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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2008年01月01日

年の初めのご挨拶(2008.01.01)

新しいあり方へ
 

みなさま、あけましておめでとうございます〜。
今年もどうぞよろしくお願いします。

例年、元旦には1年間を振り返り、今年の活動や方向性についてじっくり考える時間をとっています。今朝もその至福の時間を7時間ほど過ごしました。(通常も早起きですが、さらに早起きしてしまって、、、0時に起きてしまったので、7時間やってもまだ“朝飯前”でした。^^;)

自分にとっては、1月の『不都合な真実』出版が幕開けとなった「温暖化ブームの1年」だったなあ、と思います。講演、取材、出演等の依頼がとても増え(講演もかなりお断りせざるをえない状況でしたが、それでも昨年の倍以上の80回でした)、そのほかのさまざまな機会へとつながっていきました。

1月:『不都合な真実』出版、温暖化ニュースをイーズのウェブ上で開始

2月:安倍首相のドイツサミットへの21世紀環境立国戦略を考える環境省中央環境審議会特別部会への参加始まる

3月:『なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか』出版、「システム思考でエコな商品・アイディアを広げるマーケティング講座」開催、アトランタでのシステム思考国際会議・JICAメキシコ現地事務所での研修に出張

4月:『地球のために私ができること』『大金持ちをランチに誘え!』出版、カフェ方式で温暖化について話し合う「climate cafe」を実施

5月:「サステナビリティ総合力講座」開催、ループ図ノック講座開講、「骨太の枠組みをつくるための環境必読書を読む講座」開講(〜9月)

6月:『システム思考入門』『不都合な真実 ECO入門編』出版、「英語をしゃべれるようになりたい人のための愛の30本ノック講座」開講、マサチューセッツ工科大学(MIT)でのエグゼクティブ向けシステム思考コース参加

7月:高見幸子さんを講師に迎え「ナチュラルステップ講座」開催

8月:JFSが5周年を迎える

9月:ベルリン会議、ハンガリーでのバラトン合宿、スイスでのISIS会議で、日本の取り組みについてのスピーチ

10月:講演16回!

11月:デニス・メドウズを迎えて「ピークオイル」講演、「成長の限界ワークショップ」開催、オフィスを千歳船橋に引っ越す

12月:レスター・ブラウン氏への取材、「日刊温暖化新聞」オープン、JFSが温暖化防止活動環境大臣賞を受賞、100万人のキャンドルナイトで来年の活動を考える合宿


こうやって並べてみると、よくまあ、これだけいろいろなことをやってきたものだなあ、と我ながら感心(?)するとともに、スタッフはじめ、関係者に本当に「ありがとう!」です。やってみてはじめてわかることがたくさんあるのですよね。そういう意味で、私の活動は「つねに実験中」「走りながら方向を確認」みたいな感じ。楽しいです。(^^;

ちなみに、昨年1年間のさまざまな活動を通して、「本質的な問題がより明確になり、社会にも伝えられるようになり始めた」印象を持っています。

「本質的な問題」とは、たとえば、「温暖化は問題ではない」ということ。温暖化は、もっと根源的・本質的な問題の症状の一つに過ぎません。根源的・本質的な問題とは、「有限の地球上で、無限の物理的成長をつづけようとすること」です。このために、「成長の限界」にぶつかってしまっています。

「二酸化炭素吸収源」の限界にぶつかったために、温暖化という問題が生じました。「資源」の限界にぶつかりつつあるために、石油をはじめ、資源やエネルギーの価格高騰が起こっています。

たとえ、大きな掃除機でぶおーっと大気中の二酸化炭素を吸い込んで温暖化を止めることができたとしても、「有限の地球上で、無限の物理的成長をつづけようとする」という根本的な問題構造が変わらない限り、かならず別の問題が生じることでしょう。

(これがデニス・メドウズ氏らの『成長の限界』でいう「層状の限界」です。ひとつの限界を技術的に解決しても、次々と限界がやってきます。ある限界を技術的に遠ざけることに成功すればするほど、次の限界は早く強力な形でやってくる、というものです)

また、「本質的な問題」とは、温暖化をはじめとする問題は、科学技術的な問題ではなく、「こころに関わる問題」であること、つまり、「本当の幸せとは何か」「成長至上主義の問い直し」につながる、という話を、かつては市民はともかく、企業の人々にはなかなか聞いてもらえませんでしたが、最近では、耳を傾けてくれる人が増えてきました。

そして、温暖化などの問題は、システム思考でいう「構造」の問題であることがますます明らかになってきました。だれも温暖化を進めたいと思っていません。多くの人が何とかしたいと真摯に思い、組織でも個人でも努力をしています。それでも、日本や世界の二酸化炭素排出量は増加の一途です。なぜなのでしょうか?

それは、私たちの思いや根性が足りないせいではなく、「現在の社会や経済が、二酸化炭素排出量を増やしてしまう構造」になっているためなのです。もちろん私たちにもまだまだできることはたくさんありますが、社会や経済のルールやしくみを変えることで、この構造自体を変えない限り、短期間に大きな削減は難しいでしょう。

この1年は、このような「温暖化は症状である」「有限の地球上での成長の限界」「成長を問い直す」「本当の幸せを考える」「問題を構造として理解する」「構造に働きかけることを考える」「小さな力で大きく動かせるレバレッジ・ポイントを模索する」ことを軸に、講演やワークショップ、セミナーなどの活動を展開してきたように思います。

(改めて、6年前からシステム思考の勉強を始め、3年前にシステム思考の研修などを行うチェンジ・エージェントを立ち上げておいてよかった、と)

そして、これからはどのような時代になるのでしょうか。

年末に、イーズとチェンジ・エージェントのスタッフといっしょに、オフィスから離れた場所で、じっくり振り返りの時間を持ちました。「この1年、世界や世間はどんな動きだったか」を考えたときに、

・温暖化の脅威が身近になり、IPCC、ゴアさんのノーベル平和賞受賞、科学者からのさらに深刻なレポートの発表など世界中で大きな動きがいくつもあった
・米国の世界でのリーダーシップがますますゆらぎ、中国やロシアの台頭もあって、世界情勢が不安定さを増した
・年金問題など、国内ではこれまでのように国を信頼して任せておけばよいと考えるのは誤りであるというムードが広がってきた

などが出てきました。

「これらに共通するものは何だろう?」と考えたときに出てきたキーワードは「不安」でした。「これまで不問の前提としていたことがゆらぎ始めている」ことです。小さな人間がこんなに大きな地球の気候を改変するなんてありえないと思っていたのに……。国は信頼できるから、自分では何も考えなくてよいと思っていたのに……。

願わくば、この不安が「新しい秩序や構造が生まれてくることに付随する、産みの苦しみのような不安」であれば、と思います(そうしなくては!ですね)

しかし、今後数年を考えたときに、これらの不安はますます増大していくことでしょう。「不安に陥った人はどういう行動をとるか?」をスタッフと考えました。どう思いますか?

「極めて短期的な視野で動くようになる」
「自分さえよければという行動が増える」
「あきらめてしまい、行動しなくなる」
「思いやりや考える余裕をなくす」
「かえって逆行する行動をとるようになる」などなど。

では、「不安が増大する状況でも、上記のような不安に陥らずにすむには、何があればよいか?」 どう思いますか?

スタッフからはいろいろな答えが出てきましたが、たとえば、「不安と希望を共有できる仲間」「ネットワーク」「それでも前進しつつあることを知ること」「不安に陥っていないモデルとなる人」など。

ぜひみなさんが、これから不安が増大していったとしても、「仲間」や「ネットワーク」の力を借り、「前向きな取り組みや情報」を入手し、「不安に陥っていないモデル」になっていただけたら、と強く願っています。そういう人が一人いるだけでも、だいぶ状況のトーンを変え、パニックや絶望の蔓延を防ぐことができると思うのです。

ちなみに、世界に対しても同じように考えています。5年半前に立ち上げた、日本の環境情報を世界に発信しているジャパン・フォー・サステナビリティの重要な役割の一つは、ますます混迷を深め、悪化していく状況のなかで、それでも絶望することなく変えていこうとする世界中の人々・組織・地域を支える「こんこんと湧き出る希望の泉」になることだと考えています(ですから、最初から一貫して、ポジティブな取り組みや情報を世界189ヶ国に届けています)。

来年は、洞爺湖サミットもあり、ますます温暖化が大きな問題となっていくでしょう。もっとも、サミット自体は、システム思考の「氷山モデル」でいうところの「氷山の一角=できごと」レベルのイベントですから、それ自体が大事なのではなく、このサミットという機会を活かして、「氷山の下の部分=構造」を変えられるかどうか、が大事なところです。

先月、レスター・ブラウン氏のところへ行って、4日ほど取材をさせてもらったり、食事しながらおしゃべりをしてきました。「1年前と比べて、レスターは楽観的? 悲観的?」と聞いたところ、「温暖化の悪影響はますます明らかになってきているが、一方で、人間の側の変化のスピードには楽観的になれる」と言っていました。

特に米国ではこの1年、政治や経済でも温暖化をめぐって大きな動きがたくさん出ていることもあるのでしょう。でも、私も同じように思っています。

日本の場合、残念ながらまだ国や経済界のレベルではめだった動きにはなっていませんが、自治体や個別企業、そしてひとりひとりの意識や取り組みのレベルでは、変化が加速しています。さらに広がっていけば、だいじょうぶ、絶望的な状況に陥る前に状況を好転させられると思っています。

最近読んだ本から、一節を紹介し、新年のご挨拶にしては長い(まあ、いつものことですが。^^;)、今年最初のメールニュースを締めくくりたいと思います。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

冬の細い樹木の枝に、二羽の鳥がとまっている。

「雪のひとひらの重さはどれくらいかな」シジュウカラが野バトに聞いた。

「重さなんてないよ」ハトが答えた。

「じゃあ、おもしろい話をしてあげる」シジュウカラが言った。

「モミの木の、幹に近い枝にとまっていると、雪が降り始めた。激しくはなく、吹雪の中にいるような感じでもない。そんなのじゃなくて、傷つくことも荒々しさもない、夢の中にいるような感じの降り方だった。ほかにすることもなくて、ぼくは小枝や葉に舞い降りる雪をひとひらずつ数えた。やがて、降り積もった雪の数は正確に374万1952になった。そして、374万1953番目の雪が枝の上に落ちたとき、きみは重さなんてないと言うけど--枝が折れた」

そういうと、シジュウカラはどこへともなく飛んでいった。

ノアの時代以来その問題に関してとても詳しいハトは、今の話についてしばらく考えていたが、やがて独りつぶやいた。

「もしかしたら、あともう一人だけ誰かが声をあげれば、世界に平和が訪れるかもしれない」

(ジョセフ・ジャウォースキー著『シンクロニシティ』より)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

どうぞよいお年を。
そして、よい年にしていきましょうね!

 

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