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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2007年03月19日

システム思考の入門書が出ました!『なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?―小さな力で大きく動かす!システム思考の上手な使い方』(2007.03.18)

システム思考を学ぶ
 
昨年書き進めていた、システム思考のわかりやすい入門書が出ました! 『なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?―小さな力で大きく動かす!システム思考の上手な使い方』
枝廣 淳子・小田 理一郎(東洋経済新報社)1,680円(税込) 日本には、ビジネス向けの「システムシンキング」の本はいくつかありますが、「つながり思考」であるシステム思考の基本的な考え方から、基礎的ツールの紹介と練習、個人やグループ、組織のさまざまな事例の紹介や、「学習する組織」という組織での展開例も含めた入門書は、これが本邦初だと思っています。 どこにも見られる構造の基本パターンである「システム原型」や、システムそのものの特徴も、例をあげながら丁寧に解説しています。そして、システムの構造を変えるための働きかけの中でも「小さな力で大きく動かせる介入点」であるレバレッジ・ポイントの見つけ方の手引きもあります。 「あとがき」に書いたように、「読み書き・そろばん・システム思考」という社会に向けての「知ってもらい、使ってもらい、広げていく」ための本が出て、とてもとてもうれしいです。 「あとがき」と「目次」をご紹介します〜。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 あとがき  枝廣がシステム思考と出会ったのは6年ほど前のこと、バラトングループという世界的なシステム思考の研究者・実践家のグループの合宿でした。出会った瞬間に、「これだ!」とわくわく興奮したことを今でも覚えています。 「システム思考って、私もずっと大事だと考えていた「つながり」をベースとした考え方なんだ! 自分でも使いこなせるようになりたい。そして、日本のたくさんの方々に伝えたい!」と思ったその思いを、今回、東洋経済新報社の井坂康志氏のお力添えで、こうして多くの方々にお届けでき、とてもうれしく思っています。  システム思考に出会い、勉強し、ある程度身につけてきた私は、それ以前に比べ、カッとしたり、落ち込んだり、自分を責めたり、人を責めたり、状況に無力感を感じたり、ということがなくなりました。自分もまわりもラクにしてくれるものだと実感しています。  一方、小田は1990年代中頃、当時勤めていたアメリカ系多国籍企業の長期事業戦略を策定する過程でシステム思考に出会い、活用しはじました。その後、長年勤めたその会社を退社して、「本当に自分がやりたいこと」を実現するための道を歩み始めました。 そのきっかけとなったメッセージ『もし地球が100人の村だったら』は、システム思考の第一人者だったドネラ・メドウズが、システム思考的に物事や状況を見る方法を一般の人々に伝えたいとの思いで綴ったエッセイの一編であったことをのちに知り、「つながり」を実感したのでした。  枝廣の誘いで、システム思考の勉強会をはじめ、ずっと気にかかっていたこのシステム思考を本格的に研究し始めました。知れば知るほど「面白い!」「本質的にものごとを見るのに役立つ」と夢中になりました。そして、2005年4月に二人で有限会社チェンジ・エージェントを設立して、システム思考を基盤に、変化の担い手の育成に着手したのでした。  システム思考は、何カ月もかけてコンピュータのシミュレーション・モデルをつくるシステム・ダイナミクスという本格的なものから、喫茶店の紙ナプキンの裏にぐるぐると要素のつながりで状況を描いてみるという簡単なレベルまで、どんな形でも実践し、使っていくことができます。 システム思考は、「ちょっと待てよ」といってくれるアプローチです。目の前の問題や解決策に飛びつくのではなく、「ちょっと待てよ。いま見えていないものも含め、全体の構造はどうなっているのだろう?」「ちょっと待てよ。これをやると、こちらの想定している以外の影響が出てくる可能性はないだろうか?」――そんなことをシステマチックに考えさせてくれるアプローチなのです。  小さい頃に、「中はどうなっているんだろう?」「どうして動くんだろう?」と思って、時計やおもちゃを分解したことはありませんか? 「構造を知りたい」という思いは、子どもにも私たちにもあります。 モノの構造だけではなくて、状況や問題の構造を知ることは、知ること自体が楽しいし、おまけにより効果的な働きかけを考えられます。これがシステム思考の醍醐味です。眉間にしわをよせるのではなく、ぜひ楽しみながら、システム思考を知り、使っていただけたら、と思います(私たちのワークショップも笑い声が絶えません!)。  私たちの究極のビジョンは、「読み書き・そろばん・システム思考」といわれるぐらい(「システム思考」という言葉は知らなくても)誰でもごく自然に、「物事をつながりとして考える」「長期的な時間軸を持って、全体像をとらえようとする」社会をつくることです。 みんながつながりや全体像を考えるようなったら、いまの社会が抱えているさまざまな問題も解決に向かうと信じているからです(ちなみに、システム思考の身についた人のことを、英語では「システム・シチズン」と呼び、米国やオランダなどでは小学生からシステム思考を身につけるためのカリキュラムを考え、実施している教師のネットワークもあります)。  システム思考を日本で普及する活動を進める一方、世界の専門家と意見交換をするなかで、欧米よりも日本や東洋のほうがシステム思考になじみがあると実感するようになりました。 日本には昔から「因果応報」「回り回って」「ツボ」などという言葉がありますが、これらはすべてシステム思考のエッセンスを言い表している言葉です。私たちの日常の暮らしや考え方のなかに、システム思考的なアプローチがごく自然にとけ込んでいるのです。 ただ、ふだんは意識はしていません。そこで、本書で紹介したシンプルなツールを使うことによって、より意識的に「つながり思考」ができるようになり、本当の目的や幸せのために役立てることができるようになります。  私たちのワークショップでは、「システム思考って何?」というまったく初めての方でも、数時間後には時系列変化パターングラフやループ図が描けるようになります(実は、そう話すと、欧米の専門家はびっくりします!)。 もっとも、ループ図が描くことはあくまでも手段です。目的は、システム思考の基本的な考え方や基本的なツールを身につけることで、ものの見方や考え方が広がり、新しい気づきが得られることです。そのひとつのきっかけとして、本書が役に立つことを願っています。  私たちは、企業に対して、システム思考の研修やシステム思考を基盤としたビジョン・戦略策定や共創型ダイアログなどのファシリテーション、学習する組織づくりをめざすプログラム開発やコンサルティングを行うほか、地域の活性化や業界の再生、まちづくり、個人の自己実現など、さまざまな場面で、システム思考の強みを活かした本質的な問題解決のお手伝いをしています。どのような場面でも、「しなやかな強さと、学び続け、進化し続ける力」をはぐくみたいと思っています。  私たちひとりひとりも、組織も、社会も、いらないストレスや回り道なしに、ごく自然に伸び伸びと持てる力を最大限に発揮しながら、本当の目的やあるべき姿を見つけ、実現していく――本書がその一助となれば、これ以上幸せなことはありません。 チェンジ・エージェント
枝廣淳子・小田理一郎 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ●目次 まえがき――小さな力で大きく動かそう!
ある研究所の悩み/アイディア減少の悪循環/目先の解決策を追う危険
構造を見極め、構造に働きかける/さらに新しい問題が....../ちょっとしたアイディアの妙
改善と進歩への道――システム思考の新しい視点/二種類の複雑性
システム思考=思い込みを排し、全体を見る
新しいものを自由に生み出す力――右脳の時代に必須のスキル
システム思考は究極の知恵/小さな力で大きく動かす! 第1章 システム思考とは何か?――よいパターンを創り出す究極のツール
たとえばこんなこと、ありませんか?/昨日の解決策が今日の問題を生む
安易に「副作用」と言うけれど....../ロジカルだけでは不十分――こちらを立てればあちらが立たず
世の中はルービックキューブ/渋滞を解消するには?/直線思考の限界
「渋滞解消」のほかに何が起こるか?/真摯な意図とはうらはらに......
自動車を脇目に、バスがスイスイ/有効な働きかけはしばしば直感に反する
システムとは氷山――表面だけ見て一喜一憂の愚/よいパターンをつくれ
製材所の浮沈――「困った、困った」は初めて?/構造をつかむには?
人を責めない、自分を責めない/正しい「問い」を大事にする/レバレッジ・ポイントを探す
システム本来の力を最大限に生かす /組織学習やコミュニケーションにも最適 第2章 システム思考は難しくない!――世の中はシステムだらけです
あなたもシステム、私もシステム /目に見えるもの、見えないもの
システムの理解が必要なわけ /見えないものが見えてくる /まずは全体のパターン認識から 第3章 最強ツール「時系列変化パターングラフ」で望ましい変化を創り出す
何を変えたいのか――望ましい変化を書き出してみる
ポイント①縦軸を書く――主観もグラフ化できる
ポイント②横軸を書く――必要な時間を考える
ポイント③過去から未来を展望する
ポイント④「このままパターン」――対策をとらなかったら?
ポイント⑤目標パターン――変数はどう変わるか /練習問題を解いてみましょう
過去は変えられない。未来は変えられる /グループのためのツールとしても最適 第4章 ループ図を使えば構造が見えてくる!
まず構造を考えよう /つながり方に着目しよう /「同」と「逆」で整理する
ループ図を活用しよう /「どんどん」「ますます」の自己強化型ループ
安定を生み出すバランス型ループ /作ったループ図を読んでみよう
ループ図を描いてみよう――構成要素をおさえればだれでも書ける!
ルール① 変数は名詞で書く /ルール② 矢印は相関関係ではなく、因果関係
ループ図作成のステップ /すべてがループになるとは限らない /スポーツジムの待ち時間
二つのループは綱引きする /自分のループ図を書くコツ――変化を細大もらさず書いておく
つながりからつながりへ /外からの影響に要注意 /迷ったときは分けてみる
時間的遅れがある場合は明記する /範囲は狭すぎず、広すぎず /どこまで細かく見ればいいか
ループ図に「正解」なし /人の意見を聞いてみよう 第5章 強力な助っ人「システム原型」で現実の構造を見破る
「あるある」パターンをおさえておこう /成長の頭打ち /モーレツ社員の憂鬱
成長を加速しようとするな /制約要因を見出し弱めよ /「解決策」はなぜうまくいかないのか?
短期と長期のアンバランス /急がば回れ! /「問題のすり替わり」――対症療法に注意
「わかっちゃいるけど」をどう正す? /「ちょっと待てよ。本当の問題は何なんだ?」
ある優良企業の悲劇 /ゆでガエル症候群――「じわじわ」の恐怖
絶対的な目標を持ちましょう! /「勝ち組」はますます強くなる
男性のほうが昇進しやすいのはなぜ? /機会の平等を確保せよ
居酒屋のしゃべり声はなぜ大きい?――ものごとはエスカレートする
100円バーガー戦略の無謀 /一点へのこだわりを捨てよ /仮説として利用しよう 第6章 絶妙のツボ「レバレッジ・ポイント」を探せ!――小さな力で大きく変える
どこに働きかけるか――レバレッジ・ポイントの妙味
ニューヨーク市の治安改善はいかにしてなされたか? /地下鉄の落書きを清掃せよ!
意外なところに答えが......――割れた窓理論 /レバレッジ・ポイントは多種多様
1 変数(パラメータ)――数値を定める
2 物理的なフローとストックの構造――計画段階が決め手
3 情報のフローの構造――現実を見える化する
4 ルールやインセンティブ――行動の促進と抑制
5 目的――「何のために?」を自問する
6 前提となっているパラダイム――「社会通念」や「常識」 /要するに「ツボ」のこと 第7章 いざ、問題解決へ!――望ましい構造を創りだす
目標パターンへの飛翔 /環境破壊はなぜ進む? /一通の目録から環境負荷が激減
すでにある成功を探す /これからうまくいきそうなものを探す
タコツボ克服は一杯のコーヒーから /「足を引っ張る構造」はないか
悪循環を好循環にひっくり返す /デュポン社のムダとり戦略 /修理ループと予防保全ループ
修理は問題のすり替わり /あるべき組織風土の希薄化
火消しモードからの脱却を――「メンテナンス・ゲーム」の成果 /指令だけでは動かない
システム思考自己実現バージョン /「やりがいループ」と「生活ループ」の確執
成長の好循環づくりに成功 第8章 システム思考の効用と実践手法――こんな場面で役に立つ!
システム思考の効用① 「人や状況を責めない、自分を責めない」アプローチ /人を信じる
自分観察のメリット /「メールどつぼループ」よ、さようなら /気分が楽になる
システム思考の効用② 視野を広げ、従来の「思考の境界」を乗り越えられる
長蛇の列、原因は? /「あちら側」に行く道は...... /認知の大切さ――「あの会は楽しいよ」
「できなかったこと」を反省しない /理性だけでは動きません!
システム思考の効用③ 無意識の前提を問い直すことができる
「べき論」の悪循環 /過去の呪縛を解き放て――「自分との対話」を促す
システム思考の効用④ 問題解決に役立つ時間軸を考えることができる
すべてに時がある  /良くなる前に悪くなる /同志を増やそう
システム思考の効用⑤ 問題解決につながるコミュニケーションが可能に
「言い方」の問題は難しい /人よりも問題に集中 第9章 最強の組織をつくる!――変化の時代に必須のスキル
学習する組織の世界的潮流 /変化に適応するコンセプト
シングルループ学習――フィードバック手法は効果絶大
ダブルループ学習――創造的な変化を引き出す /聴くことが基本 /「脇におく」技術
海のすばらしさを教えよ――心を揺さぶる志 /組織の外を見よ
既存のリーダー像は通用しない /「船長」ではなく「設計者」 第10章 システム思考を使いこなすコツ――実践のための七ヶ条 
習うより慣れよ /最後に...... システム思考をより深く知りたい人のために――システムの特徴 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 たくさんの方々に読んでもらえ、システム思考の基本的な考え方やツールを、それぞれの生活や人生、お仕事に生かしてもらえたら、これ以上うれしいことはありません。 お役に立ちそうなお知り合いやお友だちがいらしたら、ぜひお知らせくださいな。どうぞよろしくお願いします。 『なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?―小さな力で大きく動かす!システム思考の上手な使い方』
枝廣 淳子・小田 理一郎(東洋経済新報社)1,680円(税込)
 

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