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2007年03月09日

「社会の中で、社会とともにつくるこれからの組織戦略」(2007.03.09)

新しいあり方へ
 
今月22日に大手町カフェで、面白い(と本人は思っている。^^;)シンポジウムを開きます。2年間客員助教授を務めた東京大学人工物工学研究センターの主催で、同じく客員助教授である産業総合研究所の内藤耕さんといっしょに、ゲストを迎えて、企業、研究開発、NGOからの話題提供とディスカションをします。 先着80名様ということですが、よろしかったらぜひどうぞ〜。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここからご案内〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 第14回人工物工学コロキウムのご案内
http://www.race.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/raceweb/news_disp.cgi?&art=00118 第14回人工物工学コロキウム
「社会の中で、社会とともにつくるこれからの組織戦略」 人間が自然と共生し持続可能な社会をつくるという課題も、企業が直面している新しい事業を開発するという課題も、大きく複雑なものです。このような課題に取り組むとき、最適な解をロジカルに見出すことは容易ではありません。 しかし、ここ数年、組織や個人が社会と積極的な相互作用を通じて、社会の中で、社会とともに解を見出したり作りだしたりするプロセスが有用であることが明らかになってきました。 人間・人工物・環境の新たな関係を追求する東京大学人工物工学研究センターでは、第14回コロキウムにおいて、この新しい方法論を実践している産業界、NGO、研究開発部門の先進事例を紹介し、これから求められる組織戦略を議論します。 主催:東京大学人工物工学研究センター
日時:平成19年3月22日(木) 18:00〜21:00
会場:大手町カフェ (http://www.o-cafe.com/index.php)
費用:無料
定員:80名(先着順) 議事
18:00 上田完次教授(東京大学人工物工学研究センター長)
     開会挨拶 話題提供セッション
司会:奥田洋司(東京大学人工物工学研究センター教授) 18:10 日野佳恵子(株式会社ハー・ストーリィ代表取締役)
     話題提供Ⅰ「産業界における事例」 18:30 枝廣淳子(東京大学人工物工学研究センター客員助教授)
     話題提供Ⅱ「NGOにおける事例」 18:50 内藤 耕(東京大学人工物工学研究センター客員助教授)
     話題提供Ⅲ「研究開発部門における事例」 パネルトークセッション
司会:枝廣淳子(東京大学人工物工学研究センター客員助教授)
19:10 テーマ「社会の中の組織戦略」
     上田完次・日野佳恵子・内藤 耕 21:00 閉会 参加費は無料です。参加ご希望の方は、下記にご芳名、ご所属、ご連絡先を明記の上、コロキウム事務局宛にe-mailかFaxにてお申込下さい。3月20日(火)までにお返事いただけますよう、お願い申し上げます。 =============================================================== 東京大学人工物工学研究センター内
第14回人工物工学コロキウム事務局(西野) 行
e-mail: colloquium14@race.u-tokyo.ac.jp fax : 04-7136-4242  「第14回人工物工学コロキウム 
  社会の中で、社会とともにつくるこれからの組織戦略」 参加申込 開催日 :平成19年3月22日(水)18:00〜21:00
会 場 :大手町カフェ
ご芳名:
ご所属:
ご連絡先:(ご住所、Tel、Fax、e-mail) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ご案内ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 今回お迎えするゲストは、株式会社ハー・ストーリィの代表取締役、日野佳恵子さんです。日野さんのご本を読ませていただいて、「ぜひお話をお聞きしたい!」とお願いし、ご快諾いただき、登場いただきます。 私の読んだ日野さんのご本は、こちらです。とても面白く、自分の活動にとっても参考になりました。 『ファンサイト・マーケティング』
〜企業のファンがネットの「クチコミ」で増えていく!
http://www.amazon.co.jp/dp/4478530378?tag=junkoedahiro-22 そして、内藤耕さんのご本もご紹介します。 『「産業科学技術」の哲学』
吉川 弘之 (著), 内藤 耕 (著)
http://www.amazon.co.jp/dp/4130638068?tag=junkoedahiro-22 このご本から、「社会の中で、社会とともにつくる」という、今回のシンポジウムに重なる部分を、少しですが、抜き書きしてご紹介します。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「はじめに」より ○ところで現代において人類が抱えている最大の問題は、「持続可能な開発」である。基本的には、貧困の解消と地球環境維持との同時的実現を意味する。人類は豊かさを向上させながら、それが全人類に及ばず貧困地域を多く残してしまっている現実があり、その解消は急務である。しかしながら一方で、解消のために経済活動を盛んにすると地球環境の劣化を招くという二律背反に見舞われている。 ○われわれの歴史的検討からいっても、また直感的にいっても、科学技術基礎研究が社会の現実的価値を生み出すまでの期間はけっして短くはなかった。しかし過去においてそれはやむを得ないことであり、研究者や開発者が苦労しているにしても、その価値の恩恵をこうむる社会としては、必ずしも急ぐこともないので機が熟するのを待てばよいのであった。 しかし、前述したような現代の状況では、社会の側に待てない状況が発生してきたのである。すなわち「持続可能な開発」は、目標として達成すべき状態であるばかりでなく、できるだけ早く達成すべき、いわば時間条件付の要請なのである。その実現が遅くなればなるほど、地球環境の劣化は進み、その修復にますます大きな努力を払う必要が生じる。そしておそらく待ちすぎれば不可逆現象になってしまう。その意味で、この「加速」は経済原理などでなく、人類生存の必要条件なのである。 「序章 研究者を取り巻く状況の変化」より ○実際に研究を行っている立場、または研究に携わる立場から、研究成果を社会に還元できるような研究の経営手法を確立できないだろうか。言い換えれば、すべての研究者がその手法を理解し、それに乗り、そういうものを通じることによって、研究の成果が上がり、そしてその経過を社会に還元していく仕組みを、うまくつくれないだろうか。 われわれは、そういう新しい試みを本書で提案したい。つまり、研究の成果を効率的に実用化し、それを社会へ具体的に還元していく方法論を確立し、そのプロセスを学問体系化することの必要性を、一つの問題提起として、ここでしようとしているのである。  科学技術研究の方向転換
○ところで、われわれは、これまで快適性や利便性、さらに豊かさというものをひたすら追求し、結果的にこのジレンマをつくってしまった。そのなかで、これまでの科学技術の研究開発が果たした役割も、けっして小さいものではない。その一翼を担ってきたと、われわれは理解したほうがよいかもしれない。 そのような意味で、現在の社会経済システムのなかで引き続き科学技術の研究開発を同じように進めても、このジレンマを解決することはできないだろう。もし、われわれ研究者が社会からの要請に応え、この二律背反する状況を科学研究によって解決しようとするならば、今後、社会とどのように相互作用し、どのような研究を、どのような方法論で行っていくのかを考える必要がある。われわれは、これまでどおり研究し続けてもだめで、これまでのやり方を大きく方向転換しなければならないのである。 しかし、ここで注意が必要なのは、研究者が学問から離れ、社会における問題を解決することだけに専念せよといっているのではない、ということである。本書では、研究者が社会と積極的に相互作用することで、研究自身が既存の学問領域では考えられない独創的なミッションを持つようになり、むしろこれまでにない科学研究が駆動されるとともに、新しい学問領域の芽の創生にもつながるということを明らかにしていきたい。 現在の基礎研究は、既存の学問領域のなかで進められ、個々の学問領域を大きく発展させることに成功したが、それらの学問領域の外にある問題を忘れてしまった。しかし、われわれがここで主張しようとしているのは、研究者が社会を強く意識していくことは、学問の発展にもつながるということである。つまり、学問の社会応用から、基礎的な科学知識がどんどん生まれてくるということである。 ○論文を書き、そして学会を通じてそれを一方的に社会へ出すオープン・ループの関係から、科学と社会が接点を持ち、双方向に作用しながら進化していくような構造を持つ循環ループへ変更しなければならない。 「第1章 研究と社会の循環ループ」より 1.1 研究の社会的契約
公的研究資金に込められたメッセージ ○公的研究資金とは、社会から科学コミュニティに込められた「期待」というメッセージであり、研究資金はそのメッセージを乗せた一種の媒体であると考えられる。 これまでは、研究資金をもらって「ああ、よかった、よかった」と、多くの研究者は言っていたが、もうそのような状況にはないということを、われわれは認識しなければならない。「研究費が獲得できた」ということは、それはある種のメッセージを社会から受け取ったということと同じなのである。この社会からの期待感を理解することが、非常に重要なのである。一人ひとりの研究者が、このことを理解しなければいけない。 1.2 研究と社会をつなぐ
学会の役割 ○つまり、研究した結果を、論文としてそのまま報告しても、相手が受け取れない場合が多いのである。 このように見てくると、学会論文を中心とした研究成果を公表するシステムには、社会という視点が入っていないことがわかる。あくまでも、研究者のためのシステムであると考えるべきである。忘れてはいけないのは、われわれが論文と呼んでいるものは、「○○学」の論文でしかないということである。研究成果が社会で利用されるかどうかは、社会がその論文を見つけ、かつ理解できるかどうかに大きく依存することになっている。 ○ここで延べてきたことは、研究者が社会とは無関係に存在し、独立して研究し、研究した結果を論文としてポンポンと社会に投げ込むという、これまでの社会との関係を修正することの重要性である。 研究の「製品」という新しい概念
○伝統的には、単に「研究成果」と呼ばれてきたという主張もあるが、研究成果という言葉では研究者の視点が強い。われわれは、受け手(または社会)の視点を入れるために、製品という言葉をあえて使っているのである。 「製品」の多様性
○研究分野によって社会との関係もさまざまである。例えば、産業技術の研究を行っている学問分野では、研究の製品が産業化を通して具体的な商品となり、社会へ送り出されていく。エネルギーや地質といった研究は、政府の政策によって社会へ還元されていく。研究成果そのものが、製品として社会へ直接送り出される場合もあるかもしれない。分野によって、社会と関係する方法や経路が異なるのは当然である。 いずれにせよ、研究開発に製品という概念を導入する意義とは、研究成果の受け取り手である社会を、つねに意識することである。受け取り手を意識すれば、その人がどのような目的で、そしてどのような方法でその成果を使おうとしているのかを自然と考えるようになるからである。 研究者と社会の価値観の相違
○同じ材料が持つ科学的属性は、一般社会ではほとんど関心が持たれず、手に持って楽しいとか、うれしいといった社会における価値や機能、そして意味といったものが、重要になる。 科学コミュニティと一般社会の間では、同じものを見たとしても、構造が機能というものに変わる、あるいは性質が価値や意味というものに変わるということを、科学コミュニティは認識しなければならないのである。 ○つまり、研究の成果を社会へつなぐ循環ループを確立するためには、じつはこのような壁を突き破る必要がある。これは、どんなに理論を求めてもだめである。「存在」が「価値」、「構造」が「機能」、さらに「性質」が「意味」といったものに変換するプロセスを、研究者たちが自らつくらなければならないのである。 ○研究者は、ただ壁の向こう側に論文として研究成果を放り出すだけではなく、研究成果を社会へ送り届けるために、学術論文として科学的属性だけを書くのではなく、同時に価値というものについての厳しい見通しも、つねに持つ必要がある。 「製品」の種類
○すばらしい提言をしたとして研究者は評価されるが、それを直接的なリターンにつなげるのは難しい。提言が社会で役に立ったことは、研究者にとって非常に大きな喜びであるが、それが研究者のキャリアにつながるといったシステムは、いまだ成熟した状態にない。さらに、提言すること自体に、そのベースにある基礎研究に対して費用を払ってくれるという、狭い意味での市場性はまったくないことがわかる。 ○30年ほど前から、地球温暖化に関する研究を科学者たちは行っていた。しかし、それを受け止めてくれるところが、当時、まだなかった。研究者たちは、根気よく研究を続けるとともに、社会に対して「警告」という製品を投じ続けたのである。 このように長い時間がかかったが、いまでは30年前に発せられた警告が、一般社会からきちんと目に見える形になったのである。ここにも可視性はあるが、市場性のない製品が存在する。 この地球温暖化に関わる警告という製品が持つ意味は、われわれ研究者にとってたいへん大きい。研究者たちは、科学研究を通じて、地球温暖化が今後の大きな課題になるということを予測し、警告し続けたのである。最終的に警告が社会に受け取られ、国際社会で議論されるようになるまで、非常に長い年月を要した。 これは、そのときに研究と社会の間に循環ループが存在しない場合でも、そのループをつくろうとする努力を研究者がしなければならないという例である。そのために、個々の研究者は研究の製品の形態や社会までの経路を模索しながら、社会との接点を考えることが必要である。 1.3 進化する循環ループ
循環ループの確立
○身近な問題として、次のようなことがある。どんどん鉱物資源を消費して、快適な装置をたくさんつくった。その結果、地球環境劣化ということが起こった。社会は、資源消費を最小化しなければいけないことに気づき、そのメッセージを科学コミュニティに届ける。その結果、省資源という、これまでと逆の方向に研究が動くようになる。このような研究の流れの転換は、循環ループ自体が進化構造を持っていれば、実施可能になる。 研究の世界では
○このループのなかにある大きな問題は、実験物理学者と理論物理学者しかループのなかに入っておらず、社会や人間というものを巻き込んでいない、非常にローカルなループになっていることである。 二重構造を持った研究の循環ループ
○しかし現実は、社会から科学コミュニティへ公的資金が流れ、研究の成果は情報として学会や学術雑誌というものを介して、学問単位で社会へ戻っていくだけである。このことは、現在ある研究と社会の循環ループが、公的研究資金という物質的な流れが知識という情報の流れに置き換えられるだけで、物質と情報の二重構造になっていないことを意味している。さらに、論文だけでは社会との接点をつくっているとはいえず、オープン・ループになっている。生物や言語が持っているものと比べ、きわめて脆弱な構造となっていることがわかる。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 科学技術のマネジメントを担当している内藤さんの、「社会の中で、社会とともにつくる」ために何が必要か、どういう試みがあって、成果はどうなのか、というようなお話など、楽しみです。 内藤さんのこの本は、上記の引用部分以外もとても興味深く、じっくり読ませてもらいました。たとえば、 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ○これまで、技術が社会へ出ていくプロセスについて述べてきた。しかし、それでは社会は、どのような理由で技術を受け取るのだろうか。また、社会はどのような理由で技術を受け取ることを拒否するのだろうか。最終的にこの部分を明らかにしなければ、新技術は社会へ出ていくことはできない。 この、携帯電話が急速に社会へ普及していくプロセスから、公衆電話機能の置換えという当初の研究の目的とは別なところに社会は価値を見出し、その技術を受け取ったのである。これは、技術の単純な置換えだけでは、社会での技術導入が買換え需要のなかで進むだけであり、それを社会が速やかに受け取れるようにするには、新たな価値を注入するように技術が非線形な発展を遂げることが必要であることを示唆している。 ○このように技術選択の動機が激しく変化しているなかで、非常に大きな問題は、多くの研究者は、技術的合理性があれば、社会が新技術を受け入れてくれるにちがいないと考えているところである。そして、研究をマネジメントする人たちも、その変化にまだ気がついていないのかもしれない。依然として高度成長時代のような動機で、社会が新技術を選択していると思い込んでいる人たちが多いのではないだろうか。これでは、科学的属性を社会における価値へと、とうてい変換することはできない。もしかしたら、悪夢の時代後半の研究開発が抱えている問題の最大の理由は、社会状況の変化に気づいていない研究者たちにあるのかもしれない。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ほかにも、「新しいディシプリンをつくる」「第2種基礎研究へ」「異分野知識融合への取り組み」などなど。 科学技術は、環境問題や幸せの問題を考えるうえで、欠かせない重要な領域です。その役割や現状、課題や今後などについて考えてみたい方、よかったら内藤さんの本を読んだり、直接お話を聞きにぜひいらしてください〜! あ、私も話題提供者の役目をもらっています。私はNGOの立場から「社会の中で、社会とともに」を、JFSの事例をもとにお話しする予定です。
 

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