ホーム > 環境メールニュース > エンバイロメンタル・ディフェンスの活動と2007年の成功事例(2008.02.0...

エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2008年02月07日

エンバイロメンタル・ディフェンスの活動と2007年の成功事例(2008.02.07)

大切なこと
 

「政府、企業、地域社会と組んで、環境問題への実用的な解決策を見つけます」というスローガンで、本当にしっかりした大きな動きを着実に創り出している環境NGOが米国にあります。Environmenta Defense(エンバイロメンタル・ディフェンス:直訳すると「環境防衛」)です。

ここの方にお会いしたことがありますが、有給のスタッフが1200人いるといっていました。博士号を持った科学者やコミュニケーションの専門家など、ひとつの大企業と同じぐらいの規模と専門別職種のスタッフで活動をしています。

今回は、このNGOの活動の土台となっている設立趣意と戦略、そして、昨年末に届いた「2007年の成功事例」をご紹介します。実践和訳チームのメンバーが訳してくれました。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

Environmental Defense(エンバイロメンタル・ディフェンス)
http://www.environmentaldefense.org/home.cfm

●ミッションステートメント(設立趣意)

エンバイロメンタル・ディフェンスは、50万人以上の会員を抱える米国有数の非営利団体である。1967年の設立以来、科学と経済と法律を結びつけることによって、社会における最も緊急性の高い環境問題に対し、革新的かつ公正で費用効果の高い解決策を編み出してきた。

エンバイロメンタル・ディフェンスは、将来世代を含むすべての人々の環境権を守ることを使命としている。こうした権利には、きれいな空気や水、健康的で栄養豊富な食物、豊かな生態系へのアクセス権などがある。

エンバイロメンタル・ディフェンスは、環境問題を科学に基づいて評価し、「政治に左右されない」「費用効率が高い」「公平である」といった理由から、政治的にも経済的にも、また社会的にも長く支持されるような解決策の立案・提言に取り組んでいる。

エンバイロメンタル・ディフェンスは、持続可能な環境の実現には公平かつ公正な経済・社会システムが必要であると考え、貧困層や有色人種の環境権に取り組むことを明言している。

エンバイロメンタル・ディフェンスは米国の組織として常に、国内の環境問題と、世界の環境問題における原因・解決双方の当事者としての米国の役割を特に注視していく。

●特殊なアプローチ:4つの主要戦略

1967年にエンバイロメンタル・ディフェンス・ファンドとして設立された当団体は、以下の戦略に基づいて、最も深刻な環境問題に取り組んでいる。

科学的ノウハウの駆使
市場の革新
企業とのパートナーシップ
効果的な法律や政策立案への働きかけ

=====================

2007年、12の環境成功事例

毎年この時期になると、キジバトやフランスのメンドリ、乳搾りのメイド、5つの金の指輪などの贈り物が出てくるクリスマスソング「12日間のクリスマス」が街中をにぎわす。そこで私たちからは、金の指輪とまではいかないが、あなたが知らずにいたかもしれない「2007年、12の環境成功事例」をお届けしよう。

私たちは、当団体の最優先事項である「温暖化を引き起こす米国の汚染を食い止める」活動をいっそう前進させていく一方で、年末年始の休暇中、ここに挙げた事例があなたにインスピレーションと元気をもたらしてくれることを願う。私たちが変化を起こし、環境のため真の勝利を勝ち得ることができるのは、あなたの支えあってこそなのだから。

●ハクトウワシの復活

2007年は、「ワシ年」、正確には「アメリカハクトウワシの年」として記憶されることになるかもしれない。

7月4日の米国独立記念日より少し前、エンバイロメンタル・ディフェンスはダーク・ケンプソーン内務長官とともに、アメリカハクトウワシが公式に生息数を回復し、絶滅危惧種リストから外された、という歴史的発表を行った。

かつてハクトウワシは、営巣するつがいの数がわずか417にまで落ち込んでいた。しかし、私たちが一世代前に起こしたDDT使用禁止運動と、数十年間にわたって実施されてきた絶滅危惧種保護法による回復管理が、米国のシンボルであり自然界で最も威厳に満ちた生物の一つであるこの鳥の復活を助けることとなった。

●より良い漁業権と市場獲得で漁師も満足

カリフォルニア州セントラルコーストにあるモロ湾は、世界でも最も多くの海洋生物が集まる海域の一つ。しかしこの貴重な海洋生態系は、破壊的な底引き網漁の脅威にさらされてきた。

エンバイロメンタル・ディフェンスでは、自然保護団体のネイチャー・コンサーバンシーやモロ湾の漁業者たちとともに、環境を損なうことなく漁業を営む方法を模索した。私たちはともに太平洋漁業管理協議会(Pacific Fishery Management Council)に掛け合い、「漁業者が生態系に甚大なダメージを与える底引き網でなく、釣針や仕掛けといった持続可能な漁具を使用する場合に限り、トロール船による漁業権を借りられる」よう説得した。また、モロ湾の漁業者たちが持続可能な漁法で獲られた魚介を販売するための市場開拓も支援した。

●スクールバスをクリーンに

今年は、私たちとマイケル・ブルームバーグNY市長が、ニューヨークを全米一環境に配慮した都市にするために策定した127項目の「グリーンプリント(環境配慮計画)」が、何度もメディアで取り上げられた。

しかし、私たちが2,300台以上の市の大型スクールバスを改良し、排気ガスをクリーンにしていることはあまり知られていないだろう。この改良により、バスが排出する粒子状物質(すす)の量は2割から3割削減され、子供たちもより健康的に通学できるようになった。

私たちはまた、ノースカロライナ州ですすの排出量の9割削減を目指し、最低でも250台のスクールバスを改良するという社会実験に、公的資金を投入するよう働きかけた。この実験はノースカロライナ州初の試みで、当団体がテキサス州で取り組んでいる事例を参考にしている。現在、テキサス州では、州内すべてのスクールバスをクリーンにするための複数年計画が進行中である。

●各州、地球温暖化対策に乗り出す

この夏、カリフォルニア州に続き、ハワイ、ニュージャージー、フロリダの3つの州で、温暖化を引き起こす汚染を厳しく規制する州法が成立した。

他のいくつかの州も、クリーンエネルギーの推進に向けて動き出した。ノースカロライナ州では、私たちの後押しで、再生可能エネルギー基準を含む画期的なエネルギー法案が可決した。これによりノースカロライナ州は、エネルギー効率に関する基準も定めている数少ない州の一つとなった。

●貴重な湿地を保全

米国陸軍工兵隊は、数々のプロジェクトで失敗を犯しているが、「ミシシッピ川湾排水路(Mississippi River Gulf Outlet)」ほどはっきりと分かる失敗は少ない。これは、ほとんど使われることのない船舶用の水路である。この水路は、嵐から守る緩衝地帯としての役割を担っていたイトスギの湿地を壊して建設されたため、ハリケーン・カトリーナが襲った際、高潮がまるでじょうごのようにこの水路を通って、ニューオーリンズの街になだれ込んだのである。

今秋、私たちは連邦議会に重要な水法案を可決するよう働きかけた。この法案は、「ミシシッピ川湾排水路」を閉鎖し、工兵隊に対して、問題となっているプロジェクトの内容を独立した審査機関に提出するよう要求するものである。

一方私たちは、ニューオーリンズから1,600キロメートル北上した五大湖地区で、「エリー湖西岸プロジェクト(Western Lake Erie Basin project)」を順調に開始した。これは、エリー湖から流れているブランチャード川とティフィン川という2つの主要河川の流域に木や草を植え、湿地と減少している動植物の生息地を回復させるプロジェクトである。

●メキシコ湾の漁業管理プログラムに誰もが納得

今年、私たちの海洋チームは、漁場の保全と、漁業者の収益改善を目的とした革新的なキャッチシェア(各漁業者にあらかじめ漁獲枠を割当てる)プログラムを提案して大評判となった。この取り組みの先駆けといえるメキシコ湾のレッドスナッパー漁獲プログラムでは、すでに成果を上げつつある。キャッチシェアは、漁業者と漁村および漁業協同組合に、安定した漁獲を保証するものである。割当量は毎年漁が解禁される前に決められ、漁業者は最大限の利益を得るために、その割当を売買することができる。

私たちは、従来のレッドスナッパー漁の規定に替わる、新たなキャッチシェアプログラムの企画立案に参加した。古い規定では、漁業者たちは出漁日を制限され、死にかけた大量の魚を海に投棄せざるを得なかった。しかし、新しい規定に改定すると、レッドスナッパーの価格は3割増しとなり、意図しない「混獲」によって殺される魚は8割減少した。

●ノースカロライナ州に健全な養豚場を

エンバイロメンタル・ディフェンスのノースカロライナ事務所は、「養豚場における環境配慮基準法(Swine Farm Environmental Performance Standards Act)」の成立を支援した。これにより、ノースカロライナ州は、養豚場でのラグーン(豚のふん尿を貯蔵する池やタンク)およびスプレーフィールド(豚のふん尿を撒くための土地)の建設・拡張を禁止する最初の州となった。この法律はまた、養豚場に新たに設置される廃棄物管理システムに対し、健康と環境に関する厳しい基準を設け、さらに、養豚業者が既存のラグーンをより清潔なシステムに転換できるよう、任意の費用分担制度を導入している。

●環境を重視した判決

この春の米連邦最高裁による画期的な判決は、見逃すことのできないものだった。最高裁は、「米国環境保護庁が地球温暖化の原因となる汚染の取り締まり権限を回避することは許されない」という判決を下したのだ。さらに、先ごろ連邦控訴裁判所で勝ち取られた2つの判決は、米国の車から排出される温暖化ガスをなくす動きの第一歩になるかもしれない。

9月にはバーモント州の連邦判事が、これ以上厳しい温室効果ガス排出基準には対応しきれないという自動車メーカーの訴えを退けた。今年の初めには、ブッシュ政権が定めた抜け穴だらけのスポーツ用多目的車(SUV)および軽量トラック向け燃費基準が、第9巡回控訴裁判所によって大枠でくつがえされ、運輸省はこの基準をより厳しいものに修正するよう命じられた。いずれも、当団体の弁護士が議論を後押ししていた訴訟である。

●成果を上げる環境パートナーシップ

私たちの「企業パートナーシップ」チームにとって今年もまた、ナノテクノロジーの安全基準策定に始まり、環境に優しい養殖エビの新しい購入基準の策定、さらにはウォルマートのエコロジカル・フットプリントを縮小させるなど、飛躍的な前進を遂げた年となった。

さらに私たちは、米国内での温室効果ガス排出量の上限が連邦議会で立法化されるよう、大手企業27社および国内の6環境団体と組み、画期的な米国気候行動パートナーシップ(USCAP)を立ち上げた。私たちはともに、2050年までに排出量を6〜8割削減するべく、市場ベースの上限設定を求めている。

●ノースカロライナ州からフロリダ州までをまたぐ、初の州間海洋公園が誕生

私たちは、複数の州にまたがる初めての州間海洋公園の設計および承認獲得にも力を貸した。ノースカロライナから米国最南端の島々フロリダ・キーズにまで至る、この20万ヘクタールもの海洋ネットワークは、見事な深海サンゴが分布する8つの海域で構成され、73種のグルーパー、スナッパー、アマダイなどの魚にとってもかけがえのない生息地となっている。

この新しい海洋ネットワークは、以前私たちが設立支援を行った保護区が発展したもので、フロリダ州のドライ・トートゥガス諸島などの浅瀬の岩礁に広がる生息地も保護している。

●テキサス州、河川の保護を強化

米国西部では干ばつが8年も続くという記録的な事態が起きており、都市、農業、工業は少ない水を奪い合っている。河川に残る水があまりに少なすぎて、魚や野生生物が健全に生息できないこともたびたびある。そうしたなかテキサス州は、河川の自然な流れを法律によって保護する最初の州となった。

私たちは、州内すべての川について、最低限必要な水の流量をより良く管理するため、水の利用者たちと力を合わせて新たな州法を可決させた。これには、川、湾、汽水域、さらにはそこに住む野生生物たちの存続に欠かせない季節的な洪水やその他の自然作用なども含まれている。

●プエルトリコで40の絶滅危惧種を保護

過去数年の間、プエルトリコでは、2つの巨大リゾート建設計画によって、本島の東側にある北東生態回廊(Northeast Ecological Corridor)が脅威にさらされてきた。もし、これらのリゾートが建設されていたら、湿地やサンゴ礁、それに40を超える絶滅危惧種は壊滅していただろう。

だが、当団体の活動家による懸命な取り組みや他の環境団体との連携の結果、現在、この地域の亜熱帯雨林、オサガメ、サンゴ礁は無事に保護されている。

この秋、プエルトリコ知事は保護を訴える私たちの呼びかけに応え、この地域を自然保護区として指定する行政命令を出した。偉大で豊かな生態系を守るために必要な措置が取られることを保証したのだ。


(翻訳:佐野真紀、角田一恵、木村ゆかり)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ここにも取り上げられている米国気候行動パートナーシップ(United StatesClimate Action Partnership、USCAP)については、ぜひ知っていただきたい動きなので、メールニュースでまたお伝えします。

そして、日本にも早く、これぐらいの規模と影響力のあるNGOが出てくればなあ、と思います。日本では、税制上や人々のサポートなどの課題があって、財政的に規模の大きなNGOが成り立ちにくく、専従スタッフが数人からせいぜい十数人という小さいところが多いのです。

でも、規模が大きくても小さくても、また組織でも個人でも、こうやって「今年は何ができたか? それでは、来年は何を進めていこうか」と、慌ただしい作業に追われる毎日のなかでも、ちょっと立ち止まって考えること、大事にしていきましょうね。

 

このページの先頭へ

このページの先頭へ