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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2010年03月16日

「新しい時代へ」〜日刊工業新聞の「卓見異見」への寄稿最終回より(2010.03.16)

新しいあり方へ
 

6ヵ月にわたる日刊工業新聞への寄稿の最終回が掲載されました。

最後に何を書こうかなといろいろと考え、たくさん書きたいことがある中から、いちばん企業の方々にお伝えしたいことに絞って書きました。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

日刊工業新聞 2010年3月15日付

価値観の「三脱」に注目新しい時代へ

見えてきた「天井」

昨今の不景気をどうとらえるか?

「景気循環だから今をしのげば元に戻る」という企業人もいるが、通常の景気循環とは違う「移相」の局面だと私は考えている。

福田康夫元首相の「温暖化に関する懇談会」に参加していた時、元日銀総裁の福井俊彦委員が「この国際金融市場の混乱は、世界経済全体として地球環境資源やエネルギー資源の絶対的な天井を意識し始めた途端、マーケットがそれまでの経済の動きあるいはその過剰部分に急ブレーキをかけ、次の長期的な均衡を探る努力を促している現象である」と見立てられた。

温暖化に関する「絶対的な天井」は森林・土壌や海洋が吸収できる二酸化炭素(CO2)量だ。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次報告書では「人間が化石燃料を燃焼して排出するCO2は年間72億炭素トンで、地球の現在の吸収量は年間31億炭素トン」。実際には平衡によってその天井はさらに下がっていく。「数年後にはピークオイルが到来する」とする研究者も多い。国際エネルギー機関(IEA)は去年8月、「主要油田の大半はピークを過ぎており、世界全体でも10年以内にピークが来る。従来の見通しは甘すぎた」と発表した。

「地球の限界を超えた世界」が明らかになるにつれ、人々の価値観が変化しつつあることを企業はどのくらい理解しているだろうか?

「買わない消費者」が増えていることも、その一つの現れだろう。少子高齢化に伴う「消費者」の数が減っていくだけではなく、「モノの豊かさ」より「心の豊かさ」が大事だという人が増えている(特に都市部、男性より女性に多い)。心の豊かさを大事にしている人たちが、数ヶ月ごとに登場する新製品をどんどん買うだろうか?

所有からシェアへ

人の価値観は割と簡単に変わるものだと思っている。欧米でカーシェアリングが広がり始めた2000年、私が配信している「環境メールニュース」で紹介したことがある。反応の大半は「日本人はきれい好きだからだれが使ったかわからないモノは使わない」だった。しかし今、カーシェアリングは日本でも広がっている。「○○はこういうものだ」という無意識の前提(メンタルモデル)に気づき、それを緩める力は、これからの企業に不可欠である。

現在、新しい動きとして私が注目している3つの「脱」がある。一つは「暮らしの脱所有化」だ。自動車所有者や所有したいという人が(特に若い層で)減っている。本もCDも、洋服も家だって、所有するより貸し借りや共有(シェア)して暮らす人が増えている。新刊を買って読んだらすぐにブックオフで売る。ブックオフは現代版貸本屋なのである。

もう1つは「幸せの脱物質化」である。これまではモノを買うこと、持つことが幸せだと考えられていた。しかし、自分の幸せを人とのつながりや自然との触れあいなどで定義する人が増えている。農への関心が高まり、キャンドルナイトを楽しむ人が増え、日本でも隣人祭りが広がっている。

変化とらえて進化を

そして、「人生の脱貨幣化」である。これまでは会社に時間を捧げて代わりにお金をもらい、それをもとに人生を設計するのが普通だった。しかし「半農半X」などの新しい生き方を選ぶ人が増えている。自分と家族が食べる分は農業でまかない、残りの時間は自分のやりたいこと(ミッション)に費やす。私の友人にも「半農半作家」「半農半NGO」がいる。お金をすべてのベースにしなくてもよいではないか、という人生設計だ。

私自身も小さな会社を経営しており、コンサルなどで企業のお手伝いもしている。常に思うのは、「企業とは社会が必要とする限りにおいて存続できる」ということだ。そして、社会が求めることは時代とともに変わっていく。

時代が変わり、社会の要請が変わったことに気づかず、旧式のビジネスモデルにしがみつく「現代版ラッダイト」になるのではなく、新しい時代と社会の要請に対応する「新しい経済」とそれに抵抗する「古い経済」の戦いの時代を、たくましくしなやかに進んでいける企業こそが次の時代のリーダーとなると信じている。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ラッダイトって?

[No.1498] 第5回 地球温暖化問題に関する懇談会(2008.06.18) で以下のような発言をお伝えしました。

http://daily-ondanka.com/edahiro/2008/20080713_1.html

> (総理は福田ビジョンで)産業革命にたとえてお話をされていましたが、産業革
> 命で機関車が出てきたころに、恐らくそれまで機関車がない時代に商売をしてい
> た人力車夫の人たちの中には、機関車を打ち壊そうとして動いた人たちもいたで
> しょう。
>
> その一方でいち早くこれからの時代はこういう時代だと、新しくいろいろなビジ
> ネスモデルを考えた人もいたと思います。

この「新しい時代が来ているのに、古い時代にしがみこうと、機関車や機械を打ち壊そうとした人たち」のことを「ラッダイト」と呼びます。最初に始めたのが「ラッドさん」だったから、だそうです。

産業革命で失業することを恐れた人々の機械打ち壊し運動を「ラッダイト運動」と言います。むかーし歴史の教科書で見たことがあるような気がしません?(^^;

そして、「現代版ラッダイト」は、日本にも世界にもいますねぇ。。。地球の限界という絶対的な制約から来る時代の流れには抗えないのにね。

時代の流れと社会の要請をいち早くつかんで、しなやかに自らを変えていける、そんな組織・企業であってください。

前にもご案内した「持続可能なビジネスモデルを考える力をつける集中ゼミ」(5月21日〜22日)は、まさしくそのための2日間です。

どういう方が参加されるのか?というお問い合わせをいただきましたが、

業界:エネルギー、製造業、商社、流通、サービスなど規模:上場大手企業から個人事業まで部署:経営、新規事業開発・研究開発担当者や環境・CSR部門など役職:経営者から20代若手まで

さまざまな視点で各参加者の課題を話しあえるのもこのゼミの醍醐味です。

環境・CSR部門の若手や新任者の大局的な研修の機会として利用していただいているほか、最近は、企業の規模を問わず、時代と社会の変化に対応するための新規事業の開発を担当される方も多くいらっしゃいます。

私自身が身につけてきた「環境問題を大きくとらえる枠組み」や、変化を創り出すための「効果的なコミュニケーション」などについてもお教えし、一緒に考えていくセミナーです。また、毎回業種や立場を超えたネットワークづくりにも役立っています。

今回が4回目の開催ですが、これまでの参加者がほぼ全員参加して、意見や情報交換をしているメーリングリストがあり、フォローアップゼミのほか、自主的なオフ会も開かれています。(今日も、「あのとき考え、議論していたプロジェクトが実現しました!」といううれしいメールが届いたところです)

集中ゼミの参加者のグループが、近年ナレッジ創造やナレッジマネジメントでも大きな注目を集めている invisible college や community of practice(実践のコミュニティ)になりつつあることを、とても心強く思っています。

第4期では、どのような出会いや展開があるでしょうか。

詳細と前回の参加者の感想、お申し込み・お問い合わせはこちらまで。
http://change-agent.jp/news/archives/000348.html

ぜひいっしょに学び、考え、試し、実践していけることを楽しみにしています〜。

 

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