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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2009年02月23日

『地球温暖化の予測は「正しい」か?』(2009.02.23)

温暖化
 

「日刊 温暖化新聞」について、科学に関する監修やアドバイスをお願いしている国立環境研究所の江守正多さんが、とってもわかりやすい本を出されました。

『地球温暖化の予測は「正しい」か?』-不確かな未来に科学が挑む
 (1785円、化学同人)

第1章の「地球温暖化がどんな問題か?」では、
「温暖化はなぜ起こるのか?」
「温暖化はすでに起こっているのか?」
「温暖化は人間のせいか?」
「温暖化が異常気象をもたらしているのか?」
「温暖化はどんどん進むのか?」

と、温暖化の基礎的な理解からその影響や予測まで、非常にわかりやすく説明されています。私も温暖化関係の本はけっこう読みますが、「こんなにわかりやすい説明ははじめて!」とびっくりしました。科学者でありながら、素人にもわかるように伝えることができるのは素晴らしいな〜と思います。

(私のように)ド文系で、「モデル」と言われたら「シミュレーション」よりも「ファッション?」なんて思っちゃう方は、本書の16ページから69ページだけでもぜひどうぞ。(そのあとちょっと飛ばして第4章へ、という道筋もよいかも)

温暖化やその予測だけではなく、科学ってこういうものなんだー、温暖化の予測ってよく聞くけど、こうやってやっているんだー、こういうところは確かと考えられていて、こういうところはまだ不確かさが残っているんだー、その不確かさとこうやってつき合っていけばいいんだー、と、「科学とのつきあい方」という点でもとても参考になります。

今週金曜日(27日)の夜に、ジュンク堂書店新宿店で、この本の刊行記念トークセッションがあるそうです。直接お話を聞いてみたい!という方、温暖化を研究している科学者を見てみたい(?)という方、電話で申し込みとのことです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここからご案内〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

■会場 ジュンク堂書店新宿店 8階カフェにて
※ご予約をキャンセルされる場合、ご連絡をお願いいたします。
お問い合わせ 新宿店 TEL03-5363-1300

『地球温暖化の予測は「正しい」か?』(化学同人)刊行記念トークショー
どうなる?地球温暖化

江守正多 (国立環境研究所地球環境研究センター温暖化リスク評価研究室長)

■2009年2月27日(金)19:00〜(開場18:30)

今、社会的に大きな関心が寄せられている地球温暖化。さまざまな議論が話題を呼んでいます。そもそも地球温暖化とはどういった問題なのでしょうか。50年後、100年後の将来、地球が温暖化すると気候はどう変わり、それによってどんな影響が出ると考えられているのでしょうか。温暖化の未来予測は、コンピュータ・シミュレーションを主役として行われていますが、コンピュータで未来の予測を行うとはどういうことなのでしょうか。この予測は「正しい」のでしょうか。

今回のトークセッション、テレビでもすっかりお馴染みとなった、江守正多さんの登場です。温暖化予測研究の最前線から、科学的にどういった研究が進められているのか、その実情も交えつつ、温暖化をめぐるさまざまな疑問にわかりやすく答えてもらうことにしましょう。地球温暖化をどう考えるか、適切な判断材料を得るうえでとても貴重な機会となるはずです。

《講師紹介》
江守正多(えもり せいた)
1970年神奈川県生まれ。97年東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻博士課程修了。博士(学術)。97年より国立環境研究所勤務、06年より国立環境研究所地球環境研究センター温暖化リスク評価研究室長。海洋研究開発機構地球環境フロンティア研究センターグループリーダー(04年より)ならびに東京大学気候システム研究センター客員准教授(06年より)を兼務。
専門は気象学。特にコンピュータ・シミュレーションによる地球温暖化の将来予測。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ご案内ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『地球温暖化の予測は「正しい」か?』の「まえがき」をご紹介します。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


『地球温暖化の予測は「正しい」か?』-不確かな未来に科学が挑む


まえがき

 「温暖化の研究をすることになったきっかけはなんですか?」と最近たまに聞かれることがあります。僕は大学に入ったころ、とくにやりたいことが決まっておらず、進学する学科を決めるにあたって、自分はなにをしたいのか、ときにぼんやりと、ときにけっこう真剣に、考えていました(僕が入った東京大学理科一
類は、三年生から学科が分かれます)。

 当時、原子力発電所(原発)の問題がよくテレビなどで取り上げられていたように思います。チェルノブイリの原発事故があったのが、僕が高校二年生のときです。その後、日本の原発は安全か、本当に経済的に安価なのか、放射性廃棄物の管理は大丈夫かといったことが国民の強い関心を引きました。テレビでは何度か討論番組が放送され、その都度、推進派と反対派が討論するのを見ましたが、何度見ても水掛け論に見えてしまい、結局どちらが正しいかはわからず仕舞いでした。

 理系の能力を活かしたいということと、世の中の重要な問題に関与したいということだけをぼんやりと決めていた僕は、この問題に関心をもちました。すなわち、原発が本当に安全かどうかは、自分が専門家になってみないとわからない。理系の能力を活かして、世の中の重要な問題に取り組む、たいへんよい考えに思えました。

 ……で、今、どうして原発の研究者になっていないのかということになりますが、はっきりした理由はありません。その少し後に温暖化問題と出会って、たまたまそちらを選んだということになります。そういえば当時は、「原発の専門家になったら、いつのまにかその業界の論理でしか考えられなくなってしまうかもしれない」なんていっていた気がします。それはともかく、温暖化の問題に取り組むことも、僕にとって原発の問題に取り組むのと同じくらいよい考えに思えました。

 本などを読んで勉強しているうちに、どうやら温暖化という話はコンピュータ・シミュレーションで予測しているらしいことを知りました。そこで、その予測がどれくらい正しいのかは、自分が専門家になってみないとわからない、と考えたのです。理系の能力を活かして、世の中の重要な問題に取り組める……。

 それから十数年を経た現在、いくつもの幸運に恵まれたおかげもあり、僕は温暖化予測の専門家ですと名乗ってもそれほど恥ずかしくない立場になることができました。そして、幸か不幸か、温暖化が重要な問題であるという世の中の認識は、この間に格段に高まりました。今こそ、僕がこの十数年間学んできたこと、考えてきたことの中から、「温暖化の予測は正しいか」という問に対する現時点での僕の答えをみなさんにご報告したいと思います。

 ごく簡単な結論を先にいってしまうと、温暖化の予測は完璧ではありません。かといって、インチキでもありません。完璧かインチキかのどちらかであったならば、僕がこの本を書く必要はなかったでしょう。

 ひとが、よく知らない対象のことを、まったく疑わずに信じることも、まったく信用しないことも、比較的簡単だと思います。比較的難しいのは、対象の本質を理解したうえで、どの部分をどのように信じてよいか判断することです。世の中のすべてのものごとに対して、このような吟味をするのは、時間がいくらあっても足りないかもしれません。しかし、温暖化が世界の「重要そうな」問題として認識されつつある今、「温暖化の予測が正しいか」という問は、少なからぬ人にとって、少し時間を使って吟味してみてもよい問の一つではないでしょうか。

 というわけで、あなたの貴重な時間を少し使って、この問を少し深く考えることにお付き合いください。それは、温暖化という「重要そうな」問題に対して、あなたがどう対処して生きていくかを決めるうえで役に立つ判断材料になるはずです。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

江守さんは、「日経エコロミー」にもコラムを書いていらっしゃるので、よろしければぜひどうぞ!

温暖化科学の虚実 研究の現場から「斬る」!(江守正多)
http://eco.nikkei.co.jp/column/emori_seita/


さて、私は少し前から、電通で、環境戦略会議の一環として社内向け「サステナビリティ・連続セミナー」のコーディネータ&ファシリテータを務めています。

まえにも書きましたが

> 「持続可能な社会」とは、
> (1)地球の限界の範囲内で営まれる社会であり
> (2)本当の幸せをつくり出す社会
> だと思っています。この2つはクルマの両輪で、両方とも必要です。

という認識をベースに、

(1)の地球の持続可能性に関するさまざまなトピック(これまで、たとえば、ナチュラルステップのシステム条件、水問題など)
(2)の本当の幸せに関するさまざまなトピック(たとえば、ブータンのGNHなど)

の2軸で、私が話したり、外部から講師をお招きして学びを広げ、深めているのですが、次回は「温暖化」をテーマに江守さんに来てもらう予定です。

せっかくなので単なる講演ではつまらないと思い、「温暖化ってホント?」といったタイトルで、私が「懐疑論者」となって、社員のみなさんの前で、私が懐疑論を次々とぶつけ、答えてもらうというセミナーにしました。

「懐疑論者・エダヒロとのバトルを展開していただこうと思っています。よろしくお願いいたします」と江守さんにご連絡したら、

> 懐疑論者・エダヒロ!実はすごく手ごわかったりして。
> でも頑張ります。

とお返事が届き、楽しみにしているところです。(^^;

そうそう、江守さんと私と、ホンモノの懐疑論者(?)と言われている武田邦彦先生の3人で、いま本を作っているんですよー。こちらもお楽しみに!

 

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