ホーム > 環境メールニュース > 「呼吸で大気中の二酸化炭素(CO2)が増加する?」〜温暖化の質問に答えてみよう(...

エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2010年09月11日

「呼吸で大気中の二酸化炭素(CO2)が増加する?」〜温暖化の質問に答えてみよう(2010.09.11)

温暖化
 

台風のおかげか、少し暑さが和らぎましたね(でも今日はまた暑いですー)それにしても今年の夏は暑かった!と思っていらっしゃる方、多いことと思います。

先週、中長期ロードマップの「コミュニケーション・マーケティングWG」の生活者ヒヤリングで福井にお邪魔して、いろいろな方にお話を聞いてきましたが、福井でも本当に暑かったとのことで、「この暑さをじょうずに使ってアピールすれば、関心のなかった人たちにも伝わるのでは?」という声も。

「暑いわねー」「やっぱり温暖化のせいかしらねー」と、時候の挨拶化している?温暖化ですが、さて、「この夏の暑さは温暖化のせいなのですか?」と特に環境に詳しくないお隣さんに聞かれたら、何と答えます?

科学者は何と答えるのでしょうね?

ちょっと想像してみてから、国環研の江守正多さんの答えを「日刊 温暖化新聞」の江守さんコーナーでどうぞ。

Q.この夏の暑さは温暖化のせいなのでしょうか?

そしてこちらもどうぞ!(地域や組織で、懐疑的な人に聞かれることもあるでしょう?)

Q.IPCCは「抜本的な改革」を勧告されたそうですが、そんなにダメな組織だったのですか?

そうそう、講演会などでときどき出会う質問の1つに、「私たちの呼吸からCO2が出ますが、これも温暖化の原因ですか?」というのがあります。

国立環境研究所の「地球環境研究センターニュース」のバックナンバーに、研究者がこの問いにわかりやすく答えてくれている記事がありました。センターの了解を得て、ご紹介しますね。

「温暖化が進むと酸素が減って死んでしまうのですか?」と聞かれても答えられるようになります。いずれの問いにも「自分だったら何と答えようか?」って、一瞬でもよいので考えてから読んでみて下さいね(^^;

(以下、読みやすさのため改行を入れています)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

Vol.21 No.3[2010年6月号](通巻第235号)

平成22年度科学技術週間に伴う一般公開「ココが知りたい温暖化」講演会報告

呼吸で大気中の二酸化炭素(CO2)が増加する?

大気圏環境研究領域 大気動態研究室長  遠嶋 康徳
http://www.cger.nies.go.jp/publications/news/vol21/vol21-3.pdf

1. 温暖化は人間が出す温室効果ガスの影響

 今日のお話、"呼吸で二酸化炭素(CO2)が増加する?"というのは、『ココが知りたい地球温暖化2』という本にも同じ話題が入っており、「温暖化が心配です。吐く息を止めなくても大丈夫ですか」という質問がそれですね。

吐く息を止めたらもっと心配なことがあるかと思いますが(笑)、この質問の意味は次のようになります。近年CO2などの温室効果ガス増加による地球温暖化が懸念されており、温室効果ガスの排出を減らすための対策についても議論されています。ところで人の呼気にはCO2が含まれますが、このまま吐き出し続けると大気中のCO2を増やすのではないかということです。これにお答えしようというのが今日の話題です。

ハワイのマウナロア山でチャールズ・キーリング博士が大気中のCO2濃度を測った記録を見ると、観測を開始した1958年には315ppm(ppmは濃度を表す単位で1ppmは100万分の1)だったのに、現在では約380ppmに増加しています。

CO2などの温室効果ガスは熱を吸収する働きがあるので、この急激な増加によって、地球の温暖化を進めていると懸念されています。実際に大陸規模での気温変化を見てみると、この数十年世界中どこでも温度が上がっています。

次に観測結果とモデルを使った再現実験の結果を比較すると、自然起源だけではなく人間が出す温室効果ガスの影響をモデルに入れると観測結果とよく合います。つまり、人間が出すCO2(呼吸ではありません)によって温度が上がってきたということがいえます。

2. 生物的循環のなかでは増減はない

 さて、みなさんが眠くなる前に最初の質問にお答えします。「吐く息を止めなくても大丈夫ですか」という問いの答えは、ずばり、「大丈夫です」。

 なぜ大丈夫かというと、呼吸で吐き出すCO2 は、起源をたどってゆくとそもそも植物が光合成によって大気中のCO2 と水から作り出した有機物にたどりつきます。ですから、もともと大気中に存在したものなので、正味では大気中のCO2を増やしも減らしもしません。

植物は光のエネルギーを使って光合成をして、有機物を作ります。その有機物を動物が食べ、その動物の肉を人間が食べたりします。また、一部の植物は枯れ葉、枯れ枝になって地面に落ちます。動物の排泄物や死骸も土に落ちます。土壌の有機物は微生物が分解し、またCO2 として大気中にかえっていきます。こういう生物的循環のなかでは大気中のCO2 の増減はありません。

つまり私たちが呼吸してもそれは生物的循環のなかなので大気中のCO2 を増やしも減らしもしません。

 ではなぜ現在大気中のCO2 が増えているかというと、生物的循環の外側で人間がまったく別の活動をして大気中にCO2 を排出しているからです。私たちは石炭・石油などの化石燃料を燃やしてエネルギーを得て豊かな生活を送っているわけですが、そのときCO2 を排出するため、大気中のCO2が増加しています。

化石燃料も太古の生物が作り出した有機物から生み出されたものですが、簡単にできるものではなく、地質学的時間、つまり何千万年、何億年という長い時間がかかっています。人類がそれを100 年あまりの短期間に使い尽くそうとしていることに問題があります。

3. もし息を止めたら...

 もし、私たちが1 年間息を止めたら、どれくらいCO2 を減らせるのかちょっと考えてみましょう。人が呼吸で吐き出すCO2 の量を計測するのは現実的には不可能なのですが、下のような計算でおおざっぱに見積もることができます。

全人類が吐き出す総CO2 量(kg)=呼気中の平均CO2 濃度× 1 日平均呼吸量(m3/ 日)× 365 日(1 年間の日数)× 65 億人(世界の総人口)× 1.8 kg / m3(CO2 1m3 当たりの重さ)

 大気中には0.038%(380ppm)のCO2 が存在します。人間の呼気中のCO2 濃度は活動の程度によって違います。安静にしている場合は低く、活発に行動しているときには高濃度になります。そこで、極軽作業時と軽作業時の間の3%という値を代表値としてとります。

人の呼吸率も行動によって違ってきます。一般的な行動パターンを仮定して、生活時間を割り振り、一日の平均的な呼吸量を計算しますと、19m3/ 日となります。つまり、3% ×19m3/ 日× 365 日× 65 億人× 1.8 kg/m3 で全人類では年間24 億トンのCO2 を排出していることになります。

 24 億トンのCO2 排出量をイメージしていただきましょう。化石燃料を使用することで世界全体では年間300 億トンのCO2 が大気中に排出されています。現在世界でもっともCO2 を排出しているのは中国で60 億トン、最近まで1 位だったアメリカは57 億トンです。日本はだいたい13 億トンです。

全人類が呼吸で吐き出す総CO2 量である24 億トンは化石燃料起源の世界全体の排出量の8%くらいですし、日本の約2 倍に相当します。

 では日本人はどれくらいCO2 を吐き出しているのでしょう。日本の総人口1.2 億人を入れて同じように計算すると、0.45 億トンとなります。これは日本の化石燃料起源のCO2 排出量13 億トンのうちの3.5%になります。全世界だと8%なのに、日本だけだと3.5%と小さくなってしまいました。これは、日本人一人当たりの化石燃料起源のCO2 排出量が世界平均より多いため、呼吸によって吐き出されるCO2 量の割合が相対的に小さく見えるということを意味しています。

 日本の温室効果ガスの排出量の推移を見ると、1990年には12.6億トン排出されていましたが、つい先日発表された2008年の総排出量は12.8億トンです。2008年から2012年の京都議定書第1約束期間で、日本は温室効果ガスを基準年である1990年の排出量から6%削減しなければなりません。

基準年比-6%というと、11.9億トンまで削減しなければなりませんが、実際は増えていて、2008年の12.8億トンとの差は0.9億トン、つまり7.6%もあります。

7.6%のうちの5.4%は森林を増やすことや、京都メカニズムを利用して外国の削減を購入することで賄おうとしています。残り2.2%が課題です。息を止めることで減らせる3.5%という量は、これから日本が取り組まなければならない削減量に匹敵します(笑)。

4. 酸素の減少が心配?

 ところで、ものが燃えるときには当然酸素(O2)が必要です。化石燃料を燃焼するときにCO2が増えているということは、O2が減っているということなのでしょうか? もし減っているのなら問題にならないのかという疑問がわいてくると思います。実は、大気中のO2濃度は化石燃料を燃焼することによって確実に減っています。しかし減少速度は非常に小さいのでご安心ください。

 私の専門分野に関連したお話をいたします。私は波照間島(沖縄県)と落石岬(北海道)にある地球環境研究センターの地球環境モニタリングステーションでCO2と O2濃度を測っています。CO2濃度は植物の光合成によりCO2を吸収する夏に低く冬に高くなりますが、O2はCO2とは逆に夏に高く冬に低い値を示しながら減っています。

大気中のO2濃度の減少速度は年間4ppmです。空気を100万個の粒と考えるとO2は21万個(21%)ありますが、そのうち4個(0.002%)ずつ毎年減っています。このペースで100年間減少しても、21%ある大気中のO2濃度は100年後に20.96%となるだけです。これで息苦しいと感じる人はあまりいないと思いますから問題はないといえます。確かに大気中のO2濃度は減少していますが、当分なくならないので心配はいりません。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

いかがでしたか?

日刊 温暖化新聞も「地球環境研究センターニュース」も、さまざまなバックナンバーがありますので、ぜひのぞいてみてください。

http://www.cger.nies.go.jp/publications/news/

何か聞かれてじょうずに答えられなかったら、ぜひこういうところで「答え」を探して、参考にするとよいですね。同じ質問、きっとまた来るので!(私もそうしていますー)

ところで、まだまだ暑い日本ですが、私は明日からバラトン合宿で、アイスランドへ出張です。

アイスランドは初めてなので、とっても楽しみなのですが、現地からのメールに「今は17℃ぐらいだけど、すぐに2℃ぐらいになるから、衣類に気をつけてね」って! フリースにダウンジャケット、出さなくちゃ〜。(^^;

 

このページの先頭へ

このページの先頭へ