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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2007年09月07日

山からのメッセージ(2007.09.07)

森林のこと
 

いま、福岡に来ています。今日の午後、明日から始まる「エコアジア2007」の開催記念環境シンポジウムに参加するためです。

数日前、このようなメールをいただきました(ご本人のご快諾を得て、ご紹介します)。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

はじめまして。
大分県日田市の小さな町(山村)上津江で林業に携わっています。

いつも楽しくメールニュースを読ませていただいています。
環境メールニュースから得た環境、世界、地球、などなどの最新の情報及び動向は、私の大きな情報源です。

私は㈱トライ・ウッドという従業員数約60名の総合林業会社(森林保全〜木材加工)で企画・広報を担当しています。

林業という仕事は言うまでもなく自然が相手の仕事です。
しかし、この仕事を始めるまでちっとも「環境」や「地球」を真剣に見たことがありませんでした。

恥ずかしい事に、林業と環境がつながっているということにすら気づいていませんでした。
「環境」や「地球」に対して真剣に向き合っている人たちに対して、「なんて偽善的なのだ」と疑念を抱いていたところもありました。

林業という仕事を始めて、考えようとする時間軸が伸び、視野も広くなったような気がします。(津江地方では山に携わって仕事する人たちのことを「きやどん」と呼ぶんですが)上司であるきやどんが何も知らない私にいろいろ山のことを教えてくれるのです。

スギは生長してから木材として使えるようになるまで、50年も60年もそして80年も、長い長い時がかかります。

私たちが今切り出してきているスギは、私たちのおじいちゃんそのまたおじいちゃんたちが地下足袋もない時代にただのわらじを足につけ、急な日本の山に鍬一本を手に入っていき植えた苗が生長したもの。今のように林業機械なんてものはなく、車もありません。チェンソーもありません。人間の足と、鍬と、斧と、ノコ。そんなもののみ。

夕方、真っ赤に日焼けし汗のにおいいっぱいで会社に戻ってくるきやどんたちを見ながら、そんなかつてのきやどんの姿を想像するのです。すると、うれしいのか、悲しいのか、よくわからない感情でいっぱいになるんです。家族でもない、顔も知らない、そんな人から何かをもらっている。何か暖かいもので包まれていると感じるのです。彼らに何かお返しをしたいと思いました。

しかし、あるきやどんが言うのです。
私がすることは恩返しすることではなく、彼らがしてきたことを次に伝えること、彼らが残したものを次に伝えることだと。「pay back」ではなく、「pay it forward」なのだと。

地球上で森林の占める割合はわずか1割にも満たない程度ですが、その森林が果たす役割はとてつもなく大きいということを知りました。

その森林にもいろいろあります。
自然のままの形を残した森もあれば、人とともに循環し続ける森もある。
天然林(本当の意味でそんなものがあるのだろうかと思ったりもするのですが)と人工林を全くわけて考えてしまう方法は正しくないと思うのです。

地球という大きな背景を抱えていることを見ればどちらも同じ地球上で1割に満たないうちの一部。

弊社は「津江杉」を扱う会社ですが、スギにだって同じ公益性があることを伝えていきたい。
何世代も前からきやどんたちが信じて行動していたこと、そこにはとてもシンプルな“持続する”カタチがあったと思っています。世界のあちこちで怒りや悲しみが発生し、その足元にある地球すらも悲鳴をあげはじめているからこそ、私はそこを伝えていきたい。

手前みそなのですが、林業だからできることだと思います。
なぜなら、森は地球への入り口で、きやどんはそこの番頭さんですから。

しかし、今のきやどんはとても消極的なのです。
たしかにお給料は中の下、、下の上くらいでしょう。
でも、この仕事に誇りをもってもらいたいと思います。
「もやい」なのだと。
船と船を繋ぐもやいのように彼らは人と地球を繋ぐ「もやい」なのだと思うのです。

e's mailを読んで枝廣さんのものごととの向き合い方、捉え方を知ってとても新鮮に感じたこと、それがこんな風に林業を考えられるようになったきっかけだと思っています。

いつも「そう!そう!」とパソコンの前で一人頷きながらメールを読んでいます。
そしてたまに山から戻ってきたきやどんたちと一緒に読んだりするのです。
実際にお会いして話をしてみたいとみんなで盛り上がりました。

今月7日に福岡国際会議場にいらっしゃるそうで、とても楽しみにしていたのです。しかし、残念なことに仕事で大事な打ち合わせが入ってしまいました。
それで、メールをした次第なのです。

長々となってしまいました。
何とか打ち合わせ終わってから参加できないものかと考えているところです。
もし間に合えばお声をかけさせていただくかもしれません。
その時は宜しくお願いします。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

午後の会場でお会いできるかな、と楽しみです。

でも九州から遠くても、トライウッドのウェブサイトで「きやどん」たちの活動
や、この会社の考え方に触れることができます。「山へ行ったことがありますか?」に始まる山からのメッセージもぜひ。
http://www.try-wood.com/

それから、間伐材を利用したアイテムもとってもすてきです。
http://www.try-wood.com/modules/products1/index.php?id=16


私はただ自分の趣味で、8年近く前からこのメールニュースを書いているので、読んで下さる方がいてくれるだけで、「なんてありがたいこと」と思っています。
(読んでくれる人がいなくなっても、きっと書き続けていると思いますが。^^;)

でもこうして、読んで下さるだけではなく、それをネタにほかの方と話をしたり、新しい「つながり」をつくって下さったりしている場面があるんだなー、と思うと、思わぬ副賞をもらったみたいで、しみじみうれしくなります。

 

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