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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2010年07月07日

レスター・ブラウン氏「電力網も、家電も、消費者もよりスマートに」(2010.07.07)

新しいあり方へ
 

昨日「伝えるための生物多様性セミナー」を開催しました。定員いっぱいの方々にご参加いただきました。ありがとうございました。

「様々な事例やたとえを使いながら、基本的な知識から現在までの流れ、今後のことなど、とてもわかりやすかった」「事業者向けとして大変わかりやすい内容だった。今後の取り組みのヒントをだいぶ掘り下げて話してもらったのがよかった」「非常にわかりやすかった。一番ビジネスとつながりにくいイメージだったが、この生物多様性こそ取り組んでおかないと大変なことになるなと感じた」「生物多様性を具体的に説明できるような例を出してもらって非常によかった」「生物多様性の全体像がつかめた気がする。事例を多く教えてもらったので社内の説明の際に使いたい」

毎回アンケートを拝見するときはドキドキするのですが、できるだけ準備を重ねての現時点での自分なりの精いっぱいの内容を(ちょっと早口でしたが!)役に立ちそうと受けとめて下さった方が多くて、ほっとしました。

生物多様性について、どのように伝えていくか、どのように企業や自治体、NGOや個人の取り組みをサポートできるか、これからも取り組みを続けていきます。

さて、今回はスマートグリッドの話題です。レスターのリリースのあと、これも「社内・社外に伝えられるようになっていただく」スマートグリッドに関するセミナーのご案内です。こちらもぜひどうぞ!

<内容>

■レスター・ブラウン氏「電力網も、家電も、消費者もよりスマートに」

■7月20日セミナー「スマートグリッドからスマートコミュニティへ」のご案内

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■レスター・ブラウン氏「電力網も、家電も、消費者もよりスマートに」

米国が世界標準をめざして強力に推進中のスマートグリッド。アースポリシー研究所から届いたリリースを、実践和訳チームが訳してくれましたので、お届けします。

ここに出てくるボルティモア・ガス&エレクトリック(BGE)の実験など、とても興味深く、早く日本でも実現できないかなー?と思います!

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

電力網も、家電も、消費者もよりスマートに
http://www.earthpolicy.org/index.php?/book_bytes/2010/pb4ch04_ss7
レスター・R・ブラウン

日々のピーク時やある季節に集中する電力需要に対応するためだけに大型の発電所を建設するのは、電力システムの管理方法として非常にコスト高である。そう気づき始めた電力会社がますます増えている。

既存の電力網は一般的に「非効率」「無駄が多い」「機能性に欠ける」という三拍子揃った地方の電力網をつなぎ合せている。そうした電力網では、例えば、余剰電力を不足している地域に回すことができないことも多々ある。今日の米国の電力網は、州間幹線道路建設以前の20世紀半ばの道路網に似ている。今必要なのは、州間幹線道路に相当する電力網だ。

送電線が混雑しているために安価な電力を消費者に送れないのは、交通渋滞と同様の損失を生じる。送電能力不足による消費者の損失は、米国東部だけで年間160億ドル(約1兆4,880億円)に及ぶと推定される。

米国に強力な全国電力網があれば、電力を余剰地域から不足地域へ絶えず動かせるようになり、必要となる総発電容量も減らせるだろう。最も重要なのは、その新しい電力網があれば、風力、太陽エネルギー、地熱エネルギーの豊富な地域と消費の集中する地域とをつなぐことができるということだ。あらゆる再生可能エネルギー源を利用する全国電力網は、それ自体が電力の安定供給の要因になるだろう。

しかし、必要に応じて電力を移動させることができ、新しいエネルギー源と消費者とをつなぐ強力な全国電力網を設置することは、まだ取り組みの半ばでしかない。電力網と電気製品の双方が同じようによりスマートに(賢く)なる必要がある。

一番わかりやすく言えば、スマートグリッド(賢い電力網)とは、進歩した情報技術を活用して、この技術を発電、電力供給、利用者システムに取り入れ、電力会社が直接消費者とやり取りできるようにするものである。そして、もし消費者の承諾があれば、消費者の家電製品とも通信可能にするものである。

米国の電力研究所によると、スマートグリッドの技術があれば、年間で米国経済に1,000億ドル(約9兆3,000億円)近い損失をもたらしている停電や電力の変動を減らすことができる。センター・フォー・アメリカン・プログレスが2009年に発表した優れた研究、『進歩に向かって2.0:全米クリーンエネルギー・スマートグリッドの構築』において、ブラッケン・ヘンドリックスは、幾つかの情報技術があれば、電力網の効率を上げる可能性が大いにあると指摘している。

「適例として、電力網で電圧と電流をリアルタイムにモニターするための同期フェーザをもっと広範囲に使用するよう促進することが挙げられる。電力網全体でこの種のリアルタイム情報をさらに有効利用できれば、全米で少なくとも20%の省エネができると推定される」。このほかにも数多くの事例があり、電力網の効率アップの可能性がうかがえる。

『進歩に向かって2.0:全米クリーンエネルギー・スマートグリッドの構築』(仮邦題)
Wired for Progress 2.0: Building a National Clean- Energy Smart Grid
(http://www.americanprogress.org/issues/2009/04/wired_for_progress2.0.html)

スマートグリッドは地理的に電力をより効率よく移動させるだけではない。時間的な電力使用の移動、例えば、電力需要がピークの時間帯からそうでない時間帯への移動も可能になる。これを実現するには、ある時間帯にどれだけ電力が使われているかを正確に調べる「スマートメーター」を持つ消費者との協力が必要になる。

これにより、電力会社と消費者との双方向の通信が可能になり、お互いに利益となる方法でピーク時の電力需要を減らすよう協力できるようになる。さらに、双方向での電力計測も可能になり、屋根に太陽光発電パネルを取り付けたり、自宅用の風力発電機を設置している顧客は、余った電力を電力会社に売り戻すことができるようになる。

電力網からの信号を受信できるスマート家電とスマートメーターとを組み合わせれば、需要のピーク時を避けて電力を使用できるようになる。需要が多い時間に電気代を高くすれば、消費者は行動パターンを変えるよう促され、市場の効率化も進む。例えば、皿洗い機を午後8時でなく、電力需要がずっと低い午前3時に動くよう設定することも可能である。また、需要集中時の負荷を軽減するために、エアコンを短時間切ることも可能である。

欧州でも、技術は異なるが同じ目標を実現する先駆的な取り組みが行われている。どの電力網においても送電中の電力には多少の変動がある。イタリアのある研究チームが、電力網の送電状況をモニターする機能をもつ冷蔵庫の試験を実施中だ。

この冷蔵庫は、電力の需要増加あるいは供給低下があると、影響を及ぼさない範囲内ですぐに自動的にスイッチが切れる。『ニュー・サイエンティスト』誌は、この技術が英国の3,000万台の冷蔵庫に取り入れられると、英国の最大電力需要が発電容量にして2,000メガワット分減少し、石炭火力発電所4基の閉鎖が可能になるとしている。

同様の取り組みは、住宅や商業用ビルに設置された空調システムでも実施できるだろう。スマートグリッドの設計を行う米国の会社、グリッドポイントのCOO(最高執行責任者)であるカール・ルイスは「われわれは、どこかの家のエアコンのコンプレッサーを、室温はまったく変えないまま、15分間止めておくことができる」と語る。スマートグリッドの最も重要な点は、情報技術にある程度投資すれば、最大電力使用量が削減でき、電力の省エネとそれに伴う炭素排出量削減の両方が図れるということだ。

時間帯によって電力料金を変える試みを他に先駆けて始めた電力会社も幾つかある。オフピーク時の電気料金をピーク時よりもかなり低く設定するというものだ。同様に、夏が非常に暑い地方では、季節的な需要のピーク時にはコスト高になることが多い。

一例であるが、ボルティモア・ガス&エレクトリック(BGE)は2008年に試験的なプログラムを実施した。このプログラムで、同社は、参加した顧客の承諾をもとに、最も暑い何日かについて、予め顧客が選択した一定の時間間隔で顧客のエアコンを止め、それによって節約された電気量に応じて顧客に大幅な払い戻しを行った。

この地域の現行電力料金はキロワット時あたり約14セント(約13円)であるが、一番需要が集中する時期のさらに需要がピークになる時間帯に電力の使用を控えると、顧客にはキロワット時あたり最大でその12倍以上にもなる1.75ドル(約163円)が払い戻された。したがって、顧客がある午後4キロワット時の電力を節約すると、顧客に請求される電力料金は7ドル(約651円)の減額となった。

このプログラムによって、ピーク時の顧客の電力消費量は1/3も削減され、同社はそれに力を得て、2009年の夏季に向けてさらに進んだ「スマート」技術を使った同様のプログラムを計画することになった。

米国内ではスマートメーターへの移行が急速に進んでおり、ここ数年の内にスマートメーターを設置しようと計画している電力会社は28ほどにのぼる。主導的に取り組む会社の中には、カリフォルニアの二大電力会社、パシフィック・ガス&エレクトリックとサザンカリフォルニア・エディソンも含まれており、2012年までに、それぞれの510万および530万の顧客すべてにスマートメーターを設置する計画である。いずれも、ピーク時の電力消費量を削減するための変動料金制度を導入する予定だ。

ほかにも、中西部のアメリカン・エレクトリックパワー(顧客数500万)やフロリダ・パワー&ライト(顧客数440万)など、全顧客へのスマートメーター接続を目指している会社はたくさんある。

欧州でも、フィンランドを筆頭にスマートメーターの設置が進んでいる。スウェーデンの調査会社、バーグ・インサイトは、2013年までにヨーロッパで8,000万のスマートメーターが設置されるだろうと予測している。

やっかいなことに、スマートメーターという用語は幅広い種類のメーターに使われており、スマートメーターといっても、消費者にその時その時の電力使用データを知らせるだけのものから、顧客と電力会社間が双方向で情報をやり取りできるようになっているもの、さらには、電力会社と個々の家電製品との間での情報伝達が可能なものまで含まれる。肝心なことは、メーターがスマートになればなるほど省エネが進むということである。

電力網、送電システム、電力使用のすべての効率を一挙に向上させる情報技術の利点を活かすことは、まさにスマートなやり方だ。簡単に言えば、スマートグリッドにスマートメーターを組み合わせることで、電力会社と消費者の双方が今よりもずっと効率的になるのである。

# # #

出典:レスター・R・ブラウン著、『プランB4.0:人類文明を救うために』(Plan B 4.0: Mobilizing to Save Civilization) 第4章「気候を安定させるには:再生可能エネルギーへの移行」 2009年、W.W.ノートン社(ニューヨーク)より刊行。
www.earthpolicy.org/index.php?/books/pb4にて購入可。

さらに詳しいデータ・情報についてはwww.earthpolicy.orgを参照のこと。

メディア関連の問い合わせ:
リア・ジャニス・カウフマン
Eメール:rjk(at)earthpolicy.org
電話:202-496-9290 内線 12

研究についての問い合わせ:
ジャネット・ラーセンEメール:
jlarsen(at)earthpolicy.org
電話:202-496-9290 内線 14

アースポリシー研究所
1350 Connecticut Avenue NWSuite 403Washington, DC 20036
http://www.earthpolicy.org
(和訳 以上)

(翻訳:小沢裕子 古谷明世)

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■7月20日セミナー「スマートグリッドからスマートコミュニティへ」のご案内

上記の世界の動向には日本は出ていませんが、日本はどういう状況なのでしょうね?

そもそも
・スマートグリッドとは何でしょう? 
・なぜいま騒がれるようになってきたのでしょう? 
・私たちにとって、どのような意味を持っているのでしょう? 

そして、
・実際にどのようなものなのでしょうか? 
・日本の政府はどのように位置づけ、今後進めていく考えなのでしょうか?

これらの問いへの答えをお持ち帰りいただく3時間のセミナー「スマートグリッドからスマートコミュニティへ」を7月20日に開催します。

エネルギー業界と政府の担当者の方をお招きし、現場の実際のお話と今後についてじっくりお話を聞いていきます。質疑応答の時間も多めにとってありますので、ぜひ「自社/自分たちにとっての意味合い」をつかんでいただければと願っています。

企業の環境やCSR担当の方々はもちろん、あらゆる事業部や仕事に関連があると言っても過言ではないテーマです。そして、環境や持続可能性、未来の社会に関心のあるNGOや個人の方もぜひどうぞ!

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここからご案内〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

セミナー「スマートグリッドからスマートコミュニティへ」

●日 程: 2010年7月20日(火)13:30〜16:30(13:20開場予定)

●会 場:東京都渋谷区「こどもの城」902、903(地下鉄「表参道」駅徒歩7分)

●ゲストスピーカー:
東京ガス株式会社 代表取締役副社長執行役員エネルギーソリューション本部長 村木 茂 氏
経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 新産業・社会 システム推進室長 飯田 健太 氏

●ファシリテーター:枝廣 淳子

●プログラム

13:30 挨拶

「スマートグリッド入門編〜スマートグリッドってなあに? エネルギーのスマート化は、社会をどう変える?」「日刊 温暖化新聞」主宰者 有限会社イーズ代表 枝廣 淳子

14:15 東京ガス株式会社 代表取締役副社長執行役員エネルギーソリューション本部長村木 茂 氏 に聞く「スマートエネルギーネットワークによる低炭素社会への貢献」

15:00経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 新産業・社会システム推進室長 飯田 健太 氏に聞く「スマートコミュニティが目指す未来」

15:45会場との質疑応答・ディスカション

16:30 終了

●参加費 6,000円(税込)
※『日刊 温暖化新聞』の企業団体パートナーの方は5,000円

●主催: 日刊 温暖化新聞、有限会社イーズ、有限会社チェンジ・エージェント
http://daily-ondanka.com/
http://www.es-inc.jp/
http://change-agent.jp/

●定員  約60名

●お申込み

以下の申込書を smgr0720@es-inc.jp までお送りください。(件名に「スマートグリッドからスマートコミュニティへ」申込みとお書きください。折り返し、参加費のお支払についてご案内いたします。参加費のお支払をもって正式受付とし、参加票を電子メールでお送りいたします)

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           申 込 書

■2010年7月20日(火)
「スマートグリッドからスマートコミュニティへ」に参加します

ご氏名 [                      ]
ふりがな[                      ]
会社名[                      ]
部署名 [                      ]
メールアドレス [                  ]
連絡先電話番号 [                  ]
備 考 [                      ]

※『日刊 温暖化新聞』の企業・団体パートナーの方は、以下の( )に印を付けて下さい。申込時にお申し出いただいた場合のみ、参加費・特別割引(5,000円)でご案内させていただきます。
→(  )『日刊 温暖化新聞』の企業・団体パートナーです。
(パートナーリスト:http://daily-ondanka.com/partnership/partner_list.html

※このセミナーのことをどこでお知りになったか教えていただけると幸いです。( ) a. 枝廣淳子のメールニュース(enviro-news)
( ) b. イーズメール
( ) c. 職場・知人・友人からのご紹介
( ) d. イーズのウェブサイト
( ) e. チェンジ・エージェントのウェブサイト
( ) f. その他 (          )

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※お申込後、自動返信メールが届かない場合は、インターネットの送受信にトラブルがあることも考えられますので、メール(info@es-inc.jp)または、お電話(03-5426-1128)でご一報ください。

○お問合せ有限会社イーズ  担当 安西/瀧上E-mail:info@es-inc.jp/電話:03-5426-1128

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ご案内ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

私が基本的な枠組みや意味・意義をできるだけわかりやすくお話しさせていただき、業界の実際の取り組みや考えをお聞きし、政府としての位置づけや今後の展開についてお聞きする、という構成になっています。

ご興味のある方、仕事上少しは押さえておいたほうがよいという方、ぜひどうぞ〜!


※有限会社イーズは、2017年12月25日に移転いたしました。
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