ホーム > 環境メールニュース > 社会が変える「環境金融」 社会を変える「お金」の流れをつくる〜「顔の見える」関係...

エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2007年06月07日

社会が変える「環境金融」 社会を変える「お金」の流れをつくる〜「顔の見える」関係で「地域の財産」を活かす(2007.06.07)

新しいあり方へ
 

『グローバルネット』2006年10月号(191号)
http://www.gef.or.jp/activity/publication/globalnet/index.html

特集/社会が変える「環境金融」より

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

社会を変える「お金」の流れをつくる〜「顔の見える」関係で「地域の財産」を活かす

構想日本・政策担当ディレクター(前金融庁課長補佐)
坂本 忠弘

■お金にも問われる持続可能性
 グローバルネットの最近のバックナンバーを見ると生産者と消費者をつなごう、モノの川上から川下までをたどりながら、それぞれのところで、より地球にやさしい、環境の観点から持続可能な姿を考えていこうという趣旨が読み取れる。

 そこでは、生産者と消費者、またモノを運び関わる人たちの「顔と顔が見える」関係、そして、それを基にした信頼関係をどうつくるかということがポイントになるのだろう。

 また、湿地の恵みを賢く利用する取り組みでは、地域に存在する、あるいは潜在するともいえる、「ひと」「もの」「かね」「ちえ」「わざ」を活かして、新しい何かをつくりだそうとしている。

 「お金」の流れについても、同様だと思う。

 これまでは、右肩上がりの経済成長の時代。社会全体として設定した目標、同じような質の画一的なモノやサービスの生産を効率的に行うこと、大量生産・大量消費を通じて、より多くの人が豊かさを実感できるようにしようという時代であった。

 これからは、ますます持続可能性が問われ、また、それぞれのニーズが多様化する中、一人ひとりの選択によって満足度を高めていく時代である。そのような時代の中では、間接金融から直接金融へ、お金の流れは変わっていくものと思われる。

■自分の意思と価値観を込めた直接金融
 間接金融は、いうならば、銀行を通じたお金の流れ。銀行にお金を預け、銀行が預金者に代わり、安全重視の建前の下でそのお金の提供を行うもの。右肩上がりの経済成長の時代には、それがうまく回った。しかし、横並び的に不動産担保で融資を行った結果、バブルとその崩壊、不良債権問題が起こった。右肩上がりの経済成長の時代の曲がり角でもあった。

 直接金融は、自分のお金の行き先を、より自分で選択するお金の流れ。自分の意思や価値観を込めることになるもの。

 典型的なものとしては、株式市場がそうである。企業があり、株式を通じて資金を得ることを目指す。情報を公開し、企業の価値を判断してもらい、お金の出し手から資金を提供してもらう。

 しかし、「直接金融の代表例は株式市場」というと、昨今の様子を見ても、どうも違和感を覚える向きも少なくないと思う。ライブドアや村上ファンドの事件があった。証券取引法等上の法的問題の有無は今後明らかにされるところであるが、平たくいえば、虚偽の業績でも法律すれすれの付け替えの利益でもいい。とにかく良く見せて、株価を上げようという株式。あるいは、ある日大株主として登場し、いろいろと理由をつけながら、企業の持つ内部留保や資産等を配当として出せという株式。そのような交渉をする一方で、高値で売り抜ける株式。

 これでは、持続可能な直接金融とはいえない。これからは、直接金融の世界も、より持続可能性を問われる、生産から消費まで、さまざまなステークホルダーのことを考える時代になると思われる。

 例えば、持ち続けることに意味がある株式。関わり続けることに意味がある株式。本当に先々まで社会に必要な事業活動を行い、「配当は、社会が良くなること」というような企業。そんな企業への、自分の意思と価値観を込めた、直接金融の動きが広がればいいと思う。

■「顔の見える」お金の流れは地域を変える
 投資信託を通じた社会的責任投資(SRI)を進める動きが1990年代後半から環境分野で注目されている。これは、生活者、利用者の観点を重視した調査・評価に基づく投資行動により、社会のお金の流れを変えようというものである。投資行動の目に見える変化により、企業の事業・経営に変化をもたらすものといえる。

 他にも、投資の市場にアクセスすることが難しい中小企業の社債や銀行からの融資を集めた債権・債券を証券化することも直接金融への道を開くものといえよう。一定数以上の中小企業の債権をまとめて証券化することで、各企業の不払い等の影響を全体で小さなものとすることができる。また、多数の投資家が小口化された証券を保有することから、リスクをより小さなものに分散することが可能となる。

 このような証券化は、東京都が先進的に行ったほか、複数の自治体が連携をとって進めている。投資家として市民の参加を促し、中小企業の発展を市民が応援する市場として「地域発」証券化は期待されている。

 また、NPOにこそ直接金融を、という見方もある。確かに現状では、間接金融の担い手の銀行は、NPOへの融資には消極的である。銀行に「もっと気の利いたお金の貸し方をしてもらいたい」と言うよりも、直接金融の方がその可能性があると思われる。

 お金の行き先との関わりをより重視するお金の出し手、出し方は、さまざまな形で広がってきている。

●コミュニティファンド――地域やテーマを定めて趣旨に賛同する者が資金を拠出し、メンバーが良いと考える事業を選んで出資または融資するもの。寄付を原資として、収益性のない活動を行う団体に助成する場合もある。

●市民債――福祉や環境などの事業を行う資金調達のために発行するもの。環境分野では、例えば市民風車への出資がある。「地球温暖化を防止したい」「未来に美しい地球を残したい」「社会貢献できる資金運用をしたい」など、市民の願いをエネルギーづくりを通じて実現するものといえる。市民風車への出資の償還は事業実績によるため、元本が保障されるものではない。利益の分配により、配当を受ける可能性もあるが、そこには、「利子とは違う満足」があり、出資した風車のタワーに名前が刻まれるなど「お金ではない配当」もある。

●持ち寄りで挑戦する公開起業オークション――これはさらに草の根の直接投資といえる。地域・社会の課題を解決するための新たな事業の起業を目指す人がその想いと事業プランを発表し、集まった人は自分が共感するところで、それに応えて、「ひと」「もの」「かね」などの自分にできる応援・コミットメントを行うものである。これは、参加型起業支援の取り組みといえる。

 これらは、「顔が見える」関係を重視し、「顔の見える」お金の流れをつくるものといえる。そして、地域の人たちが自分の持つさまざまな「財」を、あるいは、その地域に存在するさまざまな「財」を、そのお金の行き先に活かそうとするものだ。

 このように、社会を変える「お金」の流れをつくるカギは、「顔の見える」関係で「地域の財産」を活かすということにあるのではないだろうか。

(おわり)

 

このページの先頭へ

このページの先頭へ