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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2008年09月19日

ソトコト2008年6月号『チビコト』より「生物多様性ってなに?」(2008.09.19)

大切なこと
生物多様性
 

2010年に名古屋で生物多様性条約の第10回締約国会議(COP 10)が開催されることもあり、先進的な企業が「温暖化対策はずいぶん考え進めてきたが、次の大きな課題は何か?」と動き始めていることもあり、最近、「生物多様性」をめぐる情報が少しずつ増えてきています。

ずっと昔のメールニュースにも書いたことがありますが、この「生物多様性」って、一般的に使われている言葉ではないので、わかるようなわからないような……という方も多いのではないかと思います。

CSR報告書などに生物多様性に関する記述を含めたり、社員を山に送って植林や森林の手入れなどの作業をしたりする企業も増えてきました。その理由を尋ねてみると、「何となく大事な気がするから」「他社も始めているから」「温暖化の次のテーマじゃないかと思うから」というような理由も多いようです。

このテーマに関して企業から相談を受けることも増えているのですが、「生物多様性は重要なので」とおっしゃる相手に、「どうして大切なのですか?」と聞いてみると、多くの場合「なぜならば」とすぱっと答えるのは難しいことがわかります。

ここ数年来、生物多様性について勉強してきたことや、海外のネットワークを通じて得られた考え方の枠組みや知見が少しずつカタチになり始めてきましたので、これから少しずつ、考え考えしながらですが、メールニュースでもお伝えしていこうと思います。海外の企業にも生物多様性に取り組むところが増えてきています。そのあたりの動きもそのうちお伝えできたら、と思っています。

そのうち、ウェブサイトにも「生物多様性コーナー」を設けるつもりです。少しでも広く、そして本質を考えていきたいと思っています。


さて、今回は、ソトコトの『チビコト』6月号に寄稿した文章をご紹介します。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ソトコト2008年6月号『チビコト』の「ニッポンは里山の国」より


SATOYAMAという発想から、日本という国、そして世界を再構築してみよう。
Talks About Biodiversity

語り
環境ジャーナリスト 枝廣淳子

生物多様性 ってなに?


「生物多様性」という言葉はちょっと難しくて、何が問題なのかピンとこないなあ、という方も多いかもしれません。

たとえば、森の中に入ると、さまざまな植物や動物が生きていますよね。それらの生き物はバラバラに存在しているのではなく、さまざまなつながりを持っています。木に太陽の光が届くと、葉っぱが茂ります。その葉っぱを毛虫や青虫が食べます。その毛虫や青虫を小鳥が食べます。その小鳥を、オオタカなどの猛禽類が食べます。鳥の死骸を食べる昆虫もいれば、落ち葉などを分解する微生物もいます。そうしてできた栄養分で植物が育ちます。

地球上には、数十億年という進化の過程の中で、多くの生物種が生まれてきました。お互いに「食べる・食べられる」という関係(食物連鎖と呼びます)や、虫が花粉を運ぶなどの共生関係でつながり、支え合って生きているのですね。この大きなつながりの網からはずれて存在している生物はありません。すべて何らかの形でつながっており、多様な生き物がいることが豊かな自然を織りなしているのです。この生命の豊かさを表す言葉が「生物多様性」です。

多種多様な生物はお互いに影響を与えながら、自然全体のバランスをとっています。ですから、たった一種類の生物がいなくなっても、全体に影響が出てきます。たとえば何らかの原因で、ある毛虫がいなくなったとしましょう。その毛虫をエサとしていた小鳥は生きていけなくなるでしょう。その小鳥を食べていた猛禽類もいなくなってしまうでしょう。森は、鳥のフンや死骸が提供していた栄養分を失い、植物も生えなくなってしまうかもしれません。

私たち人間もひとつの生物種として大きな「つながりの連鎖」の中に生きています。多様な生物が存在しているおかげで、私たちはさまざまな食料や産業に必要な原料を得ています。私たちが現在使っている薬の60%は自然の産物からつくられたものだといわれます。まだ発見されていないものも含め、さまざまな生物がいずれガンをはじめとする多くの疾病に対する重要な薬を提供してくれる可能性もあります。生物多様性が失われると、私たちの命や人間の生存そのものも脅かされるのです。

現在、生物多様性が危機に瀕しています。生息地の破壊や汚染、野生生物の過剰利用や外来種による在来種の駆逐、少数の種のみを栽培・繁殖するなどの原因が複合的にからみあって、通常の1000倍のスピードで種の絶滅が進んでいるといわれています。

「多少生物がいなくなってもいいじゃないか」という人もいますが、いまの状況は飛んでいる飛行機のビスを1本ずつ抜いているようなものです。何本抜いたら飛行機が空中分解するかはだれにもわかりません。しかも、ビスはつながっていますから、1本抜けばほかのビスも次々と抜けていきます。本当に危ない状況なのです。

このままでは、生物多様性はますます劣化していってしまうでしょう。では私たちはいったいどうしたら、生物多様性を守るための取り組みができるのでしょうか? 

日本では、人間が必要な薪などを得ながら手入れをすることで、自然を守るという「里山」が、生物多様性の保全にとっても大きな役割を果たしていました。薪や炭が石油やガスに取って代わられるにつれて、私たちの暮らしは里山から離れ、里山に思いを馳せることもなくなってしまいました。でもこれから、生物多様性について考えたり取り組んだりするうえで、「里山」は大きな鍵を握っていると思います。その思想やライフスタイルには、たくさんの学ぶべきことがあると思うのです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


生物多様性のキーワードの一つは、「つながり」だと思っています。

「つながり」は、カウンセリング・通訳・翻訳・環境コミュニケーター・システム思考とつながってきた私のライフ・キーワード(?)のようなもの。

昨年12月に立ち上げ、ほぼ常時リニューアル状態の「日刊温暖化新聞」や、今年3月に立ち上げ先日リニューアルした「私の森.p」の活動なども、テーマごとに「つながりをつくり、変化を起こす」実践の試行錯誤の場です。

そして、いよいよ本丸の「生物多様性」に入っていく時期がきたなあ、と。といっても、温暖化問題などと「別個のテーマ」というわけではありません。全部「つながって」いるわけですから!

勉強しつつ、考えていきたいと思っています〜。

 

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