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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2009年08月31日

温暖化によって、日本にどのような影響が出てくるのだろうか?(2009.08.31)

温暖化
 

<内容>

■「朝まで生テレビ」に出演して

■温暖化によって、日本にどのような影響が出てくるのだろうか?


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■「朝まで生テレビ」に出演して

先週金曜日の夜中(というか土曜日の朝早く)01:20〜04:20の3時間、「激論! ド〜する?! 地球温暖化」をテーマとした「朝まで生テレビ」という番組に出演しました。

司会の田原総一朗氏は、だれが何を言っても、2050年に80%や2020年に25〜40%などの削減は「できっこない!」の一点張りで、あまり人の話を聞いてくれないことが多く、机を叩いて出演者を恫喝したり、という感じだったので、びっくりしました。

参加しようにもきちんと筋道を立てて話すことは許されず、話の途中でも遮られたり、別の話に飛ばされたりと、不完全燃焼のまま終わってしまいました。一般の視聴者のブログなどで番組の感想を読んでも、うーむ。。。と思うようなコメントもけっこうあります。でも、2つの意味で、よい勉強になりました。

ひとつは、私たちは「温暖化は現実のものであり、早く手を打たなくてはいけない」と思っていても、「そうじゃないんじゃないの?」という考えや批判がけっこう強いのだなあ、ということです。「温暖化なんて起こっていないんじゃないの?」「儲けるためにそういうことを言っているんじゃないの?」等々。

たぶん、「温暖化」や「環境」が一部の人々の何か、ではなく、社会のメインストリームになってきたこともあるのでしょうね。“体制”を批判する目や勢いがこちらに向かってきている感じです。「みんなで温暖化、温暖化というなんて、あの出演者たち、共産主義かカルトじゃないの」みたいに。

温暖化についてあまり知らない方々に温暖化について説明し、取り組みを呼びかけていたときや、温暖化は現実であり何とかしなくては、と同じように思っている方々にお話しするときとはまた違った説明やアプローチが必要と痛感しました。

もうひとつは、伝え方です。ふだんは、講演だったら60分なり90分、自分なりの論理や流れを事前に考え抜いて、説明することができます。質疑応答やパネルディスカションだったら、その場で考え、答えることになりますが、それでも、常識の範囲内の時間であれば、遮られることなく、筋道を立てて話すことができます。

でも、この番組のように、台本はもちろんないですし、説明のための資料も用意せずに出て、話そうにもすぐに遮られたり、本当に言いたいことではなく、言葉尻に反論されて時間切れになってしまったりするような場は、初めてでした。

テレビ番組にも出たことがありますが、事前にだいたいの流れは教えてもらっているので、事前に組み立てを考えることができますし、その場で質問が来ても、答えている間は、じゃまされることはありません。

こういう場では、いつもとは違う伝え方や切り込み方をしなくてはいけないのですね。そういうスキルも磨く必要があるのだと思いました。。。

そういう意味で、良い経験になりました。せっかくなので、今後役に立つように、学びの機会にしなくちゃ、と思っています。


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■温暖化によって、日本にどのような影響が出てくるのだろうか?

「朝まで生テレビ」では、温暖化が起こっているかわからない、寒冷化が起こっているのではないか、という討論の設定でしたし、武田邦彦先生は「温暖化の影響なんてひとつも出ていない」と断言されていましたし、温暖化の影響についての話はまったくできませんでした。

でも、多くの方々が身の回りの様子などから「何かおかしい」と思っているという世論調査もあります。

「いったいどういう影響があるのだろう?」と思っている方も多いでしょう。また、まわりの方々にきちんと説明したいと思っている方もいらっしゃるかもしれません。

日本にどのような影響が出ているのか、出る可能性があるのかについて、温暖化影響総合予測プロジェクトチームのレポートが出ています。
http://www-cger.nies.go.jp/climate/rrpj-impact-s4report.html

「日刊 温暖化新聞」の温暖化レポートにサマリーがありますので、ぜひ読んでみてください。
http://daily-ondanka.com/report/index.html

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

地球温暖化「日本への影響」〜最新の科学的知見〜

温暖化影響総合予測プロジェクトチーム
(2008年5月29日 改訂版:2008年8月15日)
http://daily-ondanka.com/report/japan_03.html

発行: 温暖化影響総合予測プロジェクトチーム
http://www-cger.nies.go.jp/climate/rrpj-impact-s4report.html

発行日:2008年5月29日(改訂版:2008年8月15日)

ページ数:94ページ

入手先:http://www-cger.nies.go.jp/climate/rrpj-impact-s4report/20080815report.pdf

・環境省地球環境研究総合推進費の戦略的研究「S-4温暖化の危険な水準及び温室効果ガス安定化レベル検討のための温暖化影響の総合的評価に関する研究(略称 温暖化影響総合予測プロジェクト)の前期3年間(平成17?19年度)の研究成果をまとめたものである。

・温暖化影響総合予測プロジェクトチーム:
茨城大学の三村信男教授をリーダーとして、茨城大学、(独)国立環境研究所、東北大学、(独)農業・食品産業技術研究機構農村工学研究所、東京大学、国土技術政策総合研究所、筑波大学、国立感染症研究所、(独)農業環境技術研究所、(独)国際農林水産業研究センター、(独)森林総合研究所、九州大学、名城大学、(株)三菱総合研究所の14機関から約45名の研究者が参加。このプロジェクトは、平成17(2005)年にスタート、前期3年、後期2年の合計5年間の研究プロジェクトとして進行中。日本及びアジア地域の水資源、森林、農業、沿岸域・防災、健康といった主要な分野における温暖化影響について、できるだけ定量的な知見を得ること、及び日本への影響を総合的に把握し、温暖化の程度との関係を示すことを目的としている。

◆概要
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第4次評価報告書で、1990年頃に比べて2〜3度の気温上昇によって世界規模で経済的に負の影響が生じることが指摘されたが、現状では、各国や地域、また影響を受ける分野ごとの特徴を踏まえた温暖化の危険な水準に関する明確な知見が得られていない。そのことから、温暖化影響総合予測プロジェクトチームでは、温暖化の危険な水準及び安定化濃度に関する科学的検討を緊急かつ重要な課題と考え、研究を進めてきた。

プロジェクトチームが得た主な研究成果は以下の3つ。
1.影響量と増加速度は、地域ごとに異なり、分野毎に特に脆弱な地域がある。

2.分野ごとの影響の程度と増加速度は異なるが、我が国にも比較的低い気温上昇で大きな影響が現れる。

3.近年、温暖化の影響が様々な分野で現れていることを考えると、早急に適正な適応策の計画が必要である。

本報告書では、上記3点を踏まえ、「水資源」「森林」「農業」「沿岸域・防災」「健康」の5分野における温暖化影響を評価した。温暖化影響の分析には、「社会経済・排出シナリオ」「気候シナリオ」、そしてこれらのシナリオを前提条件とした分野別・事象別の影響評価モデルを用い、これまでにないほど詳細な将来予測を明らかにした。さらに、「適応策と今後の課題」についても検討を行った。

●分野別温暖化影響
「水資源」「森林」「農業」「沿岸域・防災」「健康」の5分野における温暖化影響を評価した。将来予測については状況に応じた予測モデルを作成し、これまでにないほど詳細な可能性を明らかにしている。

(1)水資源
・温暖化による豪雨増加は地域によって差があり、山岳域はより増加する傾向
・温暖化による豪雨の増加に伴う洪水期待被害額は年間約1兆円の見込み
・豪雨による斜面発生危険地域は都市周辺に迫る
・温暖化によってダムの堆砂が加速
・積雪の減少によって代掻き期の農業用水が不足する可能性
・100年後に九州南部で渇水が増加

水資源への影響は、大きく豪雨と渇水に分けられる。豪雨は様々な災害をもたらし、無降雨は水利用を制限させ、ともに経済損失をもたらす。

(2)森林への影響
・温暖化によりブナ林の分布適域が大きく減少。平均気温が約1.5℃上昇すると約30%減少し、約2.5℃上昇で約50%減少、約4.0℃で約80%減少する。
・分布北限のブナは温暖化に対応した移動は困難
・温暖化によりマツ枯れ被害が拡大
・東北地方のハイマツは温暖化に対して脆弱
・シコクシラベは温暖化により絶滅が危惧される

植物は種ごとに温度や降水量に対する反応が違い、気候シナリオが多岐にわたることから、種ごとの予測とシナリオごとの分布予測を行った。

(3)農業への影響
・コメ収量は、北日本では増収、西日本では現在とほぼ同じかやや減少傾向
・平均収量が減少する地域とほぼ同じ地域(近畿、四国、中国、九州)で、収量の年々変動も大きくなる傾向
・平均気温がおおよそ2℃上昇するまでは全国平均の収量は増加するが、それ以降減少に転じ、約2.6℃以上の気温上昇で現状以下になる。

上記は、我が国の主食であるコメの国内生産への直接影響と、世界の食料需給関係の変化を介した間接影響の推測によるもの。また、2030年代までの推計によれば、世界の食料需給関係の変化による影響は、世界合計として見ればそれほど大きくないと予測される。

(4)沿岸域への影響
・温暖化による海面の上昇と高潮の増大で、高潮による浸水面積と浸水人口が増加。それらの面積と人口は温暖化の進行に伴い徐々に増加
・砂浜の経済価値は1m2あたり約12,000円。30cmの海面上昇によって失われる砂浜の価値は1兆3千億円に達する
・干潟の経済価値は1m2あたり約10,000円。海面上昇によって全国の干潟が失われるとするとその経済的損害は最大約5兆円に達する

温暖化の要因が重なり合って起きる災害、温暖化に関わる要因と関わらない要因が重なり合って生じる災害を「複合災害」として考慮。水災害と地盤災害に大別し、それぞれの適応策と対応策を考え、その重要性を説いている。

(5)健康への影響
・気温上昇に伴い、熱ストレスによる死亡のリスクが高まる
・日最高気温上昇に伴い、熱中症患者発生数は急激に増加する。65歳以上の年齢層では35℃を超えると患者発生数が急激に上昇
・温暖化による気象変化で、光化学オキシダント濃度が上昇し、これに伴う死亡が増加の見込み。ただし、増大する光化学オキシダントの越境汚染より影響は小さい
・デング熱媒介蚊のネッタイシマカの分布可能域が、2100年には九州南部・東西海岸線、高知県、紀伊半島の南部、静岡県、神奈川県、千葉県南部と広範囲に拡大

温暖化による健康影響としては、感染症よりも熱ストレスによる直接的影響が大きな問題として考えられており、熱波対策の追加検討や熱中症に対する適切な予防などの重要性を主張している。

(6)分野別影響の統合評価
気候シナリオにMIROC(大気・海洋・陸面結合モデル)を適用し、1990年を基準年とした気温上昇を横軸に分野別影響変化をグラフに表した。(図1?3)

●適応策と今後の課題
温暖化の進行が避けられない以上、悪影響に備えて適応策の導入が必要である。だが、適応策だけでは影響のすべてを抑制できないため、緩和策と適応策の両方を実施することが不可欠である。ここでは、上記5分野における緩和策と適応策を、それぞれ詳しく説明している。

<図1>〜<図3>についてはサイトをご覧ください。
http://daily-ondanka.com/report/japan_03.html

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「日刊 温暖化新聞」の温暖化レポートでは、内外の注目すべきレポートを簡単に要約してご紹介しています。メールニュースでもときどきご紹介しようと思いますが、よろしかったらときどきのぞいてみてくださいな。
http://daily-ondanka.com/report/index.html

 

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