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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2007年08月22日

apbank fes 参加記(2007.08,16)

新しいあり方へ
 

いま、夏休みで宮古島に来ています。今日の午前中、ボンベを背負ってサンゴ礁の海に潜ったのですが、「色鮮やかなサンゴ礁!」という感じではなくて、白灰色のサンゴ礁が続いていました。色とりどりの熱帯魚を目で追いながらも(ニモにも会いました!)、「これが温暖化による白化なのかなあ?」とサンゴ礁ばかり見てしまう私(職業病?^^;)。

上がってからインストラクターに聞いてみたら、やはり「ええ、白くなる珊瑚礁が増えているって、言ってます」とのことでした。

白化とは、温暖化によって海水温が上昇すると、サンゴに住みついて、鮮やかな色を作りだしている「褐虫藻」が、熱などのストレスによって抜け出してしまい、サンゴの透明な薄い肌の下にある無色の炭酸カルシウムの骨格がさらけ出される現象です。「たいていの場合、見た目にサンゴが白くなってくると、そのサンゴはまもなく死んでしまう」とのこと。

アル・ゴア氏の『不都合な真実』には、「観測史上最も気温の高い年となった2005年、多くのサンゴ礁が姿を消した。1998年は観測史上2番目に気温の高かった年だが、この年には世界のサンゴ礁全体の16%が失われたと推定されている」と書いてあります。

今年も多くのサンゴ礁が消えつつあるのでしょうか。コバルトブルーの海を見ながら、海も海の中も、ずっとそのままであってほしい!と強く思ったのでありました。

ところで、私が帰京する予定の日に、台風が来るらしく、無事飛行機が飛ぶか心配なところです(って、本人はあまり心配していないのですが。^^;)

台風と言えば、1ヶ月前にも大きいのが来ていましたね。ちょうど1ヶ月前の今日、私は、静岡県掛川のつま恋で開催された apbank fes に参加していました。

apbank ってなあに?という方もいらっしゃるかもしれませんね。そのご紹介や、apbank fes のようすを、NIKKEINETの日経エコロミーのサイトの連載コラムに書きましたので、ご紹介したいと思います。
http://eco.nikkei.co.jp/

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

音楽イベント「ap bank fes」とエコの関係(枝廣淳子)

台風の去った7月16日、静岡県掛川のつま恋で開催された音楽イベント「ap bank fes’07」 にトークショーのパネリストとして参加しました。

ap bank fes って何かって? 「ap bank」のフェスティバルなのですが、その「ap bank」について、簡単にご紹介しましょう。

■環境プロジェクトに融資
2002年のこと、アーティストによる自然エネルギー促進プロジェクト「Artists' Power」のメンバーである音楽プロデューサーの小林武史さんが呼びかけて、環境問題に関する勉強会が始まりました。

「Artists’ Power」は、音楽家の坂本龍一さんがGLAYのTAKUROさんとともに立ち上げたもので、アーティストの影響力によって、環境について訴えていこうとする活動です。大貫妙子さん、松武秀樹さんらとともに、Mr. Childrenの櫻井和寿さんも参加していました。具体的には、風車を建てようという話が進行していたそうです。

何回か勉強会を開くうちに、未来バンクの田中優さんと出会いました。未来バンクは、1994年に設立された非政府・非営利の市民団体で、市民から出資金を預かって、環境に優しい商品を購入する人や、環境に優しい事業を営んでいる人に、低利(年利3%)で融資を行っています。このように、自分たちの預金を、自分たちの望む使いみちにのみ運用している「市民のためのバンク」の存在を知ったことから、自分たちも自分たちのバンクをつくろう、という話になりました。
 
こうして、2003年に、小林武史さん、櫻井和寿さん、坂本龍一さんの3名が自己責任のもとで拠出したお金をもとにして、「可能性ある新しい未来をつくろうとしている環境プロジェクトに融資を行う」という目的で設立されたのがap bankです。

ap bankは、自然エネルギー、省エネルギーなど環境に関するさまざまなプロジェクトに融資をする非営利組織です。 Artists’ PowerのAPに、Alternative Powerの意味も加わった名前となっています。ウェブサイトから、設立の思いとメッセージを以下に引用します。

ap bankは、大きな事業体ではなく、ふつうに生活する人にできる、「小さな事業」を対象にした融資を中心に考えています。自然エネルギーは「地域分散型エネルギー」と呼ばれるように、「地域ごとに生まれる」性質があります。環境を改善していくのにも、各地の特性に合ったいろいろなアイデアがあると思うのです。各地の人々の行う小さな試みを支援することで、「自分たちの力で社会を変えていける」と思う人が増えて、新しい未来が生まれていくことを私たちは期待しています。

2004年に15件の融資を決定して以来、「自然エネルギー」「循環型地域づくり」「食と農」「新しい視点」といったカテゴリーで、さまざまな活動に融資をおこなっています。現在第7期の融資を募集中です。このapbank の資金源に、と、2005年から7月の3日間、ap bank fesがつま恋で開催されるようになったのです。

■野外のトークショーに出演
3年目となった今年のapbank fes はあいにく台風と日程が重なってしまい、3日間のうち、初日と2日目は開催中止となってしまいました。私の出番はたまたま3日目だったので、参加することができ、とてもうれしかったです。

私は、小林武史さんが呼びかけた環境問題に関する勉強会に声を掛けてもらったことが、小林さんたちとの出会いのきっかけでした(坂本龍一さんとは、2001年に『非戦』という本を仲間でいっしょに出すなど、前から知り合っていましたが)。私が参加した勉強会は「森林問題」がテーマでしたが、小林さんは、NGOや政府、企業関係者などの話に熱心に耳を傾け、率直な質問やコメントをしながら、同じ思いで集まった人々の場をつなぐ役割を果たしていました。

今回のapbank fes ’07 では、ライブの開始前の時間帯に催される座談形式のトークショー「ap bank dialogue」に出ませんか?というお声掛けがありました。

トークのテーマは、「地球温暖化は止められるのか?」です。GAKU-MCさんを司会役に、ap bank代表の小林武史さん、国立環境研究所の温暖化リスク評価研究室長の江守正多さん、そして私の3人という顔ぶれ。50分ほどの短い時間でしたが、温暖化をテーマに、「現状はどうなっているのか、私たちは何をすべきか、何ができるか」などについて話をしました。会場には屋根があるとはいえ、野外でのトークショーは初めてでした!

トークショーのあとは、ライブエリアに移動して、ライブを堪能させてもらいました。3日間の予定が台風のせいで1日だけになってしまったので、初日や2日目に登場するはずだったアーティストが東京から飛んできて飛び入り参加してくれるなど、それはそれは豪華なライブでした。AI、絢香、コブクロ、レミオロメン、KAN、氷室京介、大貫妙子、加藤登紀子などなど。そして、小林武史さんと櫻井和寿さんは出ずっぱりで大活躍。

「思い」で集まったアーティストの素敵な音楽を、「思い」で集まった3万人もの観客が大事に大事に楽しんでいる――ステージ上と広い芝生の観客エリアが一体となってあったかくつながっているみたいで、とても心地よい時間でした。

■環境配慮型イベントの心地よさ
ap bank fes’07では、販売されるすべての飲食容器(お皿・カップ)をリユースできるものにしていました! 野外音楽イベントとしては初めての取り組みとのこと。さらに来場者にはウェブサイトで「いつも使っているマイ箸/マイスプーン/マイフォークを持ってきてください」と呼びかけました。

ごみは9種類に分別され、「燃えるごみ」「燃えないごみ」以外はすべてリサイクルされます。 「ペットボトル」は、ケミカルリサイクルで分子レベルに分解してポリエステル原料化。「ペットボトルのキャップやラベル」は、紙や木材と混合して固形燃料に。「缶」は、素材ごとに分解し再度、鋼材へ。

「わりばし」は分解して、端材のパルプと混合、製紙化。「スプーン・フォーク」は、蒸し焼きにして、つま恋の森の肥料に。「生ゴミ」は、成分を調整して飼料化されます。「ダンボール」は、溶解して再生紙化。「ビン」は、砕いて建築材として使用されるカレットに。そして、「廃食油」は、バイオディーゼル精製機によって燃料化されます。徹底しているでしょう!

さらに、会場で出たごみはすべて計量され、どんなごみがどれだけ出たのか、リアルタイムでわかるしくみを導入しています。すごいですね!

ゴミだけではなく、エネルギーにも本気の取り組みをしています。ap bank fes'07の、ライブエリアのエネルギーは静岡市内の風力発電施設「風電君」で発電した電力を使用しました。また、フードエリア、オフィシャルツアーバス、掛川駅〜つま恋間のシャトルバスにも、バイオディーゼルを導入しています。

ライブ会場を提供するヤマハは、今回のap bank fes'07開催をきっかけに、日本自然エネルギーから「グリーン電力証書システム」を導入し、ヤマハの所有するヤマハリゾート「つま恋」での音楽イベントで必要とされる電力などにグリーン電力を活用していくことにしたとのこと。グリーン電力の導入によってつま恋では、年間50万kWh、約230トンのCO2削減効果が見込まれているそうです。 すばらしい間接効果ですね。

気持ちのよい風。緑の芝生。胸躍る音楽。ゴミ一つ落ちていない会場。あんなに混雑しているのに、自治体に処分をお願いしなくてはならないゴミは最小限になるよう、しくみが工夫され、来場者は喜んで気持ちよく協力している。アンプや照明や会場までのバスなど、たくさんのエネルギーを使うコンサートだけど、それも自然エネルギーでまかなわれている――。

本当の気持ちよさって、他の人々や地球の裏側や未来世代にツケを回すことなく、いまの幸せを享受できることなんだ、そしてそれは今すでに可能なんだ……そんなすがすがしい思いでap bank fesの会場をあとにしたのでした。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

さて、来月の16日は……、恒例のバラトン合宿に参加中です。今年のバラトンのテーマは「温暖化」。バラトンでは、まだ世間が温暖化を問題視するまえの1992年にも温暖化をテーマに研究者たちとの議論をしていますが、今年はどのような議論が展開することでしょう。

ちなみに、本会議は4日間のプログラムなのですが、1日目は「The Science(科学)」がテーマ。2日目は「Policy, Economics and Ethics(政策、経済、倫理)」、3日目は「Mitigation and Adaptation(緩和と適応)」、そして4日目は「Global and Regional Action Strategies(グローバルおよび地域レベルでの行動戦略)」がテーマです。

毎日テーマにそったゲストスピーカーのプレゼンテーションをベースに、その日の議長が進行するのですが、私は今年初めて、議長を務めることになりました。「実際にどうすべきか、何ができるかという議論は、ジュンコにぴったりだから」と4日目の担当です。無事務まるかな、、、と思いつつ、楽しんできます〜。

今年は、バラトンに入るまえにベルリンにも寄ります。ベルリンで開催される「アジア太平洋週間フォーラム」の一環で、「Urban Sustainability Conference」が開催されるのですが、そのオープニングでスピーチをさせていただくことになっているのです。

オープニングですので、EUの環境大臣や著名人がぞくぞくと登場するらしいのですが、私はひっそりと大和撫子のごとく、日本発の元気な話をしてきます!

 

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