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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2009年06月28日

素敵な活動「森の“聞き書き甲子園”」(2009.06.28)

大切なこと
森林のこと
 

<内容>

■「学習する組織」の実践の場、マンスリー・ミーティング

■「森の“聞き書き甲子園”」のご紹介

■自分にチェックイン、してみませんか?


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■「学習する組織」の実践の場、マンスリー・ミーティング

私の会社では、毎月「マンスリー・ミーティング」を行っています。よくある業務の確認や指示のための会合ではなく、「学習する組織」の実践の時間です。

各自が今、心の中にあることをひと言ずつ述べてその場に参加する「チェックイン」に始まり、業務や会社にとって大事なことや、話題のテーマ、スタッフがスキルアップを図りたいことについて、それぞれが考えや気づきを深める時間がゆっくりと流れていきます。

通常はとても速いペースで仕事を進めているオフィスですので、この2時間は、みんなにとっても「いつもと違う大事な時間」。毎月の社内会議を社員がこんなに心待ちにしてくれている会社というのも、あまりないんじゃないかなあ?と思っています。

このマンスリー・ミーティングでは、それぞれが興味のあることや勉強したいことを「宣言」し、業務の合間に調べたりまとめたりして、みんなの前で発表し、意見交換をする時間もあります。

業務に関連する「カーボン・オフセット」について発表したスタッフもいれば、「このオフィスをどうやってカーボン・マイナス・オフィスにするか」を考え、発表してくれたスタッフ、「オフィスのファイリングシステムの提案」をしてくれたスタッフもいます。

「私の森.jp」の担当者は、その取り組みを説明し、ワークショップ担当者は「ワークショップ参加者を増やすためのレバレッジ・ポイント」をループ図で示し、みんなで知恵を出し合います。甘い物に目がないスタッフは、「チョコレートを愛する人たちへ」と題したプレゼン資料を準備して、チョコレートやお菓子の環境問題や取り組みについて教えてくれました。

今月のミーティングで、「私の森.jp」の担当者が「森の聞き書き甲子園」について、紹介してくれました。本人は人前でのプレゼンは始めて!といっていましたが、とてもわかりやすくまとめてくれていたので、プレゼンの内容を文字にしてもらいました。とても素敵な取り組みです。ご紹介します。

もしご興味のある高校生や、高校生に勧めてあげたい!と思う方がいらしたら、今年の締め切りは7月1日ですので、お早めに詳しい情報をどうぞ〜。


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■「森の“聞き書き甲子園”」のご紹介


昔からから日本人は森を護り、育て、その恵みを利用する中で、伝統的な生活や文化を受け継いできました。けれど、都市化が進み、日本人の多くは、日常の中で、森と関わる機会を失いつつあります。「森の“聞き書き甲子園”」は、日本や、地球環境にとって大切な森を護り、育て、次世代に引き継ぐために、日本人が伝統的に伝えてきた森に生きる知恵や技術に光を当て、未来を見つめ直すことを目的にしています。

内容としては、毎年100人の高校生が、長年、森と関わり、森とともに生きてきた「森の名手・名人」100人を訪ね、“聞き書き”し、記録する活動です。

では、参加する高校生と森の名手名人は、どのような人たちなのでしょうか?

この100人の参加高校生は、応募のあった定時制、通信制の高等学校、高等専修学校、特別支援学校(盲学校、聾学校及び養護学校)高等部等に在籍する生徒 の中から選ばれます。

同じく100人選ばれる森の名手・名人は、森づくり、船大工、つげ櫛職人、かぐら面づくり、椎茸栽培、炭焼き、草木染め、漁師、養蜂家、しめ縄づくりなど幅広く、森に関わる分野で様々な経験や優れた技術を先人達から引き継いでいる人たちです。これらの人々は毎年、国土緑化推進機構が「森の名手・名人」として選定・表彰しています。


では“聞き書き”とは、一体なんでしょう?

“聞き書き”とは、「一対一の対話を通して、その知恵や技術、そして人生そのものを聞き、その方の「話し言葉」だけで文章にまとめる手法」(森の“聞き書き甲子園”HPより)です。

以下は、長野県の指物師という仕事の名人に高校生が聞き書きをしているシーンです。指物師というのは、木の板をさしあわせて組み立てる、箱や、机、タンスを作る職人さんです。

○私の森.jp「出張!森の“聞き書き甲子園”」/「指物師という仕事」
http://watashinomori.jp/go/image_kk_01.html

聞き書きの結果、このようなカタチでまとめられます。

◆一部ご紹介

「はじめから終わりまで全部1人でこせえるだ。
そうすると木を切ったり、組んだりする以外にも技術がいるだ。
漆を塗る技術もいるだな。
昔は、たんすの金具ですら自分でこせえたっていうからな……。
それに、親父もそうだったが、設計図は頭ん中、計算も頭ん中だ。
だて、頭ん中に描いててその通りにこせえてくだけのもんだ。
でも一番大事なのは、木が相手だで木の気持を考えることだ。
木は生きてるもんでな、木を上手に騙さなきゃいけねえんだ。
それがむずかしいがな。」


次に、そんな高校生たちが応募をしてからどのような流れで聞き書きをし、レポートをまとめていくのか、スケジュールを見てみます。

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7月1日:応募締切
8月上旬:参加高校生決定
8月11〜14日:聞き書き事前研修会(会場→高尾の森わくわくビレッジ:東京都)
9月:聞き書きのための計画づくり
9月下旬〜12月:「森の名手・名人」を訪問し、「聞き書き」取材
12月〜1月初旬:レポートづくり
2010年3月28日:フォーラムにて成果発表(会場:東京)
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こうした「森の“聞き書き甲子園”」の活動は、2002年、林野庁と文部科学省によりスタートし、現在は社団法人国土緑化推進機構・NPO法人共存の森ネットワークを含む4者からなる 実行委員会 で運営されています。

去年までの7年間で、700人の高校生が参加し、その作品も700点に及んでいます。

現在ちょうど、2009年度、第8回目の参加高校生を募集中です。今年は、「森の名手・名人」への取材に加え、「海・川の名人」(漁師、海女等)に取材する高校生も若干名募集しているとのこと。応募締切は7月1日(水)必着!ご興味おありの方がいらっしゃいましたら、応募してみてはいかがでしょう?詳細は以下をご覧ください。

○私の森.jp「ニュース&トピックス」
http://watashinomori.jp/news/2009/20090522_02.html

ここで少し、森の名手・名人の言葉と、参加した高校生たちが、名人に出会い、どのようなことを感じたのか、その「声」をご紹介したいと思います。

(ご紹介する内容は、森の聞き書き甲子園HP,会報誌【存】、Green TV Japan、先日参加した成果発表会の際に聞いたものなどです。)


◆森の名手・名人の「声」

・「この年になっても、いまだに一年生よ。今、六十八じゃけど、一生修行じゃと思うとる」(広島県・船大工の名人)

・「我々の仕事は木と話せんことには始まりません」(香川県・森づくりの名人)

・「我々の子どもが使うときのために、昨日、今日って森を大事にしていかないといけない。」(東京都・森づくりの名人)

・「山は循環させていかなあかんのや。それを誰がするっていうたら、人間しかおらんのや」(和歌山県・炭焼の名人)

・「人間の目と勘というものはすばらしい。」(鳥取県・炭焼の名人)

・「損やとか得やとかいう、金銭にこだわった考え方だけでなしに、自分の充実した生き方。そういうもんを、みなさんは忘れすぎておりはせんかな、と思いますわね。」(石川県・森づくりの名人)


◆“聞き書き”に参加した高校生たちの「声」

・「ちょっと人生変わるかも」

・「伝える、っていうことが大事なんじゃないかと思う。」

・「森と関わっていくのはどういうものなのかな、って考えることができた。」

・「最初は名人のことを書いている。最後になると、名人のいいたいことは、自分が他の人にいいたいことになっていく。」

・「聞き書きすることによって、その人の人生を知ることができる。」

・「名人の言葉や技にはウソがない。だから、その部分を知れる自分は幸せだなと思います。」

・「100年先を考えている名人に出会って感動した。先人の知恵の中には大切なものがある、それを次世代へつなげて行きたい」


このように、高校生たちは“聞き書き”を通して、森の知恵や伝統、技術だけでなく、森の名手・名人の生き方、人生そのものに触れることができます。

こうした高校生たちの経験や、伝えたい、という気持ちは、現在このような場所で見ることができます。

<関連リンク>
○森の“聞き書き甲子園”「聞き書き電子図書館」
http://www.kyouzon.org/library/

○名手・名人の思いを繋げ?高校生たちが感じ取ったもの
(Green TV JapanのJOURNAL PROGRAM(動画))
http://www.japangreen.tv/journal/#/000381

<書籍>
『森の名人ものがたり(ASAHI ECO BOOKS13)』
(アサヒビール株式会社発行、清水弘文堂書房編集発売/森の“聞き書き甲子園”実行委員会事務局編)


次に、卒業生の活動をご紹介いたします。第1回目の“聞き書き”に参加した6人が、2回目からの研修の際、新しく研修を受ける高校生のサポートを、ボランティアで行いました。研修後、「共存の森」と名付けた活動を彼ら自身で提案。関東・関西・東北・北陸の里山を拠点に、人や自然、地域の人たちが積極的に関わり合える「森づくり」「地域づくり」の活動を展開 しました。

それを受け、お世話になった「森の名手・名人」の方たち、そして「森の“聞き書き甲子園”」や「共存の森」の活動を応援したいと考えてくれる一般市民の方々の協力のもと、2007年12月に、NPO法人化し、「NPO法人共存の森ネットワーク」が設立されました。この活動のほとんどは聞き書きを経験した高
校生、卒業生たちが自分たちで企画・運営を行い、そのネットワークを広げています。

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※沿革について(補足)
2002年当初、林野庁と文部科学省でスタートし、第2回目(2003年4月)から、社団法人国土緑化推進機構、NPO法人樹木・環境ネットワーク協会を加えた4者による実行委員会が主催するようになりました。同年8月、研修のボランティアをした高校生が「共存の森」を提案し、2007年にNPO法人化。2008年度からはNPO法人樹木・環境ネットワークさんに代わり、NPO法人共存の森ネットワークが主催側となりました。そのため現在は、林野庁、文部科学省、国土緑化推進機構、NPO法人共存森ネットワークが主催しています。
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イーズの私の森.jpでも、活動をご紹介させていただいています。

○出張!森の“聞き書き甲子園”
http://watashinomori.jp/go/image_kikikaki.html

○あの人の森は?
(NPO法人共存の森ネットワーク 副理事長 渋澤寿一さんインタビュー)
http://watashinomori.jp/go/image_itv_03.html

○森のグッド・ニュース
(森の知恵を明日につなぐ、第7回森の”聞き書き甲子園”開催レポート
http://watashinomori.jp/news/2009/gn_20090410_01.html


最後に、まとめとなりますが、イーズでは、地球から学び、自分のこころに耳を傾け、自分の頭で考え、そして自ら発信することで変えていこうとする「地球視野の変化の担い手」を育て、そのネットワークを広げるために活動しています。

森の“聞き書き甲子園”を通して、森や自然とのつながりを学び、感じ、本当に大切なことを考え、自分たちで情報を発信し、ネットワークを拡げている活動は、まさにイーズが目指す「地球視野の変化の担い手」そのものではないかと感じました。

今回は、森の聞き書き甲子園をご紹介させていただきましたが、今後も、様々な機会を通して、また教育を通して、そんな変化の担い手が増えていってくれることを願っています。

ありがとうございました。

<関連リンク>

○森の“聞き書き甲子園”
http://www.foxfire-japan.com/

○共存の森ネットワーク
http://www.kyouzon.org/index.html


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■自分にチェックイン、してみませんか?

2時間のマンスリー・ミーティングの最後は、ふたたびそれぞれが今思っていることを述べる「チェックアウト」です。

チェックインもチェックアウトも、ホテルと同じ。慌ただしい業務やいろいろ気になっていることはとりあえず置いておいて、みんなとのその場に「チェックイン」するということです。最後は、その時間と場を共有できたことに感謝しながら「チェックアウト」し、それぞれの業務に戻っていきます。

どんなに忙しくても、その時間だけは、昨日のことや先の予定などで頭がいっぱいの「心、ここにあらず」「気もそぞろ」状態になるのではなく、「今・ここ」に100%存在すること。その豊かな心静かな時間を楽しめること。

これがますます加速する時代にも、自分を失わずに幸せに楽しく自分らしく生きていくコツの1つじゃないかな、と思っています。

時には「自分にチェックイン」、してみませんか?

 

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