、テンサイのような作物もある。しかし、ライ麦のような重要な穀物を含めそのほかの食物は、早い時期に気温が上昇すると、食用となる種子よりも生長に多くのエネルギーをつぎ込むことを強いられ、収穫を損なうことになりかねない。暖かくなるのが早過ぎると、遅霜による害を被る危険性も高くなる。例えば2007年に、米国の主要農業地域では暖かい3月によって早くに春を迎えたが、結局、4月は異常な寒さに見舞われた。芽生えたばかりの作物が被った被害額は20億ドル(約1,824億8,000万円)を超えた。

こうした、変化する植物群落が、同じ速さで変化しているかどうかも分からない授粉媒介者や草食動物と、具体的にどのように相互作用していくことになるかについては、答えが出ていない。動物界では温暖化に対する反応はさまざまだ。

元々春早くから活動を開始するコマツグミだが、今はその時期をさらに早めている。コロラド州のロッキー山脈では、コマツグミは南から北へだけではなく、以前と比べてさらに標高の高いところにまで移動している。この鳥たちは2009年には、1980年代初めより2週間早く高地の夏の繁殖地まで渡ることで、越冬地の温暖化に対応している。雪解けのはるか前に渡ってしまったコマツグミが、餌探しに大変な苦労をする年もある。

オランダで繁殖するマダラヒタキに関しては、西アフリカの越冬地からの渡りの時期は変わっていないが、早い春の訪れによって、渡来後できるだけ早いうちに繁殖するようになった。不運なことに、彼らの餌となる毛虫はさらにしっかりと対応できていた。ある森林地帯では、毛虫は20年間で平均15日間ふ化を早めている一方、マダラヒタキのふ化は10日間早まっただけだ。毛虫の数のピークがまだ幾分遅い場所では、ヒタキの数は10%の減少だが、毛虫のふ化が最も早まったところでは、その数は約90%減と激減した。

欧州全体をみると、早い春の訪れに合わせて渡りの時期を早めなかった鳥たちの数は、1990年以降減少している。短距離を移動する渡り鳥は、長距離を移動する渡り鳥よりもうまく適応しているようだ。暖冬が原因で、コクガンやカナダガンといった、渡りを完全にやめてしまう鳥たちの個体数が増えるという事態にさえなってきている。しかし渡りをやめた鳥たちは、早く芽生えた作物と同様、突然の寒波による全滅の危機にさらされている。

オランダの毛虫の例で明らかなように、寿命の短い昆虫は、最速級のライフサイクルで地球温暖化に対応している。1980年以降ほぼ毎年、長期平均よりも暑い夏が続いている中欧では、温暖化によって早く活動し始め、同じ年に通常より一世代多く生まれるチョウやガも現に数種出てきている。これらの種においては、1850年代までさかのぼっても記録にないことである。天敵が増えなければ、チョウやガの数は爆発的に増え、その幼虫が食べる植物に過大な負荷をかけることになりかねない。

北米西部では、高地のマツクイムシが同じ様相を呈している。暖かくなると、マツクイムシは2年ではなく1年で生涯を終えることもある。かつて1年に2週間だけ活動していた昆虫は今、森林を食い尽くしながら最大6カ月間飛び回っているところが確認されている。早い春の訪れと暖冬は、ダニ媒介脳炎や、暖かい環境の方が生息しやすい昆虫によって広がる、ほかの疾患の発生率の増加とも関連付けられている。

ライフサイクルの時期を調整するだけでなく、また調整する代わりに、生息地の範囲を、多くは極地方向や高地へと移動することによって温暖化に対応してきた生物もいる。鳥やチョウの生息域は10年で平均6キロメートル移動していることが既に確認された。これよりはるかに速い速度で生息域を移動させている種も幾つかある。もちろん、これらすべての適応には限界がある。もっと移動範囲の広い種でさえ、上昇しようにも山頂より上には進めず、遠くへ行こうにも、次々と人間に開発されて行く手を阻まれてしまう。

野生生物の中には、気温以外の環境要素をタイミングのきっかけにしているものもいる。例えばカンジキウサギは、冬の白から夏の茶へ毛色を変える目安に日の長さの変化を頼りにしているようだ。日の長さのパターンは例年変わっていない一方で、カンジキウサギの生息地であるモンタナ州の荒野では、現在1カ月まで雪解けが早まっている。

ウサギは、毛色を変える時期を早めることができなければ窮地に陥る。草地のない地面にいる真っ白なウサギは、まさに格好の標的である。またほとんどそれだけを餌としているオオヤマネコも、カンジキウサギと同じ運命をたどることになる。

信じられないほど複雑で、相互に結び付いている体系をいじくり回すことには、危険が伴う。こうした不調和は、温暖化した世界がいかに未知の世界であるかという数例にすぎない。今地球全体で起きていることで、どの生物が温暖化の勝者や敗者になるかを述べることは時期尚早であるが、さまざまな兆候が示すところでは、大部分が敗者となるだろう。温室効果ガスの排出を削減することで地球の気温を下げることが、自然界の調和をさらに乱す危険を回避する唯一の道なのである。

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ジャネット・ラーセンはアースポリシー研究所の研究担当部門長。
詳細情報については同研究所のウェブサイトwww.earthpolicy.orgを参照のこと。

メディア関連の問い合わせ:
リア・ジャニス・カウフマン
電話:(202) 496-9290 内線 12
電子メール:rjk @earthpolicy.org

研究関連の問い合わせ:
ジャネット・ラーセン
電話:(202) 496-9290 内線 14
電子メール:jlarsen @earthpolicy.org

アースポリシー研究所
1350 Connecticut Ave. NW, Suite 403
Washington, DC 20036
ウェブサイト: www.earthpolicy.org

訳:梶川祐美子 チェッカー:西垣亜紀

 

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