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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2009年12月03日

レスター・ブラウン氏「森林の保護と再生」(2009.12.03)

森林のこと
 

レスターの研究所からのプレスリリースを実践和訳チームが訳してくれましたので、お届けします。

韓国の植林のすばらしい成功の話など、心強いです。(お隣の国の話なのに、これまであまり知りませんでした!)

ところで、前々号の「大気」につづき、森林も「バケツ」と考えるとわかりやすいです。バケツの水位を増やすのは? そう、森林の毎年の成長と、植林ですね。

バケツから汲み出してしまうものは? 
そして、森林というバケツの水位がどんどん減っている現状を変えるには?

そんな視点で読んでみてくださいな。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

森林の保護と再生
http://www.earthpolicy.org/Books/Seg/PB3ch08_ss2.htm

レスター・R・ブラウン

新しい経済の重要な基盤である地球の健康回復のためには、地球に残された約40億ヘクタールの森林の保護とこれまでに失われた森林の再生の両方が不可欠である。降雨の流出やそれに伴う洪水、土壌浸食を抑制し、雨水を陸域循環させ、帯水層の地下水の涵養を回復できるかどうかは、森林の保護と再生にかかる圧力を同時に軽減できるかどうかにかかっている。

地球の森林を小さくし続けている需要を減らせる可能性は、どの国にも十分にある。その最大の鍵は、先進国であれば、製紙用木材を抑制することにあり、発展途上国であれば、薪の使用を抑制することにある。

世界の紙の生産国上位10カ国の古紙利用率は国によって大きく異なり、最も低い中国とフィンランドが33%と38%、最も高い韓国とドイツが77%と66%である。世界最大の紙消費国である米国の古紙利用率は、韓国に比べるとかなり低いものの、1980年代初めに約25%であったのが2005年には50%にまで向上した。もしすべての国が韓国と同じくらい古紙を利用していたら、製紙に使われる木材パルプの量は世界全体で1/3は減るだろう。

紙の利用には、20世紀に広まった使い捨ての考え方が、恐らくどの製品よりも強く表れている。化粧用ティッシュ、紙ナプキン、紙おむつ、紙の買い物袋などの代わりに、繰り返し利用できる布製品を使えば、それだけで紙の使用量は劇的に減ると思われる。

一方、木材を最も使用しているのは燃料、つまり薪である。薪に使用される木材だけで、森から切り出される木材全体の半分強を占める。そのため、米国国際開発庁(AID)などの国際支援機関が、薪の効率化プロジェクトを支援している。

中でも非常に有望なAIDのプロジェクトの一つが、ケニアへの高効率な調理用薪ストーブ78万台の支給である。このストーブは、従来のものより、はるかに少ない薪で調理できるだけでなく、環境汚染物質もあまり排出しない。

また、ケニアはソーラークッカーズ・インターナショナル(Solar Cookers International)が出資するソーラークッカープロジェクトの支援地域でもある。段ボールとアルミホイルでできており、1台当たり10ドルと安価なソーラークッカーは、クロックポット(訳注:低温でじっくり調理する電気煮込み鍋)に似ており、調理に時間がかかる。一食を作るのに2時間近く日光が必要であるが、ほとんどコストをかけずに薪の使用量を大幅に削減することができる。また、この調理器は水の殺菌にも使えるため、人の命を救うことができる。今後、代替エネルギー源の開発は、長期にわたり、発展途上国の森林にかかる圧力低減の鍵となる。

手つかずの森は社会にとって大きな価値があるにもかかわらず、法的に伐採が禁じられている森林は世界に約2億9,000万ヘクタールしかない。国の法令による森林の保護は、長期間、材木を供給するためというよりも、むしろ洪水制御など、重要な森の機能を確実に維持するために行われていることが多い。中国やフィリピンなど、森林を法的に保護している国の多くが、大規模な森林伐採によって被害を被ってから、そのような保護を始めているのだ。

長年、森を皆伐から守る取り組みがさまざまなNGOによって行われてきたが、今、持続可能な森林管理が、森を守る新たな方法として考えられている。これは、成熟した木だけを選別して伐採すれば、森と森の生産性を永久に維持することができるという考え方である。

世界銀行と世界自然保護基金が1997年に共同で設立した「(仮訳)森林の保護と持続的利用のための連盟(Alliance for Forest Conservation and Sustainable Use)」は、2005年までに5,500万ヘクタールの森林保護地域を新たに認定し、2,200万ヘクタールの森林を認証する支援を行った。また、2005年半ばには、世界の純森林伐採地域を2020年までにゼロにする目標を発表した。

一方、環境意識の高い消費者に、林産品が持続可能な管理が行なわれている森で産出されたものであることを知らせる森林認証制度もいくつかある。その中で、国際的にもっとも審査の厳しいのが、複数のNGO団体が認証を行う森林管理協議会(FSC)の認証制度である。現在、76カ国、約8,800万ヘクタールの森が、FSC公認の認定機関により、適切に管理された森として認証されている。

原生林を皆伐して植林しようというのでなければ、植林によって、地球に残された森への圧力を軽減できる。2005年現在の世界の植林地面積は2億500万ヘクタールで、穀物畑の面積7億ヘクタールの1/3近くに達している。植林地の木材は主に製紙工場や木材再生工場で利用されている。最近、自然林からの大木の供給が難しくなってきている現状に世界の材木・建設業界が順応し、再生木材を天然木の代わりにますます多く利用するようになっているのだ。

植林地からの丸太の生産量は年間推定4億3,200万立法メートルで、世界の木材生産量の12%である。つまり、世界で生産される木材の大部分、約88%は、まだ自然林から伐り出されている。今後の生産予測によると、植林は森林伐採地(たいていは、荒廃した土地)に営利目的で行われることもあるが、現在ある森林を犠牲にして植林されることもあるようだ。また、樹木の成長に適した土地は作物の栽培にも適しているため、農業と競合することもある。さらに、植林した木を早く成長させるためには大量の水が必要なため、水不足も植林を阻んでいる。

しかし、このような阻害要因にもかかわらず、国連食糧農業機関(FAO)は、植林地が増え、木材の産出力が高まれば、今後30年間で木材の生産量は2倍以上になると予測している。植林が、いつの日か、世界の産業用木材の需要をほぼ満たし、世界に残された森の保護につながることは容易に推測できる。

韓国は、さまざまな意味で、森林再生のモデル国である。朝鮮戦争が終わった50年前、山の多い韓国から木がほとんど無くなった。そこで、韓国政府は1960年頃からパク・チョンヒ大統領の献身的な主導のもと、国を挙げて森林再生に取り組んだ。

村に作られた組合を利用して何十万人もの人を動員し、溝を掘ったり、裸の山肌に木を植えて、それを支える段を作ったりした。今では、国土の65%、約600万ヘクタールが森林で覆われている。2000年11月に韓国各地を車で廻ったとき、私は思った。地球上に森林を再生することは可能なのだ。

ニジェールでは、1980年代にひどい干ばつと砂漠化に直面した農民たちが、作物の耕地を作る際に、アカシアの若木を耕地に残すことにした。アカシアは成長するにつれて強風を弱め、それによって土壌浸食が軽減された。マメ科の植物であるアカシアは窒素を固定させて土壌を豊かにし、作物の生産力を向上させる。また、乾期には葉やマメの鞘を家畜のえさにしたり、木を薪として使ったりできる。300万ヘクタールの土地に、1ヘクタール当たり20〜150本の若木を残して大きく育てることにより、ニジェールの農村は活気を取り戻した。

補助金を、材木運搬道路の建設から植林のために使用するように切り替えていけば、世界の森林の保護に役立つだろう。世界銀行には、山や丘を森で覆うことに成功した韓国のような国際プログラムを策定し、主導するだけの行政力がある。また、FAOや二国間支援組織が、国の農林プログラムのもとで農民一人一人と協力し、可能な限り、植林を農作業の中に組み入れてもよい。

今よりもさらに効率のよい薪ストーブや調理用代替燃料を開発して木材の使用を抑制したり、組織的に古紙再生したり、使い捨て紙製品の利用を禁止にすれば、地球上の森林にかかる圧力を軽減することができる。しかし、地球の森林再生は、人口の安定化も同時に行わなければ成功しない。森林再生と人口安定化の統合的計画を国ごとに調整し実施すれば、地球の森林の再生は可能である。

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出典:レスター・R・ブラウン著『プランB3.0:人類文明を救うために』
(Plan B 3.0: Mobilizing to Save Civilization)第8章「病んだブループラネットを修復する」2008年、W.W.ノートン社(ニューヨーク)より刊行。無料にてダウンロード可。またはwww.earthpolicy.org/Books/PB3/index.htmにて購入可。プランB3.0のスライドによる要約はwww.earthpolicy.org/Books/PB3/presentation.htmにて閲覧可。

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リア・ジャニス・カウフマン
電話:(202) 496-9290 内線 12
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アースポリシー研究所
1350 Connecticut Ave. NW, Suite 403
Washington, DC 20036
ウェブサイト:www.earthpolicy.org

(翻訳者:横内若香、チェッカー:酒井靖一)

 

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