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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2007年08月01日

「学習する組織」とは(2007.07.30)

システム思考を学ぶ
 

「学習する組織」というコンセプトをお聞きになったことがあるでしょうか?Learning Organization と言われるもので、日本では、ピーター・センゲの『最強組織の法則―新時代のチームワークとは何か』がよく知られています。

この本は、「学習する組織」の幕を開けたといわれる書です。複雑性を増すこれからの時代、組織の学習能力こそが競争力の最大の源泉ともいわれていますが、本書では学習する組織をつくるうえで大切な5つのディシプリンについて述べています。そのなかでも最も大切な基盤となるのが、システム思考なのです。

システム思考を日本に広め、個人・組織・社会の「目の前の狭い範囲での個別最適ではなく、状況や問題のつながりをたどって全体像をとらえ、長期的にも真に望ましい変化を創り出す力」を強めたい、と2年前にチェンジ・エージェントという会社を立ち上げました。

チェンジ・エージェントでは、メールマガジンでシステム思考のトレーニングコース等の情報とともに、「システム思考入門」シリーズをお送りしてきました。

システム思考入門シリーズが23回をもって一段落しましたので、今月より「学習する組織入門」シリーズを始めたところです。最初の2回をご紹介します。もし継続して読んでみたいという方は、こちらからメルマガに登録ください。

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学習する組織入門(1) 「学習する組織とは?」

「学習する組織」とは、いかなる組織でしょうか?

学習する組織に関するさまざまな定義がありますが、私たちチェンジ・エージェントでは、「しなやかに、進化し続ける組織」こそが、学習する組織ではないかと考えています。

「しなやかに」あるというのは、強い衝撃や急激な変化に耐え、あるいはその後に回復する力を持っていることです。システム思考の専門用語で言えば、「レジリアンス」(弾力性)のある組織だといえるでしょう。(レジリアンスの詳しい説明は、このシリーズで説明していきます。)

たとえば、企業不祥事が後に絶えません。しかし、ある企業は不祥事をバネとして変化することができる一方、いくつかの企業は倒産や身売りなどの崩壊を迎えます。これは単に企業の規模や財力だけで決まるわけではありません。まさに、企業の「しなやかな強さ」の違いが現れているのです。

「進化し続ける」というのは、激しい環境変化のもとでも、新しい環境に適応し、自らを変革させる能力を備えた組織です。システム思考の専門用語では、「自己組織化」することができる組織です。(自己組織化についても、シリーズで説明していきます。)

規制緩和、競争参入、ブレイクスルー的な技術革新、グローバル化など、さまざまな環境変化の下で、自ら変革のできない組織はその進路に窮しています。19世紀のアメリカの鉄道業界は産業界の雄として君臨しましたが、20世紀のモータリゼーションの影で存在感はすっかりなくなってしまいました。時代を先読みし、自らのあり方、戦略を常に見直して、自ら進化し続ける企業は躍進し、永くその存在意義を全うできます。

では、「しなやかに、進化し続ける組織」は、どのように創ることができるのでしょうか?

ソサエティ・フォー・オーガニゼーショナル・ラーニング(組織学習協会)の設立者であるMITの上級講師ピーター・センゲは、その著書「最強組織の法則」の最新版で、学習する組織を構築する3つの柱を挙げています。
1) 志を立てる力 〜組織と個人のビジョン
2) 複雑性の理解力 〜システム思考
3) 共創的な対話力 〜メンタルモデルとダイアログ

これらの3つの能力を高めることは、自己組織化の条件を満たすとともに、レジリアンスに必要なシステムの多様性やガバナンス構造、自然資本や社会資本などにもつながります。組織内の人と、組織外の社会やステークホルダー、自然資本などの生命のつながりが重視されています。このアプローチは、20世紀に主流を占めたプラニングとコントロールを中心として、人や組織を機械とその歯車にたとえるような非人間的、無生物的なマネジメント手法とは一線を画しています。

3つの能力をたゆまなく伸ばすことによって、人や他の生命とのつながりはその潜在的な創造性を遺憾なく発揮し、組織の学習する能力はコア・コンピテンシーといえるレベルまで高まり、戦略上も、財務上もさまざまなメリットをもたらします。たとえば、BP、HP、インテル、サウスウェスト航空などは、学習する組織の実践を通じて組織の学習能力を高め、躍進している企業です。

学習する組織は、多様な個性がその潜在能力を発揮し、より上位にある大きな意思とのつながりのもとに社会的使命を達成する、生命力に満ちた組織であるともいえるでしょう。

日本でも、人こそが組織の力の源泉とよく言われています。その人の力、組織の力を最大限活かすためには、どのようにすればよいのか。このシリーズでは、学習する組織を構築するための基本的な考え方や実践、事例などを紹介していきます。

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学習する組織入門(2) 「志を立てる力(1) 個人のビジョン」

学習する組織の求心力は、常にビジョンにあります。ビジョンは人や組織の成長の原動力となるからです。

ビジョンとは、まだ現実にはないけれど、私たちの心の中に描くことができる未来の姿、風景です。将来自分や組織や社会がどのようになっていたいか、その「なりたい姿」がビジョンなのです。あなたは、7分後、7日後、そして7年後に、どのような自分でありたいですか?

例えば7年後のビジョンを描いたとき、「○○のプロフェッショナルになりたい」「最高の○○をつくりたい」「○○を通じて人々に貢献したい」など、さまざまなビジョンがあるでしょう。ビジョンは、できるだけ具体的に描くのがポイントです。その情景がリアルであればあるほど、原動力は強くなります。具体性の無いビジョンや単に現状の否定になっているビジョンでは、変化の原動力にはなりません。逆に言えば、よいビジョンとは、どれだけ自分や周囲の人を動かせるか、によって決まってくるといえるでしょう。

ビジョンは、行動することによって現実のものとなりえます。ビジョンを達成するために必要な行動は、必ずしも今できることの範囲とは限りません。むしろ、原動力となるようなビジョンは、しばしば今の自分の能力を超えるチャレンジを課すことになるでしょう。

そこで重要なのがキャパシティ・ビルディングです。キャパシティとは「能力」です。頭脳や体力のみならず、実現のためのしくみなども含みます。そのキャパシティをビルド(構築する)ことを、キャパシティ・ビルディングといいます。自分のやりたいことが、今できる以上のことをできるようになる原動力になって、自分の能力や意識を高める―それこそが学習を進める最大の源泉にほかなりません。

なりたい姿と今の現実の間に生じるギャップは緊張感を作り出し、自然の人間の欲求として、このギャップを埋めようとする力が生じます。ギャップを縮めるには、2つの方法があり、まず一つは行動をすることによって現実を変え、なりたい姿に近づくこと。そしてもう一つは、なりたい姿を現実に近づけることです。なりたい姿というのは常に時間軸をどれくらい長く取るかとの兼ね合いでもありますから、短期的にはこの2つの方法を組み合わせる場合も出てきます。

ビジョンの力をうまく活用して緊張感を維持することによって、クリエイティブ・テンション(創造的な緊張)という、きわめて高い創造性を生み出すことができます。現実にばかり引っ張られたり、現実から逃げようとしたりしていては、よいパフォーマンスは得られません。ビジョンによって方向付けされた、良質で適度な緊張感が自らの力を最大限に発揮してくれるといってよいでしょう。

このクリエイティブ・テンションの対極にあるのが、エモーショナル・テンションです(感情的な緊張)。エモーショナル・テンションは、クリエイティブ・テンション同様現実が理想どおりにない状況から生じますが、大きな違いは外部からの脅威が引き金になっていることです。上司や組織からの強いコントロールはその典型です。ノルマの未達に対して懲罰的な制裁を課すなどのやり方は、緊張感を高めますが、クリエイティビティを大幅に損ねます。また、不正に走るなど手段と目的を取り違える原因ともなります。

学習する組織では、エモーショナル・テンションではなく、クリエイティブ・テンションを高めるためのマネジメントが重要になってきます。常に、自分のやりたいこと(ビジョン)とそのために修得すること(キャパシティ・ビルディング)を意識し、計画化して、振り返りを行います。なりたい自分に向かってたゆまなく研鑽することによって、パフォーマンスは高まり、目的を効果的に達成できるようになっていきます。そして、人は自らが学びたいことこそ、自発的に、かつ効果的に学ぶのです。

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「この学習する組織の考え方やトレーニングは自社組織に必要ではないか」とお考えの方々に、考え方や事例をお話しして、ディスカションをする場を設けました。

今回は企業で組織開発・人材教育等に関わっていらっしゃる方々を対象としています。ご興味をお持ちの方、よい機会と思いますので、よろしければどうぞお申し込み下さい。

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プレゼンテーション&ディスカッション「学習する組織を導くリーダーシップ」のご案内

昨今経済のグローバル化、資源価格の高騰、環境問題の深刻化など、ビジネスの事業環境はますます複雑さを増しています。そんな中、どのようにすれば大きな変化もしなやかに受けとめ、適応しながら、組織を進化させていくかが大きな課題だと言われています。

このような時代の潮流の中で、多様な個の力を最大限引き出し、組織として効果的に学ぶ能力と意識を高める「学習する組織」が日本内外で注目を集めています。海外では、BP、HP、インテル、サウスウエスト航空などの世界的な優良企業が、学習する組織によって企業力を高め、大きな成果を発揮しています。

この「学習する組織」について、そもそも学習する組織とは何か、学習する組織を作るには何が必要か、どのように進めればよいか、一緒に話し合ってみませんか? 議論の口火に学習する組織の考え方やメソッド、事例などについて、ご紹介します。「学習する組織」がどんなものか、どのように始めればよいかなど、を理解する絶好の機会となるでしょう。

学習する組織はよく知らないが興味があるという方から、どう始めるか、展開するかと試行錯誤をしている方まで、自分の組織を強い組織・よい組織にしたい!とお考えの方、ぜひいらしてください。(自社組織での実施・検討を考えている方を対象としています。)

お申し込み、お問い合わせはチェンジ・エージェント info@change-agent.jpまで。以下、詳細です。

==========   記   ==========

■日時
2007年8月6日 13:15 - 16:30

■場所
東京都内の会場

■募集対象
経営者
企業の組織開発、人財開発の責任者・担当者
企業でのプロセスデザイン、ダイアログ、ビジョニング、システム思考などの実践リーダー

今回は、自身の所属する組織での導入を検討される方、または実践している方を対象としています。

■定員
40名程度(応募多数の場合は抽選)

■概要
○13:15 - 14:45
プレゼンテーション「学習する組織を導くリーダーシップ」
-学習する組織の基本的な考え方
-学習能力と意識を高める3つの力
-学習する組織の実践事例
などについて、チェンジ・エージェントの小田よりご紹介します。

○14:45 - 16:15  (途中休憩含む)
ディスカッション「自社組織を学習する組織にするには何が必要か」
参加者で小グループに分かれて討論し、全体で各グループのポイントを発表、続けて全体での討論を行います。

○16:15 - 16:30
まとめ及びフィードバック

■参加費
無料でご参加いただけます。
フィードバックへのご協力をよろしくお願いします。

■お申し込み・お問い合わせ
お申し込みは、チェンジ・エージェント(info@change-agent.jp)宛に、下記を添えてお申し込みください。
1)お名前
2)ご所属の組織・部署・役職名
3)メール・アドレス
4)お電話番号
5)貴社での学習する組織の実践状況

お問い合わせは、同じくチェンジ・エージェント(info@change-agent.jp)の星野・小田宛にてお願いします。

 

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