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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2008年07月12日

他国の土地に手を伸ばす食糧輸入国の動き(2008.07.12)

食と生活
 

先月レスター・ブラウン氏が来日した折、いつものように「デート」(^^;)と称して、朝食を食べながらいろいろな情報交換をしました。

「世界の穀物価格がどんどん上がっているね」という話をしていたとき、とても気になる話を聞きました。こんな話です。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

世界の穀物価格が市場最高値をつけるなど食糧価格のインフレが世界の隅々まで襲っているからね、いま、これまでなかった食糧安全保障の政治学が台頭しつつある、と考えている。

最初の動きは、ロシアやアルゼンチンといった主要な小麦輸出国が、国内の食料価格の高騰を抑制するために、輸出制限をかけたり、輸出を禁止する動きに出たことだ。タイに次ぐ第二の米輸出国であるベトナムも、同じ理由で数ヶ月輸出を禁止したよね。

ロシアやアルゼンチン、ベトナムの国民はほっとしたかもしれないけど、輸入国ではパニックが広がっている。

穀物輸入国が、将来の食糧供給を確保するために、長期的な二国間で穀物を取引する契約の交渉に力を入れるようになっている。

たとえば、フィリピンは、必要なときに市場から米を入手できないかもしれないという状況なので、毎年50万トンの米の輸入を保証してもらうべく、ベトナムと5年間の契約を交渉している。

イエメンからは代表団がオーストラリアまで出かけ、小麦を輸入する契約を交渉している。

それだけじゃない。食糧輸入国は、他国の広大な農地を買ったり、借りたりしようと動いているんだよ。他国で、自国用の食糧を生産するためだ。

リビアは、穀物の90%以上を輸入しているから、他国が供給してくれるかどうかに神経質にならざるを得ない国なんだ。そのリビアは、ウクライナの25万エーカーの土地を借りているだよ。自国民向けの小麦を栽培するためだ。

インドは、水不足が穀物収穫量に及ぼす影響を心配し、食糧を育てるためにウルグアイとパラグアイの土地を買えないか、借りられないかと交渉しているところだ。

韓国は、穀物の70%以上を輸入しているが、シベリアとスーダンの土地に目をつけている。

なかでも最も野心的な「海外で農業を」プログラムを持っているのは、中国なんだよ。中国は、フィリピンに250万エーカーの農地を長期で借りる契約を締結した。これは、フィリピンの農地の約1割に及ぶ広大な面積だよ。

この合意は、政府役人がこっそり忍び込ませたものだったんだけど、フィリピン政府は2008年初め、この合意を放棄したんだ。政府が必要な輸入量を確保することができなかったため、米の価格が高騰し、消費者がパニックに陥ったからね。

中国は、いまではミャンマー、カザフスタン、ロシア、メキシコ、ブラジルといったいくつかのほかの国の土地を長期で借り受けるか、購入することを考えているんだよ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

日本だって(自慢ではないですが)、食糧自給率はカロリー換算で40%を切っています。かろうじてコメの自給率は死守していますが。。。

このような「他国の土地を買ったり借りたりして、自国のための食糧を作る」という世界の動きは、あまり聞いたことのない話だったので、政府など日本の人は知っているのだろうか? ちゃんと手を打っているのだろうか?と心配になりました。

レスターはさらに、「世界はますます混乱してしまうだろう」と眉を曇らせました。「だってね、貧しい自国民は飢えているのに、そこで金持ちの他国用の食糧を作っているという状況があちこちで出てきたら、どうなると思う?」

そのような状況が展開していく可能性がある時代に、私たちは個人として、企業や組織として、地域として、社会として、国として、何を考え、どのように行動すべきなのか……レスターの話を聞きながら、改めて考えさせられたのでした。

 

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