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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2008年03月24日

「私の森.jp」がオープンしました 後編(2008.03.24)

森林のこと
 

(前号からのつづきです)

でも、明けない夜はない、といいます。「冬来たりなば春遠からじ」。

そう、そのような、森にとっても、森に住む人たちにとっても、町の人たちにとっても、本当には幸せではなかったかもしれない、そんな時代から、少しずつ、いろいろな変化の兆しが出てきている--それが「今」ではないかと思うのです。

森の中にも、大変な時代にもずっと、ひっそりと山を守り続けた人たちがいます。そんな中で、若い世代が、新しい森づくりを試行錯誤したり、すてきな森からの製品を作って、何とか町に届けよう、そんな動きが、日本のあちこちで始まっています。

町の人たちの中でも、「もう一回森へ行こうよ」――そんな人たちも増えてきました。森へ入って、ボランティアをしよう。自分も森づくりの役に立ちたい。子どもたちを山に連れていって、一緒に自然体験をしよう。そんな活動もあちこちに広がっています。

そして、まだ森につながっていない、森を思い出していない町の人たちの多くも、本当に大切なものを取り戻す時代が到来していることを、感じ始めています。

「スローライフ」という生き方、「ロハス」という新しい価値観。こういったものに、たくさんの人たちが惹かれている。大きなお金にはならなくても、でも、本当の自分の人生を取り戻すために大事なことに、自分の時間を使いたい--そんな人たちが増えていると思うのです。

全国のあちこちで、森でも町でも、そして人々の心の中でも、大切な動きがいっぱい起こっている。それをどうやったらつなぐことができるか。そしてどうやったら、状況を変える大きなうねりにしていくことができるか--そのことをずっと、私は考えていました。

山でもあり、町でもあり、人々の心の中でもある、そんな場所に市(いち)を立てたいなあ、と思いました。市は、人々がモノの交換や売買をする場所です。そして、たくさんの人たちが集まる、そんな場所です。

現存する「あの山」や「あの町」のように、空間的に限られた場所ではなく、どんな人も、思い立てばそこに行ける、そして市のにぎわいに参加することができる、自分の思いを出すことができる、森からの製品を買うことができる。そんな場所を作りたいと、ずっと思っていました。

その最初の試みが、この「私の森.jp」です。山からも町からも、たくさんの人が集って、森からの製品を売買したり、自分たちの大切な思いを交換したり、そんな場所にしていきたい。そんな場所になってくれたらと、心から思っています。

ここで、今日のお昼にオープンした「私の森.jp」のウェブサイトを、皆さんに見ていただこうと思います。
http://watashinomori.jp/

これがトップページです。今日、最初の映像でも出てきました「今日、森のことを考えましたか」。これをひとつのキーフレーズにしています。

ドイツの国際会議に出たときに、ドイツの方が――会場の方もほとんどドイツの方だったのですが、こんな呼びかけをされました。「皆さんの中で、この1カ月以内に森へ行ったことがある人、どれぐらいいまか。手を挙げてください」。そのときに、半分以上の方が手を挙げました。

皆さんにも聞いてみましょうね。皆さんの中で、この1カ月、森に行ったことのある方、どれぐらいいらっしゃいますか。――3分の1、4分の1ぐらいでしょうか。ありがとうございます。

今日は、森に関心のある、森で活動されている方がたくさん来てくださっているので、今の割パーセンテージは非常に高いです。私は日本の一般の方々が集まる場所で同じように聞いたことがありますが、300人ぐらいの会場で、手が挙がったのはわずか1人だったかな。たぶん、町に住むふつうの人で、1カ月以内に、半年以内に、1年以内に森に行ったことがある人って、数えるほどしかいないのではないかなと思います。

森に実際に行かないだけではなくて、森のことを思い出したり考えたりする時間もきっと、ほとんどないんじゃないか。その時間やきっかけを提供したいと思って作っているサイトです。

少し下のほうを見ていただきましょう。まだ立ち上げたばかりなので、コンテンツも限られていますが、市ですので、これは「こういうもの売りたい」「こんなものも交換したい」「こんな面白い催し物はどうだろう」、そんな、参加する人たちの思いやアイデアで、これからどんどんにぎわってくることを願っています。

いま立ち上がっているページの中で、「新着ニュース」というのを見せてください。新着ニュースというのは、日本のあちこちの森の活動を紹介していくところです。このサイトでの新しい動きについても、ここで紹介していきます。

「森の記憶」というページもあります。このあとトークセッションに出ていただく善養寺さんに、いま登場していただいていますが、いろんな方の、あなたの森の記憶は何ですか。それをお聞きして、お伝えしていきます。それを読むことで、「自分の森って何だろう」「自分の森の記憶って何だろう」、皆さんにも考えてもらえるきっかけになればと思っています。

「森のなるほど!」というコーナーでは、森のクイズとか雑学とか、いろんな楽しいネタを集めていきます。森のことをみんなが話のネタにしてくれる、そんなきっかけを提供したいなと思っています。ここを見た人が、次の日、友だちに「ねえ、ねえ、知ってる?」なんて話をしてくれることで、森のことをちょっとでも思ってくれる、その時間や人を増やしていけたらと思っています。

「森製品が欲しい」というページでは、日本の森で作られたさまざまな、すてきな商品や製品を紹介していきます。たくさんすてきな商品があるんだけれど、町に住む人はあること自体を知らなかったり、見えなかったり、どこにあるかわからなかったり、現状はきっと、そういう感じだと思うのです。

このサイトに町の人がたくさん来てくれるようになり、森からの製品がたくさん、市を立ててくれるようなれば、もっともっと森と町をつなぐ道が太くなってくるのではないかと思うのです。

そして、「百人"力"商店」というコーナーがあります。これはこれからオープンしていきますが、「たくさんの人の思いを集めることで、物事を実際に動かしていこう」と思っています。私たち一人ひとりができることは、確かに小さいことかもしれない。でも、それがたくさん集まれば、大きなことを変えていくことができます。

どんなに大きな川だって、小さな小さな雨粒の集まりでできています。私たち一人ひとりができることは小さいことだったとしても、それをインターネットの力を使って集めることで、大きく物事を動かしていける。その力をここで使っていきたいと思っています。

たとえば、皆さんのお手元に今日、お土産で、間伐材で作ったマウスパッドをお入れしていますが、小さなマウスパッドです。でも、これを100枚作ろうと思ったら、4メートルに切った間伐材をひとつ使うことができます。1人で100枚のマウスパッドは、普通使わないと思いますが、1人1枚ずつでも、100人集まれば、それだけの間伐材を活かしていくことができる。そういった活動も、ここで展開しようと思っています。

そして、「木の家を建てたい」コーナーです。やはり、木をたくさん使うのは家です。そこで、「木の家を建てたい」という思いを持っている人、そして、「それだったらこういうふうにしたらいいよ」「こういうところ、気をつけたらいいよ」「こういう所で相談してみたら?」――そんな情報の出会いの場をここで提供していこうと思っています。

そして「企業、森へ」というページ。ここは、この「私の森.jp」を支えてくださるたくさんの(と願っていますが)企業の活動を紹介するページを展開していこうと思っています。いまは、最初に立ち上げを手伝ってくださった東京電力さんの活動紹介が載っています。これからたくさんの企業やNGO、そして一般の方々と一緒にやっていきたいと思っているので、ここもたくさんの市が立っていくことと願っています。

ずっと、こういったウェブサイトを作って、そして、ウェブをひとつのきっかけにして、実際にみんなで森へ行ったり、森の製品を買ったり、そんな活動をしたいと、ずっと思っていました。でも、思っているだけでは、実現することはできません。何かを願うことと、それを形にしていくことは、別物なのです。

「私の森.jp」は、「立ち上げを一緒にやりましょう」と東京電力さんに言っていただき、ファウンディング・スポンサーになっていただいて、このサイトを立ち上げることができました。

目に見える活動はウェブサイトですが、単なる情報提供だけではなくて、ここをひとつの市として、実際にリアルの世界でも森へ行く人が増えて、森での活動が活発になっていく--そういうふうに進めていきたいと思っています。

同じような思いの、同じような活動がたくさんきっとあるし、これからも出てくると思います。そういったところと一緒につながって、力を合わせていきたいと思っています。

そうすることで、町の人たちは、ふっと日常生活の中でも、森に思いを馳せる時間を、きっかけを得ることができたり、森の恵みを使うことが、自分とどんなつながりがあるのかを見ることができたり、「自分ひとりやったって」という無力感に代わって、人々の思いを重ねれば大きな力になるんだという、その達成感ややりがいを味わったりすることができるようになっていけば、と願っています。

そして、大切なものを取り戻し、自分で考えて自分で選ぶようになる。それによって、自分自身の手綱を取り戻す--そんなきっかけになればと思っています。

「私の森.jp」で、もうひとつ提供したいなと思っているのは、「時間」です。皆さんのお手元に配ったマウスパッドは、今回のために作っていただいた新しいマウスパッドです。私は、これと同じマウスパッドを、5年ぐらい前に作ってもらって使っています。色が違うのが見えるでしょうか?

木なので、あめ色に変わってくるんですね。使い込むほどに味が出るマウスパッド。普通、皆さんが使っていらっしゃる石油製品のビニール製のマウスパッドでは、「使い込む」という感じは、おそらくないでしょう。でも木の製品は、使い込むほどに味が出て、この色の変化さえとても楽しい。それは「時間が見える」ということではないかと、私は思います。その時間も、ぜひ提供していきたい。

そして、山の人たちにとっては、作ったものが売れる場所になっていってほしい。自分たちが作って、「さあ、どうですか」「買いませんか?」というこれまでの工業・商業アプローチではなくて、欲しい人たちと最初から一緒に作っていく、協力しながら作っていく。そんな場を、この「私の森.jp」で提供できればと思っています。

そうすることで、山の人たちが生計を立てられるだけではなく、誇りと自信を取り戻し、山に住むことがステータスになる。そんな日本が来ればいいなと思っています。

そして、山の木を使うようになって、植えて、育てて、切る、という循環が再び回りだすとき、止まっていた水車がゆっくりともう一度回りだすかのように、微生物も、虫たちも、植物も、動物も、きっと森に戻ってくる。森に遊ぶ人たちや子どもたちの笑い声、にぎわいもきっと戻ってくるのだと思います。

一度失ったからこそ大切にできる、大事なものがある。それぞれに新しい発見をして、自分が大きなつながりの中に、どのように位置づけられているのかを感じ、「生かされている」という言葉の持つ喜びを、自然の中で感じることができることを知る。

そして、「人々も森も、いつまでも幸せに暮らしましたとさ」。

そんな物語が、ここから生まれたらいいなと思っています。私も皆さんもこの世にいなくなったあともずっと、です。

森の時間に比べたら、私たちの人生なんて、ほんとの一瞬です。でも、その一瞬の人生の中でも違いを生み出すことができる。うねりの最初の小さなきっかけを作り出していくことができるのだと思います。

1本の木を育てるにも、「地ならし」といって、土地を整地して、苗を作って、植えて、苗が小さいときは、雑草に負けないように下草を刈って、そして水をやって、大きくなってきたら間伐をして、真っすぐに太い木が育つように手入れをしていかないと、育ちません。

それと同じように、「私の森.jp」の活動も、たくさんの方々に来てもらって、一緒に土ならしをしてもらったり、苗を植えてもらったり、水をやってもらったり--そしていつの日か大きな森になる。そんな日を夢見ています。

ベルリンの壁も、決してあれは倒れることはないと、世界中の人が信じていました。その壁に最初に空いた穴のように、今日この日が、この日を手掛かりに、森からも町からも力が集まり、結集して、物事が変わっていく。「今日がそのきっかけになったね」と言われる日を夢見て、「私の森.jp」の活動を展開していきたいと思っています。

今日来てくださっている皆さんの多くが森で活動されていたり、森に関心があり、大事だと思っている方々だと思います。私の思いと、すべて重なるわけではないと思いますが、でも、きっとどこか、ほんのわずかでも重なる部分があるのだとしたら、その重なりのところで一緒に活動できたらうれしいです。

皆さんがやっていらっしゃることを、もっとたくさんの人につなげたい。皆さんが作っていらっしゃるモノを、実際に買いたい人たちに見せていきたい。その橋渡し役として、「私の森.jp」が活動できればとてもうれしいと思うし、ここでいろいろな人たちが集まって、いろいろな活動が展開することで、みんなで作り出す新しいうねりが出てくればと願っています。

このあとのトークセッションでは、実際に森で、そして森と町をつなぐ役割で、そしてより町の人たちに近い立場で、それぞれの思いを大切に活動されている3人の方々を壇上にお招きし、その思いや活動についてお話を伺っていこうと思っています。

第2部が終わったあとは交流会です。皆さん、お入りになったときお気づきになったと思いますが、たくさんの展示ブースを出していただいています。「あ、こんな活動があるのか」「こんな商品があるのか」「こんな思いでやっていらっしゃる方がいるのか」。今日が、お互いにその思いをつなげる、その第一歩になることを願っています。

本当に年度末のお忙しい中、足を運んでいただき、今日の午後、一緒に過ごしていただくことを、とてもうれしく思っています。では、残りの時間もどうぞ楽しんでください。ありがとうございました。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「私の森.jp」には、「森に関わる人たち、団体」というコーナーがあります。
http://watashinomori.jp/networks/index.html

都道府県別、活動テーマ別に、NGOを紹介しています。ご自分の地域に、森林活動をしているNGO、見つかるでしょうか?

実際に森の活動に参加したいと考えている人に、全国それぞれの森で活動しているNGOを紹介したり、NGO同士の情報交換をお手伝いしたいと考えています。

まだ、少ししか登録がないので、ぜひ「私のところもやっているよ」「近くにあるよ」「仲間を紹介するよ」という方、ご連絡下さいな。

日本中のどこでも、「森に行きたいな。森で活動したいな」と思った人が、近くの活動につながれるよう、充実させていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。


イーズのウェブサイトをつくったときも、
http://www.es-inc.jp/

チェンジ・エージェントのウェブサイトをつくったときも
http://www.change-agent.jp/

「日刊温暖化新聞」のウェブサイトをつくったときも、
http://daily-ondanka.es-inc.jp/

今回の「私の森.jp」のウェブサイトをつくったときも、
http://watashinomori.jp/

「こういうことをしたい」という私の思いの「核」を、私以上によくわかってくれて、それはそれは見事な「結晶」に仕上げていってくれるのだなあ、といつも感心・感謝しています。

思いと夢は自由自在に駆けめぐらせることができますが、そこで伝えたいこと、そこでやりたいことを、じょうずに伝え、じょうずにやりやすくしてくれるウェブサイトがあってはじめて、しっかりした活動になっていくことを、この数年間、痛感しています。

この4つのウェブサイトすべてを手がけてくれているのが、グラム・デザインさんです。環境問題や持続可能性について、ご自分たちでも勉強して取り組んでいるので、思いが共有できていて、話がとてもしやすいのです。
http://www.gram.co.jp/index.html

これからの活動の展開や方向性なども含め、グラムさんと作戦会議をしています。
乞う、ご期待〜!(^^;

 

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