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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2007年07月12日

レスター・ブラウン「環境革命」(2007.07.07)

新しいあり方へ
 

いま、石川県の山代温泉にいます。今日の午後、小池防衛大臣と一緒にシンポジウムに参加していました。

小池氏とは、環境大臣のころに「環境ビジネスウィメン懇談会」にお声掛けをいただいて以来、あれこれとやりとりがあり、今日も「いつも本をありがとうね。システム思考の本も。朝2時に起きるといろいろできるよねぇ」と。(^^;

また、この冬にはマータイさんの自伝『へこたれない』の翻訳協力をさせていただき、そのご縁で、2ヶ月ほどまえにマータイさんが来日された折の出版記念パーティでは、小池さんの代理で花束をお渡ししてお祝いメッセージを代読するというお役もいただいていました。

『UNBOWED へこたれない ワンガリ・マータイ自伝』 ワンガリ・マータイ (著), 小池 百合子 (翻訳) 小学館

日本ではマータイさんは主に「もったいない」で知られているので、ソフトなイメージですが、この自伝を読むと、ほんとうに「へこたれない闘士」であることがわかります。マータイさんのあったかい笑顔の陰に、たくさんの戦いと汗と涙があることがあることに、翻訳協力チームはみな胸を熱くしたのでした。不屈の精神で国を変え、世界を変え続けているマータイさんの自伝、ぜひどうぞ!

さて、少しまえに、アースポリシー研究所から届いたレスター・ブラウン氏の「環境革命」を実践和訳チームが訳してくれましたので、お届けします。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

環境革命
レスター・R・ブラウン


エコロジーの原則に従って世界経済を再構築する。このことは史上最大の投資機会を意味する。「環境革命」は、規模について言えば先の農業革命、産業革命にも匹敵するものだ。

農業革命は、狩猟・採集を中心とした遊牧生活から土地を耕す定住生活へと移行することで、食糧経済を再構築するものであった。農業は狩猟や採集を補う手段として始まったのだが、やがてほぼ完全にそれらに取って代わった。耕作・作付けができる状態にするため、農業革命によって草木が一掃された土地は、ついには地球上の陸地の1/10にも達した。地球への影響がほとんどなかった狩猟・採集時代とは異なり、この新しい農業文化は、文字通り地表の姿を一変させていったのだ。

産業革命は――国によっては、まだ初期段階というところもあるが――2世紀にわたって進行中である。産業革命の土台となったのは、薪から化石燃料への移行であり、これにより経済活動の大規模な拡大が始まった。事実、産業革命の際立った特徴は、化石燃料として地下に蓄えられた莫大な太陽エネルギーを利用したことである。農業革命が地球の表面を一変させたのに対し、産業革命は地球の大気を大きく変えつつある。

産業革命がもたらした生産性の向上によって、モノを作るためのすさまじいエネルギーが生み出されていった。また新しい生活スタイルが生み出され、人類史上最大の環境破壊時代も幕を開けた。世界は確実に、経済衰退へと向かう道を歩み始めたのだった。

環境革命は、新しいエネルギー源への移行があって初めて成立するという点で、産業革命に似ている。また、先の2つの革命と同様、環境革命の影響も全世界に及ぶだろう。

一方、3つの革命の規模、タイミング、起源にはそれぞれ違いがある。環境革命が最初の2つの革命と違うのは、数十年で勝負をつけなければならない点だ。また、他の革命を推し進めたのが新発見や技術の進歩であったのに対し、この革命は、新技術によって促進されるものの、自然との和解を迫られた私たちのニーズによって突き動かされている。

ここには、かつてないほどの投資環境が広がっている。現在世界では、主要なエネルギー源である石油のために年間1.7兆ドルが費やされているが、これは、エコ・エコノミーにおいてエネルギーに投入され得る資本の大きさを示唆している。化石燃料への投資と、風力・太陽電池・地熱エネルギーへの投資の違いの一つは、後者が枯渇しないという点だ。

輸入石油に依存している開発途上国では、こうした新たなエネルギー源によって、資本を国内エネルギー源への投資に振り向かせることができる。自国に油田を抱える国は多くないが、風力や太陽エネルギーはどの国にもあり、活用されるのを待ちわびている。経済成長や雇用創出の面からも、こうした新エネルギー技術は天の恵みといえよう。

エネルギー効率関連の投資は急速に伸びていくだろう。理由は簡単、儲かるからである。効率化によって浮いたエネルギーは、ほとんどすべての国において最も安価な新エネルギー源だ。

環境革命の影響は、世界経済のあらゆる分野に及ぶだろう。この新しい経済において、ある企業は勝者となり、またある企業は敗者となるだろう。新経済の構築に身を投じる者は勝ち残り、過去にしがみつく者は前時代に取り残されるというリスクを背負うのである。


出典:レスター・R・ブラウン著『プランB2.0』第12章「新経済の構築」
2006年、W・W・ノートン社(ニューヨーク)より刊行

(翻訳:山本 夕佳、佐野 真紀)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

このレポートは、上記に書いてあるように、レスターの「プランB 2.0」からの引用です。先日レスターに会ったら、いま「プランB 3.0」を準備中とのこと。米国では来年初めに、またまた新しい展開や情報、レスターの洞察や提案などが盛り込まれた本に出会えそうです。楽しみですー。

 

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