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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2008年07月02日

アースポリシー研究所より「脚光を浴び始めた自転車」(2008.7.2)

 
グッドタイミングで、レスター・ブラウン氏のアースポリシー研究所からの自転車についての記事を実践和訳チームが訳してくれたものが届きました。 自転車関係のデータや世界各地の動きなど、興味深いです。中国の現状には考えさせられますが、、、 http://www.earthpolicy.org/Indicators/Bike/2008.htm ~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~ 脚光を浴び始めた自転車 J・マシュー・ロニー 2007年、世界では推定1億3,000万台の自転車が生産された。これは自動車の生産台数5,200万台の2倍以上である。 自転車の生産台数は、1960年代半ばから後半にかけては自動車と拮抗していた。 しかし1970年以降一気に自動車を引き離し、みるみる生産数を伸ばして、1988年には1億500万台を記録した。翌1989年から2001年にかけては停滞期を迎えたものの、その後再び勢いを取り戻し、この6年間は毎年増産を続けている。 最近の自転車生産台数の伸びは、eバイク、つまり電動アシスト自転車の伸びによるところが大きい。2007年のeバイク生産台数は、2004年から倍増し2,100万台に達した。全体としては、1970年以来、自動車の生産台数が約2倍の増加に留まっているのに対し、自転車の生産台数は約4倍となっている。 自家用車の代わりにクリーンで効率の良い自転車を奨励することは、都市の交通渋滞やスモッグを減らす上で現実的なアプローチである。行政や自転車推進団体では、都市の抱えるこうした問題をはじめ、気候変動や近年課題となっている肥満の蔓延に同時に対処するため、自転車をもう一度都市交通の中心に据えようと取り組んでいる。 欧州の多くの都市では、自転車に優しい交通政策や土地利用政策を実施し、また自転車用インフラや一般市民への啓蒙に手厚い財政支援を行うことで、自転車の利用・促進のためのモデルを作ってきた。 例えばコペンハーゲンでは、通勤人口の36%が自転車で職場に通っているが、同市は2006年から2024年の間に自転車施設に2億ドル(約206億円)以上の投資を計画しており、2015年までには市民の半数が自転車で通勤・通学するようになると見ている。 またアムステルダムでは、自宅から7.5キロメートル圏内に職場がある人のうち55%が自転車通勤をしており、オランダ政府も、2006年から2010年にかけて自転車専用道路、駐輪場、安全対策に1億6,000万ドル(約165億円)を投入すると公約している。 人口21万8,000人のドイツの街フライブルクでは、1976年以来、毎年約130万ドル(約1億3,400万円)の予算が自転車に配分され、現在では市内の全移動の7割に自転車、徒歩、公共交通機関が使われている。 他の国々の政府も欧州の例に倣っている。コロンビアのボゴタは、開発途上国の都市としては最も長い300キロメートル以上の自転車専用道路を誇っている。オーストラリアのビクトリア州では、土地利用計画法を改正し、すべての大型新築ビルに駐輪場、シャワー、ロッカー等の設備の設置を義務づけた。 韓国行政自治部は、増加する交通量や大気汚染を抑制し、高騰する石油価格に対処するため、2007年11月、新たな自転車推進キャンペーンを発表した。自転車用のインフラを強化するこのキャンペーンにより、韓国政府は、2015年までに自転車所有者の割合を7人に1人から4人に1人へと大幅に増やすことを目指している。 大気汚染と交通渋滞で悪名高い都市の中にも、自転車利用の推進によって成果を上げようという動きがいくつかある。メキシコシティは、交通静穏化策や自転車推進キャンペーンを実施し、さらに自転車と公共交通機関との接続性を向上させることにより、現在移動手段全体の2%未満の自転車利用を2012年には5%にまで上げようという計画を立てている。 またインドのデリーは、最新の都市基本計画において、すべての幹線道路に自転車専用道路の設置を義務づけたほか、化石燃料の消費の増加を抑えるために自転車利用の促進が都市計画の欠かせない要素になると指摘した。(その他の自転車推進計画の例については、以下を参照。) http://www.earthpolicy.org/Indicators/Bike/2008_data.htm#table2(英語のみ) 自転車貸し出し制度を設けて自転車利用を増やした都市もある。2007年、特に注目を浴びたのが、パリで7月に始まった安価な自転車レンタルの仕組み「ベリブ」である。現在、クレジットカードで借りることができる自転車2万600台が1,451カ所に配備されており、最初の3ヶ月間で600万回利用された。 この制度により、パリ市内での自転車利用は2倍、あるいは3倍にまで増加するだろうと評論家は分析している。同じような制度はオスロ、バルセロナ、ブリュッセルにもあり、また、ワシントンDC、ロンドン中心部、その他いくつもの都市で計画されている。 米国では、自転車はレクリエーションとしては以前から人気が高いが、移動手段としては嘆かわしいほど利用されていない。自転車の総利用回数は1960年以来全国的に減少している。今では1990年代初めより32%下がり、移動全体の0.9%を占めるにすぎない。通勤への利用に至ってはさらに少なく、全体の0.4%に留まっている。 このように統計上はさえない米国だが、自転車の明るい未来を示す兆しもある。 2005年から2009年の間に自転車とウォーキングの推進のために年間9億ドルの連邦補助金が投入されることになっており、これによって駐輪場、自転車が走りやすい道路、自転車専用道路など、自転車のための設備が記録的なペースで整備されているのである。 実際、米国の50の大都市で、自転車と歩行者のための道路が平均2倍に増える計画である。ニューヨーク市だけをみても、2030年までに自転車用の道路網が今の4倍、2,900キロメートルに延びる計画だ。 米国では自転車を支持する声も高まり続けている。米国サイクリスト連盟(League of American Bicyclists)が「自転車に優しいコミュニティ」の称号を与えた市や町は、2005年の52カ所から現在は84カ所にまで増えている。 また、さまざまな自転車の支持団体が49州とワシントンDCで活動しているが、中でももっとも楽しみなのが、このところ、「完ぺきな道(コンプリート・ストリート)」と呼ばれる運動が活発化していることである。これは、市民と環境グループが幅広く連携し、より安全で歩行者やサイクリストに優しい道、自動車だけでなくすべての人のために作られた道を求める運動である。 これまでに6つの州と50以上の都市、郡、主要都市圏で、「完ぺきな道」に関する法律が何らかの形で制定された。例えば、イリノイ州議会は、昨年10月、同州の都市部およびその周辺の新規道路建設に際し、自転車専用道路と歩道の併設を義務づけた。 中国では自転車は今でも交通手段として欠かせないが、最近その所有者が急激に減少している。国民が豊かになり自動車に転向する人が増えたせいだ。1995年に6億7,000万台あった自転車は2005年には4億3,500万台となり、35%も減っている。一方、自家用車の保有台数はその間420万台から890万台に倍増している。 自治体によっては、自転車の利用者が交通事故や渋滞を増やしているとして、自転車道路を閉鎖したところもある。上海市では2004年に自転車による中心街への乗り入れを一部の道路で禁止しているほどだ。現在世界の自転車の年間生産台数1億3,000万台の4/5以上を生産し、自転車の世界シェアを拡大し続けているその中国で、自転車文化が崩れ始めている。 交通渋滞、エネルギー消費、さらに国民の健康問題と、ますます頭の痛い中国政府。そこで政府は今各都市に対して、自転車利用を抑制するのではなく、推進を呼びかけている。2000年6月には、建設部副部長の仇保興(チウ・バオシン)氏が、既に自転車道路を狭くしたり取り壊したりしてしまった自治体に対し、元の状態に戻すよう指示を出した。 北京では、2008年のオリンピック開催準備が進むにつれ、自転車の利用を促進する動きが目立ち始めている。その一つに、テスト段階での成功を受けて、民間が政府の環境保護部と公安部の支援の下で始めた自転車貸し出し制度がある。この計画で、今年の8月までに約200カ所に5万台の自転車を配備しようというのだ。 しかし、昨今の中国政府によるこの自転車推進の掛け声は、これまでのところ北京以外ではあまり積極的な動きに結びついていない。 アフリカの病気や貧困問題の解決を目指す開発プロジェクトをみると、自転車が都市以外でも役立っているのが分かる。ザンビアでは、世界自転車支援(WorldBicycle Relief)が、HIV/エイズ問題を教育と治療をよりタイムリーに行うことで解決しようと支援団体の連合と手を結び、2万3,000台の自転車をボランティアの保健員、疾病予防の指導員、およびウイルス感染者の家族に提供している。 またブルキナファソやガーナ、ウガンダでは、オランダのNGO連合が、「自転車に乗って貧困から脱出しよう」とのうたい文句のもとでマイクロクレジット(少額無担保融資)のプログラムを立ち上げている。こうした活動のおかげで、貧しい人たちは自転車を利用して通学したり小規模の商売を始めたりしながら、そのリース料を支払うことが可能になっている。 今や世界人口の半数以上が都市で暮らしている。したがって、各国の地方自治体や都市計画家は、コペンハーゲンやアムステルダムなど欧州の古くからの優れた例を手本にすることで、自転車の利用を大いに広めることができるだろう。 両市は自転車を市の交通計画に組み込み、また市民に自転車のメリットをPRする一方で、自動車の所有や駐車にはさまざまな規制や税金を課し、その利用を牽制してきた。そうした対策が自転車の利用を大きく広めたことを両市は実証している。自転車の利用はより清潔で住み心地のよい地域を作りながら、人々の健康増進にも役立っている。 (翻訳:佐野真紀、横内若香、酒井靖一) ~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~ 中国の現状に、「一度、自動車社会を作ってから、問題への対処として、自転車社会に切り替えていくのではなく、最初から、問題の少ない自転車社会をしっか作っていく方がよいのに」と思いますよね。。。 このあたりの経験と知恵の伝播こそ、先進国から途上国への最も効果のある移転ではないかと思うのですが。。。同じ轍を踏んでから「やっぱりそうだった」と転向するのではなく、最初からこのような経験と知恵を移転できるしくみはないのかなあ。 そして、日本も自転車社会への切り替えをもっと加速して進めなくてはね。
 

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