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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2007年07月20日

開発貢献度指標と日本の位置(2007.07.16)

食と生活
 

さて、「開発貢献度指標」って、ご存じですか? 世界の先進国のなかで、日本の開発貢献度はどのように見られていると思いますか?

少し古いものですが、世界銀行プレス・レビューにわかりやすい解説がありましたので、訳してもらいました。日本ではこの指標について、どのくらい報道されているのかわかりませんが、欧米でのとらえ方も伝わってきて興味深い記事です。

この記事のあとに、最新の日本の「開発貢献度指標」について、簡単にご紹介しますね。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「開発貢献度指標」--北欧、オーストラリア、ニュージーランドが先進諸国の
上位を占める

世界銀行プレス・レビュー
2005年8月31日

AP通信の報道によると、援助拠出額と共に貿易、環境、移民に関する政策を考慮に入れて開発援助を評価したところ、北欧諸国、オーストラリアおよびニュージーランドが世界先進21カ国の上位を占めた。

この「開発貢献度指標」は、米国のシンクタンクである世界開発センターの政策支援グループと米誌『フォーリンポリシー』が発表したもの。第1位にランクされたのは、指標が初めて算出された2003年以来、不動の地位を維持しているデンマーク。上位4カ国は、デンマークに次いでオランダ、スウェーデン、オーストラリアと続き、ノルウェーとニュージーランドが5位で並んでいる。

「とは言え、第1位のデンマークでさえ、7つの政策分野のうち4つの分野で、平均点前後のスコアしか取れていない」と、調査責任者であるデビッド・ルードマン氏は書いている。「どの国にも、地球規模の繁栄を広げるためにできることが、まだまだあると言えるだろう」

世界開発センターのウェブサイトには、開発貢献度指標は、「政府が、世界の貧困国に住む50億人に利益をもたらすような政策に、どれくらい注力しているかを基準にして」対象国のランク付けを行う、とある。

政府の政策を基に採点が行われ、その政策が貧困国の将来の見通しを改善すると判断された場合はスコアを与え、そうでない場合はスコアを減らす。例えば、基本的な援助についてみると、寄付金の一部が国際的な開発慈善事業に寄付されることを前提に、納税者に対して寄付金の損金算入を認める国はプラス。

一方、援助資金を援助国の財・サービスに使うことを受入国に対して義務付ける旨、資金援助契約に明記する国はマイナスとなる。開発貢献度指標は、援助の質と量に加え、貧困国からの輸入に対する市場の開放度、貧困国への投資を促す政策、移民・環境・安全保障政策、新たな科学技術の普及に向けた支援に基づいて、ランク付けを行う。

一方、米ロサンゼルスタイムズ紙によれば、米国は、貧困国への対外援助を大幅に増額させたものの、世界の貧困国への援助における総合成績は21カ国中12位とだった。米国の援助額はブッシュ政権の下、2001年の124億ドルから2002年の147億ドルへと急増した、とルードマン氏は述べている。

この記事によると、貧困国に対する米国の政府援助額は、国民1人当たり1日15セント、民間からの寄付額は国民1人当たり1日6セント。片やデンマークは、政府援助額が同89セント、民間からの寄付額は1セントである。

英フィナンシャルタイムズ紙も同指標の結果を報じており、その中で、米国と英国が、過去2年間で開発途上国に対する援助を最も改善させた国に含まれていると伝えている。この指標から、米英の2カ国が、開発に関して並べてきた美辞麗句を、一部ではあるが行動に移してきたということが伺える。

米国は、貧困国に対する市場開放政策、投資の流れ、技術の構築および移転において上位にランクされている一方、海外援助の額やその有益度、環境政策および安全保障、非民主国家に武器を輸出している点に関しては低い評価となっている。

英国は、移民政策を除いて全般に改善が認められ、貧困国への投資促進政策と環境政策の2分野で1位となっているが、非民主国家に武器を輸出しているため、安全保障分野では最下位のスイスに次いで下から2番目にランクされている。

日本の時事通信社は、2005年の第三世界の開発に対する貢献という点で、日本が先進21カ国中最下位であったことを報じた。同調査において、日本はこれで3年連続の最下位となる。

日本は、援助、市場開放、環境の3分野で最下位、移民政策では下から2番目である。時事通信社の同記事は、開発途上国からの輸出の妨げとなっている日本の農産物関税の高さや、GDP(国内総生産)比で見た日本の援助額の少なさを指摘している。

日本は環境政策でも最下位であるが、これは多額の漁業補助金が開発途上国の沖合漁業を崩壊させる一因となり得ること、さらに熱帯雨林材を大量に輸入していることによる。移民分野においても日本の評価は低い。

「先進諸国は、貧困撲滅に向けた努力をしていると口で言うだけで、実際の行動が伴っていないことを、この指標は浮き彫りにしている」というナンシー・バードサル世界開発センター理事長の言葉を伝えているのは、米ワシントンポスト紙である。

また、『フォーリンポリシー』誌の編集長兼発行者であるモアゼス・ナイム氏は「この指標の目的は、地球市民であるとは何を意味するのかに関して先進国間の対話を作り出すことにある。援助の額だけが問題なのではない。援助が圧制者や腐敗した独裁者の手に渡らないかどうか、ということも問いかけている」と言う。

平和維持活動を展開している国が同時に武器を輸出しているのであれば、平和維持活動による貢献の意味はほとんどなくなる、とナイム氏は指摘する。「『お金を出しさえすればいい』のではなく、そのお金の質が問題」とナイム氏。さらにUSデイリー紙は、教会に行く頻度と援助の反比例関係という同指標の意外な点を取り上げ、宗教的な教えが必ずしも援助活動を導くものではないことを暗に示していると付記している。

(翻訳:小野寺春香・渡辺千鶴)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

この「開発貢献度指標」は、世界開発センターのウェブサイトにあります。
http://www.cgdev.org/section/initiatives/_active/cdi

トップページに、21ヶ国のランクがグラフで載っています。我が日本は、上記の記事で3年連続で最下位を更新中でしたが、今なお最下位です。(_ _:::

日本に関する総評は、「2006年、日本は21位であった。途上国からの輸入に対する障壁は最も高く(主にコメの関税)、所得に対する対外援助の割合は最低である。また、貧しい国から見ての日本の環境面でのこれまでの貢献も貧弱であり、ごく少数の移民しか受け入れていない。開発に対する日本の最大の貢献は、研究開発に対する政府の支援と、貧しい国での投資を推進する方針を通して、おこなわれている」。

総評に続いて、「貿易」「投資」「移民」「環境」「安全保障」というカテゴリーごとの評価が載っています。環境に関しては、日本は18位です。

「日本の強みは、人口当たりの温室効果ガスの排出量が小さいこと(二酸化炭素換算で11トンで、7位)。

日本の弱みは、「1994年から2004年の間に、温室効果ガスの排出量があまり減っていないこと(PPP GDPあたりの平均年間増加率-0.7%、18位)」「ガス税が低いこと(17位)」「国連漁業協定を批准していないこと」「熱帯雨林の木材輸入量が多いこと(21位)」となっています。

国際会議などに出ると、日本の国も企業も自国内のことにはとても熱心に取り組んでいるのだけど、途上国への視線が「労働力? 市場? さもなければゼロ」だなあ。。。と感じることがよくあります。この報告を読んで、そんな実感がある意味裏付けられてしまったような気がしました。

内向きから外へも目を向ける--特にアジアで、そして技術を含むさまざまな面でリード役を果たせる日本へ。21世紀は真の意味で、世界における私たち、組織、国のあり方を少しずつ変えていく時代になっていくのではないかと思っています。

そのための一つのきっかけや考えるヒントとして、この報告のような外部からの評価の視点を知ること、すべてに賛同するかどうかは別として一つの視点として認めることも大事だな、と思います。

 

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