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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2010年05月13日

「Tempered Radicalへ愛を込めて」〜チェンジ・エージェント5周年記念講演録 その1(2010.05.13)

 

前号で、写真入りで読んでいただけるウェブサイトのURLを入れるのを忘れました。。。すみません。こちらになります。

「スイスの生協の消費者をまきこんだ環境キャンペーン」

もう1つ、前号でお伝えするのを忘れていました。

以前ご案内した5月21〜22日に開催する「持続可能なビジネスモデルを考える力をつける集中ゼミ」、よい感じで参加者が集まってきてくれています。

まだお席がありますので、環境や持続可能性の基礎や本質的な枠組みを学びたい方、企業や組織の新しい方向性を考える必要のある方、新しい事業や社会との関係性を模索されている方、ぜひ一緒に勉強し、考え、形にしていきましょう!(○今、どのような時代に入りつつあるのか?

○社会が企業に求めるものは、どのように変わりつつあるのか?

○それに応ずるべく、企業はどのようにビジョンを描き、新しいビジネスモデルを構築していくべきなのか?

○企業は社会とどのような関係性を構築すべきか? そのために必要なコミュニケーション力や共創力とは?

2日間の参加で終わるゼミではありません。受講者のネットワークを活かした活動やフォローアップゼミが続き、異業種間のさまざまなコラボレーションや共同プロジェクト、知恵や情報や励ましの交換などによって、継続的に思索や試行錯誤、具体的なプロジェクトなどを進めていくことができます。

「持続可能なビジネスモデルを考える力をつける集中ゼミ」のご案内
http://change-agent.jp/news/archives/000348.html

昨年までの3回に比べ、今回は時代の動向を反映し、「新しいビジネスモデルの設計」と「実際に変化を作り出していくためのコミュニケーション力と共創力」に重点を置いて進めていく予定です。これまでの受講者の方もリフレッシュ受講、ぜひどうぞ!

さて、4月25日、チェンジ・エージェントの5周年記念イベントがおこなわれました。午前中の講演の講演録を、分割してお届けします。

パワーポイントは、こちらでごらんいただけます。
http://change-agent.jp/files/Junko_Edahiro_on_Change.pdf

「あら、私もそう!」って思われる方、多いのではないかなー。(^^;

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「変化を創り出す」ということ        〜その技、そして思い〜

                              枝廣淳子

皆さん、おはようございます。今日は皆さんとお会いできて、とてもうれしいです。

チェンジ・エージェントをつくって5年。その前から、どうやったら変化をつくり出せるのか。そもそも自分をどう変えるかというところから、私はスタートしているのですが、自分も変え、そして周りや、今は社会や環境問題など、ずっと試行錯誤してきた中で--もちろん失敗もたくさんありますし、思うようにならないことも日々たくさんありますけど--、でも、こういう活動を始めて、ほんとによかったなと、毎日思っています。

すごく手応えがあるし、楽しいし、わくわくするし。そして今は、政府でも自治体でも企業でも、NGOでも学生さんでも、同じような「何とか変えたい!」という人たちがすごく増えている。こういう時代に、この変化をつくり出すお手伝いを少しでもできること、チェンジ・エージェントという会社をつくって、そういうお手伝いができることをすごくうれしく思っています。

私たちがこの会社をつくって2年ほどたったあと、ペガサスという国際会議に出ました。ペガサスというのは、アメリカで毎年行われている会議で、世界中のシステム思考の研究者、実践家が何百人も集まる、そういった国際会議です。

日本ではまだ、システム思考そのものが、私たちが会社をつくって一生懸命広げようとしているのが先駆者の1社といわれるぐらいですから、そんなにまだ広がっていませんが、アメリカ、ヨーロッパでは、システム思考の研究者、実践家というのがもうたくさんいて、毎年そういった会議を開いています。

3年前に出たそのペガサスの会議の時に、最初の全体会のプレゼンテーションで、Tempered Radicalという言葉が出てきました。これをテーマに講演してくれた人がいたのです。

最初、言葉を見た時、すごく不思議気がしました。Radicalというのは急進主義者とか、過激派とか、そういう意味なんですよね。Temperというのは、和らげるとか加減するという意味です。なので、そのまま受け取ると、「やわらかい過激派」(?)とか、「手加減した急進派」(?)とか、そんなイメージなんですね。何のこっちゃ、というふうに思いました。

実は『Tempered Radical』という本がアメリカでは出ていて、その研究をしている研究者の話だったんですが。とても面白かったので、皆さんにご紹介します。

このTempered Radicalというのはどういう人たちかと言うと、この研究者のの定義ですが、まず--おそらく皆さんの多くがそうだと思いますが--、企業や組織で働いている人たちです。

そして、職場の環境や、自分の会社のビジネスのやり方に、よい方向への変化をつくり出そうとしている人たちです。外から働きかけをする変化のつくり方もありますが、そうではなくて、組織の中から変えていこう。そういう思いを持った人たちなのです。

こういう人たちは、往々にして、辞めさせられるギリギリのradicalな行動を取ることがある。きっと皆さんの中にも、そういう方がいらっしゃるんじゃないかと思います。極めてradicalな動を取ってクビになったら、元も子もないですよね。組織の中から変えられなくなっちゃいます。なので、ギリギリ辞めさせられないかどうかというぐらいのとこで、いろいろな働きかけを中からしていく。そういう人たちだと言うんですね。

この方が言うには、「変化をつくり出すには2つのやり方があります」。1つは、変化というのは、計画されてきちんとプログラムに沿ってやっていくものだという考え方。そういった変化は、戦略とかプログラムとか、トップダウン式で、上の人が、「こういう変化をつくろう。だからこういうふうなやり方をやるぞ」と、トップダウンでつくる変化。これは企業の中でもときどき見られるものだと思います。

ただ、この人が言っていたのは、「今見られる変化というのは、もう1つの変化だ」ということです。これは、プログラム化されたり、上から下りてくるのではなくて、もっとオーガニックな、有機的なもので、少しずつ変化をしていくものだと。小さな動きとか、局所的な動きとか、そういった変化をつくりながら、学びながら、次の変化へ続けていく。そんな有機的な変化のつくり方があるんだと。

これはトップダウンではなくて、あちこちに分散された形でのリーダーシップとなります。ですから、「社長が」「幹部が」、ではなくて、○○部の1人の社員がその変化をつくり出す。

実は、それを知ってか知らずか、別の部署でも変化をつくり出す人がいて、それがお互いに学び合ったり影響し合って、組織を少しずつ変えていく。そういった考え方だと言うんですね。Tempered Radicalというのは、この後者のほうの変化のつくり手たちのことを言います。

物事を、例えば会社のやり方とか、もっと働きやすい職場にしたいとか、もしくは、もっと持続可能な方向に合った事業内容にしたいとか、そのように物事を変えようとしつつ、自分の置かれた現状も大事にする。

つまり、先ほども言いましたが、「変えたい」という気持はあっても、それだけで突っ走ってクビになったり、もしくはほかの人に聞いてもらえなくなったり、影響を与えられなくなったら、変化をつくり出せませんよね。なので、あくまで組織の中で変化をつくり出せる影響力を保ちつつ、だけど組織を変えていこうとする。そういった人たちです。

この方によると、そのTempered Radicalさんたちが変化をつくり出すには、5つのステップ、プロセスがありますと。これはおそらく、意識・無意識を問わず、皆さんの中にもやっていらっしゃる方が多いと思います。

1つは、「インフォーマルな構造を変える」こと。一番わかりやすいのは、どういう情報を誰に伝えるかという構造です。なので、たとえば、いろいろなことを、会社でもメールで伝えることがあると思いますが、誰にCCを入れるか。これだけでも結構、インフォーマルな構造が変わるんですね。

ある情報を誰かに伝えるようにしたり、全然、指揮系統とは違う人たちとのいろいろな会をつくっていくとか。

そして2つめは、「組織とか社会の中で小さな動きを見つけて、それを見逃さない」。3つめは、大きく最初から変えるというよりも、自分のいる所で少しずつ交渉して条件を変えていく。

それによって、これが一番大事なことだと、彼女は言っていましたが、4つめに、小さな勝利--「ほら、ちっちゃいけど、ここが変わったよね」というのをつくっていく。そこに重ねる形で、小さな勝利を、小さな変化を組み合わせて、変化のプログラムにしていく。

そして、5つめは、自分たちだけ、自分だけではなくて、社内、社外で連携をつくって、いろいろな所から同時多発的に変化のうねりをつくっていく。こんな感じだと。

今日のプレゼンテーションの内容をいろいろ考えていた時に、おそらく今日来てくださっている多くの方が、Tempered Radicalと呼んでいいかわかりませんが、企業の中で、もしくは組織の中で、もしくは、たとえば自分とか家族とかを念頭に、何とか変化をつくり出そうとしていらっしゃる。そういった方々だと思うので、ぜひこの話をしてみたいなと思いました。

(つづく)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「持続可能なビジネスモデルを考える力をつける集中ゼミ」って、TemperedRadicalさんたちに、理論と気づきと、変化を作り出すためのコミュニケーション力と共創力を身につけてもらうための講座でもあるんですよねー。

企業や組織の土俵を最初からひっくり返すのではなく、その土俵の上でいかに土俵を変えることも含め、変化をデザインし、実行していくか--バランスの必要ななかなか高等なスキルとなります。そしてその推進力は「思い」にあります。
今ほど「変え甲斐」のある時代はないなあ!と思います。

 

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