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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2008年08月24日

アースポリシー研究所より「急増する二酸化炭素排出量」(2008.08.24)

温暖化
 

いま、スウェーデンに来ています。今日の夜から始まるバラトン合宿(今回初めてハンガリー以外での開催となりました)に参加するのが主目的ですが、今回は前後に余裕を持って、スウェーデンの環境先進自治体の視察・取材も行います。

おとといは、スウェーデンで「Best Climate City」を受賞しているトロルハッタンという人口5万人ほどの市におじゃまし、環境担当の方に、いろいろな説明を受けたり、現場を見学させてもらいました。

特に注目すべきは、家庭からの食品ゴミや農場からの有機廃棄物からバイオガスを作り、それを自動車用の燃料として活用する取り組みです。市内を走るすべての市バスのほか、一般の乗用車も数百台がバイオガスを燃料としており、バイオガスの生産量も需要も増加中です。

どこかで詳しくレポートできればと思っていますが、日本でも生ごみは多いし、自動車用燃料も化石燃料以外に切り替えていく必要があるので、大いに参考になるのではないかと思いました。バラトン合宿のあとは、「化石燃料ゼロ」都市のベクショー市に見学・取材にうかがいます。こちらもとても楽しみです。


さて、
日刊温暖化新聞のページには、「31/72」という数字がシンボル的に出ていますが、この意味をご存じでしょうか?

日刊温暖化新聞の「絶対に譲れない数字」のページから説明を引用します。
http://daily-ondanka.com/basic/basic_05.html

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

私たち人間が二酸化炭素を大気中に排出していますが、一方、地球にはある量の二酸化炭素を吸収する力があります。そのバランスはどうなっているのでしょうか。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新の報告書によると、まず、世界全体で私たち人間が、化石燃料、つまり石油、石炭、天然ガスを燃やして、大気中に出している二酸化炭素は、年間72億炭素トン(炭素換算、以下同じ)です。この数字は最新の数字ですが、報告が出るたびに増え続けています。いまでも増え続けています。

一方、地球には、大気中にある二酸化炭素を吸収する力があります。ひとつは陸上生態系、すなわち森林などの植物とその下の土壌です。陸上生態系は現在、年間で9億炭素トンの二酸化炭素を吸収しているといわれています。これは、森林破壊などによる二酸化炭素の放出を差し引いた数字です。もうひとつは海洋です。海は現在、年間に22億炭素トンの二酸化炭素を吸収しているそうです。つまり、現在の地球は1年間に合計で31億炭素トンの二酸化炭素を吸収しています。

私たち人間が出す二酸化炭素が地球が吸収できる量以下であれば、大気中の二酸化炭素濃度はそれ以上には増えません。しかし現在、人間が出している二酸化炭素は年間72億炭素トンで、地球の吸収量は31億炭素トンですから、半分以上は大気中にたまってしまいます。毎年毎年、この差が大気中に蓄積していきます。これが温暖化を起こしているのです。ですから、私たち人間が出している量を地球の吸収量(現在は31億炭素トン)以下に減らさないかぎり、温暖化は進行します。

ですから、私たち人間が出している量を31億炭素トン以下に減らさないかぎり、温暖化は進行します。地球が吸収できる量と、人間が出している量の差がどれだけ大きいかによって、温暖化がどのくらいのスピードで、どのくらいの規模で進行するかが変わってきます。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

この数字について、よくいただくご質問の回答はFAQにあります。

炭素換算と二酸化炭素換算によって、世の中には2通りの数字が出ているので、混乱してしまうことがあるのですが、日刊温暖化新聞では科学者に相談し、炭素換算の数字を使っています。その理由などについては、2つめのFAQを見てください。

■温暖化FAQより
Q:日刊温暖化新聞で取り上げている「人間が化石燃料(石油、石炭、天然ガス)を燃やして、大気中に出している二酸化炭素は、年間72億炭素トン(炭素換算)」という数字の出典は?
http://daily-ondanka.com/faq/archives/id000953.html

Q:「絶対に譲れない数字」には世界の二酸化炭素排出量は「年間72億トン」とありますが、他で「266億トン」という数字を見ました。この違いは?
http://daily-ondanka.com/faq/archives/id000937.html


さて、私たち人間が排出している炭素の量は、昨年2月に出されたIPCCの最新報告で「72億トン」だったので、日刊温暖化新聞でもこれを使っているのですが、この数字を修正しなくてはならない事態になってきています。しかも、望んでいた減少の方向ではなく、増加の方向に、です。。。

レスター・ブラウン氏のアースポリシー研究所からの報告を、実践和訳チームが訳してくれましたので、お届けします。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

急増する二酸化炭素排出量
http://www.earthpolicy.org/Indicators/CO2/2008.htm

フランシス・C・ムーア

化石燃料の燃焼による世界の二酸化炭素(CO2)排出量が、2006年、83.8億トンを記録した。2000年の排出量を20%上回る数字である。2000年から2006年にかけて、排出量は1年当たり3.1%上昇しているが、これは1990年代の増加率の2倍以上の伸び率だ。産業革命が起こり、化石燃料の大規模な燃焼が始まって以来200年の間、CO2排出量は徐々に増加し続けてきた。しかし、「CO2が地球を温め、世界中の生態系を破壊している」という明白な証拠があるにも関わらず、排出量の増加はここに来て加速している。

【グラフタイトル】
化石燃料燃焼による世界の二酸化炭素排出量(1751〜2006年)
【グラフ縦軸タイトル】
二酸化炭素(単位:100万トン)
http://www.earthpolicy.org/Indicators/CO2/2008.htm

2000年、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、「21世紀の間、経済、人口、技術の変化によって、どれだけの温室効果ガスが排出されるか」という予測を明らかにした。予測における温室効果ガスの最大値は、経済の急成長とグローバル化が大量の化石燃料使用と結びついた場合を想定したもので、IPCCはその数値を、2007年にまとめたレポートの中で、「将来予測される気候変動の上限値」として使った。

だが、この上限値は、2000年から2010年にかけての排出量が年間わずか2.3%しか増加しないという予測に基づくものだった。2.3%という数字は、今世紀に入ってこれまでに観測された年間の増加率3.1%をはるかに下回っている。CO2排出量が最悪のシナリオを超えている今、私たちは、気温と海水面の上昇もそれと同じ道をたどると予測できる。

化石燃料関連のCO2排出量については、その半分以上が世界5カ国によるものであり、米国と中国は両国だけで全排出量の1/3以上を占めている。米国は、1世紀以上にわたって世界最大のCO2排出国であり、2006年には世界の全排出量の19.8%に当たる16.6億トンを排出している。

そして今、この米国のすぐ後に中国が続いている。中国では、現在、1週間に平均2カ所の石炭火力発電所が新たに稼動しており、石炭消費量の急増が排出量の上昇を引き起こしている。2006年の中国の排出量は、1990年の2倍以上の14.8億トンに達し、世界全体の17.7%を占めている。中国はいずれ米国を追い越し、2009年になるまでに世界最大の排出国になるだろうと分析者は見ている。

世界のCO2排出国上位5カ国のうち、ロシア、インド、日本の3カ国が世界全体の排出量に占める割合は、それぞれ、5.2%、4.7%、4.1%である(グラフ参照)。

このうち、インドの排出量は1981年の3倍と、最も急増している。インドと中国の排出量増加は、現在アジア全体で見られる急速な工業化と経済成長によるものだ。2000年以来、アジアの二酸化炭素排出量は、世界のほかの地域に比べて5倍の速さで増加し続けている。1970年にはCO2排出量が世界の10%にも満たなかったアジア地域が、今や世界の全排出量のほぼ1/3を占めているのだ。

【グラフタイトル】
化石燃料燃焼による二酸化炭素排出量(2006年)
【グラフ縦軸タイトル】
二酸化炭素(単位:100万トン)
http://www.earthpolicy.org/Indicators/CO2/2008_data.htm#fig3

こうした国別および地域別のデータでは、一人当たりのCO2排出量の著しい違いがわからない。米国の一人当たりの排出量は、カタール、アラブ首長国連邦、クウェート、シンガポールなどの小国に続いて多い(データ参照)。この一人当たり5.5トンという排出量は、中国の約5倍、世界の最貧国のほぼ200倍である。国連の算出によるとフロリダ州の一般的なエアコン1台から1年間に排出されるCO2の量は、カンボジア人一人が一生の間に排出する量よりも多い。また、ヨーロッパの食器洗い機1台の年間CO2排出量は、エチオピア人3人の排出量に相当する。

【表タイトル】化石燃料の燃焼による一人当たりのCO2排出量の上位10カ国と世界の平均(2006年)
http://www.earthpolicy.org/Indicators/CO2/2008_data.htm#table4

一般的には、一人当たりの排出量は豊かな国ほど多いが、排出量が生活水準と相関関係があるとは限らないことを示す重要な例がある。カリフォルニア州の平均所得は米国全体の平均よりも高いが、一人当たりの排出量では全米平均の半分をやや上回る程度である。ヨーロッパの多くの国々も、一人当たりの排出量は米国の半分以下だが、生活水準は米国並みである。

化石燃料の燃焼だけがCO2排出源ではない。現在、森林が、材木に加工するために伐採され、また農地や放牧地を作るために焼き払われているが、それが原因で年間約20億トンの炭素が排出されている。森林伐採が特に深刻なのは、最大規模の熱帯雨林が残るインドネシアとブラジルである(データ参照)。この2カ国が、土地利用の変化によるCO2排出量の半分以上を占めている。

【表タイトル】土地利用の変化と森林業からのCO2排出が最も多い10カ国とその排出量(2000年)
http://www.earthpolicy.org/Indicators/CO2/2008_data.htm#table6

このように、化石燃料の燃焼と森林伐採によって排出されるCO2はどちらも大気中に蓄積されている。氷床コア(氷床から取り出された筒状の氷の柱)の記録によると、現在の大気中のCO2濃度は、過去65万年間で最も高い。産業革命が始まった当時は280ppmだった大気中のCO2濃度が、2007年には384ppmにまで達している。2000年から2007年にかけて、大気中のCO2濃度は年間平均2ppm上昇しており、こ
の7年間の上昇は、1959年に継続的な観測が始まって以来最も急速だった。(図参照)。

【グラフタイトル】
大気中のCO2濃度(1000年〜2007年)
【グラフ縦軸タイトル】
ppmv:100万分の1容積比
http://www.earthpolicy.org/Indicators/CO2/2008_data.htm#fig7

毎年大気中に排出されるCO2は、少なくともその45%は速やかに森林や海などのCO2吸収源によって吸収されるため、大気中には半分程度が滞留する。しかし、CO2の排出が増大し地球の温暖化が進むと、これらの吸収源は飽和状態に向かい始め、従来と同じ量のCO2を吸収し続けられなくなることが、これまでの研究で分かっている。

例えば、海水温度が上がると、CO2は海水に溶けにくくなり、また土壌の温度が上がると地中に固定される炭素は減少する。このように、気温が上昇すると、陸地や海で吸収されるCO2の量は少なくなる。2007年の後半に発表された大気中でのCO2濃度増加率に関する詳細な調査をみると、森林や海での吸収力の低下は、科学者たちの予想よりもはるかに早く、既に始まっている。

大気中でのCO2濃度の上昇にほかの温室効果ガスの影響が加わったことで、地球の平均気温は既に0.8℃高くなっている。その上昇の2/3以上は1980年以降に生じており、今や気温上昇の影響は世界中の自然システムに及んでいる。

気象学者が記録しているように、熱波の襲来が増え、干ばつは長引くとともに深刻化し、海面は上昇し、豪雨が頻繁に発生するほか、ハリケーンもますます大型化している。CO2の増加はまた海水の酸性化を招き、サンゴのように炭酸カルシウムの摂取によって骨格を形成している生物の生存をも脅かしている。

海面のpH(水素イオンの濃度を示す指数で、低い値は酸性度が強いことを意味する)は既に0.1ポイント下がっており、排出されるCO2の量が減らなければ、2100年までにさらに0.3ないし0.4ポイントは低下するだろう。そうなれば、海洋生態系において重要な役割を果たす生物の存在までもが危うくなる。

IPCCは次のような予測を行っている。もし地球温暖化に対して何らかの政治的な対策をとらなければ、化石燃料の燃焼によって排出されるCO2の量は2000年から2030年までに倍以上となり、地球の気温上昇を産業革命前より3℃以下に抑えることはほとんど不可能になるだろう、と。各国は今、国連気候変動枠組み条約を遵守することで、恐ろしい気候変動の回避に努めているが、気温が産業革命前よりまだ2℃も高くならないうちに、既にその危険を示す兆候が次々と現れている。

気候変動がもたらす深刻で取り返しのつかない事態を防ぐために、世界が直ちにCO2排出量の大幅な削減に取り組まなければならないことは明白である。省エネ対策、風力発電、プラグインハイブリッドカーのような既存技術、これらを世界の森の保全と回復を図るプログラムと組み合わせれば、レスター・R・ブラウンが『プランB3.0』で提唱しているように、世界のCO2の正味排出量を、2020年までに80%削減することが可能だろう。このプランを実行に移すなら、長年続いてきたCO2排出増加の流れに歯止めがかかり、その流れを逆行させることもできるだろう。

(翻訳:荒木、木村、酒井)

 

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