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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2008年05月04日

宇宙航空研究開発機構(JAXA)のウェブサイトより「ますます薄くなってきた北極海の海氷」(2008.05.04)

温暖化
 

5月3日付の日刊温暖化新聞のニュースは、「アースポリシー研究所報告:世界のCO2排出量、83億トンに」というものでした。
http://daily-ondanka.com/news/2008/20080503_1.html

サイトを見ていただくとわかるように、日刊温暖化新聞のひとつのシンボルは「72/31」です。
http://daily-ondanka.com/index.html

これは、「地球が吸収できる二酸化炭素の量は年間31億トンだけど、人間は化石燃料を燃焼することで、年間72億トンの二酸化炭素を出している。これを31億トン以下に減らすまでは温暖化は進んでしまう」という、2007年に出されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の最新レポートに基づく認識を示しています。

ところが、レスターの研究所の最新報告は、「72億トンどころじゃない、83億トンも出しちゃっている。しかも、増え方が加速している」と告げています。日刊温暖化新聞のシンボルは、2つの数字のギャップが減っていくことを願ってつけたのですが、逆に「84/31」に変えなくてはいけない……。

二酸化炭素の排出量が減るどころか加速しているため、その影響も加速度的に顕在化してきています。そのひとつが、北極海の氷です。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)のウェブサイトでは、北極海の海氷面積の歴年グラフと、現在の様子を見ることができます。
http://www.eorc.jaxa.jp/

2008年4月30日掲載の「ますます薄くなってきた北極海の海氷」を紹介します。図やグラフがあるので、ぜひリンクをたどってウェブサイトをごらん下さい。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

http://www.eorc.jaxa.jp/imgdata/topics/2008/tp080430.html

厳しい寒さの極夜も終わり、北極海にもようやく日差しが戻ってきました。図1の左図は、2008年4月20日にAMSR-Eによって観測された北極海の海氷分布です。

昨年晩夏に観測史上最小面積を記録した北極海の海氷は、この冬の厳しい冷え込みもあり、最近6年間では2番目に大きな面積にまで回復していました。しかし、春の訪れとともに再び減少に転じ、4月に入ってからは昨年の面積減少の推移に迫らんという勢いで縮小を続けています(図1右グラフ参照)。
http://www.eorc.jaxa.jp/imgdata/topics/2008/img/tp080430_02.png

図2は、AMSR-Eの輝度温度画像をカラー合成した過去6年間の4月20日頃の海氷分布を示しています。水色に見えているところが海氷域を表しています。一般に海氷の生成から時間が経つほどマイクロ波の射出率が低下していくことから、画像では、古くて厚い氷(多年氷)は暗く(水色が濃く)、また若くて薄い氷(1年氷)は明るく見えています。

まだまだ気温が低い4月の北極海の海氷は、全体の広さにあまり大きな経年変動は見られませんが、濃い水色で示された多年氷の割合が近年急激に減少している様子が分かります。上述したように、2006年から多年氷が大きく減った2007年には、晩夏(9月)に衛星観測史上最小面積を記録※1したことは記憶に新しいところです。

そして、今年2008年はどうなっているでしょうか。2007年に比べても、ますます多年氷の面積が小さくなっており、AMSR-Eが観測することができない北極点(画像中央の黒い丸)の周辺までもが薄い氷で覆われている様子が伺い知れます。

このような多年氷域の減少は、北極海の海氷全体が年々薄くなってきていることを意味しています。そして、一旦薄くなってしまった海氷は、夏の気温上昇や風、海流など大気や海洋からの力学的・熱力学的な様々な要因の影響を受けやすくなり、さらに融解しやすい海氷状態へ拍車がかかります。

上でご紹介したAMSR-Eの画像を見る限りでは、昨年夏に海氷面積が大きく縮小したように、今年の夏もさらなる縮小が起きる下準備ができあがっているようです。

JAXAでは、2002年5月のAqua衛星の打上げ以来、AMSR-Eが観測したデータを用いて北極海の海氷状態の推移を監視し続けています。例年、北極海の海氷面積の縮小は、9月の半ば頃まで継続します。今年も、注意深い観測が必要なようです。

なお、北極海の海氷密接度の最新画像および過去に観測された画像は、JAXAが米国アラスカ州立大学北極圏研究センター(IARC)に設置しているIARC-JAXA情報システム(IJIS)を利用した北極圏海氷モニター上で日々更新を行い、公開しております。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

さらに、昨年の夏が終わったときの報告です。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

http://www.eorc.jaxa.jp/imgdata/topics/2007/tp070928.html

2007年9月28日掲載 「北極海の氷 観測史上最小を更新」

2005年と今年の北極の海氷の分布を図2として並べました。今年の特徴は、シベリア・アラスカ沖のあたりで2005年よりもかなり氷が減少していることです。また、いつもならば融けないカナダ北部のいくつもの島が浮かぶ多島海の海氷まで消失してしまい、今年の夏は太平洋-大西洋を結ぶ北極海の航路が長く開きました。(図3)これも衛星観測史上初めてのことです。

図4はJAXAの観測センサAMSR-Eが観測してきた海氷の面積の季節変動を示したものです。2007年は7月上旬から急減に減少し始め、8月15日にそれまでの最小面積の記録を更新し、9月中旬まで一気に縮小を続けていました。ここ数日は小刻みな増減を繰り返していましたが、白夜の季節も終わりを迎え、これから融けることなく結氷し続けていくと考えられます。

このように過去に例を見ないほど北極海に海氷がない領域ができ、かつ白夜の6-8月に晴天が長く続いたことで、今年はたくさんの太陽光が北極の海に吸収され、熱として蓄えられました。

北極圏にはこれから厳しい冬が訪れますが、暖められた海水により、海氷の成長が遅れるものと考えられます。来年の夏は一体どのような北極海の姿を我々の前に現すのでしょうか。JAXAではこれからも北極海の氷の成長と融ける状況を監視していきます。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

グラフの今年の海氷面積を示す赤い線が大きく落ちてきませんように、と祈りつつ、将来にわたって落ちてこないように、いまできることを最大限進めなくては、と思います。

さて、日刊温暖化新聞の記事見出しを3〜4月分、まとめてお伝えします。それぞれの見出しにURLをつけてもらいましたので、読みたい記事をすぐに読むことができるようになりました。ぜひざっと眺めてみて下さい。


2008年03月01日
UNEP環境閣僚会議「グリーン投資には予測可能な炭素価格が必要」

2008年03月02日
ノルウェー政府、スヴァールバル種子貯蔵庫を開設

2008年03月03日
カリフォルニアの大企業、再生可能エネルギー電力の調達で連合

2008年03月04日
ワシントン国際再生可能エネルギー会議:デンマークの環境対策

2008年03月05日
ウォルマート社と全米知事協会、「議事堂のグリーン化」に向け協力

2008年03月06日
急速に拡大する炭素市場-ワールドウォッチ研究所報告

2008年03月07日
2008年OECD環境アウトルック:「環境問題の解決にかかる費用は?」

2008年03月08日
ワシントン国際再生可能エネルギー会議終了:米国の公約

2008年03月09日
米国:企業・消費者連合、上院の再生可能エネルギー法案の早期承認を求める

2008年03月10日
中間報告書:ハイリゲンダムでの気候変動対策の約束順守度で日本は2位

2008年03月11日
米エネルギー省、セルロース系バイオ燃料の酵素開発に資金援助

2008年03月12日
省エネ設計の建物を考えるワークショップ開催へ:インド

2008年03月13日
研究報告:中国のCO2排出量、予測より大幅に急増

2008年03月14日
米国海洋大気局と世界銀行、共同で途上国の水資源・沿岸資源管理を支援

2008年03月15日
米エネルギー省、「エネルギースター」の省エネ基準をさらに厳しく

2008年03月16日
英国、一般住宅における太陽光発電設置の規制緩和決定

2008年03月17日
オーストラリア、正式に京都議定書批准国に

2008年03月17日
ブレア前英首相、気候変動対策の新たな枠組み作りに向け活動

2008年03月18日
研究報告:スマトラのパルプ・ヤシ油用植林地化で大量のCO2排出

2008年03月20日
国連:2006年の世界の氷河、厚さが前年の倍以上減少

2008年03月20日
オーストラリア人 「家庭で気候変動対策やりたい」

2008年03月21日
欧州世論調査、人々の環境重視姿勢を示す

2008年03月22日
キルギス共和国で森林破壊が深刻化

2008年03月23日
米国下院:石炭火力発電所新規建設凍結法案が提出される

2008年03月24日
今後の気候変動が交通インフラにもたらす影響 深刻に

2008年03月25日
スウェーデン、官民共同で次世代電気自動車を開発

2008年03月26日
英国、「再生可能エネルギー・エネルギー効率化パートナーシップ」に250万ポンド拠出

2008年03月27日
報告書:2007年の米国発電所の二酸化炭素排出量増加率、1998以来最高を記録

2008年03月28日
インドのブハネシュワール エネルギー政策を採択

2008年03月29日
中国、省エネと排出量削減のための支出を78%引き上げ

2008年03月30日
フォード社、デトロイト・メトロポリタン国際空港に水素燃料バスを納入

2008年03月31日
報告書:気候変動対策なし=南アジアで1億2,500万人の難民

2008年04月01日
G20、洞爺湖サミットに向け温暖化対策を議論

2008年04月02日
国連の地球温暖化に関する作業部会、タイで開幕

2008年04月03日
ドイツ、再生可能エネルギー利用をさらに拡大:2007年速報データ

2008年04月04日
米国西部の気温 世界のほぼ倍速で上昇

2008年04月05日
カリフォルニア州に全米最大級のソーラーパネルが誕生

2008年04月06日
UNFCCCバンコク会議、2008年の作業計画合意で閉幕

2008年04月07日
全米17州の検事総長ら、温室効果ガス規制判決に対するEPAの無対応について申し立て

2008年04月08日
「コノコ・フィリップス・エネルギー賞」創設

2008年04月09日
欧州委員会、途上国の省エネ・再生可能エネルギーを支援する基金を創設

2008年04月10日
WWF報告書:自動車の新しい未来はプラグインにあり

2008年04月11日
気候変動防止対策への投資計画会議 ワシントンで開催決定

2008年04月12日
WHO事務局長、気候変動が人の健康に及ぼす影響を懸念

2008年04月13日
研究報告:黒色炭素の温室効果は二酸化炭素の60%にも

2008年04月14日
カ州公益事業委員会、気候ソリューションのシンクタンクを創設

2008年04月15日
英国、2007年温室効果ガス排出量前年比で2%削減:速報値

2008年04月16日
世界気象機関、気候変動対策でアフリカの気象水文機関が果す役割を強調

2008年04月17日
米国上院 クリーンエネルギー経済に向けて前進

2008年04月18日
カリブ諸国、気候変動行動計画の策定が急務

2008年04月19日
IPCCのCO2削減予測は楽観的すぎる:研究論評

2008年04月20日
アマゾン熱帯雨林破壊進む:最新衛星画像で明らかに

2008年04月21日
米国、2025年までに温室効果ガス排出量の伸び率をゼロに

2008年04月22日
米国イリノイ州環境保護庁長官、アースデーで電球形蛍光灯への切り替えを奨励

2008年04月23日
ウミガメは気候変動影響を教えてくれる「指標」

2008年04月24日
第3回主要経済国会合、パリで開催

2008年04月25日
独首相、ノルウェー訪問:気候変動対策で協力関係強化

2008年04月26日
インド、2013年までに60の太陽光発電都市を開発へ

2008年04月27日
UNEP:「気候中立のネットワーク」への参加企業・団体が増加

2008年04月28日
IMF、気候変動と世界経済について分析報告を発表

2008年04月29日
報告書:「気候変動に関する効果的な行動は米国経済に打撃を与えない」

2008年04月30日
シュワルツェネッガー州知事、エール大学での気候変動知事会議で基調演説

 

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