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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2007年05月01日

「社会の中で、社会とともにつくるこれからの組織戦略」〜NGOにおける事例 その1(2007.04.30)

新しいあり方へ
 

3月に開かれた東京大学人工物工学研究センター主催の「第14回人工物工学コロキウム〜社会の中で、社会とともにつくるこれからの組織戦略」で「研究開発部門における事例」としてお話になった内藤耕さんのお話を、前号・前々号でお届けしました。

今度は、同じ場で、「NGOにおける事例」として私がお話しした内容を、3本に分けてお届けします。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

皆さんこんにちは、枝廣です。今日はこのような機会をいただいて、とてもうれしく思っています。

私のほうは今日、NGOにおける事例ということで、同じく20分ほどお話をしていこうと思っています。いま、奥田先生のほうから紹介をしていただきましたが、個人でずっといろいろな活動をしてきた時代もありますし、おそらく今日、会場に来てくださっている方のなかでも、私が7年ちょっと前から配信しているメールニュースというのを取ってくださっている方もいらっしゃるんじゃないかと思います。

NGOの関係で言うと、今日お話をしますジャパン・フォー・サステナビリティというNGOを4年半前に立ち上げて、共同代表を務めています。あとは「100万人のキャンドルナイト」という、「冬至と夏至の夜に電気を消して、2時間スローな夜を過ごしましょう」という運動も、ほかの仲間とやっています。

あと、会社をやっていたり、大学に籍を置かせていただいたり、環境省の「21世紀環境立国戦略特別部会」の委員をさせていただいたり、翻訳をしたり、本を書いたり。ですので、会社も持っているし、NGOもやっているし、個人でも活動しているしということで、いろんな立場を経験しているなかで、今日はNGOのジャパン・フォー・サステナビリティの話を中心にしたいと思います。

さっそく、ジャパン・フォー・サステナビリティのご紹介をしたいと思います。
http://www.japanfs.org/index_j.html

ジャパン・フォー・サステナビリティというのはとても長い名前なので、私たちは略称でJFSと呼んでいます。サステナビリティとジャパン、日本ということで、2つの思いを持って立ち上げました。

1つは、「サステナビリティに向かっている日本」。日本がいまサステナビリティということで言うと、どこまで来ているのか。それから「世界のサステナビリティのために役に立てる日本」。この2つを活動の軸にしています。

日本では、環境技術の開発であるとか、自治体の取り組みであるとか、NGOの面白い取り組みとか、持続可能な社会をつくるためのいろいろな試みや取り組みが広がっています。

私はもともと、通訳者でしたので、海外のいろいろな取り組みや考え方を日本に紹介する仕事をしていました。海外から人が来て日本でしゃべるときに、通訳をしているんですね。

通訳し終わったあとに、そういう海外から来た人に「でも、知ってる? 日本でもこんなのあるんだよ」とか、「日本には昔から『もったいない』という考えがあって」みたいな話をすると、海外の人は全然知らないんですね。「日本でそんなに進んだ考え方や取り組みがあるんだったらぜひ、もっと情報が欲しい」とよく言われました。

ところが、日本の情報はほとんど日本語です。日本語の情報というのは、世界にとってはないに等しい。読めませんので。なので、通訳・翻訳をやっていた立場でしたので、情報の架け橋をしたいと思って、4年半前に仲間と一緒に立ち上げたのが、このJFSというNGOです。

このNGOの使命は何かと言うと、いま言いましたように、日本の進んだ環境のさまざまな取り組み、昔からの巧みの知恵も含めて、それを世界に発信することで、ひとつは先進国の取り組みをもっと刺激したい。たとえばドイツが進んでいるとか、ノルウエーが進んでいるとかありますが、でも、日本のいろいろな事例を紹介することで、もっともっと先へ進んでもらえる。

そして途上国にぜひ、私たちがいま知っているもの、手にしている技術を伝えたい。そうすることで、たとえば大規模なダムをつくったり、大きな原子力発電所をつくったりせずにいきなり、私たちを追い越して、ソーラーや風力、バイオマスでエネルギーを得るとか、そういった持続可能なものが使えるようになると思っています。

そして、世界に情報を発信すると、必ず世界からフィードバックが返ってきます。それを日本に伝えることで、日本の取り組みをもっともっと元気にしたいとも思っています。

企業でも地域でも、いま少し状況が変わってきていますが、大体、環境のことを一生懸命取り組んでいても、なかなか社内でわかってくれない、地域でわかってくれない。なぜなら、なかなかプロフィットセンターにはならないんですね。コストがかかると見られてしまう。

なので、先に世界に発信することで、世界からのフィードバックを伝えると、「自分たちって、こんなすごいことをやっているんだ」。それを社内にも伝えて使ってもらったり、ということをしています。

もうひとつは、持続可能な日本のビジョン。持続可能な日本って、どういう姿なんだろう。これを、指標を使って明らかにしていこうというプロジェクトがあります。

ここに載っているのがJFSのロゴですが、これは飯島ツトムさんというコンセプターの方がつくってくださいました。日本の伝統的な水引ですね。これで世界と日本を結ぶというようなことで、私たちの大切なロゴにさせてもらっています。

JFSの情報は世界に発信しているので、英語です。ただ、同じ情報はすべて日本語でも出しています。ですから、日本のなかの情報のひとつのハブになっていると思います。

これが私たちの活動のいちばんメインとなるデータベースです。日本語のほうをいまお見せしています。ここに日本語・英語の切り替えスイッチがあって、これを押すと、同じページがすべて英語になったり日本語になったりします。

具体的な、たとえばカテゴリーやプレーヤー、もしくはフリーワード検索でこのことについて知りたい。たとえば温暖化に対する自治体の取り組みを知りたいというふうに、組み合わせ検索などをすると、すでに1,500を超える記事が載っていますので、そのなかから該当するものが出てきます。各記事を読んでいただいたり、日英を切り替えながら、英語の勉強をしているという人もいます。そんな形で、いろいろ使っていただいています。

世界に、私たちは毎月ニュースレターを出しています。Webでの情報というのは、もちろん見に来てくださればいつでも見えますが、定期的にお届けするというのもとても大切なので、毎月1回ニュースレターを出しています。英語のニュースレターは無料で、どなたでも登録できるので、もしよかったらWebに来てください。

毎月30件情報を出しているほか、毎月ニュースレターを出しています。そのお届け先ですが、ヨーロッパ、アジア、カナダなど、研究所・NGO・マスコミ・業界など、たくさんのところに届けています。いま、世界の189カ国に情報を届けています。世界のほとんどの国に届けることができています。

世界に届けると、世界からフィードバックが毎月数十件、メールで届きます。英語以外のメールが届くこともあります。そういうときには、ボランティアさんのなかで、その言語が読める人を探して読んでもらったりしていますが、大体は英語で、私たちの記事に対するフィードバックとか、「こういうことをもっと知りたい」「日本に行くんだけど、環境のことを考えた建築物を見たいんだけど、どこに行ったらいいか」などなど、本当は外務省のお仕事じゃないかなーというような、環境に関する日本の窓口や日本の情報案内をJFSでやっている状況です。

残念ながら、日本でNGOというのは、なかなか運営が難しいです。たとえば世界では、会員が何百万人というNGOがたくさんあるし、そういったところだと、専門の研究者を1,200人雇っているとか、すごい規模のNGOがたくさんあります。ただ日本ではなかなか難しい。いちばん大きいNGOでも、会員数は5万人から6万人ぐらいではないかといわれているぐらいで、小さな規模のNGOが多いです。

それはいろいろな原因があって、やはり寄付の制度、税金の制度があって、NGOにお金がなかなか回りにくいというようなことがあります。

私たちのNGOはとても恵まれていて、今日も来てくれていると思いますが、いまスタッフが4人います。ただ、4人で毎月30本の記事をつくって、世界に英語で発信してというのはとても回りませんので、主な活動はすべてボランティアの方々にお願いしています。

いま、JFSのボランティアは、総数で言うと350人ぐらい。世界の各地の方が参加しています。私たちのNGOの活動はWebベースです。メーリングリストですべてやりとりをしています。なので、どこに住んでいても全然構わない。

もうひとつ言うと、「何月何日ここに集まってください」というNGOではないので、企業の方の参加がとても多いです。たとえばお昼休みとか、仕事が終わったあととか、週末とか、そういった時間に、自分の都合にいい時間で参加をしてくださいます。時々、いまこの時間にメールをくれていていいのかなという時間にメールをくださるボランティアの方もいらっしゃいますが(笑)、それぞれのマイペースで参加ができるということです。

どんなふうに、チームで30本、毎月情報を出すということを4年半ずっと続けてきたか、簡単にご説明します。いくつものチームを有機的にゆるやかにつなぐことで、この活動を行っています。

最初にあるチームが情報検索チーム。これは、新聞を読むのが好きとか、業界誌を取っているとか、情報に触れる方々がそれぞれに入っていて、「こういう面白い情報があったよ」と。たとえば「地方版にこんな情報があたったよ」ということを寄せてくださいます。

それから外部から、ぜひ発信してほしいと要請があることもあります。スクリーニングをしたあと、「じゃあ、これを発信しよう」と。毎月200本ぐらい情報がプールされるので、そのうち60本〜70本に、いま、私がスクリーニングをざっとしていますが、「これを記事にしまよう」というのを決めて、今度は日本語で記事をつくるチームがあります。これもいま、数十人の参加がありますが、このチームが日本語でまず記事をつくります。

そのできた記事を、今度は英訳チームに渡します。渡すといっても、みんなメールで流していくだけですが。そのプロセスは全部決まっていて、英訳チームはいま、60〜70人入っていると思います。

このチームだけは、入るときにテストがあります。JFSは非常に高いレベルの英語が評判で、海外の人が読んだときにすっと入る英語にしたいと思っているので、ここはテストをしたうえ、さらに英訳チームが英訳したものは、ネイティブ・チェッカーに必ず全部チェックをしてもらっています。それからWebサイトに載ったり、ニュースレターになったりという流れになっています。

Webの専門のヘルプをしてくれるWebチームもあります。あと、海外開拓チームというのもあって、さっき189カ国の人々が読んでくれていると言いました。ただWebがあるだけでは、絶対にそんなに広がりません。海外開拓チームというのは、Webをさまざまなやり方で検索して、こういう情報に関心のありそうな、あらゆる国の人のメールアドレスを集めてきてくれます。Webに載っている公開情報から集めてきてくれるので、その人たちに「こういう情報がありますよ。いかがですか」というセールスをする活動をしてくれています。そのおかげで、いま189まで増えています。

Webに載せたりニュースレターを出したりすると、海外からいろいろなフィードバックが返ってきます。それに答えるのが海外フィードバックチーム。いろいろな問い合わせや要望に対して答える役目です。

そのなかには、リサーチチームに回して、「これはこの人に直接答えるだけじゃなくて、詳しく調べて記事にしたほうがいいよ」という判断があれば、リサーチチームがリサーチをして、記事に回してくると。

さらに海外フィードバックチームのなかから、「これはみんなに知らせたい声だね」。たとえば「頑張っているね」とか「これが役に立ったよ」とか、「こういうのが欲しいよ」という声は日本語にして、各チームにそれぞれ戻すという活動をしています。

そのほかにも通訳チームとか、イベントごと、プロジェクトごとにさまざまなチームがあって、恐らく、ちゃんと数えたことはないですが、20ぐらいはボランティアチームがあるんじゃないかと思います。

この間のいろいろなコーディネートとか流れがきちんとできるように支えてくれているのが事務局で、事務局が直接記事を書いたり、英訳したりということはしません。それぞれのチームのコーディネートと流れのところをサポートしてくれています。

こんな活動をするなかで、世界からいろいろな日本への見方が集まってきています。大体、これまで日本の情報がなかったので、「日本って、そんなことやっているんですね」「初めて知りました」というのが、最初のころは多かったです。

あとは、自分たちの国が、JFSからの日本の情報でいろいろ学んだり、刺激を受けたりしているということをよく言っていただいています。文化的なこととか、伝統の巧みの技とか、生活の知恵などを伝えているので、「日本のイメージが変わった」とか。「これはぜひ、ブッシュ大統領に送ってください」というのもいただいて(笑)、私たちも「送りたいよね」と思っていますが。こんな形でいろいろな情報を流しています。


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