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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2009年09月10日

『江戸・キューバに学ぶ“真”の持続型社会』が刊行されました (2009.09.09)

大切なこと
 

<内容>

■『江戸・キューバに学ぶ“真”の持続型社会』が刊行されました


■「はじめに」より

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■『江戸・キューバに学ぶ“真”の持続型社会』が刊行されました


[No. 1612] で、公開セミナー『循環型社会のつくりかた』で私が冒頭に発言した内容をご紹介したとき、以下のように書きました。

> 3月7日に公開セミナー『循環型社会のつくりかた 〜新しい資源循環のかたち〜』
> に参加しました。
>
> 石川英輔先生の「資源循環の「江戸」」、吉田太郎さんの「自立へ取り組む「キュー
> バ」、内藤耕作さんの「環境サービス胎動の「現代社会日本」」の講演、それぞ
> れとても面白かったです。それを受けて、私が司会役をしたトークセッションも
> 盛り上がりました(司会役なんていらなかったような……。^^;)
>
> 終わったあと、参加者から「こんな面白い話をたった数十人で聞くのは贅沢です
> ね」という感想をいただきました。
>
> そうそう、このセミナーをベースに本ができる予定ですので、残念ながら参加で
> きなかった方は、本をお楽しみに!

この本が刊行されました。

『江戸・キューバに学ぶ“真”の持続型社会』
内藤耕、石川英輔、吉田太郎、岸上祐子、枝廣淳子(著)
(日刊工業新聞社)

「江戸時代」は、私たちが模索している持続可能な社会を実現していたことをご存じですか?

ソ連崩壊後の「キューバ」の持続可能な社会づくりの取り組みや、日本における新しい環境サービス産業の事例などもあわせて、真の持続可能な社会とそこへの道のりを考えます。

私たちの社会や経済、暮らしはどのように変わるのでしょうか?

ぜひ、お手にとってご覧ください。


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■「はじめに」より

本プロジェクトの言い出しっぺでとりまとめをしてくださった内藤耕さんが書かれた「はじめに」をご紹介します。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 持続型社会に関する議論が活発化している。これは、現代社会が大量生産、大量消費、大量廃棄を前提として営まれ、それが生活の様々なところで歪を生じさせ始めたからだ。

 便利な製品は、生活や仕事に必要不可欠である一方、それらの製品を生産し、動かすエネルギーは膨大になり、大量の化石燃料が日々燃やされている。さらに、先端技術を使った製品には、多くの種類の鉱物資源が地下から採取され使われ、製品が廃棄されても地球の中に戻ることはなく、私たちの目の届かないところに持っていかれ、そこに捨て置かれている。

こんなことを続けていけば、地球が有限である以上、今の私たちの生活や仕事を支えている多くの製品が、資源の制約からいずれつくれなくなるということは明白だ。そして今やこのことは、非常に近い将来起こるのか、それともまだまだ先なのかという時期だけの問題となりつつある。

 もう少し具体的に見てみよう。これまで、便利で効率的な製品を多く社会に供給し、人々の生活を豊かにしてきた産業界の人類への貢献は計り知れない。この産業界が、ここ数年、地球環境問題を考慮し、利便性や効率性に加え、より環境に調和した製品の開発に積極的に取り組み、その普及促進を政府も支援している。

しかし、地球は有限なのだ。世界人口の増加は急激であり、また多くの発展途上国の経済発展に伴い、近代的な製品を使っていなかった多くの人々もそれを使うようになり、生産されるモノの数は増え、結果として、資源消費量は拡大し続ける。これでは一つ一つの製品がたとえ省エネルギーや省資源であったとしても本質的な問題の解決にはならない。

つまり、省資源や省エネルギーの努力は、資源消費量の一定の抑制につながるかもしれないが、人口の増加や経済の発展のスピードを考えれば、多くのところで議論されている持続型社会への転換には程遠いことが分かる。

 このような問題意識から、なんとなく今の省エネルギーや省資源に向けた技術開発戦略や、これまでの利便性や効率性を追求し続ける技術開発の方向性が正しいのかということに疑問を持つようになった。

 この曖昧な問題意識を約二年前から持ち始め、その後、本書を分担執筆した方々と個別に議論を積み重ねてきた。その結果、なんとか考えもまとまり、一つの仮説のようなものも持てるようになったことから、二〇〇九年三月には「循環型社会のつくり方:新しい資源循環のかたち」という小さなセミナーを開催し、さらなる議論を行った。

セミナーでの議論は、江戸時代の事例を石川英輔氏(第二章)、キューバの事例を吉田太郎氏(第三章)、現代社会日本の事例を私と岸上祐子氏(第四章)、そして討論のコーディネータを枝廣淳子氏(第五章)が分担し、最終的にそこでの議論を書籍として取りまとめた。

 簡単に著者の背景を紹介しておくと、石川氏は小説家、吉田氏は長野県農業大学校の教授で農業の専門家、私は、資源問題を専門としてきたが、今はサービスへの科学的・工学的手法の適用を目指している。岸上さんは、今も国内外を飛びまわり、環境分野の先進的取り組みの取材を続けている。枝廣さんは、環境ジャーナリストであり、地球環境問題を扱うNGOの共同代表も務めている。

すなわち、背景も多岐にわたれば、また専門分野も違う。「いったい議論がうまくかみ合うのか」、自分でも一抹の不安があったのだが、蓋を開けてみると杞憂にすぎなかった。抽象的な総論に終わらないよう可能な限り具体的な事例をベースに持続型社会の生活と産業について論じてもらったのだが、各事例の背後にある意外な共通項が見えて来たのである。

 セミナーの最後に行った総合討論でも、各パネラーの議論が大きく盛り上がっただけでなく、「おもしろかった」「参考になった」とセミナーの参加者からも予想以上の高い反響をいただいた。こうしたシナジーが起こりえたのも、各執筆者が異なる視点と異なるフィールドから出発したにも関わらず、目指すべきテーマが、「持続型社会における生活と産業の姿」と一貫していたためであろう。

なお、この結果もふまえ、各執筆者にはセミナーでの発言内容を参考に大幅に加筆や修正をしてもらった。したがって、セミナーで見出されたシンクロ率がより高まっているであろうし、目指すべき持続型社会の到達点や社会像もより明確となったと感じている。

 さて、本書を手にされた読者は、持続型社会における生活が不便なだけでなく、過酷なものだとの不安を感じておられよう。「環境に良いことはわかっていても、今さら江戸時代には戻れない」「キューバには行きたくない」との言もよく耳にする。

だが、本書を読んで頂き、江戸時代やキューバの事例を見ると、今ある製品を失うことが生活の質を落とすことにつながるのではなく、逆にあげるのだ、ということが見えてくる。言い方を変えると、現代社会のように効率的な社会は、効率的であるがゆえにどうしても忙しなくなり、逆に江戸やキューバのような非効率的で不便な社会の方がのんびりしていて、豊かだという奇妙なパラドックスがあることが分かってくるのだ。

 今の生活は、一見便利なようで、子どもが夜更かしし、幼い子どもですら成人病を患い、ワーキングプアが問題とされ、リストラ失業者を中心に年間三万人もの自殺者が出ている一方で、ワーカーホリックと持ち帰り残業で疲労困憊しているサラリーマンたちがいる。つまり、持続型社会での生活は、現代の忙しい生活と比べた場合、見方によっては必ずしも過酷ではないのだ。

 さらに、今の日本が決定的に有利なのは江戸時代やキューバと違い、最先端の知識と科学技術を手にしていること、そして資源循環を市場の力で促す新しい環境サービス産業の萌芽が見られることだ。これまでの研究開発は産業の生産性の向上や生活の利便性、効率性にのみ向けられてきた。

しかし、日々の暮らしの中にある娯楽や芸術の発展、そして製品のメンテナンスやリユース、マテリアルリサイクルといった環境サービスへとその科学技術の内容や開発の方向性をシフトできれば、人類の未来は明るいと考えることができる。私はそう信じているし、本書をお読みいただけた読者も賛同していただけるのではないだろうか。

二〇〇九年八月吉日

執筆者を代表して 内藤 耕

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『江戸・キューバに学ぶ“真”の持続型社会』
内藤耕、石川英輔、吉田太郎、岸上祐子、枝廣淳子(著)
(日刊工業新聞社)


内藤さんとは東大の客員助教授をしていたときの「同僚」として初めて出会い、その後、時々意見交換をしてきました。発想が面白く、いつも刺激的な議論をしています。客員助教授時代の証(思い出?)に、以下の本も一緒に書きました。

『入門! システム思考』
枝廣 淳子 (著), 内藤 耕 (著) 講談社現代新書

内藤さんとのつながりがこうして、石川先生や吉田さんともつながり、キャンドルナイトなども一緒にやっている編集者・岸上さんとのコラボレーションで、本書を多くの方々に読んでもらえることをとてもうれしく思います。

 

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