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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2008年06月02日

『シンクロニシティ』書評〜札幌でのシステム思考ベーシックコースのご案内(2008.06.02)

システム思考を学ぶ
 

6月になりましたね〜。新緑に目を奪われている間にも、ひっそりと紫陽花が準備を進め、出番を待っていますね。

今月30日に札幌にて、北海道で初めてのビジネス向けシステム思考のベーシックコースを開催します。6月のコースより、受講費を値下げしました。最後にご案内をつけていますので、ぜひいらしてくださいな。

(東京でも2ヶ月に1度の頻度で開催しています。アドバンスコース、学習する組織のコースもあります。詳しくはチェンジ・エージェントのサイトをどうぞ)
http://www.change-agent.jp/products_services/index.html

さて、元旦に出した今年の最初の号で、自分の好きな小さなお話を紹介しました。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

冬の細い樹木の枝に、二羽の鳥がとまっている。

「雪のひとひらの重さはどれくらいかな」シジュウカラが野バトに聞いた。

「重さなんてないよ」ハトが答えた。

「じゃあ、おもしろい話をしてあげる」シジュウカラが言った。

「モミの木の、幹に近い枝にとまっていると、雪が降り始めた。激しくはなく、吹雪の中にいるような感じでもない。そんなのじゃなくて、傷つくことも荒々しさもない、夢の中にいるような感じの降り方だった。ほかにすることもなくて、ぼくは小枝や葉に舞い降りる雪をひとひらずつ数えた。やがて、降り積もった雪の数は正確に374万1952になった。そして、374万1953番目の雪が枝の上に落ちたとき、きみは重さなんてないと言うけど--枝が折れた」

そういうと、シジュウカラはどこへともなく飛んでいった。

ノアの時代以来その問題に関してとても詳しいハトは、今の話についてしばらく考えていたが、やがて独りつぶやいた。

「もしかしたら、あともう一人だけ誰かが声をあげれば、世界に平和が訪れるかもしれない」

(ジョセフ・ジャウォースキー著『シンクロニシティ』より)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『シンクロニシティ』(ジョセフ・ジャウォースキー著)

どういう本なの?という質問をいただいていましたが、チェンジ・エージェントの同僚である小田さんがビジネス書ネット書店クリエイジのメルマガに書いた書評をご紹介します。
http://www.creage.ne.jp/app/UsrInfo?p=company.jsp

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ジョセフ・ジャウォースキー著『シンクロニシティ』書評

                               小田理一郎

最近、経営トップが自らの体験をもとに自分自身の言葉で、ビジョンや理念を語る「ストーリーテリング」という手法が盛んに見られます。ハリウッドの脚本にしたてて、主人公が困難に面しながら成長を遂げていくなどの原型がよく使われています(参考:キャンベル『千の顔を持つ英雄』)。短い言葉では表わしにくい理念などについて、その意味を咀嚼し、広く浸透・共有化を図る上で有効な手法だからです。

本書『シンクロニシティ』では、著者ジョセフ・ジャウォースキーが自らの人生を通じて、真のリーダーシップを追い求め、自らのリーダーシップを磨きながら、リーダーシップ養成のための機関とプログラムを開発していくストーリーが描かれています。これからの経営に必要となるリーダーシップ論を小説仕立ての読みやすさで紹介してくれる良書です。

あらかじめお断りすると、主人公である著者を「いけすかない」と見る読者も日本人には多いことでしょう。アメリカの著名な法律家の息子であり、また、自らも優秀な弁護士、ビジネスパーソンとして若くから成功を収めましたが、一見成功に見える半生は矛盾を抱えるアメリカエリートのライフスタイルの典型とも見えるからです。

しかし、本質的に本書はリーダーシップを一緒に考えるための書であり、それを伝える手段として自らの人生の浮沈をさらけ出す勇気を讃えたいと思います。

リーダーシップのあるべき姿の骨格にあるのは、グリーンリーフの「サーバント型リーダーシップ」、センゲの「学習する組織」(参考:センゲ『フィールドブック「学習する組織」5つの能力』)、ボームの『全体性と内臓秩序』に象徴される「ニューサイエンス理論」などです。また、「シナリオプラニング」や「ストーリーテリング」などの新しい戦略策定や組織開発の手法も紹介されています。

ビジネススクールなどで教えられてきたリーダーシップは、古いサイエンスの考え方に基づいています。その起源はニュートンとデカルトに遡り、ものごとを原子のレベルで見ると1+1は常に2であり、法則性を見つけることで論理的に積み重ねて物事が語られます。マーケティング、財務、組織論、統計的分析など科目を分けて、それらを積み重ねればすべてが整理できるかのような錯覚に陥ってしまいます。

しかし、私たちが経験的に知るように、実験室を離れた実社会では1+1は2になりません。「+」のあり方次第で、1+1が無限大の力を作り出すこともあれば、ゼロになることすらあります。

ただし、現実に昨今の組織に多く見られるのはむしろ後者でしょう。社会の営みを分業化・専門化し、また職種を切り分け、教育も切り刻んできた結果、今日の組織や経済システムはほとんどが要素還元型のデザインに基づいています。

要素還元型の分業化、機能特化したシステムデザインは、それぞれの要素の効率を高めることを主眼においています。しかし、組織における個別最適化は、せいぜい短期的な成果にとどまり、長期的には組織全体の効率が悪化しています。

むしろ、短期的な視野のために、組織の競争力の源泉となる知的・人的・社会的資本の蓄積とレジリアンスを犠牲とした結果、やがて競争力を失い、組織の寿命を縮めているケースが多く見られます。

組織の枠の外まで視野を広げるならば、経済理論の主張むなしく、個別最適化が全体最適化につながることはきわめてまれな事象にとどまっています。行き過ぎたまでの分断化と個別最適化が、いじめや自殺、差別と経済格差、世界の貧困・飢餓、そして地球温暖化や生態系の危機など、現代社会のさまざまな病的症状の根本原因ともいえるでしょう。

これに対して、ジャウォースキーが見出した新しいリーダーシップ論は、まさに全体最適化を起点として考えるものです。著者と物理学者であるボームとの対話を通じて解説されるニューサイエンスがその大きなヒントを与えてくれます。

原子からさらに小さい量子や素粒子のレベルでものごとを見た場合、そこにある内臓秩序は全体性の影響を深く受け、また、個々の要素がどのように内臓秩序を捉えるかが全体性に大きな影響を与えているのです。

このニューサイエンスの知見は、組織においてもおおいに役立ちます。組織メンバーのそれぞれの内面まで深く掘り下げてみた場合、個々の、メンバーは互いに、そして全体としての組織や、社会、生態系との「つながり」の強さ、質が大きくパフォーマンスに影響を与えます。

このつながりを見出すために、「システム思考」や「ダイアログ」などのさまざまな方法論を活用し、成果をあげているのがセンゲらの提唱する「学習する組織」です。そして、学習する組織の趣旨を正しく理解し、成功裏に導入するにはリーダーシップの役割の大きな転換が必要となるのです。つまり、学習する組織や、全体最適化を図る組織構築に必要となるマネジャーのパラダイムが大きく異なるからです。

古いマネジメントのパラダイムでは、トップが少数のエリートと共に練り上げた戦略を組織に伝え、実行させて、結果のモニタリングとコントロールを行いながら、思惑と違う場合には組織に学習をさせます。ボス型、つまり「Do型のリーダーシップ」であるといえるでしょう。

リストラクチャリング、リエンジニアリングといったマネジメント用語自体が、組織や人を機械と歯車のようにしか見ていない思想から生じています。しかし、このようなアプローチは外発的な動機と自己防衛・他責に満ちた組織にしかなりえません。

ニューサイエンスのマネジメントで問われるのは、組織システムと向き合い、語り、対話しながら、内発的動機と自律を促す「Be型のリーダーシップ」が必要です。組織も人も、生き物であり、その動きは複雑で予測不能です。

しかし、組織内外で互いに尊敬と信頼する関係をつくり、心の中で共鳴しあう理念とビジョンと現実の全体像が共有されたとき、人々は単なる要素の集合体以上の目覚しい成果を生み始めます。このようなシステムのパフォーマンスは、リーダーの心の状態によって大きく左右されます。

そういった最新の科学の知見やマネジメントの実践を踏まえれば、「シンクロニシティ」(共時性)も単なる偶然ではなく、デザインされた中で起こるものであることが読み解けるでしょう。

著者のリーダーシップの旅は39歳で始まっていますが、この本はこれから人生の正午を迎える人と、すでに人生の午後を迎えながらまだ迷いのある方々に是非お勧めします。組織デザインに悩ませる経営者にも是非読んでほしいです。

監修をした金井壽宏氏の解説もとてもわかりやすく、またリーダーシップ論の背景が読み解けるので最後まで読むことをお勧めします。なお、ジョセフ・ジャウォースキーの他の著書に、共著でセンゲ他『出現する未来』があります。

私は人生で感銘を受けた3冊の本は、諸葛亮孔明『誡子書』、ドネラ・メドウズ『Global Citizens』、ピーター・センゲ『The Fifth Discipline 2nd Edition』の3冊ですが、いずれも日本語の書籍はありません。しかし、それらの本の意図するところは、このシンクロニシティに部分的ではあるが描かれています。

『シンクロニシティ』(ジョセフ・ジャウォースキー著)

●プロフィール
小田理一郎(チェンジ・エージェント代表取締役社長兼CEO)
オレゴン大学経営大学院経営学修士課程修了。人や組織が自律的に目的を達成する効果的な仕組みを作るため、2年間の米国留学で組織変革のスキルを学び、多国籍企業で10年間、製品責任者・経営企画室長として組織変革の実務にあたる。その後独立。企業の社会的使命の追求と非営利組織マネジメントの強化のためのコンサルティング経験を活かし、変化のマネジメントのための開発、研修、コンサルティング、ファシリテーション、講演、執筆を担当。共著書に『なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか』。

●著書の紹介
社会システムや組織システムを変革する「変化の担い手」を育成し、応援するために、パートナーの枝廣淳子とともに有限会社チェンジ・エージェントを設立しました。過去2年半ほどの間に、日本国内外でワークショップを開催し、2万人以上の方にシステム思考を伝えてきた経験と、世界の第一人者たちの知見に基づいて、『なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか』を書きました。

システム思考は、一言でいえば、問題の見えている部分だけでなく、つながりをたどって、広く全体像を俯瞰するアプローチです。その基本的な考え方は、ものごとは氷山のように、その大きな塊のごく一部しか表面に現れないということです。

海面の下にあるのは、変化のパターンと、そのパターンを生み出す構造、そしてその構造を作り出している私たち自身の思考です。問題が起こったときに、すぐに目の前の解決策に飛びつくのではなく、「ちょっと待てよ」と一歩引いて全体像をみるのがシステム思考なのです。

システムの全体像を捉え、その要素をつなぎとめる本質的なものを見出すには、ボームの「ダイアログ」、フォレスターの「システム・ダイナミクス」、シャーマーらの「U理論」などさまざまな手法があります。

その中でも、私たちはもっとも汎用性があり、比較的誰にでも使いやすいシステム思考、とりわけ変化のダイナミクスと要素のつながりを見える化した手法を中心に紹介しています。

システム思考は、「本質的な問い」を発するプロセスでもあります。私たちが当たり前に思っている思考。しかし、無意識のうちにたくさんの「思い込み」や「色眼鏡」をもっています。

この思い込みや色眼鏡を認識することで、ありのままを見ることがはじめてできるようになります。システム思考は、「問い」の力で、深い、本質的な学習へといざなってくれるのです。

システム思考は、個人だけでなく、組織にとっても有効です。システム思考を組織で導入すれば、組織の多様性を創造性に転換し、新しい知識を次々と生み出すことが可能になります。

その理論と実践は、「学習する組織」と呼ばれる組織開発プログラムとして、デュポン、BP、サウスウエスト航空などの大企業はじめ、あらゆる分野、規模の組織に適用され始めています。これらの導入組織では、ナレッジ・マネジメントや人材の強化にとどまらず、売上や生産性の増加、リスクの低減、社会の信頼の増大、市場をはるかに上回る株主リターンなどの成果を挙げています。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


■チェンジ・エージェント3周年記念
「システム思考トレーニング」ベーシックコース開催と価格改定のご案内
 2008年6月18日 東京、6月30日 札幌
 東京:http://change-agent.jp/news/000135.html
 札幌:http://change-agent.jp/news/000141.html

変化の担い手を支援するチェンジ・エージェントを2005年4月25日に設立してから、おかげさまをもちまして3周年を迎えることができました。

その間、システム思考トレーニングコースを始め、学習する組織や企業のCSR・環境経営の課題を扱ったオープン研修、あるいは企業、政府組織、NGOなどの組織向けのクローズドの研修や講演を行ってきました。この3年間でシステム思考に関する研修や講演を聞いていただいた方の数はのべ2万人を超え、みなさまのご関心・ご興味のおかげで日本国内でのシステム思考や学習する組織の普及啓発にも一定の成果をあげることができました。

3周年を記念し、みなさまのご愛顧に感謝するとともに、システム思考をさらに普及するために、私たちの看板研修でもある「システム思考トレーニング」ベーシック・コースの受講料を値下げし、さらに参加していただきやすくすることを決めました。これまでのベーシック・コースの受講料45,000円(税込)を、3周年を迎えたあとの6月実施の回から39,000円(税込)といたします。ますます多くの方々の受講をお待ちいたしております。

このコースは、ピーター・センゲ氏の提唱する「学習する組織」の要諦を占めるシステム思考について、基本的な考え方と基本ツール3つを1日で学ぶコースです。マネジメント・シミュレーション・ゲーム、演習、ラーニング・ゲーム、グループワークを随所に織り込んで、6時間でシステム思考の基本とツールの使い方を身につけます。

なお、これまでは枝廣・小田のメイン講師2名体制で実施しておりましたが、今後このコースは原則として、メイン講師1名(小田)、アシスタント講師1名の体制となりますのでご了承ください。

6月には東京だけではなく、札幌でも初めてのベーシック・コースを開催いたします。(札幌のコースは、枝廣・小田の講師体制となります)

●講師 小田理一郎・枝廣淳子(札幌のみ)(いずれもチェンジ・エージェント)

●日時・場所
2008年 6月18日(水)9:30-16:30(9:15開場)東京・こどもの城(表参道)
2008年 6月30日(月)9:30-16:30(9:15開場)札幌・生涯学習センター
                              (ちえりあ)

●料金 39,000円/人(6時間コース、税込)

●お申し込み・詳細は下記ウェブサイトをご覧下さい。
東京:http://change-agent.jp/news/000135.html
札幌:http://change-agent.jp/news/000141.html

●お問い合わせ
(有)チェンジ・エージェント 担当 上野・小田
info@change-agent.jp
TEL: 03-6413-3760 FAX: 03-6413-3760

 

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