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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2009年03月29日

トランジションタウン (2009.03.29)

エネルギー危機
新しいあり方へ
温暖化
 

<目次>--------------------------------------------------------------

【トランジション・タウンとは?】

【自分の活動を広げたい方々へのちょっとしたトレーニング】

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「トランジション・タウン」という言葉を聞いたことがありますか? 町や地域のレベルで、ピークオイルと温暖化への対応を考え、しっかりした地域作りを進めていこう、という動きです。ピークオイルとは、産油量がピークに達して、そのあとは減っていくタイミングのことです。

メールニュースのバックナンバーの「エネルギー危機」のコーナーに関連情報がありますので、ごらん下さい。

とっても興味深いそして大事な動きが広がりつつあります。この「トランジション・タウン」のウェブサイトから訳してもらいましたので、お届けします。
http://transitiontowns.org/Main/HomePage

ちなみに「トランジション」とは、transition、日本語では「移行」と訳すことが多いです。あるべき姿・理想的な姿に移行していこうとする町・地域、という感じでしょうか。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

1.トランジション・タウンとは
http://transitiontowns.org/TransitionNetwork/TransitionInitiative 

トランジション・タウンは、「ピークオイルと気候変動の課題とチャンスに対し、自分たちのコミュニティはどう対応できるか?」を考える個人が集まり、ピークオイルや気候変動がもたらす外部からの影響に左右されない地域づくりを進めるコミュニティです。町、村、市、あるいは森林や島でもトランジション・タウンになれます。

ピークオイルと気候変動は、生活の中のあらゆる局面に関わってきます。コミュニティそのものが持続し、繁栄していくために、そのコミュニティに必要なものは何でしょうか。私たちは、ピークオイルの影響を和らげるために、どのようにしてコミュニティの弾力性を大きく高めればよいのでしょう? そして、気候変動の影響を和らげるためには、どのようにして二酸化炭素排出量を激減させればよいのでしょうか?

この大きな疑問に対し、ピークオイルと気候変動を真正面から見据え、個人が力を合わせて取り組むのが「トランジション・タウン」なのです。

具体的な活動の様子は、世界初のトランジションタウン・トットネス(英国)のHPで見ることができます。トランジションタウンの中では、現在、最も充実したHPといえます。非公式では2005年後半から活動を開始し、2006年9月に「トランジションタウン・トットネス」として正式な組織となりました。現在では、住宅、教育、エネルギー、食物、交通など、10のグループに分かれて活動しています。

・トランジションタウン・トトネス
http://totnes.transitionnetwork.org/ 
・各グループの活動レポート:
http://totnes.transitionnetwork.org/system/files/TTT+Working+Groups+Reports+May+08.doc

2.経緯
世界中のトランジションの取り組みを支援するために、「トランジション・ネットワーク」という組織が2007年春に英国で結成されました。英国、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、オーストラリア、チリ、そして日本に支部があります。

トランジション・ネットワーク:
http://transitiontowns.org/TransitionNetwork/TransitionNetwork

トランジション・ネットワークについてのpdf資料:
http://www.transitionnetwork.org/Strategy/TransitionNetwork-WhoWeAreWhatWeDo.pdf

※pdf資料は、トランジション・ネットワークの仕事や役割のほか、トランジションに関わる用語の定義、トランジションの目的と方針などをまとめたものとなっています。

会議やフォーラムもこれまでに開催されています。それぞれの内容が公表されており、そのいずれにも、ウェブ上からコメントが加えられるようになっています。ピークオイルと気候変動について志を同じくする人たちのコミュニケーションの場になっているようです。
http://transitiontowns.org/forum/

また、関連の書籍も発行されています。
『仮邦題:トランジション・ハンドブック--石油依存からしなやかに強い地域へ--(The Transition Handbook--From oil dependency to local resilience--)』(ロブ・ホプキンス著)

3.進捗と状況
トランジション・ネットワークは、「ピークオイルと気候変動という2つの脅威に世界を目覚めさせるべく、トランジションタウンをもっと増やしたい」という思いで、さまざまな取組みを進めています。

その一つが、トランジション・タウンをめざす行動のための手引書作成です。
http://transitionnetwork.org/Primer/TransitionInitiativesPrimer.pdf

【日本語版】http://www.transition-japan.net/transition/primer.pdf 

この手引書は、50ページほどにまとめられており、トランジションの必要性や、地球規模、国、地域レベルでの行動例、ピークオイルについての説明、世界初のトランジションタウン・トトネスの例のほか、トランジション・タウンへの12のステップ、行動開始に当たって立ちはだかる7つの障壁など、具体的な行動方法を取上げています。

・トランジション・タウンへの12のステップ
http://transitiontowns.org/TransitionNetwork/12Steps

(1)初期段階の活動を引っ張っていく運営グループを立ち上げる。最初から解散を計画しておく。

(2)映画上映や専門家との討論会などを通してピークオイルと気候変動についての理解を深め、意識向上を図る。

(3)それぞれに活動しているグループや個人とネットワークを持ち、トランジションタウンの基盤作りをする。

(4)ステップ2からおよそ半年〜1年をめどに、組織結成の節目となる記念イベントを開催する。

(5)食、ゴミ問題、エネルギー、教育など、いくつかのサブチームを結成する。

(6)「オープン・スペース・テクノロジー」を利用した会議をする。

(注)オープン・スペース・テクノロジーとは、1985年にハリソン・オーウェン氏が提唱した話し合いの手法。参加者が時間とスペースを自由に創造することで、異なる意見を安全な場(衝突や混乱状態を許すオープンな場)で共有できる。

(7)計画について、明白で実践的なマニフェストを作成する。

(8)貴重な技術の教育を促進する(修理、料理、自転車やバイクの管理、染物など)。

(9)地元当局(市町村)とよい関係を築く。

(10)石油時代への過渡期を経験した年配者と関わる。

(11)最初の計画にこだわらず、組織が進む方向にゆだねる。

(12)エネルギー削減計画をする

また、手引書の中には、トランジション・タウンの基準を示したチェックリストもあります。このチェックリストは随時更新されますが、現在は16の項目があります。これらを満たせばトランジション・タウンとして認められます。

・チェックシート
http://transitionnetwork.org/Miscellaneous/Transition%20Initiative%20Response%20form.doc

16の基準は以下のとおり。
(1)主要要因としてのピークオイルと気候変動を理解していることと、両要因を規約や運営資料に盛り込む意思があること

(2)リーダー的役割を担う意思のある4〜5人のグループであること

(3)2日間のトランジショントレーニングコースにコアチームから最低2人の参加があること

(4)地元議会と潜在的な強いつながりがあること

(5)コアチーム全体が、ピークオイル、気候変動、トランジションの12のステップについて理解していること

(6)必要なときにはトランジション・ネットワークやほかのトランジション・タウンに助けを求めると約束すること

(7)メンバーの共同作業場であるWiki サイトの更新を続けると約束すること

(8)トランジション・タウンの様子を定期的にブログに書くと約束すること

(9)ほかのトランジション・タウンとのつながりを持つと約束すること

(10)少なくとも2つの周辺コミュニティ(トランジション・タウンを検討している地区)にトランジションについて説明すると約束すること

(11)近所のトランジションの取り組みと協力して活動すると約束すること

(12)コアチームの利益をめぐる争いは最低限にとどめると約束すること

(13)トランジションを調整する国の組織(例えば、英国トランジション・ネットワークなど)が発足したら、それがどのようなものでも一緒に活動すると約束すること。国庫補助金は再度交付申請する

(14)全活動にわたって包括的に進める努力をすると約束すること

(15)国や区域などの広いレベルでトランジション・タウンになる必要があるかもしれないが、「まずは自分の地域から始める」と認識していること

(16)コアチームから一人はパーマカルチャーの講座を受けることを推奨する

ネットワークは、このほかにも、ウェブの更新、ニュースレターの発行、トランジション行動の開始や発展のための助言と指導、トレーニングの開催など、幅広い取組みで、トランジション・タウンを促進しています。
http://transitiontowns.org/TransitionNetwork/TransitionNetworkOfferings

この組織によって正式に「トランジション・タウン」に認定されたコミュニティは、町、市、地区、森林などを含め、現在101にまで増えています。トランジション・タウンのリスト(認定順):
http://transitiontowns.org/TransitionNetwork/TransitionCommunities 

この101のトランジション・タウンの中には、日本の藤野(神奈川県相模原市)という町も含まれています。日本で最初のトランジション・タウンで100番目に認定されました。

101の国別内訳は、英国がトップで半分以上を占めています。そのあと、オーストラリア9、ウェールズ6、ニュージーランド6、米国5、スコットランド5、アイルランド2、北アイルランド1、チリ1、イタリア1、日本1と並んでいます。

4.今後について
上に紹介した正式に認定されたコミュニティのほかにも、トランジションの行動を始めることを検討しているコミュニティは現在600あります。
トランジション・タウン検討中のコミュニティのリスト:
http://transitiontowns.org/TransitionNetwork/Mulling

トランジション・ネットワークの取組みの一つ、トランジション・トレーニングは2日間で基本的なことを学ぶためのものですが、現在いくつかのトランジション・タウンがトレーニングの開催を予定しています。
今後のトレーニング開催予定リスト:
http://transitiontowns.org/TransitionNetwork/TransitionTraining#TransitionTraining

日本を含め、世界の支部がそれぞれのHPを作成する予定です。
日本支部(トランジション・ジャパン)のHPはこちらです。
http://www.transition-japan.net/transition/ 

また、ブログや雑誌でも取上げられつつあり、今後トランジションタウンの知名度は、ピークオイルと気候変動の議論とともに、高まることが予想されます。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

日本支部のHPをごらんになるといろいろな情報が日本語で読めます。
http://www.transition-japan.net/transition/ 

日本では、藤野、小金井、葉山でトランジション・タウンの活動が進められているそうです。

日本語版の手引書もとても参考になります。
http://www.transition-japan.net/transition/primer.pdf 

(どんな活動でもそうでしょうけど)トランジションタウンの活動を広げる上で、きっと出会う「7つの障壁」と、その乗り越え方も載っています。

(1)「資金がない」
(2)「だれかにじゃまされそう」
(3)「町にはすでに環境団体があるから、その邪魔をしたくない」
(4)「町に環境を大切に思う人がいない」
(5)「何をするにしてももう遅いのでは?」
(6)「自分にはちゃんとした資格が何もない」
(7)「自分にそんなことをするエネルギーはない」


ところで、
各地・各組織で活動されている方なら、ちょっとしたトレーニング代わりに、自分だったら、上記の障壁に立ち止まっている人にどうアドバイスするかな?と考えてみるとよいですよ。

トランジション・タウンの活動は、ピークオイルと温暖化の問題が顕在化するにつれ、これからさらにどんどん広がっていくことでしょう。草の根レベルでの地域づくり・地域再活性化の1つのアプローチとしても大変注目しています。

 

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